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日本の知事は官僚の天下りばかり…なぜ吉村と小池は国に歯向かえるのか

プレジデントオンライン / 2020年5月18日 15時15分

発売11カ月で世界200万部、そのうち4分の1が日本で売れている(2019年12月時点)『FACTFULNESS』。同書は、私たちの世界に関する「勘違い」を「10の本能」に分類している。今回、その10の本能を現代ニュースに絡めて紹介していく。第4回は「単純化本能」だ――。(全10回)
▼単純化本能
「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

「シンプルな解が、ほかのたくさんのことにもピタリと当てはまると思い込んでしまう」のが単純化本能だ。ロスリングは「トンカチを持つ人には、なんでもくぎに見える」ということわざを紹介している。人は身につけた知識やスキルを他のところにも使いたがる。だが、ひとつの視点だけで世界を理解することは不可能だ。たったひとつのトンカチより、さまざまな道具が入った工具箱のように多様な視点を身につけることが重要だ。

■なぜ自治体の首長は天下りなのか

新型コロナウイルスが猛威を奮ったなか、安倍晋三総理の対応に多くの国民が不満を持った。そんな中、東京都知事の小池百合子氏や大阪府知事の吉村洋文氏の独断的な対応が話題を呼んだ。

さて日本の地方公共団体は「自治体」と呼べるのだろうか。なぜ多くの地方自治体が全国一律の地方税率や規制を甘んじて享受し、東京都と同条件の厳しい競争を行う道を選択しているのか。選挙が行われているのにもかかわらず、国から事実上の天下り首長を受け入れる理由は一体何なのか。

地方が「自治」を失っている理由は、その苦しい財政事情にある。

地方財政の現状は中央政府からの財政移転がなければ、そもそも全く成り立たない設計となっている。2016年度の地方自治体の決算カードによると、地方自治体は職員人件費すら自前の税収で支払うことが厳しい状況となっていることがわかる。

■地方自治体が中央政府に依存することを前提とした仕組み

たとえば、全国1741市区町村のうち、地方税総額(市町村税)を上回る人件費を支払っている地方自治体は約29%、市町村民税総額(個人・法人合計)を上回る人件費を支払っている地方自治体は約74%となっている。最大で地方税の約8倍、市町村民税の約20倍の人件費が支払われている地方自治体も存在し、住民が毎年納めている地方税を職員給与のために支払っていることも、ザラだ。

これらの地方自治体は中央政府からの財政移転である地方交付税や国庫支出金によって、自治体運営の資金の多くを賄っている。日本の地方財政は地方自治体が中央政府に依存することを前提とした仕組みとなっている。

地方交付税や補助金に依存し、地元役場の給与すら自分らの地方税収でまともに支払えないケースが多く存在する状態では、中央から全国一律の税率や規制を事実上押し付けられるのも納得できる。

もちろん地方自治体が財政的に破綻することなく運営されているので、現状の日本のような地方財政の仕組みを採用することも1つの考え方と言えるだろう。しかし、地方自治体の中央政府への財政依存は、地方自治の精神を確実に蝕むとともに、地方自治のあり方そのものを事実上根幹から骨抜きにしているのだ。

地方自治は「民主主義の学校」と呼ばれているが、現在の日本は学校の理念やその運営が滅茶苦茶な状態になったまま放置されている。国が大きく揺れ動いている今こそ、地方自治運営に関する真剣な議論が行われることに期待したい。

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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学招聘研究員
国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー。

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(早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉)

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