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衝撃!ジャーナリスト田原総一朗のメモは取材前に完成している

プレジデントオンライン / 2020年4月23日 9時15分

ジャーナリスト田原総一朗氏のメモは取材前に完成している。取材には万全の準備をして臨むのが流儀だ。そんな田原氏のメモ術の目的は、アウトプットの最大化にあった。

■メモは本番のための台本づくり

今日持ってきたのは、『激論!クロスファイア』の台本です。僕はいつもここにメモを書くので。

『クロスファイア』の収録のテーマはだいたい2週間前にプロデューサーやディレクターと打ち合わせをして決めます。テーマが決まったら、出演者への交渉は私とディレクターでやる。一般的なキャスターはそこまでやりませんが、僕は番組をプロデューサーやディレクターと共同制作していると思っています。

本番の週には火曜と木曜に打ち合わせをして、番組をどういう流れで進めるのかを決めます。その内容をもとに台本ができて、収録前夜に届きます。

台本にメモ書きするのはそれからですね。最後の打ち合わせから時間が経って状況が変化しているので、新たな質問をつけ足していきます。

2020年3月1日の放送は新型コロナウイルスがテーマでした。安倍首相が小中学校の一斉休校を要請したのが、20年2月28日の金曜日です。一斉休校すると、共働きの家庭は親が休まないといけません。また、小学校は休みでも、幼稚園や学童保育は休みじゃない。

さらに言うと、安倍さんは一斉休校を萩生田文科相や菅官房長官にも相談しなかった。何も聞いていなかった萩生田さんは安倍さんのところに押しかけて文句を言った。たった1~2日でも、このように新たな展開が次から次に出てくるので、それを台本に書き加えるわけです。

クロスファイア番組台本●収録前の打ち合わせで書き込んだメモで埋め尽くされた番組台本。「自分がわかればいい」というメモはカタカナが多用されており、他人には判別不可能な部分もある。
クロスファイア番組台本●収録前の打ち合わせで書き込んだメモで埋め尽くされた番組台本。「自分がわかればいい」というメモはカタカナが多用されており、他人には判別不可能な部分もある。

20年3月8日の放送では、自民党の石破さんに話を聞きました。20年3月4日に、安倍さんと枝野さんが党首会談をやった。そのときはまだ立憲民主党は新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正に反対でした。ところが20年3月5日になったら急に賛成に回った。これはなぜなんだと聞きました。

いま台本を見ると、この話は、「ヤトーゴーイ」(野党合意)とメモしています。カタカナなのは、単純に漢字を書くより速いから。どうせ僕しか見ないから、自分さえ読めればいいんです。

準備ができたら局に入って、プロデューサーたちと最後の打ち合わせをします。メモしてきた中身を話して、問題がなければ最新情報を織り込み、「いや、田原さん、元のほうがいい」というなら最初の台本のままやります。

メモをするのは、あくまでも番組で使うためです。そういう意味では、備忘録としてのメモではなく、台本づくりに近いですね。

インタビューや対談の前にも、自分でざっくりした台本をつくります。事前に資料を読み込んで、「まずはこれについて尋ねよう」「ここを突っ込んで聞いてみたい」と、B5のコピー用紙に書いていきます。

先日は、AV女優で作家の紗倉まなさんと対談しました。もちろん事前に彼女の小説『春、死なん』を読みました。コピー用紙には、紗倉さんへの質問をはじめ、対談中にいつでも参照できるように、気になった箇所のページ番号も書いておきました。ケースバイケースですが、1時間のインタビューや対談だと、だいたいコピー用紙5~6枚の分量になることが多いですね。

紗倉まなさんへの取材台本●取材の際は、事前に情報をまとめた台本を持っていくという。聞いたことをメモするのではなく、聞きたいことをあらかじめメモしてから取材に向かう。
紗倉まなさんへの取材台本●取材の際は、事前に情報をまとめた台本を持っていくという。聞いたことをメモするのではなく、聞きたいことをあらかじめメモしてから取材に向かう。

■取材が終わったらメモは捨てる

インタビュー中はメモを取りません。意図的に取らないというより、真剣勝負だからそんな余裕がないんです。『クロスファイア』もそうですね。本番中にメモを取るのは、『朝まで生テレビ!』やシンポジウムのような長丁場のときだけ。何か疑問が浮かんだものの、流れでその瞬間に聞けないときにメモを書き、あとで質問します。

本番がまったく想定していない流れになることもありますよ。元に戻さないほうが面白いと思ったら、事前に準備してきたものをばっさり捨てます。もったいないとは思いません。台本と違う方向に行ったときのほうが面白いから、むしろありがたいくらいです。

本番が終わったら、台本やコピー用紙は捨てます。今回の新型コロナ問題のように継続的に取り上げるテーマについてはしばらく残しますが、それ以外は処分します。取材した内容は雑誌や書籍で活字にしているから、メモの状態で残す必要がない。

歴代の総理をはじめ、その時代を象徴する人たちにインタビューしているから、資料として残すべきだという意見もあるでしょう。でも、僕のメモは、情報を整理してどこかにストックしておくためのものではなく、アウトプットのためのメモ。だから使い終われば捨ててかまわない。

■かばん代わりの封筒にもメモる

ノートを使わずにコピー用紙を使うのも、捨てやすいからです。僕はもう20年以上前から、かばんを持つことをやめました。かばんは重いし、なくすと大変です。代わりに使っているのは、コピー用紙がちょうど入る大きさの茶封筒。これなら身軽で、使い捨てできていい。茶封筒の中も同じ。コピー用紙なら軽いし、なくしても困りません。

かばんも兼ねる封筒メモ●かばんを持たない田原氏にとっては封筒がかばん代わりだ。封筒が破れて使えなくなる前に、メモで表面が埋まってしまうのが常。約2週間ほどで新しいものに替えるそうだ。
かばんも兼ねる封筒メモ●かばんを持たない田原氏にとっては封筒がかばん代わりだ。封筒が破れて使えなくなる前に、メモで表面が埋まってしまうのが常。約2週間ほどで新しいものに替えるそうだ。

茶封筒の中に、新聞を入れて運ぶこともあります。僕は新聞を6紙読んでいます。朝日、毎日、東京、日経、読売、産経です。仕事の合間に時間がありそうな日は、新聞を3紙くらいと本を突っ込んでいく。たまにあんパンが入っていることもあるかな(笑)。

「ハイテックポイントV7グリップ」●水性インクのボールペンで、とても軽い。田原氏は30年近くパイロットを愛用している。
「ハイテックポイントV7グリップ」●水性インクのボールペンで、とても軽い。田原氏は30年近くパイロットを愛用している。

新聞で気になる記事があれば、切り抜かないでそのまま一枚引き抜いて持ち運びます。重要なところは、丸で囲って見やすくします。使い終わったら捨てますから、わざわざ切り抜くのは面倒くさい。基本的に怠け者なんです。

新聞以外だと、テレビの報道番組もニュースソースの1つです。よく見るのは、『NEWS23』と『報道ステーション』。BSフジやBS日テレもチェックします。NHKは、残念ながら時間が合いません。僕はインターネットの時代こそフェイス・トゥ・フェイスで話すことが大事だと思っています。だから日中や夜はだいたい人と会うことに時間を費やす。平均すると、一日4組は会います。それが終わって帰ってくると、NHKのニュースはもう終わっていることがほとんどです。

人と会って気になった情報があれば、茶封筒に書いてしまいます。人の連絡先なども、ひとまずは茶封筒です。茶封筒は1~2週間でボロボロになるから、茶封筒と一緒に捨ててしまうと困る情報は手帳に書き写します。

手帳は、潮出版社の「文化手帖」を使っています。文化手帖には、作家や評論家、各種団体、出版社、学会などの連絡先が載ってます。僕は自分で電話をかけてアポを取るから、とても便利です。

「文化手帖」●手帳は、潮出版社の「文化手帖」を毎年愛用している。新調するたびに連絡先を手で書き写しているという。
「文化手帖」●手帳は、潮出版社の「文化手帖」を毎年愛用している。新調するたびに連絡先を手で書き写しているという。

手帳はスケジュールと連絡先の管理が中心です。メモは「来週あの人に会うから、こんなことを聞こう」と思いついたときに、忘れないようにスケジュールの横に書くくらいです。

ちなみに僕は財布を持たない主義。代わりに何でも手帳に挟みます。たとえばクレジットカードや家のカードキーも手帳の中。一回どこかに置き忘れたときは、冷や汗をかきました(笑)。

普段の持ち物は茶封筒とコピー用紙、手帳、それに携帯電話だけです。フットワーク軽く動くためには、できるだけ身軽なほうがいい。そのとき目に入ったものにパッと書ければ十分だと思います。

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田原 総一朗(たはら・そういちろう)
ジャーナリスト
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所へ入社。テレビ東京を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。著書に『起業家のように考える。』ほか。

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(ジャーナリスト 田原 総一朗 文=村上 敬 撮影=相澤 正)

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