サイバーエージェント藤田晋社長「麻雀も仕事も人生も、運7実力3」

プレジデントオンライン / 2020年3月6日 11時15分

サイバーエージェント代表取締役社長 藤田 晋氏

この国のインターネット産業の中心には、いつの時代もサイバーエージェントの名前がとどろいている。最強のIT企業を牽引する社長・藤田晋は、筋金入りの麻雀打ちで、プロ顔負けの腕前を持つことでも有名だ。彼がそこまで打ち込むのはなぜなのか。(第1回/全3回)

■麻雀も仕事も人生も運が7、実力が3

麻雀が自分の仕事に役立っているかと問われれば、間違いなく役立っています。麻雀から得られるものは、ビジネスや経営にも活かせます。実際、経営者の中には「麻雀と経営は似ている」と語る人が多いものです。

麻雀は、136ある牌を組み合わせて役を完成させていく頭脳ゲームです。伏せられた牌の山から一牌ずつ引いていくわけですから、実力だけでなく、運にも左右されます。そのせいか「麻雀は運ゲーだ」と言う人も少なくありません。私の感覚としては実力にそこまで差がなければ、運が7、実力が3といったところでしょうか。

運が7とは大きな割合に感じるかもしれませんが、少しだけ長い目で見れば、その3の実力で強いか弱いかがほとんど決まります。運がよいときと悪いときは誰にでもあるわけですから、ある意味平等です。すると残った3、つまり努力や才能といった実力の部分で大差がつきます。結局は「実力ゲー」なのです。

これは仕事や人生も同じでしょう。たまたまタイミングや巡り合わせなどの運がよく、うまくいった経営者がいても、実力が追いついていなければ長くは持ちません。そんな人を過去に何人も見てきました。逆に最初は運悪く躓いたとしても、腐らずに努力し続け、実力をしっかりつけておけば、いつかは報われる日がやって来るでしょう。

そもそも麻雀は最初から不平等。配られる牌によって運命がまったく変わります。いきなり上がりに近い配牌をもらう人もいれば、「クズ手」と言われるバラバラの人もいる。それでも歯を食いしばってやるしかない。できる限り、人より早く、高く上がりを目指すしかありません。まさに人生そのもの。泣き言を言っても、誰かを嫉妬しても、何も始まらない。苦しい展開が続いていたら「なんで俺だけこんな目に」とキレそうにもなりますし、チャンスだと思ったとき、逆に大きな失点をして深い傷を負うこともあります。

麻雀をするときは「早く楽になりたい」という気持ちが常にあります。みんなで水を張った洗面器に顔を突っ込んで、最初に顔を上げたやつが負けだと言われているゲームです。誰もが苦しい。最後まで苦しみながら耐え抜いて、洗面器から顔を上げなかった人が勝つのです。これ、本当は余暇にやるようなゲームじゃないかもしれませんね。

サイバーエージェント代表取締役社長 藤田 晋氏

■論理、数値だけに頼ってはいけない

なぜ、麻雀をすることでビジネスの手腕が磨かれるのか。会社には、エンジニア、営業、広報、経営者などさまざまな役割がありますが、麻雀は1人でこれら何役もこなしているようなものだからです。技術的に理に適った選択をしなきゃいけないし、相手の感情や場の空気を読めないといけない。捨て牌などを通じて他者に自分をうまく見せなければなりません。

さらに麻雀というのは、局面が常に変わっていく。そのたびに、現在の置かれている状況を正しく把握し、中長期的な展望に立ったうえで、最終決断という経営者的な仕事をやらなければいけません。しかし、人はどれかに偏りやすい。ひたすら合理的な選択を続けていれば勝てると思い込んでいる人もいますが、麻雀はそうはいかない。

局面ごとに、押し引きの判断が逐一変わります。つい一巡前までは、いい手が入ったから押すべきだと思っていたら、急に強い警戒を必要とする危険な局面に空気が変わる。合理的な判断だけでは間に合いません。理詰めだけで答えが導き出せるものだと捉え、理に適ったところに心の拠り所を求めると、とても危ないのです。

最終的には勇気・度胸・覚悟といった、論理や数値だけでは割り切れないものが必要になってきます。そう考えると、やっぱり経営者の仕事に一番近いと私は思います。実際、世の中の社長は麻雀が強い人が多いです。

ちなみにサイバーエージェントには麻雀部があり、200人くらいが所属しています。かなりの回数を重ねた通算成績を記録していますが、総合1位は社長である私です(笑)。もちろん、忖度や遠慮は全くありません。先ほど述べた通り、運は結局平等なので、実力の部分で差がついているのです。

■何でもいいたった1つの軸を持て

ビジネスでも麻雀でも、自分の中にたった1つの軸があり、それを基軸にできれば強いです。軸が2個、3個とあると、判断するときに一貫性を欠きます。例えば、サイバーエージェントのビジョンは「21世紀を代表する会社を創る」です。その軸に対して、近いか遠いか、よりプラスかマイナスかで、すぐに経営判断がつきます。

サイバーエージェント代表取締役社長 藤田 晋氏

麻雀でも、その日にトータルで勝てばいいのか、その一回の勝負に勝たなければいけないのかで、軸は変わります。目の前の勝負にも勝ちたいし、その日トータルでも勝ちたいと、2つの軸を持っている人はブレやすいですね。その日トータルで勝つことを軸にするならば、損な局面で無理をする必要はないのです。

軸を1つだけしっかり持ち、一貫性のある経営者は、例えば名経営者のアドバイスを聞いて「なるほどここは取り入れられる」と選別し、必要なものだけを自分の血肉にできる。しかし軸を持っていない人、あるいは軸が複数ある人が誰かのアドバイスを聞いても、自分のものにはなりません。一貫性もないのに、前提条件が違う人を上辺だけ真似しても、意味がないのです。

では軸は何にしたらいいか。実は何でもいいのではないかと思います。風水や方角といった占いのようなものを信じ込んでいる経営者がたまにいますが、意外といい会社を経営していたりします。社員の立場だったら、占いを信じて経営判断を下している社長は嫌ですが(笑)、何にせよ強く1つの軸があることが、軸が何であるかよりも大事なのだと思います。ちなみに麻雀プロの中でも、オカルト的なことを信じ込んでいるベテランは意外と強いです。

▼究極の頭脳スポーツ「麻雀」ってこんなゲーム
1850年代に中国で誕生し、明治時代末期に日本に伝わったとされる麻雀。4人1組で卓を囲み、136ある牌を組み合わせて、高得点を目指し役を完成していく、運・実力・駆け引きが複雑に絡み合う頭脳スポーツだ。
ビンゴなどでのアガリ直前の状態の「リーチ」、同じことが続けて起きる「レンチャン」、真向かいの位置や人を指す「トイメン」など、日本人の生活に何気なく浸透している麻雀用語も多い。

■ドンキの安田会長、麻雀が強すぎる

「藤田君、麻雀強いらしいよ」という噂が広まったせいか、大先輩の経営者から麻雀のお誘いを受けることが増えました。麻雀にはその人の性格が出るので、会食してお酒を飲むよりわかり合えることもあります。

今まで一緒に卓を囲んだ経営者で、一番強いと思ったのは、ドン・キホーテ元会長の安田隆夫さん(現・創業会長兼最高顧問)です。

麻雀というゲームは、不思議なほど真面目で一生懸命、集中して打たないと勝てないものです。そんな中、安田さんは誰よりも一生懸命麻雀を打ちます。公式ルールのない仲間内の麻雀は、どんなルールにするか全員で決めておく必要があります。そんなとき、安田さんは交渉で絶対に負けません。強く自分の考えを主張します。たかが麻雀だし、安田さんがそこまで言うならまぁいいやと、そこで折れる人が大半。もうその時点で安田さんの有利は動きません。前述の通り、斜に構えず、一生懸命打った人が強いゲームなのです。

安田さんの勝負強さは経営にも表れていると思います。ドン・キホーテのように、粘り強く、あれだけきれいに何十期も連続で増収増益のグラフをつくれる会社は、あまり見たことがありません。経営においても油断しないし、手を抜かないし、集中力が途切れません。とにかく仕事も一生懸命なのでしょう。

余談ですが、1度AbemaTVの麻雀対局番組に出演していただいたこともあります。そのときの捨て牌の並べ方がとても独特でした。普通はきれいに揃えて置くものなのですが、横を向いている牌があれば、斜めを向いている牌もあったり。それを見ている人たちがコメントで「ドンキ陳列!」なんて言っていたときは噴き出してしまいました(笑)。

■お調子者は弱く動じないヤツは強い

自分の麻雀の特徴を聞かれれば、最初に頭に浮かぶ言葉は「忍耐強さ」です。僕が生まれ育った福井県には、忍耐強い人が多いと聞いたことがあるのですが、それも影響しているのでしょうか。何が起きても少々のことでは動じません。将棋棋士の羽生善治さんの言葉、「楽観はしない。ましてや悲観もしない。ひたすら平常心で」を心がけているのです。

学生時代からそれなりに回数を打ってきたので、調子に乗って何度も鼻をへし折られてきたし、痛い目にもたくさん遭ってきました。仕事やゴルフなどと同じく、麻雀も試行錯誤の繰り返しの中で、何度も「摑んだ!」「あ、悟った」と思うことがあります。しかしそれは一瞬のことで、その直後から混迷が始まるのです。何かを摑めば、別のところでバランスを崩していくのだと思います。

自分の経営でも、忍耐・平常心・バランスを大事にしています。「うまくいった原因は何ですか」と聞かれたら、調子に乗らないことと答えているくらいです。私のような起業家は、ゼロから会社をつくり、何もかもうまく回り始めると、万能感が出てくる人が多いです。そのとき、敵を増やしたり、すぐ未来に躓く原因をつくったりしてしまうものです。「勝って兜の緒を締めよ」は誰もが納得する言葉ですが、調子がいいときにバランスを崩さないことは、とても大事だと思います。

お調子者の人は、取引相手でも、ある意味与しやすいですね。おだてていれば、有利に事を運べるからです。そういう人は麻雀も弱そうです。手強いのは「食えないやつ」みたいなタイプです。おだてても乗ってこないし、脅しても動じないような。麻雀が強いタイプとは、つまりそういう人です。

■「麻雀、頑張って!」声を掛けられるが……

AbemaTVで放送している麻雀番組に、自らたくさん出演していた時期がありました。それは麻雀のコンテンツとしての価値を高めるため。まだ麻雀プロの知名度が低かったので、ビジネスマンには多少知られている自分が出ることで、アピールしようという狙いがありました。出るからには、プロにも負けたくないという思いが強くなり、凄く真剣に取り組んでいたところ、アマチュアである私が大事な場面でプロに勝つことも増えました。しかし、それでは麻雀プロを盛り上げようとしているのに、本末転倒になってしまうので、最近は出演を控えることにしています。

とはいえ、かなりの放送対局に出演したので、麻雀ファンの中ではそのイメージが強いのか、街で声を掛けられることもあります。「藤田さんですよね? 麻雀いつも見ています!」とか「藤田さんの麻雀に影響を受けました」という声をいただいたり、握手やサインを求められることもあります。が、「これからも麻雀頑張ってください!」と言われると、(頑張らないといけないのはそっちじゃないんだけど……)と思ったりします(笑)。もちろん経営者としての仕事を頑張ります。

今回の写真の撮影のときも、カメラマンの方から「牌を摑んでポーズしてください!」などの要望を受けて、私は一体何をやっているのだろう……と思ったものです。それだけ麻雀愛がある経営者ということで、これからも麻雀の健全化、イメージアップ、発展に貢献していきたいと思っています。

▼「見る雀」は令和注目の新コンテンツだ!
約25のチャンネルが24時間無料で見られるインターネットテレビ局「AbemaTV」は、サイバーエージェントとテレビ朝日が出資して設立したAbemaTVが運営している。麻雀チャンネルでは、日本初の国内麻雀リーグ「Mリーグ」をはじめ、様々な麻雀番組が配信されている。対局が生中継されるMリーグは、約500万人が視聴するコンテンツに成長した。

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藤田 晋(ふじた・すすむ)
サイバーエージェント代表取締役社長
1973年、福井県生まれ。青山学院大学卒。98年にサイバーエージェントを設立、2000年に当時の史上最年少(26歳)で東証マザーズ上場、14年に東証一部へ市場変更した。同年に麻雀最強戦に初出場し、優勝を果たす。18年にMリーグ機構を設立、初代チェアマンに就任した。

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(サイバーエージェント代表取締役社長 藤田 晋 構成=プレジデント編集部 撮影=泉 三郎)

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