社説:韓国総選挙 後戻りせぬ対日関係を
京都新聞 / 2024年4月12日 16時0分
4年に1度の韓国総選挙が投開票され、尹(ユン)錫悦(ソンニョル)政権の保守系与党「国民の力」が惨敗した。国会で少数派のねじれ解消を目指したが、反転とはならなかった。
総選挙は小選挙区(254議席)、比例代表(46議席)で争われ、革新系最大野党「共に民主党」は、系列政党を含め半数超えの175議席で勝利した。「国民の力」は系列を含め108議席となった。
2022年に就任し、27年までが任期の尹大統領の「中間評価」との位置づけだったが、大敗で求心力低下は避けられまい。
敗因は、国民との意思疎通をおろそかにしてきた尹氏の政治姿勢にあるとみられている。
生鮮食品などの価格が高騰する中、明確な経済改善策を打ち出せず、海兵隊員の事故死を巡る不透明な人事や、庶民感覚とずれた失言などが打撃になった。大学医学部の定員増を巡っても研修医の大量ストライキが長期化し対立。対話姿勢のなさが「独裁的」だとして中道層の支持を得られなかったようだ。
野党が掲げた「政権審判」の訴えに、多くの国民が賛同したといえる。前大統領に近い元法相が比例代表用に結党した「祖国革新党」が、一定の批判票を集めて割り入ったことも影響した。
ただ、肝心の政策論争は深まらず、非難の応酬になった感は否めない。韓国では超少子化や行きすぎた学歴社会、住宅高騰など、日本と共通の課題がより深刻化している。議論の停滞は、政治不信を助長しかねない。
注視すべきは、今後の対日政策だ。尹氏は元徴用工訴訟問題で解決策を発表し、東京電力福島第1原発の処理水放出にも理解を示すなど対話による対日関係の改善に注力してきた。
「屈辱外交」だと批判してきた野党陣営が主張をいっそう強め、見直しを迫る可能性は高い。与党内での結束も揺らげば、従来のような対応は難しくなるだろう。
中国の軍拡や北朝鮮の核・ミサイル問題などの情勢を踏まえても、韓国との連携や協力は欠かせない。次期大統領選に向け、政権が変わっても合意が後退したり、対話が途絶えたりしない重層的な関係の積み上げが重要だ。
日米韓は昨年8月、首脳会談の定例化で合意し、意思疎通の「制度化」を図った。来月に予定する日中韓首脳会談を含め、日韓はあらゆる機会をとらえて不可逆な関係を深めたい。
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