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これから本格化する「コロナリストラ」で人事部に狙われる社員3タイプ

プレジデントオンライン / 2020年6月6日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

コロナショックの影響で、本格的なリストラの足音が聞こえ始めている。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「第2波の感染拡大が引き金になり、それに伴って東京オリンピックの中止が決まれば、さらなるリストラに拍車がかかりそうだ。リーマンショックでリストラ対象になった3タイプの社員が狙われるだろう」という――。

■人事部が目をつけている「コロナリストラ」候補者の特徴

大手企業の業績悪化が顕著になり、本格的なリストラの足音が聞こえ始めている。

日本の基幹産業の自動車大手の2020年3月期決算はコロナショックの影響で5社が営業減益、日産自動車は6712億円の赤字に転落した。

自動車各社は今年度も景気悪化を予測し、生産台数を大幅に減らす計画であり、関連産業や中小企業への影響は必至の情勢だ。

企業は業績が悪化、あるいは悪化が見込まれると固定費の削減に動き出す。

固定費で最も大きいのが人件費であるが、最初に手をつけるのが雇用の調整弁といわれる派遣、パート、契約社員などの非正規の雇い止めだ。また、同時並行的に新規採用の縮小も行う。それでもなお業績悪化が止まらず、先行きの見通しが暗い場合は事業の閉鎖・縮小と一緒に正社員のリストラに乗り出す。

では今はどのような状況なのだろうか。

すでに非正規社員を中心に解雇や雇い止めは増加している。厚生労働省の調査では5月28日時点の全国の解雇や雇い止めは1万5823人。4月27日時点は3391人だったが、5月だけで1万人以上も増えた。

また4月の有効求人倍率は1.32倍に下がり、2016年3月以来の低水準に落ち込んだ。4月の失業率は2.6%。3月の2.5%より0.1ポイント悪化した。

■コロナ被害を受けているのは現状は非正規社員だが……

しかしこれはまだ序の口にすぎない。

総務省の「就業者及び休業者の内訳」(5月29日)によると、4月の休業者数は597万人。3月の249万人から300万人以上も増加し、前年同月と比べても420万人増と突出している。このうち雇用者が516万人。つまりコロナの影響などで休業を強いられている人たちであり、解雇されずになんとか踏みとどまっている人たちでもある。このうち最も多いのはパート、アルバイトなどの非正規社員の300万人だ。これに対して正社員は193万人と少ない。

コロナの直接の影響を受けた観光・宿泊・旅行・飲食・小売業に多く従事する非正規の割合が大きいが、正社員は今のところ軽微といえるだろう。

しかし、今後国内消費が減少し、自動車産業を中心とする輸出産業の世界的な需要不足による第2波が直撃することは専門家の一致した見方だ。実際に不安を隠せない大企業の経営者も多い。

『日本経済新聞』の大手企業の「社長100人アンケート」(2020年6月1日付け朝刊)によると、緊急事態宣言解除後の懸念として、自社の「資金繰り」(15.9%)、「取引先の倒産」(28.0%)、「売掛債権の回収」(15.2%)を挙げている。積み上げた内部留保があるとはいえ、先行きに不安を感じている。

■コロナ第2波で「正社員リストラ」の嵐が吹き荒れる

4月20日、経団連と労働組合の連合は「雇用維持」を優先することを確認し、経団連の中西宏明会長も会員企業に雇用維持を呼びかけている。それでも人員削減や採用の抑制などについて「必要」と答えた企業は21.4%もあった。具体的には「従業員の一時帰休」が66.7%、「中途採用を減らす」が51.9%。

一時帰休に関しては、すでに、「雇用の維持を目的とする雇用調整助成金の申請を活用する・検討する企業」が主要企業98社中50社に上っている(『日本経済新聞』5月27日付朝刊)。

今後、大企業を中心に正社員の大量の休業者が発生すると思われる。それでも持ちこたえられなければ、いよいよ正社員のリストラが始まる。

本格的なリストラが始まるのか、起こるとすればいつ頃になるのか。すでに新規の中途採用を中止したという建設業の人事部長はこう語る。

「相次ぐ工事の中断や新規の発注の低迷で業績が落ち込んでいます。もっと人がほしいという状態から恐ろしいぐらいに状況がガラリと変わり、契約社員については更新するかどうかを検討している。正社員については緊急事態宣言が解除されても、自粛ムードが続き、夏から秋にかけて感染拡大の第2波がきて収束しない状況が続けば雇用調整もあり得るだろう。あるいは来年開催の東京オリンピックが完全に中止になり、工事が止まれば正社員のリストラがさらに拡大する恐れがある」

頭の痛いビジネスマン
写真=iStock.com/kk-istock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kk-istock

■「東京五輪中止」ならリストラの規模は拡大する

つまり、第2波の感染拡大がリストラの引き金になり、東京オリンピックの中止でさらに拍車がかかるということだ。

実際のリストラ計画は中期の経営見通しに基づいて事業に必要な適正人員を計算し、余剰とされる人員数を弾き出す。大企業のリストラは希望退職募集という形で実施されるが、内実は部門ごとにリストラ数を振り分け、部門長が退職勧奨を行うのが一般的だ。

リストラの対象者は人事評価結果を基準に行うが、よく知られているのが「社内失業者」と呼ばれる人たちだ。

社内失業者とは能力不足で見合った仕事を与えられていない人を指すが、文字通り余剰人員だ。

エン・ジャパンの「社内失業実態調査」(2020年2月19日~3月19日)によると、「社内失業者がいる」「社内失業者いる可能性がある」と回答した企業は29%。従業員1000人以上の企業では47%に上る。年代的には「50代」(61%)、「40代」(40%)が最も高い。

社内失業者の実数はどのくらいかはわからないが、内閣府が2011年7~9月に行った推計は465万人だった。約10年前の数字だが、アベノミクスの景気拡大期に人を増やした企業も多く、今でも相当数の社内失業者がいるのではないか。

実際に前出の建設業の人事部長は「この7~8年は業績も好調で人が足りないということで新卒・中途採用を増やしてきた。全体として社員数が増えているので事業が縮小すれば余剰人員が出るのは確実」と語る。

■人事部が標的にするダメ正社員の3つの特徴

では、社内失業者とは、具体的にどんなタイプの人なのか。前出のエン・ジャパンの該当社員が発生する「要因」を質問しているが、その中に以下の3つが挙がっている。

・能力不足
・異動先や受け入れ先がない
・職場での人間関係が悪い

確かにこういう人たちには仕事を任せられないだろうなと思う。さらに余剰人員を掘り下げて、リストラされてもおかしくない人はどんなタイプなのか。筆者が2008年のリーマンショック不況以降、多くの人事担当者に聞いたことがある。共通するのは以下のタイプだ。

①チームワークに不向きな協調性のない社員(コミュニケーションが下手、責任回避型)
②ムダな仕事ばかりする非効率社員(残業時間が長く計画性がない、成長意欲がない)
③仕事より遊びが大事な「私生活重視社員」(遅刻が多い、仕事より飲み会が大事)

職場の仲間との協調性に乏しく、組織やチームワークの仕事に向かない社員は概して職場の人間関係も悪い。一見、仕事の成果とは関係ないと思うかもしれないが、どんな組織・職場でもチームで仕事をする。仲間との良好なコミュニケーションを保てない人は毛嫌いされる。

典型的なのが何かにつけて自分には責任はないのだと言い逃れをする責任回避型の社員はチームワークを乱す。

ビジネスマンの4つの手
写真=iStock.com/Gerasimov174
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Gerasimov174

■もともと問題のあった社員はコロナ禍で一掃される運命か

②の仕事はやっているようでも、ムダな仕事ばかりする非効率・非能率型社員はどこの職場でもいる。もちろん仕事に積極的かつ真剣に取り組んだ結果、他の人よりも効率が落ちるというのであれば、まだ見込みもあるが、このタイプの多くは仕事に対する「計画性がない」という特徴を持つ。

典型的なのが、朝早く来て夜遅くまで仕事をしている社員。仕事の質ではなく、時間と量で勝負しているような社員は残業規制が厳しくなっている今日では「ムダな残業をしている」と見なされやすい。

仕事の効率が悪い、時間がかかりすぎると周囲に指摘され、本人の自覚している人であれば、自分なりに考えて仕事のやり方を改善しようと思うもの。それができないということは「成長意欲がない人」と見なされてもしかたがないだろう。

③の典型的なタイプは遅刻が多く、早くても始業時間ギリギリに来る人、仕事が溜まっていてもその日のうちに処理しようとしないで職場の仲間と飲みに行くのを楽しみにしているような人だ。

本人は、会社はあくまでも生活の糧を得るための場所と割り切っているのかもしれないが、会社が最も恐れるのは後輩や部下に染まり、職場のモチベーションを低下させることだ。このタイプは今では少なくなっているかもしれないが、かつては典型的なリストラ要員だった。

■「社員1万人でリストラ候補は2000人、結局1000人をリストラした」

実はこれら3タイプは、今のテレワーク主体の働き方だと顕著に炙り出されてくるだろう。

人物を掃除するほうき
写真=iStock.com/AndreyPopov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

テレワーク下ではとくにチームのメンバーとのメールやZoomなどを通じたコミュニケーションが欠かせないが、協調性がない人は普段以上に減少することは間違いない。

その結果、仕事の成果が目に見えて下がるだろう。②のタイプも在宅勤務になると、自己管理を徹底し、効率を重視した仕事のやり方を改善できなければダラダラと仕事をすることになってしまい、通常以下の成果しか出せないだろう。そもそもテレワーク向きではない人もかもしれない。

ましてや③のタイプはテレワークになるとますます仕事をしなくなる可能性が高い。本来であればこういう人に在宅勤務をさせてはいけないのである。

いずれにしてもこの3つのタイプは普段の人事評価も良くない人たちである。一般的な評価指標であるS、A、B、C、DのランクではB評価が標準であるが、標準以下のC、D評価を付けられている人たちだ。これはリーマンショック時の不況ではリストラのターゲットにされた人たちだと言える。

当時取材した小売業の人事担当者はこう言っていた。

「社員1万人のうち、結果的に約1割にあたる1000人をリストラすることになりました。人事評価の低い下位のC、D評価の社員は当社には約2000人いて、そのうち2人に1人が対象となり、選別作業をしていきました」

今後どのくらいの規模のリストラが実施されるのか、企業や業種によっても違うだろう。いずれにしても先の3つのタイプに加えて、人事評価が低い人は要注意だろう。

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溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト
1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。

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(人事ジャーナリスト 溝上 憲文)

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