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社員より能力低いのに呑み込み早い社長の技

プレジデントオンライン / 2019年9月4日 6時15分

小山 昇氏

仕事の隙間で行う勉強は、やること自体が目的化しがち。何のための勉強かを、常に自問することが大切だ。

■社内で最も能力が低いのは、社長

単純業務や複合的業務の遂行能力を測る「エナジャイザー」というテストがあります。人事の参考にするために全社員に受けさせていますが、社内で最も能力が低いのは誰だと思いますか?

じつは、社長である私です。数値は、社内で最も能力が高い社員の約半分。単純に言うと、私の能力では優秀な社員の半分の量しか仕事をこなせません。もともと能力が高いほうではありませんでしたが、加齢も手伝って、近年はとくにひどい。

しかし、新しいことを覚えるときは、いまでも私が早い。社員より能力は低いのに、なぜ呑み込みが早いのか。それは、やらないことを決めているからです。私の能力では、何でもかんでも覚えるのは無理。そのかわり大事なものだけ集中して勉強するので、いまだに20代の社員に負けないのです。

たとえば、英語には一切手を出しませんでした。大学は「This is a pen」レベルで卒業できましたが、いまもほとんど変わりません。毎年、海外に研修旅行に行きますが、そのときは通訳を同伴します。不得意なものについては、自分で勉強するよりお金で解決したほうがずっと生産性が高い。

そのかわりに勉強したのはITです。90年代前半は海外に視察に行き、フランスにあるIBMの研究所でデジタルの映画を観たり、バルセロナでインターネットバンキングの仕組みを教えてもらったりしていました。

1990年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)のニューヨーク支店を視察したときは、Eメールを初めて見て驚きました。海外との通信はテレックスが中心の時代ですから、パソコンで文章のやり取りができる技術は衝撃的だったのです。ちなみに口頭で説明を受けたので、私は3年ほど「いいメール」だと勘違いしていた。当時はEメールを知る日本人が少なかったので、しばらく恥をかかずに済みました(笑)。

何度も研修に行ったのは、IT分野が好きだったわけではありません。表計算ソフトは、1980年代にマイクロソフトの「マルチプラン」、ロータスの「ロータス1‐2‐3」に挑戦しましたが、2回とも挫折。3回目にリコーの「マイツール」を学んで、ようやく自分で財務会計の計算ツールをつくれるレベルに達しましたが、基本的に得意でないことは否めません。

■社長のかばん持ちを1日させる目的

好きでもないのに必死に勉強したのは、どうしてか。それは、勉強の目的が稼ぐことだからです。

Getty lmages=写真

ニューヨークで「いいメール」を見た後は、これは売れると判断して、NTTに問い合わせて第二種通信業者になりました。1993年、慶應義塾大学の村井純先生が開いた日本初のインターネットセミナーに参加したときもそうです。90分のセミナーのうちネットにつながったのは5分だけで、「いまつながっています」と言われても、正直よくわからなかった。ただ、時代を変えそうな雰囲気があったので、翌年、ドメインを取得してネットワーク事業を始めました。まさに稼ぐために勉強していたのです。

いま教養ブームで、歴史や哲学の解説書が売れているそうです。でも、私は教養にまったく興味がありません。教養があれば「自分はいろんなことを知っている。だから馬鹿にされない」と安心できるかもしれませんが、経営者であれば、安心を買うより、会社の利益になることに投資をすべきです。

一般のビジネスパーソンも同じです。資格をたくさん取って満足している人は、もう勉強すること自体が目的になっています。そんな勉強をいくら重ねても、自分の稼ぎは増えないし、お客様の役にも立たない。勉強するなら、まず目的を明確にして、それにつながる勉強だけに絞り込むこと。能力が低くても、そうやって勉強すれば成果が出ます。

稼ぎにつながるという点でスキル以上に勉強したいのは、世の中の動き。世の中が変わればお客様のニーズや市場環境も変わる。その動きを理解しないと戦略を立てられません。

ただ、私はニュースを見ないし新聞も読まない。処理能力が追いつかないから、端から捨てています。ニュースを見た妻が食事のときに話してくれる内容で十分です。

私が重視しているのは、現場に近いところの動きです。わが社は内定者に1日、社長のかばん持ちをさせます。目的はいろいろありますが、その1つはリサーチです。かばん持ち中、内定者に私への質問をさせるのですが、その内容で内定者の傾向をつかみます。

具体的に言うと、2016年入社組から、仲間から抜け出すことを嫌がるようになりました。たとえば内定者それぞれに書店の実地調査をしてもらうと、一人ひとり帰ってくるのではなく、何人かで待ち合わせて一緒に帰ってきます。

こうした傾向について「最近の若いやつは」と嘆いても仕方がありません。稼ぎたければ、むしろ傾向に合わせて会社の仕組みを変えるべきです。実際、セールス部門の業務を個人戦から3人一組のチーム戦に変えたら、いい成績をあげるようになりました。

若者の気質が変化していることは、本でも学べるかもしれません。ただ、実際に自分の目で見ないと実感できないし、変化に対する具体的なアクションも起こしにくい。机上の空論ではなく、生の情報を取って活かしてこそ、本当の意味での勉強ではないでしょうか。

▼「やらない」と決めた勉強
・代理がきく・「馬鹿にされない」「安心」だけがメリット・稼ぎが増えない
英語の勉強
歴史・哲学などの「教養」
ニュース・新聞の視聴・購読
資格試験の勉強
▼必死でやった勉強
・稼ぎに直結
ITの勉強
世の中の「現場に近いところ」の動き

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小山 昇(こやま・のぼる)
武蔵野 社長
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒。85年武蔵野入社、89年から現職。720社以上の中小企業経営者の指導を手がける。国内で初めて日本経営品質賞を2度受賞(2000年、10年)する優良企業に育てる。

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(武蔵野 社長 小山 昇 構成=村上敬 撮影=的野弘路)

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