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ムダな会議を「成長時間」に変える秘密の裏ワザ

プレジデントオンライン / 2019年9月6日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM

無駄な会議が多くて仕事に集中できない時は、どうすればいいのか。法政大学の田中研之輔教授は「腹をくくって会議と向き合えばいい。拘束時間を使って『フロー状態』に入れば、会議以上の生産性が発揮できるはずだ」という。その方法とは——。

※本稿は、田中研之輔『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(日経BP社)の一部を再編集したものです。

■「目の前の仕事」に没頭できているか

様々な問題から目を背けずに解決のために遂行する力、ビジネスプロダクティビティを養うには、どうすればいいのでしょうか。

私は、これまで様々な業界で働くビジネスパーソンと対話してきましたが、プロティアン・キャリア(※)を形成できているビジネスパーソンと、そうでない人では、明確な差が一つあると気づくようになりました。

※社会や職場の変化に応じて柔軟にキャリアを変えていく、「変幻自在なキャリア」のこと。

それが、目の前の仕事に没頭できているかということです。そして没頭できているか否かは、職種や年齢、職歴などには全く関係がないことも判明しました。

没頭することがいかに重要か。

それを説いたのが、行動心理学者のミハイ・チクセントミハイ教授です。彼は著書の中で、56歳で不動産業務に関わるあるビジネスパーソンの語りを、次のように紹介しています。

「私は、行動するのをやめて本を読みながらただ裏庭でおとなしくしているというような引退をするつもりはありません。目的を明確にして、仕事に出かけていきたいのです。学び続けること、私を成長させ、意欲をかきたててくれる新しい体験をし続けることは、ほんとうに重要です。新しいスキルを学ぶこと、新しい体験をすることが好きなんです」
——ミハイ・チクセントミハイ著『フロー体験とグッドビジネス』(世界思想社、p.79より抜粋、著者編集)

■職場で不満を感じるのは「フロー状態」に入ってないから

この証言には、プロティアン・キャリアを形成する大きなヒントが隠されています。ビジネスで成果を出す人は、折に触れて自分自身に適切な負荷を掛け、自分なりの限界を乗り越えようとします。

このとき、飛躍的に伸びるための集中した状態が、ミハイ・チクセントミハイ教授の掲げる「フロー(没入)状態」なのです。ミハイ・チクセントミハイ教授は、このフロー状態をビジネスの現場でも効果的に取り入れる必要があると説いています。

業務で高度のチャレンジをすると、フロー状態が生まれます。そしてフロー状態に入ると集中し、幸福を感じ、前向きの感情が生まれるのです。

フロー状態で仕事をすることが、ビジネスプロダクティビティの向上に直結するのです。例えば外科医は、長時間集中力が途切れることなく、難易度の高い手術に立ち会います。ミハイ・チクセントミハイ教授は、これは外科医がフロー状態に入っているから最高の手術を施すことができると解説しています。

フロー状態で課題に向き合い、解決策を見つけだすこと。これがビジネスプロダクティビティを養うのです。

もしあなたがいま、職場で不満を感じているなら、それは恐らくフロー状態に入れていないからです。フロー状態に入れる仕事を生みだすことが、ビジネス資本を蓄積するには欠かせません。

■貴重な時間を奪う「会議」という存在

けれど、日本の職場でビジネスパーソンがフロー状態に入ろうとすると、いろいろな“妨害”が生じます。中でも大きな問題は「会議」ではないでしょうか。

ムダな会議を極力減らして、自分の仕事に向き合う時間を確保する。

そのために私たちは、会議とどのように向き合えばよいのでしょうか。

ビジネスパーソンの多くは日頃、貴重な時間の多くを会議に縛られています。このムダを削(そ)ぎ落とすことができれば、仕事の生産性は大きく変わるはずです。

私はこれまで、上場企業からベンチャー企業まで、様々な会社の社外顧問を10社以上務めてきました。それぞれの会議にも、いつも参加しています。

最もムダのない会議を開いていたA社では、必要なメンバーだけが会議に参加し、15分もしくは30分であっという間に議論を終えます。

一方、一つの議題で2時間以上延々と議論を続けるB社のようなケースもありました。会議があっという間に終了するか、ダラダラと続くのか。A社とB社の違いは、会議に対する意味付けと、認識の差にあります。

■「会議を開くこと」が目的になっていたB社

A社はなるべく会議を実施しないようにしています。そのうえで仮に会議を開くなら、事前にゴールを定めて時間も厳守する。参加者もあらかじめコントロールして、徹底的にムダを省いて、最大限のアウトプットを出すべく議論が交わされます。

当然、参加者の全員が事前に資料をチェックしています。会議が始まる前に情報が共有されているので、本質的な議論から始めることができます。対してB社は、そもそも会議を開くことが目的になっていました。毎回、会議のゴールを設定せず、ひたすら同じような議論が繰り返される。会議の時間を延長しても、結局ゴールにはたどり着きません。

望ましいのはA社のやり方です。あなたがもしB社のような会議に時間を拘束されているなら、徹底的に改善すべきです。

例えば、次の3つのポイントを実践してはどうでしょうか

・時間を設定する
・出席者をコントロールする(議題に関係のない人は招集しない)
・ゴールを明確に設定する

これらをしっかりと固めて、会議の参加者がそれぞれ高い集中状態で議論をすること。会議でもフロー状態を生み出すことができれば、確実に結果は付いてくるでしょう。

■会議中に「一人フロー状態」に入る方法

「そんなことは分かっているけれど、自分一人ではどうにもならなくて」という声もよく聞きます。

私も、そういった事態によく直面します。会議の進め方に異議を唱えれば風当たりも強くなる。せっかく生産的な会議に変えようとしているのに、なぜか冷たい目で見られたりもします。そんな場合は、腹をくくって会議と向き合い、「会議以上」の生産性を発揮するようにするのです。

どんな会議でも、最近ではパソコンなどを持ち込めます。そこで会議の発言に耳を傾けながら、気づいたことを、どんどんとパソコンやメモ帳などに書き込んでいくのです。会議中に求められている仕事のハードルを、自分の中で勝手に上げていく。スキルとチャレンジの関係性をより高次元に設定することで、自分一人だけでもフロー状態に入れるようにするのです。

会議の準備ができているビジネスパーソンであれば、いつ話題をふられても、明確な意見を伝えることができるはずです。

そのうえで、会議の内容を進展させる生産的な視点や、関連する視点を整理し、毎回、その場で質の高いアウトプットを生み出していく。会議で時間を拘束されるからこそ、そこでしかできないことを進めていく。そう、発想を変えてしまうのです。

具体的に、どのように実践すればいいのでしょうか。フロー状態に入れるプロティアン会議術の実践方法について伝授しましょう。

■拘束時間を逆手に取って成長する

例えばあなたが、新規事業の会議に出席しているとします。参加者は8人で、3つのプロジェクトについて発表がある予定です。普通なら会議が始まる定刻に来て、その場で発表を聞いて、会議が終われば自分の仕事に戻ります。

田中研之輔『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(日経BP社)

けれど、プロティアン人材なら、会議前に発表内容について最新動向をチェックしています。そのうえで、自分のリサーチ内容と経験を突き合わせて発言するのです。

会議前に発表内容が共有されていなくても、目の前でプレゼンを聞きながら、限られた時間の中で徹底的にリサーチし、会議が終わる頃にはその内容をブラッシュアップした案を提案する。

これくらい集中して会議で頭を動かしていれば、フロー状態に入れるはずです。参加者にも好影響を与えますし、何より会議の拘束時間を最大限に生かしているので、自分の成長にもつながります。

会議のムダを疑い、不満を改善への原動力にする。そうすれば、決してムダな会議に邪魔されることはなくなります。

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田中 研之輔(たなか・けんのすけ)
法政大学 キャリアデザイン学部 教授
1976年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員を務める。博士(社会学)、専門はキャリア論。大学と企業をつなぐ連携プロジェクトを数多く手掛ける。著書は23冊。『辞める研修 辞めない研修』(共著、ハーベスト社)、『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(筑摩書房)、『覚醒せよ、わが身体。』(共著、ハーベスト社)、『丼家の経営』(法律文化社)、『走らないトヨタ』(共著、法律文化社)など。このほか、現在は民間企業の取締役や社外顧問を14社務める。 Twitter→@KennosukeTanaka

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(法政大学 キャリアデザイン学部 教授 田中 研之輔)

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