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「よくない辞め方だとは思うけど…」「もっと早く知りたかった」 2万4000円で退職代行サービスを利用する若者たちにも言い分がある

RKB毎日放送 / 2024年4月17日 19時5分

本人に代わって退職の意思を会社に伝える「退職代行サービス」。今、若い世代を中心に利用が広がっています。新年度が始まったばかりの今の時期、特に依頼が多いそうです。なぜ、代行サービスを利用するのでしょうか。

「退職の代行?はぁ…」突然の電話 戸惑う人事担当者

退職を代行する企業「今回ご連絡させていただいたのは、御社でお勤めされています○〇さまの方からこちらに退職の代行の依頼がありまして、それに対してお伝えさせていただいております」

会社の人事担当者「退職の代行?」「はぁはぁ」

全国で退職代行サービス事業を展開する「SARABA」。「さらば」と読みます。1件あたりの依頼料は2万4000円で、本人に代わって人事担当者に連絡して退職の意思を伝えます。

SARABA 岡本大輝代表「突然の連絡で大変恐縮なんですけど、本日から出勤することが難しいようでして。〇〇さまのほうから御社宛に退職届や返却物などを郵送で送られるそうですので、そちらもご確認いただければと思います」

会社の人事担当者「初めてのケースなんですけど。そういうシステムがあるわけですか」

SARABA 岡本大輝代表「あとですね○○さまなんですけど、御社と直接の連絡を希望していないので」

会社の人事担当者「あぁ直接話したくないと(苦笑)」

SARABA 岡本大輝代表「突然のご連絡でしたが対応していただきありがとうございました」

退職代行サービスからの突然の連絡を企業側はどう受け止めるのでしょうか。

SARABA 岡本大輝代表「そうですね、初めて弊社かたの連絡を受けるという人事担当者の方も多いんですけど、退職代行自体は認知されているので、『とうとうきたか』という反応のほうが多いです」

新年度が始まったばかりの今の時期は、新入社員が「入社前に聞いていた話と違う」と感じ依頼してくるケースも多いといいます。一番多いのがゴールデンウイーク明けです。

26歳男性 7年務めた会社を「退職代行」で

福岡市に住む26歳の男性は「退職代行」を利用して約7年間勤めた会社を辞めました。

「退職代行」を利用した男性(26)「2年ほど前から辞めさせてくださいという話をしていたんですけど、ずっと引き止められていて」

男性は退職の意思を何度も上司に伝えてきましたが、まともに取り合ってもらえなかったといいます。

「退職代行」を利用した男性(26)「辞めるにしても『あなたが埋めた穴をどう埋めるの?』と言われて、僕も辞めるのに気を使うような感じで。ずっと辞められない状況が続いていました」

男性はストレスから夜眠れなくなりました。相談した友人や家族から教えられたのが「退職代行」でした。

「退職代行」を利用した男性(26)「あまりよくない辞め方だと思うんですよ正直。しっかり話をして辞めたかったという気持ちはあるんですけど聞いてもらえないのであればどうしようもないし。もっと早く知りたかったですよ正直。2年も待たなくてよかった」

21歳の女性 先輩から「代行じゃないと辞められないよ」

福岡市の会社に勤めていた21歳の女性も、退職代行を使って去年11月会社を辞めました。長時間労働や残業代の未払いが退職の理由でした。

「退職代行」を利用した女性(21)「代行を使わずに2か月前に『辞めます』と言ったとしても受け入れてもらえなかったりとか、別の店舗に異動という形でおさえられたという話を先輩から聞いていたので。『辞めるときは絶対お金が発生しても代行で辞めないと辞められないよ』という話を聞いていました」

退職代行業者のSARABAには月に300件ほどの依頼が来ていますが、その7割近くが20代と30代だといいます。

SARABA 岡本大輝代表「雰囲気的に言える状態ではない、人手不足と言われる中で『自分が抜けるともっと会社が大変なるのにお前は何を考えているんだ』とか言われてしまう。依頼者は、言いたいけど言えない、かつまじめな人が多いのかなと思います」

転職希望者は初の1000万人超え

総務省の労働力調査によると、去年1年間の転職希望者は1007万人で初めて1000万人を超えました。ただ、実際に転職した人は328万人で、転職はしたいけれど中々踏み切れないという人も多いようです。

代表は「退職代行、この世にないのが理想です」

SARABA 岡本大輝代表「どうしてもメンタルがやられてしまう方や、最悪の場合自殺を選択され方もいます。そういう方を退職に促すことでもっと人生いい方向に進むということはある話だと思います。本音を言えば、退職代行自体この世にいらないかなと思っています。自由に退職ができて、転職をどんどんしていって自分にあった仕事が見つかるというのが一番いいと思うのでそれが理想です」

広がる退職代行の利用「会社側だけの問題ではない」

一方、若者の間で退職代行の利用が広がっている要因について、「会社側だけの問題ではない」と話すのは、若者の心理に詳しい金沢大学・教授(融合研究域融合科学系)金間大介さんです。

金沢大学・融合研究域融合科学系 金間大介教授「今の若者は本音を語りません。その点で上司との間に大きなギャップがあるんです。若者には、上司や会社に自分の意思を表明することに恐怖心があってコミュニケーションをできれば回避したいという気持ちが大きくなっています。」

なぜコミュニケーションを避けたがるのか。金間さんは、「今の若者は行動する前に『心の声』を作動させてしまう」といいます。

金沢大学・融合研究域融合科学系 金間大介教授「SNSが普及する以前は、他者の気持ちは可視化されていませんでしたが、SNSによってコメント欄などで匿名の今まで分からなかった人の心が見えるようになりました。『心の声』が過剰に可視化された社会で生きているんです。それがリアル社会に反映されると、『この人にこんなことを言ったらこう思われるかな」と過剰に反応して、心を閉ざしてしまう。いわゆる被害妄想みたいなものが大きくなっている可能性があります。」

金間さんは、会社や上司ができることとして、先例をつくることをあげました。

金沢大学・融合研究域融合科学系 金間大介教授「若者に、『分からないことがあれば、聞いていいのだ』という先例を見せること。それは言葉で『聞いていいよ』ではなく、行動で示してあげること。そして、若者の行動に対して適宜フィードバックを返すこと。『こんなことを言ったら気落ちするかな』と思うのではなく、むしろ返すことで、若者は『この先輩は返してくれる人だ』と感じるんです。」

この二つを継続して行うことで、若者が上司や先輩に本音を話してくれるようになり、関係性の構築に繋がるといいます。

退職代行サービスの広がりは、世代間で広がるコミュニケーションの違いを図らずも映し出しているようです。

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