異性の多い職場で働いている人は離婚しやすい

プレジデントオンライン / 2019年9月17日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi‐Studio

※本稿は、山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

■お見合い結婚から恋愛結婚へ

結婚における出会いの場の役割を考えてみましょう。未婚率が上昇していることに対する有力な説明には、結婚のメリットだけでなく、出会いの機会も減ってきているのではないかというものがあります。結婚に大きなメリットを感じて結婚に前向きであったとしても、出会いの機会に乏しければ、なかなかゴールに至らないためです。

出会いの機会がどのくらいあるのかを、データで直接検証することは難しいのですが、結婚した人々がどのような出会いから結婚に至ったのかについては、定期的に調査されています。

出生動向基本調査によると、かつてはお見合い結婚が主流でした。図表1は、お見合い結婚と恋愛結婚の割合が時代とともにどう変化してきたかを示しています。調査の区分上、こういう分け方をしていますが、お見合い結婚には愛がないなどという話ではなく、お見合いや結婚相談所経由の結婚をお見合い結婚、それ以外を恋愛結婚と便宜上呼んでいます。なお、合計が100%にならないのは、出会ったきっかけを報告していない回答があるためです。

■お見合い結婚は約5%にまで減少

この調査によると、戦前はお見合い結婚が70%近かったそうですが、一貫して減り続け、2010~2014年では約5%にまで減少しています。対照的に、恋愛結婚は戦前には15%もありませんでしたが、2010~2014年には、約88%に上っています。

お見合い結婚が減ってきている理由としては、人間関係が希薄化して世話を焼く地域や職場の人がいなくなった、プライバシー意識の高まりから他人に出会いを仲介されること自体を好まなくなった、イエ意識が薄まり、親が結婚について子どもに指図しなくなったことなどが挙げられていますが、一方で、お見合いのあり方も変化しているため、本当のところについては必ずしもよくわかっていません。

■幼なじみ婚は現実には少ない

恋愛結婚といっても、その出会いのきっかけはさまざまです。図表2にあるように、調査ではもう少し詳しく出会いのきっかけを聞いています。これによると、一番多いのは、友人・兄弟姉妹を通じて今の結婚相手に出会ったというもので、およそ31%に上ります。ついで多いのは、職場や仕事で出会ったというもので、これは28%ほどです。三番目に多いのは学校で、約12%の夫婦が該当するようです。そして、街なかや旅先で、サークル・クラブ・習い事で、といったきっかけが続きます。

幼なじみ同士が恋愛・結婚するというのは、アニメや漫画でしばしば見かける設定ですが、実際には1.6%に過ぎません。アニメや漫画には、願望や夢が投影される部分もあるのでしょうが、現実にはかなり少ないんですね。

■職場での出会いが3割

出生動向基本調査によると、職場や仕事での出会いから結婚に至った夫婦は3割近くに上るようです。

統計上は別立てになっていますが、アルバイトも広い意味では仕事に当てはまるとすると、友人・兄弟姉妹を通じた出会いを上回り、職場は結婚につながる最も有力な出会いの場となっていることがうかがえます。

職場での出会いが結婚につながりやすいのは、日本に限ったことではありません。アメリカ、オランダといった国々でも10~20%程度の夫婦は職場での出会いが結婚のきっかけだったようです。やはり、一緒に過ごす時間が長いため、恋愛関係に発展しやすいのかもしれませんね。

■異性の多い職場は、職場結婚も多い

独身男性・独身女性にとって、恋愛や結婚のチャンスが増える職場はあるのでしょうか。一概に言うのは難しいのですが、異性の多い職場はそれだけ出会いのチャンスが多いと考えられるかもしれません。

デンマークの研究では、職場に異性が多いと、結婚率が上がるかどうかを検証しています。つまり、あなたが女性であれば男性が多い職場、男性であれば女性が多い職場で働くことによって、結婚相手が見つけやすくなるのかどうかを分析したのです。

その結果、独身者が結婚する場合、職場に異性が多いと、その結婚相手が職場の人であることが多いとわかりました。しかし、職場に異性が多いからといって、独身者が結婚しやすくなるわけではないようです。

どういうことでしょうか。職場に異性が多ければ、結果的に職場の人と結婚することが多くなりますが、職場に異性が少ないからといって、結婚の可能性自体が小さくなるわけではないのです。異性が少なければ、友人のつてを使うなりして他の場所で結婚相手を見つけているためです。パートナーを求めて活発に婚活しているならば、職場に異性が多いか少ないかは、結婚するかどうかにとって大して問題にならないのですね。

この分析結果は非常に面白いのですが、これがこのまま日本社会に当てはまるかどうかはちょっとわかりません。定時に仕事が終わり、就業後にも遊びや出会いのために時間を取れるデンマークのような労働環境ならば、職場に異性が多かろうと少なかろうと、うまくパートナーを見つけることができるでしょう。

しかし、日本のビジネスパーソンにとって、残業したり休日出勤したりするのは珍しいことではありませんから、職場外で出会いを求めて活動する時間をあまり取れないかもしれません。もしそうであれば、日本では、異性の多い職場のほうが結婚に至りやすいことになるでしょう。

■「不倫」が起きやすい職場がある?

異性が多いことで影響を受けるのは、独身者に限りません。実は、異性の多い職場で働いている人は、離婚しやすいことが、同じ研究の中で明らかにされました。職場の同僚がすべて異性である職場で働いている人は、異性が全くいない職場で働いている人と比べて、離婚する確率がなんと40%も高いそうです。

職場に異性が多いと、離婚が増えるのにはいくつか理由が考えられます。まず考えられるのは、職場でより魅力的な相手と出会って、その人と結婚するために離婚するというものです。この研究によると、離婚した人がのちに再婚した場合、再婚相手が同じ職場の人である割合は20%ほどに上ります。初婚の人の結婚相手が同じ職場である割合は10%ほどですから、かなりの数の人が、職場の同僚と新たに結婚するために離婚しているようです。

次に考えられるのは、不倫が配偶者にバレるケースです。職場で出会った異性と結婚する気はなくとも不倫してしまった場合、それが配偶者に知れると離婚につながります。このケースがどれくらい多いのか、このデンマークのデータではわからないのですが、いかにもありそうな話です。

面白いことに、職場に異性が多くても離婚になりにくい条件が一つあります。それは、夫婦とも同じ職場で働いていることです。同じ職場にいる配偶者の監視の目が光っているということなんでしょうか。

独身者が恋愛・結婚のパートナーを探し求めるのに比べると、既婚者で積極的に次のパートナーや不倫相手を探して回るという人はあまり多くありません。そのため、職場が異性との出会いの主要な場になっており、職場での異性の多さが、不倫や離婚に結びついてしまっているようです。

■カップルの2割がマッチングサイトで出会っている

お見合いは結婚成立に重要な役割を果たしてきましたが、現代ではその役割は小さくなりました。職場や、友人・兄弟姉妹を通じた出会いが、現代における結婚の主要なきっかけですが、実は、ここで見落としている重要な出会いの場があります。

そう、マッチングサイトです。残念ながら、信頼性の高い統計がないため、日本におけるマッチングサイトの重要性は十分にわかっていませんが、多くの国々では、近年急速にその重要性を増してきていると考えられています。アメリカにおいては男女のカップルの2割がマッチングサイトを通じて出会っているようです。

■マッチングサイトは結婚の増加につながった

マッチングサイトは出会いの量を大きく増やし、出会いを求める人々が、より多くの潜在的なパートナーを探すことができるようにしました。仕事で忙しい人は、職場や友人を通じた出会いに期待していると、いつまでたっても自分の望むような人と出会えないと感じているかもしれません。マッチングサイトは、デートするまでの時間を大幅に短縮し、出会いの機会を増やしたのです。

山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(光文社新書)

では、マッチングサイトは実際に結婚を増やしたのでしょうか。アメリカの研究では、マッチングサイト利用の指標の代わりとして、インターネットの普及率に注目しました。この研究によると、インターネット利用機会の拡大がマッチングサイト利用を促し、結婚の増加につながったそうです。アメリカでは1990年代後半から2000年代半ばにかけて、ブロードバンドインターネットが普及しました。実際の普及のスピードには州による違いがあり、ある州では急速に、別の州ではゆっくりとブロードバンドインターネット接続が利用可能になっていきました。

この時期に州ごとの結婚の変化を見てみると、ブロードバンドの普及が急速に進んだ地域ほど、21~30歳の白人における結婚率が上がっています。仮にブロードバンドが全く普及しなかった場合と比べると、結婚数は、13~33%増えたそうです。

■出会いの場はオンラインにシフトしている

ブロードバンドの発展と、マッチングサイトの利用が結びついていることはデータ上も確認された一方、人々がオフラインで友人や同僚と過ごす時間が減少していることも明らかにされました。出会いの場が、オフラインからオンラインへと次第にシフトしているのです。

興味深いことに、マッチングサイトの恩恵を最も受けたのは同性愛者であるようです。アメリカでも日本でも、同性愛に対しては少なからず偏見があるため、同性愛者はなかなか自分の性的指向を明らかにすることができません。その結果、出会いの機会がかなり限られていますが、マッチングサイトでは容易に自分の潜在的なパートナーと出会うことができます。アメリカでは同性愛者のカップルの7割近くが、オンラインでパートナーと出会ったそうです。

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山口 慎太郎(やまぐち・しんたろう)
東京大学経済学部・政策評価研究教育センター准教授
1999年慶應義塾大学商学部卒業。2001年同大学大学院商学研究科修士課程修了。2006年アメリカ・ウィスコンシン大学経済学博士(Ph.D)取得。カナダ・マクマスター大学助教授、准教授を経て、2017年より現職。専門は、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」。

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(東京大学経済学部・政策評価研究教育センター准教授 山口 慎太郎)

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