安倍晋三が日本をGoTo地獄に…ここにきて「石破総理」説が急浮上も急沈下した

プレジデントオンライン / 2020年7月14日 11時15分

今国会初めて開かれた衆院憲法審査会の答弁前、マスクを着ける自民党の石破茂元幹事長(左)=2020年5月28日、国会内 - 写真=時事通信フォト

■政権の関心は「ポスト安倍」に向いている

世界中で警戒が強まる新型コロナウイルスの「第2波」。その前兆を感じさせるように日本国内の新規感染者は緊急事態宣言解除後から再び増加傾向にある。だが、国権の最高機関を担う国会議員、とりわけ政権与党の方々の多くは別のことに関心があるらしい。通常国会閉会直後は河井克行前法相夫妻の逮捕——公職選挙法違反容疑——に注目が集まっていたが、今やそれも「過去」の話で、視線は「ポスト安倍」に向いている。

各種世論調査で「次期総理」レースのトップを走る自民党の石破茂元幹事長は、安倍晋三内閣の支持率急落で注目度が増し、政権批判や「キーマン」との接触を繰り返すなど意気軒昂だ。政界は「いよいよ、石破時代の到来か……」との期待と不安が交錯する。だが、ちょっと待った。私は石破氏が次の総理(自民党総裁)に就くのは困難であると見ている。いかに世論の支持が高くとも、アフターコロナを担う次期総理・総裁にはハマらない。その理由を解析してみよう。

■安倍政権の不支持率は約50%…強い風当たり

「東京のある議員に聞くと、(自民党への風当たりは)3年前の都議選の時に似ているという方がいた。3年前は街頭に立つと批判ばかりだった。その時と似ているのはかなり厳しいということだ」。6月25日、石破氏は自身が率いる派閥の会合で、このように強い危機感をあらわにした。

朝日新聞が6月20、21日に実施した全国世論調査によると、安倍内閣の支持率は31%で、不支持率は52%。円安・株高を誘引したアベノミクス効果に加え、保守層を喜ばせる強い外交・安全保障政策で高い支持率を維持してきた安倍政権だが、今年に入って、その「貯金」は失われた。内閣支持率は前回の同調査(5月)で2012年末の発足以来最低となる29%を記録し、「危険水域」から脱することができない厳しい状況が続く。ちなみに、石破氏が指摘する2017年夏の同調査(7月)では支持率が33%、不支持率は47%で、現在の「風当たり」の強さがうかがえる。

■安倍政権への痛快な批判が高評価の石破氏だが…

「今まで何が間違っていて、それをどのように変えるのか。きちんと言わないと、ますます信頼がなくなってくる」
「質問と違う答弁をしたり、閣僚席からヤジを飛ばしたりすれば国民は納得しない。自民党は終わってしまうという危機感を持っている」

安倍政権のコロナ対応や、総理に近い河井前法相夫妻の事件、「賭けマージャン」発覚で辞職した黒川弘務前東京高検検事長の問題などをめぐる石破氏の批判は痛快で、その「石破節」に共鳴する人々も多い。読売新聞の世論調査(6月5~7日)で「次の総理にふさわしい」自民党の政治家トップは石破氏が26%とトップで、毎日新聞と社会調査研究センターが6月20日に実施した全国世論調査でも1位に輝くなど存在感を発揮している。

「任に堪えないなどと無責任のことが言える立場にはない。そのための努力も常に己を鼓舞しながら、やらなきゃいかんと自分に言い聞かせている」

今月2日の講演では、「ポスト安倍」への強い意欲をこう表現した。

■「石破総理」誕生が無理な理由

だが、である。過去3回、自民党総裁選に出馬した石破氏は理解しているだろうが、残念ながら国民から人気のある人物が「総理・総裁」にたどり着くことができるかといえば、答えは「NO」だ。

その理由の1つ目は、事実上の総理を決める自民党総裁選の仕組みにある。自民党籍を持つ国会議員が投票する「議員票」と、全国の党員・党友による投票を集計した上で得票に応じて比例配分する「地方票」の合計で順位を決める仕組みは、総裁公選規程の改正で地方票の重みが増したとはいえ、国会議員からの支持が多く得られなければ勝利をつかむことはできない。

石破氏が率いる「石破派」は19人にすぎず、いまだ出馬に必要な「国会議員20人」という要件すらクリアできていない。推薦人を確保し、世論に近いとされる地方票をかなり積み上げたとしても、400人近い国会議員から一定数以上の票を集めなければ過半数を超えることは難しいのだ。

安倍氏との一騎打ちになった2018年総裁選で、石破氏の議員票獲得は安倍氏の22%程度の73票にとどまる(地方票でも敗北)。5人が立候補した2012年総裁選では、第1回投票で地方票165票(1位)、議員票34票(4位)を獲得してトップに立ったが、過半数を超えることはできず、上位2人による決選投票で安倍氏に逆転負けしている。

■「地方票」をかせげなければ敗北必至

この2つの総裁選の結果から読み取れるのは、立候補者が少なければ「地方」で人気の石破氏が地滑り的勝利をおさめるチャンスがある一方で、候補者が乱立すれば第1回投票で過半数を超えられず、決選投票での逆転負けという「悪夢」が再来する可能性があるということだ。決選投票は議員票が変わらない一方で、地方票の割合は低くなる仕組みになっており、やはり議員票が大きなポイントとなる。

過去の総裁選を見てもわかるように、最大派閥からの支援がある候補は議員票が計算できるために有利といえ、現在で言えば約100人が在籍する安倍総理の出身派閥「細田派」がその条件に当てはまる。だが、安倍氏の意中の人物は次期総裁選への出馬に意欲を示す岸田文雄政調会長とされ、ここに安倍総理の盟友である麻生太郎財務相率いる「麻生派」が加われば、それだけで議員票は約150票にも達する。

仮に決選投票になれば決定的といえる票数だ。「令和おじさん」で人気となった菅義偉官房長官、茂木敏充外相、野田聖子元総務相といった知名度のある面々が出馬に踏み切れば、議員票も地方票も分散され、決選投票にもつれ込む可能性は高い。

■安倍総理への「逆張り」がすぎる

2つ目の理由は、石破氏のキャラそのものにある。安全保障政策のみならず、石破氏が勉強家で、真面目すぎるといえるほどのオタクであることは間違いないだろう。野党時代に民主党の失政の数々を追及する姿勢は迫力があり、その理論派の注目は高かった。

一時は「石破総理誕生か」と思われた2012年総裁選で支持を訴えた姿にはオーラがあり、しわのついたスーツを着続ける外見を気にしない部分にも共感はできた。しかし、なんだか怖く、そして暗い。ただでさえ、コロナ禍で憂鬱な日々を送っている中で、メディアを通じて発信される言葉の数々が耳に入るたびに、さらにめいってしまいそうになる。

最近では、安倍総理に対する「逆張り」色が強く、米軍普天間飛行場移設問題をめぐり「(辺野古への移設が)これしかない、とにかく進めるというだけが解決策だと思っていない」と表明したり、総理の専権事項である憲法7条に基づく衆議院解散に「今なら勝てるだろうというのは、かなり憲法の趣旨に反したもの」と反対したりするなど、ウイングを広げすぎているようにも映る。自らが総理大臣に就いた時の手足を縛ってしまうのではないかと心配になるくらいである。

自民党担当の全国紙政治部記者は「4度目の挑戦は絶対に負けられない戦いであると思っているのだろう。しかし、最近はまるで『評論家』のようで、安倍政権に批判的な与党議員のコメントを求めるとすぐに言ってくれる。その辺が自民党支持層からの人気がまだまだ足りないところなのに分かっていない。どこか鳩山由紀夫元総理を彷彿(ほうふつ)とさせる」と苦言を呈する。

■そもそも完全な総裁選が行われない可能性

石破氏が総理・総裁に就けない「無冠の帝王」に終わると見る最大の理由は、決定的といえるかもしれない。安倍総理の自民党総裁任期は来年9月末まであるが、その前に安倍氏が退き、コロナ禍で「完全な総裁選を実施している余裕はない」と判断された場合、いつものような総裁選が実施されなくなるためだ。その場合、党則では国会議員による「両院議員総会で後任を選ぶ」ことができるため、いきなり決選投票が行われるような状況になる。

石破氏が最近、二階俊博幹事長や菅官房長官ら影響力のある「キーマン」に秋波を送っているのは、その危機感の表れだろう。7月2日のBSフジ番組では「総裁を選べるのが最大の党員でいるメリットだ。それを行使させないのは党員に対する背信行為に等しい」と強く牽制している。

■うかうかしてたら石破氏は総理の座を逃す

ここまで読んでいただいた方々には理解されたと思うが、はっきり言って「石破総理」はたやすいものではない。実現するためには、小泉純一郎元首相のようにフィーバーを起こして地方票をごっそりと獲得するか、二階氏や菅氏らと連携して議員票を大きく積み上げるしかない。仮に両院議員総会による後任選びとなれば、後者のみが悲願をかなえるための唯一の道となる。岸田氏や他の立候補予定者が動きを活発化させる中、いつまでもグダグダと政権批判している暇はないのである。

石破氏は、1970年代に国民的人気を得ていたアイドルグループ「キャンディーズ」のファンで知られる。彼女ら歌詞から引用して、僭越(せんえつ)ながら一言忠告しておきたい。「ラッキーチャンスを逃さないで」の歌詞にあるように、「うかうかしてたら 他の誰かに 大事なあの子を とられちゃうだけよ」

次期総理が自民党というコップの中だけで事実上決まるというのは仕方がないとはいえ、なんだか悲しいものがあるが、いずれにしても「ポスト安倍」候補にはアフターコロナ、新しい国のカタチを堂々と論じてほしいと切に願う。

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麹町 文子(こうじまち・あやこ)
政経ジャーナリスト
1987年岩手県生まれ。早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。プレジデントオンライン(プレジデント社)、現代ビジネス(講談社)などに寄稿。婚活中。

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(政経ジャーナリスト 麹町 文子)

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