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"孤独ビジネス"はブルーオーシャンである

プレジデントオンライン / 2019年4月12日 9時15分

「孤独」から人々を救うビジネスは新たな成長産業になると孫正義社長は見ている。そこで、今後、ビジネスの重要なターゲットとなる単身世帯の消費動向とニーズを探ってみた。

■男女の「シングル化」が、消費を大きく変える

「情報革命によって『孤独』という悲しみを減らし、人々を幸せにしたい」

ソフトバンク創業者、孫正義氏が2010年の「新30年ビジョン」発表会で強い思いを込めて語った理念だ。ビジョンの策定にあたって孫氏はツイッターで「人生で最も悲しいことは何だろう?」と問いかけている。すると、1日で2500件を超える意見が寄せられたという。最も多かったのは「身近な人の死(21%)」、続いて「孤独(14%)」「絶望(11%)」。身近な人、愛する人に先立たれた人は「孤独」になり、そして絶望もまた人を「孤独」へと突き落とす。孫氏が注目したように、果たして本当に「孤独」から人々を救うビジネスは新たな成長産業になるのだろうか。

はじめに、「日本の人口構成の推移」について見てみよう。日本の人口は08年をピークに減少し始め、強烈な少子高齢社会に向かっている。15年と40年(推計)で比べてみると、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は26.6%から35.3%に拡大、一方で15歳未満の割合は12.5%から10.8%に縮小する見込みだ。一人暮らしの高齢者は、625万人から896万人に増えると予測されている。

加えて、野村総合研究所の上級コンサルタント、石原進一氏は「単身世帯と生涯未婚者の割合が増えること」にも注目する。「15年の単身世帯の割合は一般世帯総数の34.5%でした。それが40年には39.3%まで増加すると推計されています」。つまり、40年には日本の全世帯の約4割が「一人暮らし」になるわけだ。逆に、かつて一般世帯総数の4割以上を占めていた「夫婦と子」からなる世帯は15年時点で26.9%だったが、40年には23.3%まで低下すると見込まれている。

少子化社会対策白書(内閣府)によると、生涯未婚率(50歳までに1度も結婚したことのない人の割合)は、1990年頃から上昇し始め、15年時点では男性23.4%、女性14.1%だったが、40年には男性29.5%、女性18.7%に上昇すると見られている。およそ男性の4人に1人、女性の5人に1人が一生シングルとなるわけだ。

こうした社会の変化は新しいビジネスチャンスをもたらすのだろうか。

「世帯類型の変化が消費市場を変える。今はその大きな転換期」と話すのは、博報堂ソロもんラボ・リーダーで、『超ソロ社会』著者の荒川和久氏だ。「標準世帯といわれた夫婦と子世帯数は、10年の国勢調査で単身世帯数に逆転されています。夫婦と子世帯数の減少に呼応して、スーパーの売り上げは横ばい傾向になりました。一方、80年代以降ずっと、単身世帯数とコンビニの売上額はほぼ比例して右肩上がりに推移しています。主婦が家庭の消費を一手に引き受けていた時代から、『個人化する消費』の波がきていることは明らかです。今後はソロ消費市場が拡大することは間違いないでしょう」。

「ソロ生活者が使うお金なんてたかが知れている」と侮ってはいけない。荒川氏の試算によるとソロ生活者は「1人で一家族分消費する費目も多い」という。特に、ソロ男性は、外食(図1)をはじめ食費と教養娯楽費が高いことが特徴だ。家族より消費支出額が少ないといっても、ソロ生活者の絶対数が増えていくため、消費市場に与えるインパクトは大きいと考えられる。

■積極的に1人を楽しむというニーズ

こうした中、1人の孤独な時間を積極的に楽しむ人も増え始めているようだ。「たしかに単身世帯が増加し、孤立する人が増えているのですが、それほど寂しさを感じていない人も少なくないようです。というのも、スマホ1つでいつでも人とつながれるからです。むしろ必要以上に人とつながりすぎることに疲れてしまい、“積極的に1人になって楽しもう”という人が増えています。こうした現象は今後さらに顕在化してくると思います」(石原氏)。

昔から日本人はコミュニティを大切にし、グループ行動を好むと思われがちだ。だが、あなたは1人行動派(1人で行動するのが好き)かグループ行動派(誰かと一緒に行動するのが好き)かを聞いた野村総研のアンケート調査では意外な結果が出ている。20代~60代の過半数が「1人で行動するほうが好き」と答えているのだ(図2)。

この背景には現在のライフスタイルのインフラを築いた情報革命がある。次世代モバイル通信5Gのサービスが始まれば、ますます「1人の時間」が増えていくのは間違いない。孫社長は「情報革命で孤独という悲しみを減らしたい」と考えた。たしかにそれで幸せになれる人も多いだろうが、「孤独」そのものの受け取り方も変わり始めているのだ。

いずれにしても「孤独」が今後のビジネスの重要なワードになることは間違いなさそうだ。では、単身生活者の消費動向をどうつかまえればいいのか。また、どのようにすればニーズを呼び起こせるのだろうか。

「孤独な時間をどう使いたいのかは、人それぞれです。あえていうなら、積極的に楽しみたい人、リフレッシュに充てたい人、孤独から抜け出したい人――の3つに大きく分けられるでしょう。ですから、本人が1人の時間をどう感じるかによって、求めるサービスも変わる。このニーズを解読することがビジネスチャンスにつながります」(立教大学 経営学部の有馬賢治教授)

孤独ビジネスの多くは中小企業が手がけている。大企業のターゲットはまだファミリー層にあるからだ。だからこそ、ソロ生活者をターゲットとする孤独ビジネスはブルーオーシャンなのだ。

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石原進一
野村総合研究所 上級コンサルタント
 

荒川和久
博報堂ソロもん ラボ・リーダー
 

有馬賢治
立教大学 経営学部教授
 

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(河合 起季 撮影=榊 智朗、澁谷高晴、大沢尚芳)

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