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老害の初期症状「とにかく否定から入る」

プレジデントオンライン / 2019年2月21日 15時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/taa22)

いつの時代も若手を阻む「老害」。彼らが厄介なのは、自覚症状がないことだ。総合格闘家の青木真也氏は「自分自身が老害にならないように、とにかく下の世代を否定せず、信じるようにしている」という――。

※本稿は、青木真也『ストロング本能』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■誰だって「いまの若い者は」と言うようになる

いつの時代にも世代間のギャップはあります。社会に出たばかりのころは、上の世代から「いまの若い者は……」などと白い目で見られていた人も、20年も経てば下の世代に「いまの若い者は……」と言うようになるのです。これは世の常なので仕方ありません。

問題は、世代間で意見が対立したようなとき、どのようにジャッジすればいいかということです。会社などの組織に属していれば、意見が対立する場面も多々あるでしょう。

上の世代は、場数を踏んできた強みがあるため、自分の実績や成功体験を語りたくなります。「俺はこんだけやってきたんだぞ! どやっ!!」と言いたくなるもの。一方で、若い世代が生み出した実績やカルチャーについては「そんなものは認めない」「よくわからないからダメだ」と批判しがちになります。

僕自身も、気づけば、そうなってしまうことがあります。しかし、やはりそうなったら負けだなとつくづく思うわけです。年を取っているということは、若者よりも先に逝く確率が高いということ。そのため、将来があるのは下の世代なので、どんどん下を信じなくては、ダメな人間になってしまう、これが僕の意見です。

世代間で意見が対立したときのジャッジにおいて、頭ごなしに下の世代を否定してしまうのは損なことです。とくに新規プロジェクトや新しいアイデア出しをするときなどは、創造性や発想力がピークに達するのは前頭葉の働きがいい20~30代と言われていますから、上の世代が想像する以上の成果を期待できるのです。

■既得権でしか生きられないと、人生が不安でいっぱいになる

世代間の対立が表面化するような会社や組織は、一見、問題を抱えているようで、むしろ健全なのかもしれません。官僚的な体質の場合には、上の世代の力は絶対的です。でも、そうした組織で部下を持つ立場の人には、下の世代から意見を吸い上げることで得るものが大きいことに気づいてほしいと願います。

いつだって若者側に真実があります。格闘技やスポーツ界はそのあたりの真実がわかりやすい。いまの若い子たちがやっている技術のレベルは、僕が若いころに比べて確実に上のレベルです。スポーツはどんどん進化していきます。競技としてやっている以上、最先端が真実です。そこを否定し始めたら、成長はありません。

自分たちが成長するためには、新しいものに触れていかないといけないし、そこに触れ合える環境をずっと持っていないといけない。それができなくなってしまうと、気づいたら「老害ジジイ」になっているかもしれませんね。老害になった時点で終了です。老害は既得権で生きることしかできないから、人生が不安でいっぱいです。

懸命に芽をつぶそうとする老害もいますが、むしろ芽を育てたほうが楽しいと思うのは僕だけではないはず。若い子はどんどん出てきますから、全部刈り取るよりも、育てるほうが理にかなっています。どんどん若い子の才能をヘルプする、引き上げる。それが自然の摂理です。

■老害ジジイには「苦笑」と「ニヤニヤ静観」

一方で、自分たちの上に老害がいるときはどうすればいいでしょうか。

答えは簡単で「苦笑」です。苦笑するしかないです。そういう人はもう変わらないから仕方がないと割り切る。「変わらないものだ」と思って放置するほかないのです。

よく古い体質の会社を若い世代の力で変えようとがんばったりする人もいますが、あれほど無駄なことはありません。僕のオヤジとか、義母もそうですが、絶対に変わらない。以前は、老害と真正面から戦ったこともありますが、無理でした。だから、苦笑するのがいちばん効果的です。「俺はこんだけやってきたんだぞ! どやっ」と言ってくる老害には「あー、そうですね(ニヤニヤ)」と答えて、あとは静観していればいい。

最近、僕が老害にならないように心掛けていることがあります。それは、若い子たちがやっていることを「無条件ですごい」と思うようにすることです。「否定しない」というのは意外と難しい。だから、そこに思考は入れずに、まずは「素晴らしい!」「ワンダフル!」と思うようにしている。思考を入れて、「あいつは○○だからな?」と言い始めたら止まらなくなってしまうのが人間です。

■30代半ば。変化が怖くなってきた僕がやっていること

若い世代の台頭は、短いスパンで考えればこちら側が損することもあるかもしれませんが、結果的には得をすると信じています。真実は若者側にしかありません。高齢者や中年が若者を恫喝したら、その瞬間に何もかも終了だと思っています。

僕も2019年の5月で36歳になりますが、選手としての未来がなくなってくると、未来に対してアクションしづらくなってきます。守りに入って、大きく何かを変えることが怖くなってくる。それは成長が止まることを意味します。つねに新しいものを入れて挑戦していく姿勢こそが、未来への期待感を向上させるのです。「損得」ではなく、未来へのアクションがなくなった瞬間に、終了、「ジ・エンド」です。

練習でも、若い世代にやり方を聞いて参考にしていますし、どんどん出てくる新しい技術も、とにかく四の五の言わず身につけるようにしています。新しい調整法やトレーニング法も、ひと通り全部試してみます。「ここいらでいいや」と妥協した瞬間に、終わりです。取り入れるかどうかは別にして、とにかく新しいものに触ってみることで、価値観を固定しないよう意識しています。

■若い世代をリスペクトしないと未来はない

体力や気力は下がっていったとしても、これまでに培った経験や知識で「やりくり」することで、まだ上がっていけると思っています。

年齢を重ねても、能力は上がります。ただし、若い世代の技術や考え方を取り入れて、自分を変えていくことが条件です。若者をガンガンにリスペクトするくらいオープンな気持ちを持つことが、最前線に居続ける秘訣と言えるのではないでしょうか。

36歳になろうとするいま、身体のパフォーマンスは年々落ちてきています。そのうえ、練習量も少なくなってきています。若さが失われると、圧倒的な才能やパフォーマンス、感覚だけでやれるゾーンからは抜けてしまうでしょう。そうなったときに、帳尻合わせをすることになります。ただ最近思うのは、圧倒的な伸びがなくなって、いまあるもので「やりくり」するようになってからが、人生はおもしろいということです。

■今あるもので「やりくり」するのも面白い

格闘家やプロレスラーは、どういう技をどういうタイミングで繰り出すかを考えながら試合を組み立てていきます。「どういう入りでやろうか」「どういう距離感でやろうか」と考えるのですが、選択肢が無数にあるよりも、制限がかかったほうが、断然おもしろい。

『ストロング本能 人生を後悔しない「自分だけのものさし」』(青木 真也著・KADOKAWA刊)

練習もそうです。体力に任せて量で勝負するよりも、どうやってやったら効果があるかを考えるようになってからのほうがおもしろい。その「やりくり」がたまらない。やりくりでできるようになると、すごく冷静ですし、再現性も高い。そこに「理屈」が生まれるのです。理屈とは「物事の筋道」で、やはりそれはあったほうがいいわけです。

試合の組み立て方や練習に年齢相応の工夫を加えるのは、格闘技をやり続けるためです。格闘技はやり続けたら最強です。おじいちゃんになってもやり続けていたら、グレイシー一族のように伝説になっていきます。やればやるだけ得なのです。辞めたら損だから辞めません。

「辞めたら損だ」と胸を張って言えるものに出会えたらそれだけで幸せです。僕にとっての格闘技がそうであったように、あなたにもきっとあるはずです。人生レベルで辞めたら損だと思えるものをぜひ見つけてみてください。

(総合格闘家 青木 真也 写真=iStock.com)

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