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30、40代が"悪夢を見やすい世代"なワケ

プレジデントオンライン / 2019年1月6日 11時15分

恐ろしい夢を見て、心臓バクバク、汗だくで跳ね起きたことはないだろうか。そもそも、なんで自分の意思とは無関係に、そんな夢を見るのか――。そのメカニズムと深層心理、さらには対処法を、「夢」を研究する専門家に聞いた。
【理論編】
悪い夢はストレスのバロメーター
西多昌規●精神科医

社会人になった今でも受験に失敗する夢を見るなど、現実とは関係はないのに、なぜかいつも同じような嫌な夢を見る、という人も多いのではないでしょうか。私もいまだに、自分が医学部の学生で、気がついたら単位がまったく取れていない夢を見ることがあります。

人はなぜ夢を見るのか、その理由は解明されていません。研究者によって意見が分かれています。同様に、悪夢にも、プラスの作用とマイナスの作用があるなど、諸説あります。夢には、まだまだたくさんの謎が残されているのです。

ただ、冒頭で触れた決まった夢ばかり見ることに理由があるとすれば、それはおそらく多感な思春期に、非常に強い、ストレスフルな経験が刷り込まれるからなのでしょう。そのため、何年、何十年と時間が経ってもリピートして出てきやすくなるのです。

世代によって嫌な夢の傾向もいくつかあり、私たちの世代ですと受験が一番のストレスですし、年配の方々になると戦争や空襲の夢になってくるようです。

そもそも夢とは一体なんなのでしょうか。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠がありますが、夢を見るのは、主に眠りが浅くなるレム睡眠のときです。レム睡眠中、体は休息しているけれども、脳は起きているときと同じくらいに活性化しています。このとき、脳の中の感情や視覚を司る部分が勝手に動いて、めちゃくちゃな筋書きで浮かんでくるイメージのようなものが夢だとされています。

一方、ノンレム睡眠とは、眠りの浅いレム睡眠から徐々に覚醒状態が静まっていく段階も含め、「ぐっすり眠っている」状態の睡眠をさします。厳密に言うとノンレム睡眠でも夢を見ているようですが、ノンレム睡眠の夢にはストーリーがあまりありません。悪夢のように不快だとか、怖いといった感情はなく、ぼんやりとした森の風景など、ニュートラルなものがほとんどです。ストーリーのある夢や悪夢は、いずれもレム睡眠中に見ていると考えられます。

■出世して嬉しいのに、悪夢が増える不思議

人間はストレスの影響下に置かれると夢が増えていきます。特に悪い夢が増えてきたら、感情的な負荷がかかっているサイン。仕事や人間関係の悩みが、そのまま露骨に夢に反映されるとは限らず、子供のころに嫌な思いをした夢、現実の出来事とは関係ない嫌な夢など、悪い夢のパターンはさまざまです。

写真=iStock.com/ra2studio

自分ではそこまでストレスを自覚していないときでも、もし繰り返し悪夢を見るようになったら、実はなんらかのプレッシャーがかかっているかもしれない。出世や子供の誕生など、一般的には喜ばしい出来事があったときに、なぜか悪夢が増えた、という人も意外にたくさんいます。私が教えている学生にも、運動部でレギュラーになった途端に、試合で負ける夢を毎日見るようになったというケースがありました。

悪夢は、うつ病の前兆となる場合もあります。仕事以外でも、介護や育児にまつわる家族とのいざこざやトラブルなど、現実に起きていることに関連した、似たようなテーマの悪夢を長期にわたって、持続的に見るようになってきたら、まずはストレス過多であることを自覚しましょう。

現代の日本社会は、ビジネスシーンにおいては特に、業務量が多く、しかも感情労働(感情の抑制や鈍麻、緊張、忍耐などを不可欠の職務要素とする労働)も多くて、働く人にかなりの負荷がかかっています。ストレスが増えると、悪夢も増えてきます。すると、ただでさえ睡眠時間が短いのに、さらに睡眠の質も低下してしまい、慢性睡眠不足になり、うつ病につながっていってしまうことがあるのです。

■嫌なことは、寝れば忘れるか?

悪夢を見るのは防御反応だという説があります。よく「嫌なことは寝て忘れる」と言ったりもしますが、実際に、カリフォルニア大学バークレー校のマシュー・P・ウォーカーらの研究によると、レム睡眠時に恐怖記憶の定着が減弱した、という結果が出ているのです。

しかし、その一方、私自身が携わった脳波を用いた研究では、むしろレム睡眠の時間が長いほど、恐怖記憶は蘇りやすくなることがわかりました。また、国立精神・神経医療研究センターで行われた研究でも、災害や犯罪の被害に遭ったときには、直後にあまり寝ないほうがいいという指摘が出ています。被害に遭った当時は全然眠れない、という事例もありますが、それは脳の防衛機能なのであって、嫌な記憶をなるべく定着させないようにしている、ということなのです。

どちらが正しいのかは、今後の研究に委ねられますが、いずれにせよ多くの人は時間とともに自然と回復していくものです。

ところが、一部の人は時間が経ってもつらい記憶がフラッシュバックしたり、つらい体験をテーマとした悪夢があたかも幻覚のように出てきて繰り返されたりすることがある。これは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状です。

極度に不快な夢を繰り返し見ることで睡眠が妨げられてしまい、日常生活に大きな支障が出てしまうのは、悪夢障害という病気です。あまりにもひどい悪夢が続いて夜に眠るのが怖くなってしまったり、睡眠が浅くなって起きている間のパフォーマンスが下がってしまったり、あるいは日中に睡魔に襲われて注意力が低下したりするなどの問題が起きてくるのが特徴です。

日常生活に支障が出る場合は、心療内科や精神科があるクリニックへの通院をおすすめしますが、どんな人でも悪夢を見るものですし、たまに見る程度や、日中にそこまで気にならないようであれば、問題はありません。その程度の悪夢であれば、人に話すことが手近な対処法になります。

■苦しい「金縛り」は、こうすれば大丈夫!

悪夢とは直接関係ありませんが、睡眠中に怖い思いをしたり、不快になったりする点で言うと、「金縛り」も対処すべき問題です。

金縛りは、専門用語では「睡眠麻痺」と言われていて、寝ているときにふと目を覚まし、体を動かそうとしても動かせない現象と定義できます。その状態から抜け出すために有効なのが、目をできるだけ動かして、ちょっと離れたものを見つめる動作を繰り返すことです。天井の照明などに目を向けているうちに、睡眠麻痺は解けやすくなります。

金縛りは、4~5割の人が人生で1度は経験すると言われています。2回以上経験する人の数は少なくなってきます。ナルコレプシー(日中に強い眠気の発作が起きる睡眠障害の一種)の症状として現れることもありますが、もしそうではなくて金縛りを繰り返すのであれば、悪夢が増えるのと同じように、かなりストレスがかかっているということなのかもしれません。

【実践編】
夢は明るい未来へのシミュレーション
松田英子●東洋大学社会学部社会心理学科教授

眠っている間、人は誰でも夢を見ています。30~40代の男性でも、毎晩3~4つぐらいの夢を見ているもの。ただし、夢の記憶を思い出す頻度には個人差があります。一般的に「夢をよく見る人」と言われているのは、正確に言うと「夢をよく覚えている人」ということなのです。

覚えている夢の内容を調べてみると、圧倒的に多いのが悪い夢。これはあらゆる年代に共通していて、また、世界的に見ても共通です。私自身も幸せな夢の記憶は数少ないですし、みなさんも楽しい夢を見て目が覚めたという経験より、焦りや不安の夢を見て目が覚めた経験のほうが多いはずです。

なぜネガティブな夢のほうが記憶に残りやすいのかというと、感情の強度が強く、かつ、夢を見た直後に目が覚めることが多いから。悪夢にうなされてパッと目が覚めた場合には、夢を見ている途中で目を覚ますため、記憶に残りやすいのです。

面白いことに、夢の内容も世界的に共通しています。ドイツの調査によると、最も多いのは飛んでいる夢。次は何度も何度も繰り返して、なにかしようとする夢。それから、追いかけられる夢や、性的な夢、なにかに遅れてしまう夢。今、生きている人が死んでいる夢や、あるいは、亡くなった人が生きていて、夢の中で会っている夢。そのあたりは頻出するテーマです。

日本の大学生を対象とした調査では、追いかけられる夢が一番多い。2番目は落下する、3番目が遅刻、4番目は自分が攻撃や暴力を受ける、5番目は大切な人が亡くなる夢です。

男女差を見てみると、男性は性的な夢や、乗り物のコントロールができない、火事やトイレが見つからないといった夢が多いですね。あとは戦いに関する夢。高校生ぐらいだと、ゲームのような場面で障害をクリアしていくとか、なにかに追いかけられて殴られそうになったけど、やり返したといったものがあります。女性に多いのは、亡くなった人に会った夢など、対人的な相互作用を伴うものでしょうか。

▼ストレスフル世代、30代、40代が見る悪夢は……
仕事に関する悪夢
●仕事に追われて、いつまでたっても終わらない。(40代男性)
●大事な式で忘れ物や遅刻する。(40代男性)
命や健康、安全に関わる悪夢
●歯を全部抜かれる。(30代男性)
●歯がボロボロになる。体からガラス片が出てくる。(40代男性)
●黒い穴に落ちていく。(40代女性)
●巨大なローラーで押しつぶされる。(40代男性)
●家族が殺されそうになる。(40代女性)
●家が燃やされている。(40代男性)
罪を犯す悪夢
●何の罪かは知らないが刑務所に入ることになる。ああもう終わりだ……。(40代女性)
●しかたなく人を斬ってしまった。(40代男性)
追いかけられる悪夢
●犬面人に追いかけ回された。(30代男性)
●ゾンビに追いかけられる。(30代男性)
●ゴジラに遠くから徐々に追いつめられる。(40代女性)
●包丁を持った人に追いかけられる。(40代男性)
●“何か”に追いかけられているのに、地面から足が離れないような感覚で、うまく走ることができない夢を定期的に見る。(30代女性)
動物に関する悪夢
●ヘビがうじゃうじゃいる穴へ落ちた。(40代男性)
●トラに近所で襲われる。(30代男性)
●父がワニに襲われる。(40代女性)
仕事や家庭でストレスがかかりやすい30代、40代は悪夢をよく見る世代。歯が抜ける夢、追いかけられる夢などは、人によりストーリーやディテールに違いがあっても、よく見られる代表的な悪夢といえそうだ。
※松田氏実施の調査結果をもとに編集部作成。

■働き盛りの年代が、もっとも悪夢を見る!

悪夢の原因として考えられる一番の要因は、ストレス。私が行った調査をもとに、年代別に悪夢を見る頻度の傾向を見てみると、勤労者では30~40代が突出しています(図参照)。仕事上の強いストレスに関する調査からも、30代が一番ストレスフルなこともわかっています。40代は抑うつ症状と不眠症状が多く、50代はその傾向が弱まりいい夢が増えて、60代以降になると、さらに楽しい夢が増える。

おそらく50代は30代、40代に比べて、会社での地位や生活への不安も減ってきますし、リタイア後の60代は仕事でのプレッシャーから解放されることが、悪夢が減っていく理由なのではないでしょうか。

普段の生活上のストレスが悪夢になることもありますが、ストレスの強度が高くなっていくと、トラウマの夢になることもあります。これはPTSDや精神障害の診断の症状の1つとなっています。生活上のストレスの夢とトラウマの夢が、どのように違うかというと、トラウマの夢は同じ内容の夢を繰り返し見て、同じところで飛び起きます。一晩に複数回見ることもあります。しかも夢の内容は、体験したトラウマの内容とそっくりそのままのシチュエーション。ここがストーリーに変化が見られる生活上のストレスによる夢との大きな違いです。

性格による違いもあります。大まかに言って、心配性、神経質、不安度の高い人はよく夢を覚えていて、現実生活を積極的に過ごす性格の人はあまり夢を覚えていないことのほうが多い。

その理由を探るために、夢をよく覚えている人を「高想起群」、夢をあまり覚えていない人を「低想起群」とグループ分けして睡眠実験を行ったことがあります。人は眠っている間にレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返しますが、ストーリー性のある夢を見るのはレム睡眠のとき。この実験では、脳波計と眼電図を使って睡眠の状態を観測し、レム睡眠が終了して2分以内に被験者を起こして、夢の内容を語ってもらいました。というのも、レム睡眠終了直後に起こすと、普段は夢を覚えていない人でも、ほとんどの人が夢を思い出しやすくなるのです。

被験者が夢の内容を説明した言葉を記録し、「怖い」「襲われる」「逃げよう」などの不安語を抽出して数をカウントしていくと、高想起群は低想起群に比べて不安語の数が多いことがわかりました(図参照)。

夢には、起きている間に抱えている問題を整理したり、解決のヒントを見つけようとしたりする機能があるのではないかと考えられています。不安度の高い人は、起きている間にいろいろなことに不安を感じていて、眠っている間に脳の中にストックした記憶を掘り起こしながら、その問題を解決する糸口を見つけ出そうとしているのでしょう。

また、不安度の高い人は自分の心と体の状態にも敏感です。自分が見た夢について考えがちになってしまうのも、不安度の高い人が夢をよく覚えている一因なのでしょう。

■人に話せば、悩みの本質が見えてくる

悪夢への対処方法はいくつかあります。まずは、自分の生活の中の出来事を振り返って悪夢の元になっているものを類推し、現実の生活でのトラブルに対処すること。ただし、離婚調停など、自分だけではすぐに解決できない場合もあります。このように、ストレスの原因が長引く場合、解決するまで悪夢に耐え続けるというのも酷な話です。そこで、ひとまず短期的に見て、ここまで対処すると決めるなど、段階的な対処の計画を立てるのも有効でしょう。

次に効果的なのが、見た夢の内容や、あるいは現実に抱えている問題を人に話すこと。人に話すことは、客観化してストレス要因や悪夢を見た理由を分析し、さらには悪夢の要因となった現実の問題を解決しやすくする効果があります。

自分ではストレス要因を自覚していないことも多いですから、まず夢の内容を人に話してみるのがおすすめです。仮に自分で原因を自覚していたとしても「実は私、今、裁判を抱えていて」など、重たい話は人に言いにくかったりしますよね。でも、「こんな変な夢を見ました」と切り出せば、少し話しやすくなる気がしませんか?

私自身がカウンセラーとしてクライアントさんと接していても、いきなり本題からは入りにくい場合に、まずは夢の内容を話してもらうことがあります。現実のことではないから本人も話しやすくなって、饒舌になっていくうちに、ふと、本音を漏らしてしまう。そういう、いい効果があるのです。

■思い出すことで、怖くなくなることも

さらに、悪夢を見なくなるための効果的な方法はあるのでしょうか。その1つが、現実に自分が置かれている状況と、夢に出てきたシチュエーションや登場人物を重ね合わせながら、自分が不安に思っていることやストレスを感じていることを分析する方法です。夢に出てきている状況は会社なのか、家庭、学校なのか。また、自分が何歳くらいなのかが手掛かりになる場合もある。今の自分なのか、それとも若いときの自分なのか。

夢に出てくるのはだいたい、一番気になっていて未解決のことです。そして、問題に対処できたらその夢は見なくなる。つまり、自分の心の中で、これは完結したと感じると、その夢はもう見なくなるんです。

怖いけれども、悪夢を見た後、その内容を生々しく思い出すこともとても大切です。2つめの方法は「エクスポージャー」という行動療法の技法なのですが、目的は、夢で見た恐怖に何度もさらされることによって気持ちを慣れさせてしまって、その感情の強度を減らしていくこと。例えば怖かったことを人に話していると、少しずつ怖さが緩和されてくることはありませんか?

それは、話すことによって、助言をもらったり、支持してもらったりといったサポートの影響もあるけれども、人に話しながら自分の中でまざまざとイメージして思い浮かべることで、恐怖が緩和されているのです。すると、同じような悪夢を見たときに、前ほど感情が刺激されず、不快な気持ちを軽減させられるのです。

■「オチ」は自分で都合よく、書き換えてもOK

3つめの方法は、起きたあとに、夢の筋書きの最後を変えてしまうこと。「イメージリハーサルセラピー」といって、アメリカ睡眠医学会のガイドラインでは、薬を使わない悪夢の治療法の中でナンバーワンに挙げられています。これは、見た夢の内容を思い出していき、最後の結末をポジティブ、あるいは現実的なものに書き換えてしまうのです。例えば、「急いで走っていったけど、駅で電車に乗り遅れた」という嫌な夢を見たときに、そこで駅のホームで待っていたら近所のおじさんが「私の車に乗せていってあげるよ」と助けてくれたとか、あるいは臨時列車に乗れたとか、なんらかのプラスの結末を考える。

「イメージリハーサルセラピー」で重要なのは、嫌なところで終わらせないことです。というのも不安や、抑うつは、私たちの世界のとらえ方の認知の偏りによるところがとても大きいからです。悪夢も同様で、見た後に意識的にいいイメージや、望ましいプラスのイメージをつくりだすことによって、自分自身の心や考え方の偏りをより現実的な方向に修正するのです。これは認知療法、認知行動療法です。

もし悪夢を見るので通院したいと考える場合は、認知行動療法ができる臨床心理士がいるクリニックがいいのではないでしょうか。ただし、保険診療で受けられる心理療法として、うつ病、強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、PTSDがありますが、悪夢は保険適用外となります。

■よりよい方向へ、寝ながら脳が考える!

手軽にできるものとしては、夢日記もいいですね。私はカウンセリングの方法として、クライアントさんに夢日記をつけてもらうこともあります。どういうタイミングでどんな夢を見たかを、その時期に現実に起こった出来事とマッチングさせていくのです。

すると、悪夢ばかり見るクライアントさんは、ストレスを受ける出来事があるたびに悪夢を見る割合がはね上がり、問題が解決していくにつれてその頻度もどんどん落ち着いていくのです。例えば、裁判を抱えた人。事態が収束していくにつれて、だんだん悪夢も落ち着いていくことがあります。さらに、自分なりの納得のいく結論になれば、あまり夢も思い出さなくなったりする。夢日記には、書き出すことによって自分の心理状態を客観化できる、という効果があります。

なぜ夢を見るのか、夢にはどんな効果があるのか、というのは、専門家のあいだでも意見が分かれています。記憶にあるもののうち、いらないものを消しているという人もいれば、いるものを大事に取っておくために再処理していると考えている人もいる。あるいは、将来に向かってシミュレーションをしていると指摘している人もいます。

私自身は、夢にはいろいろな側面があると考えていて、そのうちの1つとして、シミュレーションしている、というのは妥当なのではないかと考えています。特に、私はクライアントさんの夢を聞くと、やはりそのように感じます。

例えばクライアントさんたちが快方に向かっているとき、実際の生活が平穏になっていくよりも先に、夢見のほうがよくなっていくことがあります。これはおそらく、心の中で、事実や現実に基づきながら、自分がよりよい状態になっていくシミュレーションをしているのでしょう。そして、それが現実になる。

嫌な夢を見ても、特に嫌なことが起こる予兆でもないし、気にしすぎることもありません。むしろ、現実がうまくいくように脳の中でシミュレーションしている、いい方向に向かうように努力している、と捉えたほうがいいと思います。

▼私の「よく見る夢、楽しい夢」教えます
仕事に関する夢
●仕事をしていた。通勤~仕事内容のすべてがリアルすぎて、目が覚めたときに自分が寝ていることに驚く。(30代女性)
●仕事がうまくいってハッピーな気分になったとき、目が覚めた。(50代男性)
家族に関する夢
●息子がスマホをしていて学校に行かず、私が激怒している。(40代女性)
●免許を取ったばかりの息子が運転する自動車に同乗している。(50代女性)
●亡き母と旅行に行った。(50代男性)
●亡くなった父の夢。懐かしかった。(60代女性)
友人・知人に関する夢
●高校時代の友人、クラブの友人が次々に出てきて、同窓会をしようという話になった。(50代男性)
●転校した教え子に会う。(30代男性)
●大嫌いな先輩が家を建てて、それを見に行った。(40代女性)
●振り向いたら懐かしい“友”がいた。笑顔で。(60代女性)
子供のころの楽しい夢
●高校のクラブ活動。(40代男性)
●小さいころ行った海で潮干狩り。(50代女性)
その他にも……
●芸能人と付き合っている。(30代女性)
●裸で、レストランで食事をしている。(50代男性)
●新しい恋をした。(50代女性)
●若い女性とのSEX。(60代男性)
懐かしい人との再会や理想の恋愛など、現実では難しいことも夢の中なら実現可能。「50代、60代と年を重ねるにつれ、楽しい夢が増える」と話す松田氏の言葉に、年を取る楽しみが増える。
※松田氏実施の調査結果をもとに編集部作成。

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西多昌規
精神科医
医学博士。早稲田大学スポーツ科学学術院准教授。東京医科歯科大学卒業後、スタンフォード大学医学部客員講師などを経て現職。
 

松田英子
東洋大学社会学部社会心理学科教授
臨床心理士。お茶の水女子大学大学院修了。著書に『夢と睡眠の心理学』『図解 心理学が見る見るわかる』など。
 

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(精神科医 西多 昌規、東洋大学社会学部社会心理学科教授 松田 英子 構成=吉田彩乃 撮影=向井 渉 写真=iStock.com)

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