仕事のできる人は、「メールに即レス」をしない
プレジデントオンライン / 2019年11月6日 11時15分
※本稿は、中川路亜紀『あなたのメールは、なぜ相手を怒らせるのか?』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
■夜書いたメールは送信せずに、朝読み返す
仕事が山積してしまい遅くまで残業しているあなたに、取引先の担当者から進行中の仕事にあれこれと注文をつけるメールが送られてきました。あなたが緻密に考えたプランがこれでは台無しになってしまいます。
頭にカッと血が上り、夜の9時にカタカタとメールを打つあなた。そのメール、そのまま送りますか?
やめたほうがよいでしょう。ぐっとこらえて、一晩寝かせてみてください。朝の太陽の下で読んでみて、おかしくなかったら送ってもいいと思います。
私も経験がありますが、夜は集中力が高まっているためか、相手の言葉に過剰に反応してしまうことが少なくありません。時間をおいて読み返してみると、余計なことを書きすぎていることがよくあります。
■「絶対に」「明らかに」は使わない
たとえば、強調語(非常に、とても、大いに)はかなり削れます。「これはこうです」と書けばいいところを、「これは絶対にこうです」「これこれのことを考えても明らかです」などと言いつのってしまいがちですが、思い切って言葉を削っていくと、冷静で知的な文章に変わるのでやってみてください。例を挙げてみましょう。
ご提案のようにすると、注意事項の一部が一面で表示されなくなってしまうので、絶対によくないと思います。利用者の安全のためにはどれも大変重要な内容ばかりですので、すべて一面で表示したいと考え、ずいぶん苦労して文章を練ってきました。今さらこのような変更をご提案いただくのは心外です。
【一晩寝かして書き直した良い例】
一つ懸念しますのは、ご提案の内容を入れますと、注意事項の一部が一面で表示されなくなるということです。利用者の安全のためにはどれも重要な内容ですので、できればすべて一面で表示したいと考えております。
相手と意見が対立しているときはなおさら、言葉は簡潔に、過不足のない表現になるように推敲(すいこう)を重ねたほうがよいでしょう。
重要な返信は、必ず読み返してから返信する、場合によっては、下書きに保存して時間をおいて読み返すくらいの慎重さをもっても、損はありません。
■「了解です!」だけでも許される場合がある
メールには、重さがあります。その重さは、信頼関係ややりとりする頻度によって軽くなっていく傾向があります。初めての人には重く、目上の人にも重く、気心の知れた関係では軽く、やりとりの回数が増えると軽くなっていきます。
時と場合によっては、チャット並みに軽いメールも許されます。たとえば、同年輩の人とメールで打ち合わせの日程を調整し、日時・場所の確認のメールがきたら、宛名も自分の名前も挨拶もなしで、
と返すことも失礼に感じられなくなってきました。
「了解です」よりもへりくだった言い方にしたければ、「承知しました!」もつかえます。
■チャット風の返事には返信引用を使う
相手から、ちょっとしたことの確認で「これこれしても差し支えないでしょうか」と聞かれたときは、
というのもさわやかです。気をつかう相手へのかしこまったメールで「!」「(笑)」などは違和感がありますが、軽いメールでは特に失礼とは感じられなくなっています。
ただし、このようなチャット風の返事は返信引用をつけているときに限定したほうがよいと思います。返信引用がなくて「了解です!」と言われても、メールを大量に受け取っている相手は「この人は何を了解してくれたんだっけ?」となってしまうことがあるからです。
また、この場合も署名は忘れずに。メール冒頭で名乗らない場合、受信するソフトのアカウント表示方式によっては誰のメールかわからなくなってしまうことがあるからです。
■「お願いします」を減らすテクニック
メールを書いていると、特定のフレーズが重複するのが気になって悩んでしまうことがあります。「お願い致します」「ありがとうございます」などは、どうしても重複しがちです。回避するために、いくつかの表現を引き出しに入れておくとよいでしょう。
たとえば、日程調整のメールでは、次のような内容が含まれる場合が多いでしょう。
・20日までにご回答をお願い致します。
・どうぞよろしくお願い致します。
このとき、真ん中の期限のところを「ご回答ください」とするのも一つの方法ですが、ちょっと強い文章に感じられるかもしれません。相手によってはもう少していねいな書き方にしたい場合もあると思います。そんなときは、
とします。「幸いです」の代わりに「助かります」とすることもできます。この「助かります」は、いろんな言い換えにつかうことができる便利なフレーズです。
最初の「お願い致します」のところも、
とすると、「お願い致します」というフレーズをつかわずにすみます。
■「ありがとうございます」をスマートに伝える方法
仕事では、相槌(あいづち)代わりかというほど、「ありがとうございます」というフレーズをつかいます。その調子でメールを書いていると、「ありがとうございます」だらけになってしまうでしょう。たとえば、次のようなフレーズを盛り込みたいものの、「ありがとうございます」が多くなりすぎるというときは、どうしたらよいでしょう。
・たいへん参考になりました。ありがとうございます。
・いつもご指導をいただき、ありがとうございます。
最初のフレーズは、「資料を拝受致しました」と書いてもよいでしょう。「拝受」は「受け取る」の謙譲表現で感謝の意味はありませんが、「拝んで受け取る」という文字から感謝や敬意が感じられます。
真ん中のフレーズは本旨の部分なので、「ありがとうございます(ございました)」をつかいます。どんなふうに参考になったか、具体的な言葉を添えるとなおよいでしょう。ここまでで十分ですが、いつも助けてくれる相手にさらに感謝の気持ちを表したい場合は、どうしたらよいでしょう。
このように「感謝しております」「感謝申し上げます」などのフレーズをつかえば、お礼の言葉を重ねることができます。「重ねて御礼申し上げます」とまとめる書き方もあります。
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コミュニケーション・ファクトリー代表
1956年神戸生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社勤務を経て、1998年にコミュニケーション・ファクトリーを設立。ビジネス文書、メールなどビジネスコミュニケーション関連の企画・著述・講演活動を行っている。著書に、『気のきいたモノの言い方ができる本』『気のきいた短いメールが書ける本』『気のきいた手紙が書ける本』(すべてダイヤモンド社)、『ビジネスメール即効お役立ち表現』(集英社)などがある。
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(コミュニケーション・ファクトリー代表 中川路 亜紀)
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