家飲みの新定番「レモンサワー用の割り材」が人気上昇中のワケ
プレジデントオンライン / 2020年5月22日 15時15分
■“レモンサワーブーム”は新型コロナで消えたのか
「私は、ビールやレモンサワーがいいですね。鍋の辛味とは別の爽快感を楽しみたいです」
外出や会食「自粛」など考えもしなかった昨年末、火鍋を楽しむ会で注文する際、20代の女性会社員のこんな発言を聞いた。「とりあえず」のドリンクとして、ビールとレモンサワーが同時に候補で挙がるのを興味深く感じたのだ。近年、レモンサワーの人気は高い。
別の仕事仲間と打ち合わせを兼ねて食事をした都内の居酒屋で、こんな光景も見かけた。
店の入り口には、木箱入りの生レモンがディスプレイのように設置され、店内には「カットレモン」がびっしりと入ったプラスチック容器が並ぶ。生レモンがそのまま入ったレモンサワーも名物で、同席者は当然のようにこれを注文し、杯を重ねた。
新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で「巣ごもり消費」が続くなか、レモン系人気はどうなったのか。1957年にロングセラーブランド「ポッカレモン」を発売したポッカサッポロフード&ビバレッジ(以下ポッカサッポロ)にも話を聞き、消費者心理を考えてみた。
■レモン味のカクテル材料は前年比125.5%増加
「コロナの影響で、近くのスーパーなどで買い物されるお客さまが増えており、当社の『ポッカレモン100』は2月以降、売り上げが伸びています。また、カクテル材料『お酒にプラス レモン』が1月頃と比較して前年比が伸びており、居酒屋等の自粛要請に伴う家飲み拡大などの影響が考えられます」
ポッカサッポロの広報担当はこのように説明する(数字は非公表)。中でも「とくとくレモン」は取り扱い店舗が増えた1月から売り上げを伸ばしていたが、緊急事態宣言が出た4月から家飲み需要が一気に拡大したことで売り上げを大きく伸ばしているという。
仕事の合間や気分転換に、爽快なレモン味を選ぶ人が増えていると聞く。実際、同社だけでなくレモン味のカクテル材料市場全体が伸張しており、緊急事態宣言が出た4月は前年比125.5%の伸びとなっている。
■家飲みでも「甘さ離れ」と健康志向がトレンド
ストレス社会のリフレッシュ需要としてはどうだろう。
「リフレッシュ意識は感じますね。以前、レモンはフレーバーの1つのような位置づけでしたが、甘さ離れや健康志向の影響で、爽やかな風味で汎用性の高い素材として再注目されました。それまでドリンク中心だったレモンの用途が、お菓子やスイーツにも広がったと感じています。お客様の『すっぱいもの』への許容度が増えていることもあると思います」(同)
今年3月、無糖の炭酸水「ウィルキンソン タンサン」「ウィルキンソン タンサン レモン」をリニューアル発売したアサヒ飲料は、こう話していた。
「最も人気のフレーバーは、定番の『ウィルキンソン タンサン』ですが、『ウィルキンソン タンサン レモン』は、炭酸水になじみがなかった人のトライアル需要として人気です」
外出自粛が強まった同月でも、「ウィルキンソン」は対前年比125%を記録するなど、ブランドの人気をレモン味も支えている。
■女性に人気「キレートレモン」の購買層に変化が
「すっぱいものへの許容度が増えている」を感じる商品に、ポッカサッポロの「キレートレモン」がある。サルティンボッカ(イタリア語で「口に飛び込む」の意味)という肉料理があるが、キレートレモンはまさにのどに飛び込むようなすっぱさだ。筆者の事務所近くの自販機にも瓶入り(155ミリリットル)があり、以前から時々買っていた。
「キレートレモンは、1本にレモン1個分の果汁がとれるという健康感から、当初より女性を中心にご支持いただいてきました。最近は男性にも、レモンという素材の受容性が広まっているのを感じます。3月には『キレートレモン ダブルレモン』(500ミリリットルのペットボトル)も発売しました」(ポッカサッポロ広報)
最新の調査(総務省統計局「労働力調査」の3月分結果)でも、「働く女性」は7割を超えたが、消費者心理を研究する筆者としては、以前に比べて「嗜好の違いに男女差や年齢の違いが薄れてきた」と感じている。
レモンに含まれる主な成分には、ビタミンC、クエン酸、ポリフェノールなどがある。クエン酸はレモン、みかん、グレープフルーツといった柑橘類に多く含まれ、爽やかな酸味を持つ。これらの果実はドリンクとの汎用性も高い。
■「すっぱい」なら梅も負けていないが……
ところで、クエン酸の持つすっぱさなら、「梅」もそうだろう。直近の梅干しの消費量は1985年に比べて約1.7倍。おにぎりの具として、梅の人気は根強い。「2019年コンビニおにぎり人気調査」(一般社団法人おにぎり協会)によれば、最大手のセブン‐イレブン・ジャパンにおける通年(2018年4月~2019年3月)人気おにぎりの3位に「手巻きおにぎり 熟成仕立て 紀州南高梅」(当時の商品名)が入っていた。
ただ、近年は伸び悩む。総務省統計局「家計調査」による支出額で見ると、約20年前のピーク時(1999年)からは2割以上も金額が減った。
レモンに比べると梅には「中高年向け」のイメージがある。実際に主な購買者層もこの世代が占める。レモンの持つ若々しいイメージが、梅には欠けるのだ。
例えばドリンクやスイーツでも一定の需要はあるが、梅ドリンクや梅スイーツには爆発感がない。裏を返せば、中高年イメージを変えれば活路が拓かれるだろう。
■家で作るレモンサワーの黄金比は?
ところで今回の企画を編集部と詰めるなか、新商品「冷凍ポッカレモン そのまま使えるカットレモン」の発売(2月24日から関東エリア先行販売)を耳にした。冒頭で紹介した都内の居酒屋で見かけたような、レモンを丸ごと商品化したものだという。
「この商品は、『必要な分だけ新鮮なレモンを使いたい』『レモンの香りを楽しみたい』『レモンの健康・美容を体感したい』といったニーズにお応えすべく開発しました。健康や美容意識が高く、ご家庭で料理や手作りドリンクなどを楽しまれる方々をターゲットとしています」(広報担当)
新商品は地域限定だという。せっかくなので、売り上げ拡大が続く「お酒にプラス とくとくレモン」の自宅での楽しみ方を聞いた。
「こちらはアルコールや炭酸を含まず、レモンの濃さだけを調整できる商品です。例えば『焼酎と炭酸水を4:6で割ったもの』に対して、とくとくレモンを1割程度入れると、食事に合うすっきりとした味わいの“ドライレモンサワー”が楽しめます」(同)
本稿の女性担当編集者(九州出身)のようにお酒に強い人、逆にお酒が強くない人は、興味があれば、お好みで割合を調整してはいかがだろう。
■需要が高まる中、今後は安定調達が課題に
ビール系飲料などは、コロナの影響で売り上げ減少となっている。全体に占める消費量が大きい、居酒屋などに卸す「業務用」販売が、店の営業休止で見込めないからだ。
今回紹介した、ポッカサッポロのレモン系商品は、本稿執筆時では「コロナによる商品製造への影響はない」と聞くが、現在のような販売増加が続くと、今度は安定供給への態勢が求められる。原材料のレモンは、天候や生育条件にも左右される農作物なので、需要が拡大しても、簡単に「追加生産」に踏み切るわけにはいかないからだ。
そもそも「レモン果汁の流通量」は約2万トン(19年度)。このうち輸入が97%を占めており、国産は約3%にすぎない。国内生産地の約8割を広島県など瀬戸内地方が占める(同社調べ)。
「国産レモンの需要が高まっている一方で、そのニーズに対応できない現状があります。もちろん、一企業だけで解決できる問題ではなく、国産レモン生産No.1の広島県をはじめ、地域のJAや農家の方々と課題を共有して対応を進めています。レモン栽培の現場を知るため、昨年4月に広島県大崎上島町においてレモンの栽培を始め、課題を確認しながら、地域と連携したレモン振興を進めています」(ポッカサッポロ)
コロナの影響で憂鬱な日々が続くが、日差しも強くなり、「レモンの瑞々(みずみず)しさ」が楽しめる季節を迎えた。だが当面は、「つかの間の爽快感」を味わうしかなさそうだ。
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経済ジャーナリスト/経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。
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(経済ジャーナリスト/経営コンサルタント 高井 尚之)
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