あなたは大丈夫か…「コロナ失業リスク」が最も高い業種は?
プレジデントオンライン / 2020年5月1日 9時15分
■いま、ビジネスパーソンに必要とされるスキル
ここ数年、労働市場は“絶好”の売り手市場を謳歌していました。コロナショックにより一転、売り手市場の終焉を迎え、リーマンショック当時、問題になっていたリストラが今回も聞かれ始めています。突きつけられた厳しい現実の中で、世の中は“必要なもの”と“必要でないもの”を選別することを迫られています。
新型コロナの影響により、リモートワークが進むことで、顕著になりつつあるのは、チャットツールを使った仕事のやりとりなどでは、端的に課題や要点を伝える「言語をきちんと扱える力」が必要となっています。さらに、見えないからこそ「きっちりアウトプットし続ける人材」が信頼できるということ。そこに非正規・正社員の境目はなくなり、今後は「個の力」が一層増す時代が来るでしょう。しかし、目下のところ人類に暴力的に襲い掛かる新型コロナによる、リストラの影響は免れない。そこで、「コロナ失業」のリスクが高い業種はどこなのか? 業界別に見ていきます。
最初に新型コロナウイルスが直撃したのは、ホテル・旅館、レジャー施設、飲食関連の企業、その次に小売業に波及しています。ホテル・飲食関連企業は倒産や自主廃業をする企業が出てきています。観光、飲食業はここ数年、インバウンド需要への依存度が高まっていただけに移動の制限は大打撃となりました。
■ドンドン増えるコロナ破綻。飲食業界から悲痛な声が漏れる
東京商工リサーチによると、4月22日までに「新型コロナ」関連の経営破綻は、全国で累計81件に達しています。2月25日に、冨士見荘が中国人観光客の激減から閉館し、わずか2カ月で経営破綻が累計80件を突破しています。インバウンド依存の宿泊業が14件、外出自粛の影響で来店客が減少している飲食業・アパレル関連が各9件となり、危機の連鎖が拡大しています。
そういった中で、大阪府で飲食店を3店舗運営している男性によると、「次の職場が見つかった正社員2名を解雇し、融資や休業要請に応じて協力金を受け取ることで、先が見えない時期を耐え抜いた後に再開したい」と悲痛な内実を語ります。大阪府は、緊急事態宣言に伴う休業要請に応じて、中小企業には100万円、個人事業主に50万円の支給を発表しており、これを活用することで事業を継続していく見通しのようです。
総務省統計局のデータから、この分野の産業別就業者数を見ると、卸売業・小売業は1072万人(約16.1%)、サービス業は445万人(約6.7%)、宿泊業・飲食サービス業は416万人(約6.2%)と、全就業者数約の約30%を占めており、日本を支えている産業を廃業させないことが何よりも、「コロナ失業」の被害を最小限に抑えるものであるといえます。
■後継者問題を抱えた企業の中には「諦め」に入るところも
一方、存続を諦める企業も。政府は事業規模108兆円の大型経済対策を打ち、支えようとしていますが、売り上げをすべて補塡(ほてん)できるわけではない。新しい借り入れを背負っても、返済できる見通しがなければ事業の継続を諦める選択を余儀なくされます。コロナ以前から日本の問題の1つに、高齢化から後継者が見つからずに倒産する企業が増加しています。帝国データバンクによると、後継者不在による事業継続の断念などが要因となった後継者難倒産は2019年に460件発生しており、ここにコロナショックが追い打ちをかけています。
問題はさらに深刻で今後、新型コロナの問題が長期化すれば、健全な経営を続けてきた企業の成長を侵食しかねない。また、スタートアップ企業にはイノベーション創出の観点や日本の未来を背負う人材の宝庫であることからも、大きな期待が寄せられているのはコロナ禍でも変わりはないでしょう。しかし、スタートアップは創業間もない企業も多く、銀行融資や補助金を受けるハードルが比較的高くなっています。
■ベンチャー企業は大ピンチ、自動車はこれから悪材料
『起業の科学』著者、田所雅之氏によると「戦時下の今、スタートアップ企業は単月黒字化を早め、Jカーブを浅めに掘ることが求められる」と述べる。スタートアップ企業は「赤字でも成長性があれば良し」とされていたビフォーコロナの状況から変化を求められることになります。しかし、コロナ禍でも資金の出し手である、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家には変わりないスタンスが求められます。なぜなら、資金調達が継続的に行われることは、アフターコロナの世界に存在するべき企業や人材が生き残るためには必要不可欠だからです。
大きなインパクトを受けているのが日本の基幹産業である自動車業界です。新型コロナによる、中国のサプライチェーンの停滞が日本における自動車生産にも影響を及ぼすことをあらためて知らしめました。自動車業界の市場規模は約68兆円といわれ、日本のGDPの約10%を占める規模を誇っています。就業者数は約546万人(約8.2%)と、こちらも携わる人口が多いです。この自動車メーカーの業績ダメージが本格化するのは2020年4~6月となり、ここから先に悪材料が出てくることになります。
■一見、コロナに直接的に関係ない業界にも影響か
自動車部品製造業、電子部品業界、金属部品などの関連産業まで含めると、影響は非常に大きくなります。特に、電子部品業界は今まで、スマートフォン需要を背景に成長してきました。しかし、スマートフォンの市場も飽和状態となり、今後は自動運転分野における車載向けの電子部品へ商機を見いだしていただけに、今回の自動車業界の落ち込みは、この業界のみならず、隣接する他の業界への打撃も大きくなっています。
建設業界は五輪需要を背景にこれまで堅調に推移してきており、五輪後の都市開発や防災関連の需要も見込まれていました。しかし、五輪が来年に延期されることになり、建材・設備の納期も延ばされることで、工事の一時中止が余儀なくされています。このまま、人の移動が制限され続ければ、鉄道の利用や宿泊施設の需要やオフィスの需要が減ることで、建設業界への影響は計り知れない。一方、“きれいな空気”のニーズにより空調設備の需要は増加し、既存の“超密型”オフィスはソーシャルディスタンスを取るレイアウトへのリノベーションなどの需要が高まる可能性があるでしょう。とはいえ、新型コロナによる影響は、段階的なフェーズを経てあらゆる業界へ、侵食が始まっています。
■新型コロナにより「個」と「個」が直接繋がる世界に
4月7日から元NHKアナウンサーで現在は「モーニングCROSS」の“朝の顔”である堀潤氏は、SNS上に自身のLINEのIDを公開しています。
「今こそ不安を言い合える日常であればと思います。僕のLINEを開放します」と呼びかけたところ、多くの不安の声が集まっています。堀氏はLINEに寄せられたメッセージに返事をしながら、NPOや社会的企業で作る団体「新公益連盟」に協力を呼びかけ、専門家と共にどうしたら不安が和らぐのかを模索しています。
堀氏は、台風15号が千葉県に直撃した際に、メディアでは組閣を優先した報道がメインとなっていた状態のときに、いち早く現場取材に行き、情報を発信し続けました。そして、被害に遭った1人の声をある与党の政治家に投げたことで、自衛隊派遣を後押しするきっかけを作りました。
「個」の声が、届くべきところに届き、その声が社会システムを変える。
そんな時代が目の前に来ています。新型コロナ禍で、物理的にも精神的にも“見えない”世界が増え、不安が増しているかもしれません。しかし、われわれはwithコロナの時代を経たポストコロナの世界では、より一層「個」と「個」の結び付きは強くなり、“個人の信頼”こそが重要な世界へと移行しつつあるのでしょう。
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テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、株式会社フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。ロイター・ブルームバーグ・yahoo!ファイナンス、雑誌プレジデント、テレビCMなど多数出演。
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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)
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