韓国の敵意に禁輸で反撃した安倍首相の腹
プレジデントオンライン / 2019年7月4日 9時15分
■どんな手を使っても日本に勝とうとする文政権
日本に攻撃をしかける韓国に対し、ついに安倍政権が反撃に出た。
7月1日、政府は韓国向けの輸出を厳しく規制すると発表した。実質的な禁輸だ。韓国人元徴用工らへの損害賠償問題への事実上の対抗措置である。日本の新聞各紙は大きく扱い、韓国メディアも「経済戦争だ」と報じている。
相手となる韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、反日感情をあおって政権を維持しようとしている。
これまでも韓国政権は慰安婦問題について世界各地で自国に有利なように説明し、たくさんの慰安婦像を作ってきた。さらに日本固有の領土である竹島を不法に占拠して自国の領土と主張してきた。
文政権では、元徴用工の問題のほか、自衛隊機への火器管制レーダー照射事件も起きた。
日本に敵意を示す。どんな手を使っても日本に勝とうとする。それが文政権である。日本との関係悪化を是正しようとしない韓国・文政権に対し、外交上の反撃を加えるのは当然である。
■「貿易戦争」との批判が国際世論に広まるリスク
6月28、29日の両日、大阪で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議(大阪サミット)では、安倍晋三首相と文在寅大統領との会談は見送られた。安倍首相と文氏は馬が合わないのだ。
その後、文氏はアメリカのトランプ大統領を韓国に招き、3回目の米朝首脳会談の調整役を買って出た。6月30日の午後にはトランプ氏と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を南北軍事境界線上の板門店で引き会わせ、歴史に残る会談を実現させてしまうのだから大したものである。
安倍首相はさぞかし悔しかっただろう。
この電撃的な米朝会談の直後に、安倍政権は韓国に対する「禁輸措置」を公表して文政権に対する反撃を宣言した。
そんな安倍政権に対し、7月2日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「トランプ流としか言いようがない手法で、効果を最大化しようとしている」「日本はルールに基づく多国間システムの最も信頼できる支持者だったが、それに背を向けようとしている」と批判した。こうした「貿易戦争」との批判が国際世論に広まる危険性には、注意すべきだ。
安倍首相は国際社会の中でうまく立ち回れるだろうか。
■韓国の主力産業「半導体製造」に対する輸出禁止措置
7月1日の日本政府の発表によると、4日から半導体の製造に欠かせない化学製品3品目の輸出を大幅に制限する。包括的許可から個別許可に変える規制で、半導体材料の実質上の輸出禁止措置だ。
半導体の製造は、韓国にとって主力産業であり、それだけに規制の経済的打撃は大きい。
さらに8月中には、輸出手続きの簡略化を中止する。韓国を安全保障上問題ない国(ホワイト国)のリストから外し、前述の3品目以外でも軍事利用できる製品と技術の輸出に厳しく許可を求め、輸出上の優遇措置を取らない。これも実施されれば、韓国にとって痛手となる。
各紙のうち、「韓国への対抗措置」のニュースにいち早く反応したのが、産経新聞の社説(主張)である。
■「日本相手なら無理が通ると考えるのはやめるべきだ」
7月2日付の産経新聞の社説は「日韓の信頼関係が著しく損なわれ、これに基づく輸出管理が困難になったという理由である」と書いた後、こう指摘する。
「抗議を重ねても馬耳東風を決め込む韓国に対し、法に基づく措置で対処するのは当然だ。国家の意思を毅然と示す意味は大きい」
「馬耳東風」という表現は、文政権のこれまでの態度と振る舞いをうまく示している。また「国家の意思を毅然と示す」との主張には、産経社説らしさがにじみ出ている。見出しも「対韓輸出の厳格化 不当許さぬ国家の意思だ」と分かりやすい。
続けて韓国に主張する。
「大阪の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)では日韓首脳会談も開かれなかった。文政権はこの現実を真摯に受け止める必要がある。日本相手なら無理が通ると考えるのはやめるべきだ」
やはり、文政権は安倍政権に対して「無理が通る」と判断しているのだろう。そうでなければ、これまでの日本への攻撃は理解できない。安倍政権はそんな韓国を相手に「貿易戦争」を始めようというのだから、それなりの覚悟を持って対処しなければならない。
■日本は韓国世論の心をつかむ必要がある
産経社説をさらに読んでみよう。
産経社説は「政府は先に韓国産水産物の検査も強化した。福島県産水産物などの輸入を禁じる韓国への事実上の対抗策なのに、表向きは食中毒対策と説明している。今回の措置も西村康稔官房副長官は『対抗措置ではない』としている」と指摘し、こう訴える。
「だが、韓国相手に曖昧な姿勢を取るべきではない。信頼関係が損なわれたというなら、信頼回復に必要なことを具体的に示し、韓国側に対応を迫るべきだ。そうした強いメッセージが必要である」
馬耳東風の韓国に強いメッセージを送ることには賛成である。ただ、「北風と太陽」という寓話があるように、強引な対応で迫れば文政権はかたくなになるだけだろう。日本は韓国国民の心をつかむ必要がある。つまり韓国世論を味方につけることである。
■反撃しなければ、さらなる攻撃を仕掛けてくる
産経社説に異を唱えるように掲載されたのが、7月3日付の朝日新聞の社説である。
「対韓輸出規制 『報復』を即時撤回せよ」との見出しを付けてこう書き出す。
「政治的な目的に貿易を使う。近年の米国と中国が振りかざす愚行に、日本も加わるのか。自由貿易の原則をねじ曲げる措置は即時撤回すべきである」
安倍政権が大嫌いな朝日社説の気持ちは分かるが、これまで日本は韓国に対して大人の対応をしてきた。やはりおかしいのは韓国だ。今回の朝日社説の主張には賛成できない。
朝日社説は「大阪でのG20会議で議長だった日本は『自由で公平かつ無差別な貿易』を宣言にまとめた。それから2日後の発表は、多国間合意を軽んじる身勝手な姿をさらしてしまった」とも書くが、ウォール・ストリート・ジャーナルなどの論調をまねた書きぶりに思える。
朝日社説は「確かに徴用工問題での韓国政府の対応には問題がある。先月に示した解決への提案は、日本企業の資金が前提で、日本側には受け入れがたいものだ」と書いたうえでこうも主張する。
「しかし、今回の性急な動きは事態を一層こじらせている。機を合わせるように、韓国の司法当局は日本企業の株式を現金化する手続きを一歩進めた。韓国は世界貿易機関(WTO)への提訴も検討するといい、報復の応酬に陥りかねない」
実際、日韓関係はさらに悪化するだろう。報復の応酬を繰り返すかもしれない。だからと言って反撃しなければ、文政権はさらなる攻撃を仕掛けてくるだろう。
■冬季五輪の女子スケートの名シーンを思い出したい
最後に朝日社説は「日韓両政府は頭を冷やす時だ。外交当局の高官協議で打開の模索を急ぐべきである。国交正常化から半世紀以上、隣国間で積み上げた信頼と交流の蓄積を破壊してはならない」と訴える。
「頭を冷やす」は別として、この訴えは正論だ。信頼と交流の蓄積を維持することは重要である。
そこで思い出すのが、昨年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪のスピードスケート女子500メートルだ。あの氷上のシーンである。今年1月29日付の記事「照射事件で“異常行動”を続ける韓国の事情」の最後でも取り上げた。
金メダルを獲得した小平奈緒選手が、多くの観衆が見守るなか、敗れた韓国の李相花(イ・サンファ)選手の肩を抱きかかえながらゆっくりと観衆の前を滑った。
あのとき、韓国メディアは小平選出と李選手のこれまでの友情を詳しく紹介し、抱擁シーンを大きく報道していた。
テレビを見ていて沙鴎一歩も、目頭が熱くなった。日本と韓国の選手がお互いの力を認め合った結果だった。反日感情など皆無だった。
■「正当な反撃」と「韓国国民の把握」とのバランスだ
しかし外交は感情では対応できないことがほとんどだ。安倍政権は「目には目を、歯には歯を」と反撃し、産経社説は毅然とした対応を主張する。もちろんこうした行為は外交上、必要だろう。否定するつもりはない。
韓国の内情に詳しい知人のジャーナリストは「日本との関係悪化を憂慮し、『反日をあおる文大統領が韓国を駄目にする』などと文政権を批判する韓国メディアも多い」と話している。
日本人も韓国人も同じ人間である。しかも韓国は同じアジアで、日本の隣国でもある。基本はお互いの心情だと思う。日本側が韓国人の心の内をつかんで理解していけば、きっと韓国もそれなりに応じてくれるはずだ。
外交には正当な反撃に加え、交渉相手国の国民の気持ちを把握する努力がいる。両者のバランスが欠かせない。
繰り返すが、安倍政権が文在寅大統領率いるいまの韓国政権を説き伏せるには、韓国世論に訴えて韓国国民を味方に付けることだ。
(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=朝鮮通信/時事通信フォト)
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