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橋下徹"なぜ大阪維新はこんなに強いのか"

プレジデントオンライン / 2019年4月10日 11時15分

大阪ダブル選挙で当選確実となり、握手する地域政党「大阪維新の会」の松井一郎氏(左)と吉村洋文氏=2019年4月7日午後、大阪市中央区(写真=時事通信フォト)

「大阪都構想」の実現を掲げる地域政党・大阪維新の会は大阪府政・大阪市政における政権与党だが、従来の既得権者やメディアからの反発はいまも根強い。その中で4月7日に投開票が行われた「大阪ダブル・クロス選挙」では、事前予想を上回る圧勝を飾った。なぜ大阪維新は強いのか。同党の創設者である橋下徹氏が一部想像を交えつつ、内幕を明かす。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(4月9日配信)から抜粋記事をお届けします――。

(略)

■組織マネジメントの要諦、これが大阪維新の会「勝利の方程式」だ

蓋を開けてみれば、大阪維新の会の完勝だった。知事、市長の当選のみならず、府議会議員選挙、市議会議員選挙も歴史的な大勝だった。府議会は過半数確保。大阪市議会は単独政党による過半数確保が難しい24(行政区)もの中選挙区において、過半数まであと2議席の圧倒的第一党。堺市議会は全員当選。自民党は歴史的な議席減に陥った。

(略)

この大阪維新の会の選挙の強さは何か。ここには組織マネジメントの要諦が詰まっている。「戦略と実行」。使い古されたキーワードであるが、大阪維新の会はそれを学者のように机上の論としてこねくり回すのではなく、選挙の勝利という目標に向かって実践したのである。そして見事に結果を出した。そこで今回の大阪維新の会の勝利への方程式を、学問的・評論的抽象論ではなく、実例を基にした実践論として解説していきたい。

なお実例を挙げるにあたって、ドキュメントタッチで書いていくが、これは登場人物の心境を推察したり周囲からの情報を収集したりして、あくまでも僕の想像の中でフィクションとして構成したものだとご理解頂きたい。登場人物は皆、政治家たちであり、今回の選挙戦という公共にかかわる事柄について、その戦略を分析・評価するという公益目的で論じる場合には許容される範囲で書いたつもりである。文責は全て僕にある。なお、登場人物の敬称は略します。

■「ニューリーダー誕生」~ダブル・クロス選決断の瞬間~

(以下の場面描写は筆者・橋下による想像です)

「だからクロスなんですよ」

大阪市長・吉村洋文がそう一言、言い放った時に、大阪府知事・松井一郎は一瞬息をのんだ。

古民家を利用したおでん屋の一室。昔の三畳間の真ん中に気取りのない低めの木机が鎮座している。それを挟んで向かい合って置かれた少し足の付いた座椅子に2人は座っていた。お互いの酒臭い息が吹きかかる至近距離に、かれこれ2時間、2人の顔が向き合っていた。机の上には、松井が好むコロ(クジラの皮)・柔らかタコなどのおでん盛りや、ウルメいわしの丸焼き、エイひれ炙りの皿が乱雑に置かれていた。松井はいつものイモ焼酎水割りを片手にウルメいわしをかじっていたが、その手が一瞬止まった。

「その手があったか。それや!」

松井は声を出さずに、腹の中でつぶやいたが、松井・吉村の間柄では、その一瞬の沈黙が完全なる合意を意味していた。

2019年4月7日の、大阪府知事・大阪市長のダブル・クロス選挙、そして大阪府議会・大阪市議会議員選挙における大阪維新の会の大勝利は、この吉村の一言から始まる。それは吉村洋文という大阪維新の会のニューリーダーの誕生の瞬間でもあった。

そして選挙戦序盤、

「これをやられたら危ないですね。敵陣が一気に勢いを増しますよ。少し対応を考えましょう」

吉村は選挙運動を終えた深夜に松井にメールをした。

「吉村、よく考えとんな」

松井は、吉村のニューリーダーの資質を改めて感じた。

実は反都構想の敵陣には勝利の大きなチャンスがあった。しかし敵陣はそれに気付かず、あるいは気付いたとしても戦略の方向転換をすることができず、そのまま負けに至った。

これも組織マネジメントの反面教師として、非常に勉強になる教材である。逆に、大阪維新の会側は、敵陣が勝てるパターン、すなわち自陣が負けるパターンをしっかりと認識して、それに対する対応策をしっかりと用意しており、ここも非常に勉強になる教材である。

(略)

■しつこく続く「恨みつらみ」~これが政治の世界の現実だ~

投開票日の4月7日の数日前、大阪維新の会の選挙対策本部長・今井豊は、独特の泉州弁で、維新の会のメンバーに大号令をかけた。

「よっしゃ! 都島(大阪市都島区)の花谷(はなや)を、いてもうたらんかい! 国会議員とその秘書、無投票で当選した府議、それに情勢調査で当確(当選確実)の府議らは、都島に入ったれ!」

いてもうたらんかい! とは、いってまえ! やってまえ! というニュアンスである。それでも大阪以外のみなさんには分かりにくいかもしれない。やっつけてしまえ! という感じか。

この今井の風貌はいかにもの大阪泉州のおっちゃんである。メガネの奥の眼は優しく笑っているが、62歳とは思えない、顔の張りと色艶である。エネルギーが漲っている。100%の泉州弁でとにかく話が面白く人間関係を大切にするが、自分だけ走り過ぎて周囲がついていけないという事態も多々生じる。

(略)

こんな花谷が、今回の府議会議員選挙戦では苦戦している。公明党は全力をあげて花谷を応援しているが、有権者の維新支持のベクトルに勢いがある。今井は、このベクトルを的確に掴み、そして組織的な大号令をかけた。大阪維新の会は、この今井の大号令によって一気に動く。国会議員やその秘書、その他手の空いている維新メンバーや関係者が続々と都島区に入る。そして、全員一丸となった街頭演説を繰り広げる。

花谷は焦りに焦りまくる。

(略)

4月7日の投開票日。花谷落選。

花谷は民意を侮った。自分が活動する府庁舎・府議会、そしてお付き合いしている支援者の間という狭い狭い世界の中で、自分の感覚こそが絶対的に正しいと錯覚してしまった。しかし大阪の有権者は花谷の態度振る舞いにノーを突き付けたのだ。

話し合いがどうしてもつかなければ、相手をこのように選挙で落選させて、物事を進めていく。これが選挙であり、政治である。

(ここまでリード文を除き約2200字、メールマガジン全文は約1万3800字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.147(4月9日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【圧勝・大阪ダブル選(1)】なぜ大阪維新は強いのか? 自民・公明にも勝てる戦略・裏側を全部教えます!》特集です。

(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=時事通信フォト)

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