山本太郎の言葉が「国民の心」を動かしたワケ

プレジデントオンライン / 2019年11月13日 11時15分

政治家・れいわ新選組代表 山本太郎氏

2019年7月の参院選では比例代表で約228万票を獲得した、れいわ新選組代表の山本太郎。自身は落選したが、特定枠で重度障害者2人が当選を果たした。なぜ、多くの国民は彼の言葉に動かされたのか。東京新聞・望月衣塑子記者がその秘密を探った。

■ひとりで吠えても世の中は変わらない

【望月】こんにちは。本日はよろしくお願いします。実はお互い初対面ではないんですよね。私が前回の参議院選挙の取材で、山本さんにぶら下がって一言いただいたり。

【山本】「一言よりも、うち(れいわ新選組)から出馬しませんか」とも言ってるんですけどね。

【望月】そうでしたね(笑)。届け出の日も、「立候補はこれからだから、一緒に行きませんか」って。

【山本】もしそうなったら、今ごろ議席が増えていたかもしれません。あれ、僕たちって同年代ですよね?

【望月】私が1975年生まれで、太郎さんが……。

【山本】74年です。

【望月】太郎さんが1つ上ですね。ダンス甲子園に出場して、そこから人気俳優として活躍されているというイメージがあります。

【山本】僕は16歳から芸能界にいたから、同世代の人と仕事をすることがなかったんです。自分が年取ってきて、同世代の作家やディレクターがだんだん出てきたんですけど、同世代で、新聞記者として映画にもなる人というのはほかにいませんよね。

東京新聞社会部記者 望月衣塑子氏

【望月】いやいや(笑)。日本のメディアがあまりにも萎縮しちゃっているので、異質感は出ているのかなと思います。

【山本】望月さん、萎縮しませんね。

【望月】私は菅義偉さんに聞いているだけですから、天皇陛下(当時)に手紙を出したりしてきた太郎さんに比べれば全然! 逆に私は、ネット上でも拡散されていた太郎さんの「ひとりでどれだけやってもガス抜きにしかなれていない」という演説にすごく心を動かされました。私がひとりで菅さんに質問することでキワモノ扱いになっても、それって世の中の怒りを持っている一部の人たちのガス抜きにしかなっていないよねって。私だけが吠えていたって世の中は変わらない。みんなと連携していかないと。

■「ぶれようがない」としか答えようがない

今回の組閣にしたって、派閥を完璧に無視したまさにお友達在庫一掃内閣です。メディアも国民もなめられてしまっている時代に入って、キワモノ扱いのままでいいという段階でもなくなってきています。太郎さんの演説は「野党はどこかでネゴし合っているんじゃないか」みたいなことを含めた、身内への叱咤激励のようにも感じたんです。

太郎さんを見ていてすごいなと思うのが、ぶれないところです。太郎さんを自分の都合の良いように使いたい、何か発信してもらいたいという声もたくさんあると思うんですが、太郎さんの「社会のなかで切り捨てられる人たちの側に居続ける」という姿勢は変わらないじゃないですか。

【山本】というよりも「ぶれようがない」としか答えようがないですね。自分たちの支持者に対してどのような恩返しができるかということが非常に重要だと思うんです。それを愚直にやり続けているのが自民党であったりする。応援してもらった企業側に利益を渡すとか、減税してあげるとか、友達の学校に用地を安く使えるようにしてあげているという点では、いわば与党も真面目に仕事しているわけ。でも、そんなことやられたら国全体がぶっ壊れるんじゃないかという話なんですね。全体的に良くならなきゃ経済は再生しないし、人々の暮らしも良くならない。

みんな同じ船に乗っているのに、一部の人たちだけ良くなったって困るじゃないかという思いが強いです。いつ自分が困った状態になるかは誰もわかりません。特に僕なんて、まさか落ちると思っていませんでしたし、参院選で僕の分の議席は取れず、議員宿舎から追い出されてから、次の家を探すのにこんな苦労すると思わなかったし。

【望月】つまり大家が「山本太郎さんに貸すのはちょっとまずいわ」みたいになったりするんですか?

【山本】僕の名前を聞いて、一発で駄目と言う人もいると思います。政党要件を満たしているからっていつまで続くかわからないし、追い出すときに面倒くさそうだなみたいな。

【望月】(笑)。もう家は決まったんですか?

【山本】もうすぐ決まりますが、人が住める感じじゃないです。

【望月】それまではどちらで?

【山本】ビジネスホテルで暮らしていました。荷物はトランクルーム的なところに預けて、たまに自分の服を取りに行ったりしながら。でも、お金も限られているので大体いつも似たような格好しかしていないですね。下着だけ着替えたり(笑)。

■魂のプレゼン「消費税いらない」

【望月】太郎さんは総理大臣になりたいとおっしゃっていました。

【山本】それについては、自分が総理になりたいとか、憧れがあるというわけじゃなく「総理にならなきゃ何もできない」という話なんです。

20年以上もデフレが続いて、生活も労働環境もぶっ壊されて、もう本当にぎりぎりで生きている方々がこの国に非常に多くいらっしゃるわけですよね。この状態に対して「じゃあ政治は何をやっていくんだ」ということを考えたとき、もちろん立憲主義に基づいてということも重要なんですけれども、そのメッセージではごく一部の人にしか言葉が届かない。まず、「あなたの生活を前より楽にしたい」ということを掲げて戦っていく以外ないだろうと。そう考えたとき、毎日払っている消費税を変えるしかないと思ったんですよ。

消費税を廃止にすることによって、中小零細企業は息を吹き返します。税金の滞納は消費税が6割を占めています。8%が10%になるというだけでも、首をくくらなきゃいけない人がいる。日本がこれだけ経済的に後退したのは経済政策の間違いの連続じゃないかなと思うんですよ。

「こんなに消費を冷え込ませて人々の生活を壊すような消費税はやめる、もしくは減税する。加えて、ちゃんと国が財政出動して、みんなの生活を引き上げます」というリーダーがいるんだったら、僕は捨て石になってでも応援するつもりです。ただ、それがなかなか難しそうなので、私が総理になる以外にないじゃないですかというだけの話なんですよね。

【望月】私が以前、北海道へ講演に行かせていただいたとき、お話を伺った現地の中小企業の経営者の方が「太郎さんは多くの人たちが感じている切実な危機感を代弁してくれている」とおっしゃっていました。初めは原発問題から入られたと思いますが、そこから飛び込みの演説などをいろいろな場所でやるようになって、現場の声を血肉化していったからこそ、今の太郎さんがあるんだと思うと、本当に強いなと感じます。

■説明用のパワーポイント資料が5万ページある

【山本】もちろん原発問題は自分がこのキャリアをスタートさせることになったきっかけですし、心配は最初のころと変わりません。でもその話って、聞いてくれる側が聞こうとする姿勢になっていないと無理じゃないですか。伝わらない、聞いてもらえない。でも例えば、「原発を廃炉するのにどれぐらいの金額かかると思いますか?」みたいに話すと、足が止まるんです。やっぱりお金は一番の議論になりますよね。じゃあ政治の話を聞いてもらう入り口として、お金の話が一番良いじゃないかと。なかでも、当事者意識が一発で引き寄せられるのが消費税です。

【望月】すでに議論が始まっていますが、否応なしといわれる社会保障費の1兆円純増は、消費増税なくしてやれるものなのでしょうか?

【山本】そもそも消費税が社会保障に全額使われるというイメージがありますけど、使われるのは一部だけじゃないかという話です。日本は97年の増税で98年の本格的デフレに突入しましたし、2014年の増税のときにも、もっと不安定になっておかしくなかった。あのときは恐らく中国、アメリカの経済が好調で、輸出に支えられた部分があります。

でも、今回は、そういう後ろ盾がないわけですよね。一体どんな状況になるのか、想像するのも怖いぐらいです。そんななかでとにかく増税をする、支出を削るみたいなことを徹底していったら、これもう大不況になる以外にないじゃないかという、当たり前の話なんですよね。もちろん税で賄うという部分もあるけれども、私は新規国債の発行もやっていくべきだという考え方です。もちろん国も財政出動を全くしていないというわけじゃないんですけれど……。(秘書に)あれ出るかな。民主党政権時代からの税収とか、国債の発行の量がグラフになっているスライド(画面にグラフを表示する)。

【望月】説明用のパワーポイント資料が5万ページあるって本当ですか。

【山本】整理したら2万ぐらいになると思うんですが、整理していないから5万ぐらい残っています。

【望月】いろんな質問が飛んでも、わかりやすい資料がピッと出てくる。

【山本】だって山本のしゃべりだけで信用するわけがないじゃないですか(笑)。公債の発行額だけで見たら、一時期ちょっと増やしたときはありますけど、減ってきているんですね。これだけ見ても、財政出動が減っていっているのがわかります。

一方で税収自体は、90年代から大きくは変わっていない。飛び抜けた財政出動をしているわけではなく、国債発行まで絞っちゃってる状態だから、安倍政権は緊縮といえます。リーマンショックのときには民主党が国債で52兆円ぐらいの財政出動をしていますが、本当なら今だってこのレベルの財政出動を続けてもいい状態なんです。だって日本はずっとデフレなんだから。

「デフレが20年以上続く国があるのか」って総理に聞いたら「ございません」とおっしゃってね。そりゃそうや、どの国も成長している。僕の政策では「日本がギリシャになる」なんてでたらめな指摘も受けますが、ユーロと円では、通貨の独自性が全然違う。こちらは日本銀行というものがあるんだから、最終的に日本円が払えなくなることはありません。

写真=AFLO(左)、時事通信フォト(右)
菅義偉官房長官に激しく質問をぶつけ続ける望月氏。一挙手一投足が国民に注目される。半生を書いた自著の『新聞記者』は、映画化され、大ヒットした。 - 写真=AFLO(左)、時事通信フォト(右)

【望月】まだまだ財政出動が足りないし、しているように見せて、していないじゃないかと。

【山本】そういうことです。ほかにもですね、参議院調査情報担当室というところが、消費税を廃止し、20兆円以上のものまでは国債の発行で賄うという前提で、シミュレーションをしてもらったんです。そしたら初年度は単価が5%落ちるんですよ。でもそこから物価は上がっていくんですね。これは多分いろいろものが売れて、経済も成長していくということ。

消費税をやめて、3年目でインフレ率がピークに来る。これでも1.67%なんです。そこから先はまた下がっていくんです。下がっていくということは、消費税を廃止にするだけではなく、それ以外の財政出動をしていかないと、ほかの当たり前のように成長しているような一般的な国、先進国のいろんな国と同じような成長率というのはつくり出せないんですね。財政出動、まだまだ全然行けるぜ、という話なんです。

【望月】しかも、シミュレーションでここまでしっかり出せているということは、政府もわかっている。

【山本】そう。これ以上借金してどうするんだという批判もありますが、借金の額の問題ではないのですよ。

■尊敬する人は小沢一郎さん

【望月】太郎さんが人間として、または政治家として尊敬している方はいらっしゃいますか?

時事通信フォト=写真
「原発問題が原点」と語る山本氏。メディアが参議院選挙期間中、れいわ新選組の取材を自主規制するなか、「お金の話」も織り交ぜ、多くの心を動かした。 - 時事通信フォト=写真

【山本】この世界に入ってからということだったら、最初に委員会でご一緒した共産党の山下芳生さん。私が陛下にお手紙を渡した数日後の委員会で、自民党の佐藤ゆかりさんが私から質問権を無期限にはく奪しようとしたんです。でも山下さんは「彼がそういう行動に出たことと、委員会の質問権というのは全く別。これは議員としての役割だから、担保されなければならない」と。

なるほど、私に対して何か思いがあるわけではないのに、議員としての権利を守るために戦うという人もいるんだなと思いました。あと、質問の仕方ですね。すごくスマートにぶったたきにいくんですよ。

それと、国民民主党の森裕子さん。森さんは11年5月の文部科学省前で行った放射線量年間20ミリシーベルトへの抗議行動に駆けつけて、抗議に参加していた福島のお母さんたちを応援したんですよ。当時政府側、というか与党側の人間だったのに。

こういうことをする人って、今はいないじゃないですか。尊敬する人といえば小沢一郎さんもそう。自分の政治生命を終わらせようとした昔の同僚議員のことも恨まない。政権交代のために手をつなぐ。すごいなと思いますね。

■メディアへの圧力とそれに対する懸念

【望月】ちなみに太郎さんは、今のメディアに対して思うことは?

【山本】そうですね、望月さんはご自身もできることをすべてやられている方だと思うのですが……。メディア全体が商業主義にのっとってやっていかなきゃならない部分があるのは確かなので、踏み込めること踏み込めないこと、いろいろあるとは思うんです。でも原発事故のときには「そうは言ったってさ!」と感じることが多くて。現場(記者)の方が頑張られているのはわかるんですけど。実際、圧力はあるんですか?

【望月】官邸の覚えがめでたい人が大手マスメディアのトップに就いたり、逆に見せしめのように降板させられたりということは実際に起こっています。かつてのように戦えない空気は確かにできつつありますね。

【山本】それは怖いですね……。

山本太郎(政治家・れいわ新選組代表)
1974 兵庫県宝塚市に生まれる。
1990 高校1年生時に『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「ダンス甲子園」に出場し、芸能界入り。
1991 映画『代打教師 秋葉、真剣です!』で俳優デビュー。その後、テレビドラマ『ふたりっ子』(96年)、『新選組!』(2004年)。映画『バトル・ロワイアル』(00年)、などに出演。『光の雨』『GO』で01年度日本映画批評家大賞助演男優賞を、『MOONCHILD』『ゲロッパ!』『精霊流し』で03年度ブルーリボン賞助演男優賞を受賞。
2011 3.11後、4月より反原発活動を開始。
2013 参議院議員選挙に東京都選挙区より出馬し、当選。
2014 政党「生活の党と山本太郎となかまたち」に合流し、共同代表。党はその後、自由党に改称。
2019.04 自由党と国民民主党の合流には加わらず、独自で「れいわ新選組」を旗上げ。
2019.07 参議院議員選挙に比例区より出馬、99万2267票を得るも落選。れいわ新選組の得票率が2%を超えたことから、政党要件を満たした党代表に。
望月衣塑子(東京新聞社会部記者)
1975 東京都に生まれる。小学校3年生のときに演劇を始め、6年生のときに『アニー』の主役を演じた。その後、業界紙記者の父や、フォトジャーナリストの吉田ルイ子の著書『南ア・アパルトヘイト共和国』の影響を受け、記者を志す。
2000 慶應義塾大学を卒業。中日新聞東京本社(東京新聞)に入社。
2004 社会部の東京地検特捜部担当記者として「日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑」の一連をスクープ。
2014 武器輸出や軍学共同の取材を開始。日本における武器輸出の拡大や軍事研究費の増加について報じた「武器輸出及び大学における軍事研究に関する一連の報道」が「第23回平和・協同ジャーナリスト基金賞」の奨励賞。
2017 菅義偉内閣官房長官の記者会見に出席し始め、安倍晋三総理への「忖度」があったと疑われる森友・加計学園問題などについての質問で注目される。
2018 2017年メディアアンビシャス大賞特別賞を受賞。「マスコミの最近のありように一石を投じる望月記者の活動ぶりを示した」。
2019 半生をつづった自著『新聞記者』を原案にした同名の映画が公開。

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望月 衣塑子(もちづき・いそこ)
東京新聞社会部 記者
1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、東京・中日新聞社に入社。経済部などを経て社会部の遊軍記者となる。森友学園・加計学園問題以降、菅内閣官房長官への鋭い質問が注目される。近著は『新聞記者』。2児の母。

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(政治家・れいわ新選組代表 山本 太郎、東京新聞社会部 記者 望月 衣塑子 構成=いつか床子 撮影=長谷英史)

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