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43歳で無収入"子供部屋オバサン"の危険な末路

プレジデントオンライン / 2019年12月24日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hanapon1002

実家の「子供部屋」で暮らす独身の男性を指す「子供部屋おじさん」というネットスラングが注目を集めている。パラサイトシングルを取材している子育てアドバイザーの鳥居りんこさんは「子供部屋おじさんは収入があることが多いが、『子供部屋おばさん』は家事手伝いで無収入のケースが多い。その場合、親亡き後は生活に困窮してしまう」という——。

■パラサイトの果ての「子供部屋おじさん」「子供部屋おばさん」

12月18日、東京春闘共闘会議と東京地方労働組合評議会が「最低生計費調査」の結果を発表した。それによると、都内で単身者(25歳)が普通に生活するためには、生活費の節約を重視した「北区モデル」の男性で月額24万9642円、女性で同24万6362円という結果が出て、都内の最低賃金1013円では足りない実態が浮き彫りになった。

つまり、最低賃金では都内での一人暮らしは困難だということになる。

「少なくとも最低賃金は1500円でないと、普通に暮らすことはできない」という今回の結論に東京地方労働組合評議会などは関係各所に働きかけるということだが、やはり政府がいくら景気は良いと発表しても、個人の所得が増えなければ好景気という実感を抱くことはできないのだ。

また、こんな調査もある。総務省統計研究所「親と同居の未婚者の最近の状況(2016年)」によれば、実家暮らしをしている35~54歳の独身者は国内に約446万人いる。

近年、中高年のひきこもりが大きな社会問題となっているが、それとは別に、ひきこもりではないものの実家にパラサイト(寄生)し続けている中高年男性または女性の存在が話題になっている。彼らは、小さい頃から慣れ親しんだ実家の自分の部屋(勉強机や家具、書棚も当時のままということもある)にいるので「子供部屋おじさん」「子供部屋おばさん」と呼ばれる。ネット上には、「こどおじ」「こどおば」との略称も存在する。

■家事手伝い(無収入)な「子供部屋おばさん」の危険な末路

この「子供部屋おじさん・おばさん」はどれくらいの人数なのかといった調査は今のところない。ただ、前出の「実家暮らしをしている35~54歳の独身者:約446万人」という数字は、とりわけ都市圏では個人の経済状況の悪化と共に、実家を出たくとも出られないという層が増えているということの裏返しと言えるのではないか。

もちろん、このパラサイトシングル=「子供部屋おじさん/おばさん」の中には、「自分は親の介護をしている」「実家が通勤圏内にある」「生活費などを潤沢に親に渡している」、さらには「計画的な貯金あるいは将来の具体的な目標のため」といった事情があり、必ずしも「依存」とは呼べない層も多数含まれることを考慮に入れる必要がある。

写真=iStock.com/RyanKing999
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999

危惧されているのは「中高年になっても、親の経済力に頼っている人」たちである。つまり、収入がゼロかわずかにしか得ていない人々で、「子供部屋おじさん」より「子供部屋おばさん」に多いと思われる。女性は男性と比較すると低年収であることが多く、さらに“家事手伝い”という職業に就くことが許される社会背景があるからだ。彼女たちの実家が裕福であれば別だが、それでなければ親亡き後は生活保護となるリスクがあり、結果的に「社会保障財政を強く圧迫することになるのではないか」と警鐘を鳴らす人も多い。

■70代の親と同居する43歳の就職氷河期世代の子供部屋おばさんの事例

筆者はパラサイトシングルと呼ばれる方たちの取材も多数行っているが、その声の中でも、多いのが「家賃問題」だ。

先述した「北区モデル」(=生活費の節約を重視したもの)では、家賃は5万5000円と算出されているが、この家賃を負担するだけの収入がない人がいる。

恵子さん(43歳・仮名)は都内近郊で70代の親と同居。小学生から、そのまま同じ子供部屋に住み続けている。いわゆる就職氷河期世代で大学を出たものの、希望の企業からは内定がもらえず、そのまま「家事手伝い」という“肩書”に移行したのだという。

現在、仕事は「単発バイトはたまにする」(恵子さん)ということだが、家事・食事全般は親に任せきり。スーパーに買い物に行く時に一緒に出掛けて、その手伝いをする程度だそうだ。本人は苦笑気味に「子供部屋おばさんって私のことですかね?」と言っている。

先日、筆者はこの母親から「誰か(伴侶として)良い人はいないか?」という相談を受けたが、本人は「現状が快適すぎるので、結婚する気がない」とにべもない。

「親もやがて介護状態になると思うんです。だから、親も本音では私が一緒にいてくれるほうが良いと思っているんですよ」と筆者に語った。

恵子さんが言うとおり、老年期に入り、わが身が介護状態になると、やはり子供がそばにいてくれると親としても安心な面があるだろうし、その選択には家族それぞれの事情があるだろう。

しかし、筆者はこの恵子さんのような主張をする「大人になっても子供部屋に住み続けている“無収入”な人」の親から相談を受ける度に、次の5点についての“家族会議”が必須だと痛感するのだ。

■実家の親の収入・支出・貯金を知っておかないと自分がヤバい

【大人になっても子供部屋に住み続ける“無収入”な人がすべきこと】

その1 将来的な経済的問題点(主に収入面)の話し合い

現在、健康保険に加入している40~64歳までの人は健康保険料とあわせて介護保険料を納めている。これは、40歳は「老年期への準備段階」に入った、と国が認定しているともいえるだろう。

そこで、子供が40歳という年齢に達する前後に「人生の棚卸し」をどの家族であってもやっておいたほうが、「予後」が良いように思っている。「どの家族でも」という注釈を入れたのは、介護は「お金」とセットの事案のため、前出の恵子さんのように収入がほとんどない人ほど、経済的な支柱である親が元気なうち、話し合いが必要という意味である。

すなわち、高齢に近づいている親がわが家の財産がどうなっているのかを家族に開示することによって、壮年期(31~44歳)になっても親の扶養下にある人は、「親が亡くなった後、自分(子供)自身はどのくらい収入を確保していけば、暮らしが成り立つのか」などの具体的シミュレーションが必須になる。

写真=iStock.com/MangoStar_Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MangoStar_Studio
【大人になっても子供部屋に住み続ける“無収入”な人がすべきこと】

その2 現時点での家計費等(主に支出面)についての話し合い

もし、現在、親が生活の全権を担っているために、子供自身が、家計がいくらかかっているのかを把握していない場合には、それを家族みんなで共有しておくことが大切だ。意外と知らないケースは多い。

家賃、固定資産税、水道光熱費、食費、医療費、雑費など生活する上でどうしても必要となる支出金額を明示。同時に、収入(財産)を開示し、現状維持(子供が働かない状態で家にいる)がどの程度できるかを把握できる。このことにより親亡き後の具体的家計費も把握しやすくなるだろう。

■親亡き後、無収入の子供部屋おばさんはどうなるのか

【大人になっても子供部屋に住み続ける“無収入”な人がすべきこと】

その3 社会的制度についての話し合い

この国で生きるために必要経費となるものに税金や社会保険料などの支払いがある。これは、通常一人暮らしをしたり、結婚したりして親から独立すれば、自然と身に付く知識だが、親と子供が同居し、収入がない状態だと、これらの知識がすっぽりと抜け落ちてしまうことが少なくない。

例えば、健康保険や介護保険、または火災保険などのわが家の保険事情。子供自身の年金支給予想額。源泉徴収票や所得証明書などの存在。さらには所得税や市民税などの税金……。

学校などでは詳しく教えないため、これらの存在を知らない「子供部屋おじさん・おばさん」も多い。よって、世の中のしくみとして、現実の「社会制度」を知らせることが必要となる。親亡き後は、これら行政手続きの一切を自分でやらなければならないという事実を周知しておくべきである。

写真=iStock.com/Rawpixel
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【大人になっても子供部屋に住み続ける“無収入”な人がすべきこと】

その4 生活力をつける話し合い

先述した恵子さんの場合、家事も料理もすべて母親が担当している。ゴミ出しも母親だ。恵子さんは気が向いたときに皿洗いをする程度。そのため、恵子さんはゴミの分別収集日を把握していない。恵子さんの町では資源ごみ回収当番が回ってくるが、恵子さんはその当番もしたことがないそうだ。

また、自治会がどのような活動をしているか、回覧板をどこに回すのか、これまで一度も気にしたことがないので、わからないと言う。今は親が元気なので、全く問題はないが、ある日、突然、親がその任務をできなくなる日が来る。

ゴミの分別収集のノウハウは意外と覚えるのが難しく、このハードルが越えられないばかりに“ゴミ屋敷”化する家も散見される。よって、同居する家族の誰もが地域で暮らすにあたり最低限の知識を押さえておきたいところだ。

【大人になっても子供部屋に住み続ける“無収入”な人がすべきこと】

その5 SOSを出せる力を養う

「収入が心もとない子供」と同居を続ける親御さんと話をする時に必ず出る言葉がこれだ。「私が死んだら、この子はどうなるのか」。中高年のひきこもりの子供を持つ家庭と同じ悩み、「一人で生きていける力が危うい」という不安感を抱いている。

親としては、子供にSOSを発信する先を事前に教えておく必要がある。地元の自治体はもちろん、社会福祉協議会、地域包括支援センター〔これは主に高齢者(親)の介護のため〕、その問題に特化したNPO法人、家族会、近所の人、医療関係者など、あらゆる場所に相談を持ち掛けていくことで、孤立を防ぐことを教える。いわば、リスクマネジメントである。

■「家族で生きるための“人生会議”」を実践すべし

無収入の「子供部屋おじさん・おばさん」が生み出される背景にあるもの。それは、「真面目に働いても賃金が上がらず暮らしが楽にならない」「就活の失敗、急な病などで、一度道を外れるとセカンドチャンスがない」といった社会の問題点だ。

このことに政治はもっと目を向け、対策を講じるべきことは言うまでもないが、一朝一夕には解決してはいかないだろう。筆者は切迫している問題を抱えているご家庭こそ、まずは第一段階として、上記のような内容の「家族で生きるための“人生会議”」を折に触れて、実践することを提案したい。

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鳥居 りんこ(とりい・りんこ)
エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー
執筆、講演活動を軸に悩める母たちを応援している。著作としては「偏差値30からの中学受験シリーズ」(学研)、「ノープロブレム 答えのない子育て」(学研)、「主婦が仕事を探すということ」(東洋経済新報社 共著)などがある。最新刊は「鳥居りんこの親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ」(ダイヤモンド社)。ブログは「湘南オバちゃんクラブ」「Facebook 鳥居りんこ」。

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(エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー 鳥居 りんこ)

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