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「遺言を書いて」老親が激怒する言い方・素直に書く言い方

プレジデントオンライン / 2020年4月11日 11時15分

PIXTA=写真

■遺言書を書いてもらうのは、思っているよりずっと大変

「親に遺言書を書いてもらうことは、相続時のトラブルを軽減してくれます。ですが遺言書を書いてもらうのは、思っているよりずっと大変ですよ」と介護アドバイザーの横井孝治氏は語る。

今回は東京都で夫と息子の3人で暮らす40代の主婦、Aさんのケースを紹介する。

ある日Aさんのもとに、地方でひとり暮らしをする60代の父が階段を踏み外して入院したという知らせが飛び込んできた。幸いなことに軽症ではあったが、数年前に母を亡くして以来、定年後の趣味にしていた畑仕事を真夏の炎天下で涼しい顔で行っていた父の面影はどこにもなかった。

強く逞しかった父の記憶が強いAさんは、顔を合わせる度に弱っていく父の姿がショックだった。Aさんは最悪の事態を想定し、父が少しでも元気なうちに遺言書を残して貰おうと決心をする。

今でも年に2~3回は帰省するほど、父との関係は幼少期から良好なAさんには、心のどこかで「父はきっと私のために遺言書を書いてくれる」という“甘え”があった。

だが、遺言書のことを話し始めると父はAさんに今まで見せたことがない形相で「親に長生きしてくれじゃなくて、死ぬ準備をしろと言うのか! 俺はお前にやるために貯金してきたわけじゃない!」と大激怒。夫の仲裁で父の怒りはなんとか収まったが、これまで喧嘩すらしたことがなかった親子関係が、気まずいものとなってしまった。

■遺言作成に激怒した親を、涙で説得した愛娘の苦悩

父との関係、父の体調、遺言書。心配事だらけの生活で精神的なストレスを溜めていたAさんも、階段を踏み外し、病院に運び込まれることとなった。「もし頭を強く打っていたら死んでいたかもしれない」と考えると、残された息子のことが頭に浮かんだ。

死んだときに息子に苦労はかけたくない。Aさんは遺言書を書くことにした。そこでAさんは「遺言書を書くには、自分の資産状況を丸裸にしないといけない」と初めて気付いた。

そして帰省したAさんは、自らの遺言書を父に見せた。「お父さん、私、遺言書を書いて初めて気付いたの。私はお父さんに甘えていたのね。親子だから何でも言うこと聞いてもらえると思ってた。失礼なことを言ってごめんね」。

父はぶっきらぼうに「生意気言いやがって」と語るだけだったが、父の機嫌は決して悪くなさそうだった。

そして、次に帰省した際、Aさんの父は「俺のほうこそワガママだった。おまえがそこまで覚悟を決めて親をやってるとは、立派になったよ」と語り、Aさんに遺言書を手渡した。

「お父さん、私たちのことを大切にしてくれてありがとう。私も、お父さんが長生きできるように、娘としてできることはするからね」

Aさんの父は、照れ臭そうに背を向けてテレビを見た。

横井氏はAさんの行動をこう語る。

「親は遺言書を書いて当たり前という考えは危険ですね。遺言書を書くということは、資産状況を丸裸にするということ。あなたは、突然親族に『資産状況を教えて』と言われ、快諾しますか?」

そして横井氏は続ける。

「親に遺言書を書いてもらうために、自分も遺言書を書いたり、一緒に書こうと提案するのはひとつの手です。遺言書を作成しても、修正可能ですし、資産状況が変化すれば、後で書いた遺言書だけが有効になります。ですが、何よりも互いの信頼関係が必要です。まず話しやすい関係をつくるためにも週1回でいいので、電話で会話をすることも大切です。そして何より、親をひとりの人間として尊重することを忘れてはいけません」

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横井孝治(介護アドバイザー)
横井孝治(よこい・こうじ)
介護アドバイザー
Webサイト「親ケア.com」管理者。介護情報のスペシャリストとして、介護に関する執筆、講演活動などを精力的に行っている。

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(お茶の間ジャーナリスト 網田 和志 写真=PIXTA)

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