もう1度会いたいと思わせる「プロ経営者・新浪流コミュニケーション」とは
プレジデントオンライン / 2020年2月22日 11時15分
■一番のアウトプットは人を育てること
社長たる者「人を育てること」こそ一番の「アウトプット」ではないでしょうか。業績として数値を出すのは当然ながら、その成長を維持するのは人の力であり、次世代の人材育成が重要だからです。そのための投資は惜しまず、サントリー大学の創設やローテーションの工夫で、社員にはさまざまな分野に挑戦する姿勢を培ってもらっています。ただその一方で、日々のコミュニケーションの積み重ねも重視しています。
ITが進化し、デジタルトランスフォーメーションの時代だからこそ、face to faceで語り合う時間は貴重です。連絡事項の伝達だけならメールで事足りますが、お互い顔を見てこそ伝わることもある。こちらの意図するところの本質を理解してもらい、反対に相手から「実は……」といった話を聞くこともできるでしょう。社員へのモチベートや、エンカレッジも私の仕事のひとつです。
「社長と会うと元気をもらえる」「エネルギー充電して仕事に向かえる」そう思ってもらえたら一番です。
そんなわけで、私の日常のかなりの時間はミーティングに割かれます。気をつけているのは時間管理で、特に運動をするための時間を確保すべく、まっさきにスケジュールに組み込んでいます。人との面会は思いのほか体力がいるものです。疲れてイライラしながら面談しても、良い効果は生まれませんから、そのエネルギー確保のためにも、体力維持の運動が欠かせないんです。
理想は「7時間睡眠+週3回の運動」ですが、実際には「5時間睡眠+週1~2回の運動」が現実的。ジムでパーソナルトレーナーをつけての2時間運動を、かれこれ20年間は続けています。確実にパフォーマンスに差が出ますよ。
■「新浪は持っている」相手にそう思わせる
海外出張の際もフライト後に必ずジムに行きます。機内で凝り固まった体をほぐし、乳酸を出せば時差ボケ解消にもなる。せっかく海外に来たのに、眠くて大切な判断を見誤るのは絶対に避けたいですから。
海外では大量の人から多様な意見を仕入れます。我々の仕事は、良い商品さえつくれば成功するわけではなく、お客様の声や現場の声、開発者やマネジャーの声など、さまざまな意見を必要としています。
世界的な広い視座も欠かせません。世界のどこかで起きた出来事が日本経済に影響を与え、街中の人々の消費行動が変化していくからです。
「世界経済フォーラム(ダボス会議)」や、「外交問題評議会(CFR)」などに積極的に参加するのもそのためです。各ジャンルのキーパーソンと世界情勢や経済について語らうことで「いま世界一ホットな話題は何か」が見えてきます。もちろん新聞やニュースでも情報は取れますが、それではどうしても後付けの確認になってしまう。世界動向の先取りは現地で取得するのが一番です。
そのためには自分自身が勉強していることも大切です。海外は日本以上にドライですから、お互い有益な情報を持っていなければ、貴重な時間を割いてはもらえません。1度は会えても、2度と会ってもらえないかもしれません。「数ある日本人経営者のワンオブゼム」になるか、あるいは「新浪なら何か持っている」と思ってもらえるか。知識や情報、情熱、人にはない“サムシング”を持てるよう心掛けています。そうやって相手との関係を深めるのです。
本や資料を読み込む「インプット」は、主に移動中の機内で行いますが、やはりface to faceの「インプット」も僕は大切にしたいですね。
■僕にとって学びと喜びの時間
訪問先では人々との語らいに時間をとります。例えばロサンゼルスではほぼ毎回、日系の方々と会うようにしています。日本の食文化を広めたいと熱意を持たれている方や、若い日系4世の方などとの語らいは、僕にとって学びと喜びの時間です。
旅先では必ずバーや酒場をはしごすることにもしています。量は飲みませんよ。でも必ず「イチオシ」の一杯を飲んで、お店の人やお客さんと語らうんです。NYやシカゴのバー巡りでは「さすが人種のるつぼ」と興奮します。新しいカクテルやマネジメントの工夫、どれもが素晴らしい勉強になります。お店の人に「いつもサントリーをありがとう」と直接お礼も言えますしね。
そんな場では、つい同行者の振る舞いも見てしまいます。「俺が、俺が」と自分しか見えず部下に気を使わせているのは論外ですが、反対に僕に気を使いすぎるのもNGですね。せっかくそういう場にいる。そういうときこそ最良のアウトプットができる人材を僕なら評価しますね。若い部下には、さりげなくバーでの振る舞い方を見せてほしいし、僕がいるなら、僕をダシにして店の人と有意義な語らいをしてほしい。酒の席では人間性が一番出ますね(笑)。人との出会いはいつだって学びであり、最良のアウトプットでもあるのではないでしょうか。
----------
サントリーホールディングス 代表取締役社長
1959年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、81年三菱商事に入社。ハーバードビジネススクールでMBA取得。帰国後は社内ベンチャーで病院給食会社を立ち上げ、2002年からローソン社長に就任。14年からサントリーHD社長。
----------
(サントリーホールディングス 代表取締役社長 新浪 剛史 構成=三浦愛美 撮影=横溝浩孝 写真=Getty Images)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
円安は是正必要な水準、介入でトレンド変わるかは疑問符=新浪氏
ロイター / 2024年4月16日 17時46分
-
覚えたはずなのに思い出せない…!「記憶力を高めるため」に大事なこと【脳内科医が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月31日 11時15分
-
ポール与那嶺氏語る「日本企業が世界で戦う鍵」 ポール与那嶺さんにインタビュー(後編)
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 11時0分
-
一人で英語のアウトプット学習をするマル秘テク 頭で理解していても口に出して言うのは難しい
東洋経済オンライン / 2024年3月28日 18時0分
-
テレビCMは相撲、缶にはカタカナ印字…豪州で「サントリーのレモンチューハイ」がバカ売れしている意外な理由
プレジデントオンライン / 2024年3月28日 11時15分
ランキング
-
1米ファンドに日本KFC売却=三菱商事、来月にも
時事通信 / 2024年4月26日 20時17分
-
2円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=植田日銀総裁
ロイター / 2024年4月26日 18時5分
-
3突然現場に現れて「良案」を言い出す上司の弊害 「気になったら即座に直したい」欲求への抗い方
東洋経済オンライン / 2024年4月26日 9時0分
-
4「加賀屋」50歳の元若女将が選んだ"第2の人生" 震災からの復興への道、仕事術について聞く
東洋経済オンライン / 2024年4月26日 13時0分
-
5なぜ歯磨き粉はミント味? ヒット商品の誕生には「無駄」が必要なワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月26日 8時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください