大戦争勃発! 絶好調のドラッグvs店舗数減のコンビニ…勝つのはどっちだ
プレジデントオンライン / 2020年8月15日 11時15分
■新型コロナは、変化を促す契機になった
小売業で最も新型コロナウイルスの影響を受けて変化が起ころうとしているのがコンビニエンスストアです。その理由は大きく3つあります。
1つ目は立地戦略です。コロナ以前から飽和状態にあったコンビニが、都市計画法上、住宅地への出店が難しかったこともあり、ここ数年はオフィス街や商業集積地への出店を強化してきました。その戦略が、コロナの外出自粛やテレワークなどの影響で裏目に出た。オフィス街や商業地にある店舗は特に厳しい状況に置かれています。
2つ目は、新型コロナが24時間営業を見直す後押しになったことです。これまでは、本部にとっても加盟店オーナーにとっても、24時間営業が当たり前と考えられてきました。なぜなら、コンビニは24時間営業前提でバリューチェーンが組み立てられており、24時間営業をやめれば、本部も加盟店も収入が減ってしまうのは目に見えているからです。ところが、コロナの影響で深夜帯の来店客が減少する中で、「24時間営業しなくてもいいのでは」と気づいたオーナーが増えているのです。
実際、ファミリーマートは2020年6月から全店の約5%で24時間営業をやめました。これはコンビニでは画期的な出来事です。この背景には、人材不足もさることながら、加盟店オーナーの高齢化があると推測します。例えば、セブン-イレブンのオーナーの平均年齢は53歳。同社は15年契約なので、もし53歳で更新した場合、68歳まで続けることになります。その間、果たして24時間営業を継続できるでしょうか。ファミリーマートの決断は、高齢化なども踏まえ、オーナーの価値観が変わってきていることを示唆しています。新型コロナは、その変化を促す契機になったと思います。
■コロナ禍で新たな生活インフラが台頭
そして3つ目は、異業態間競争です。東日本大震災のときは、生活のインフラとしてコンビニが脚光を浴びました。それまで利用していなかった人もコンビニの品揃えの豊富さや便利さに気づき、市場シェアが急速に伸びました。コロナ禍の今、震災時のコンビニと同じ状況にあるのが、地域密着型の食品スーパーとドラッグストアです。特にドラッグは、小売業ではEコマースと並んで伸びている業態でしたが、コロナ禍でさらに売り上げを伸ばしています。
もともと粗利率の高い化粧品やOTC医薬品(処方箋なしで購入できる医薬品)を扱う傍ら、店舗を広げて食品を安く販売することで市場シェアを伸ばしてきました。そして、コロナ禍でマスクや除菌剤などを買いに来た消費者が、品揃えの豊富さや値段の安さに気づいたことで、その勢いはさらに増しています。そのあおりを受けて、コンビニはますます厳しくなると思います。
ただ、好調なドラッグ業界が評価されるということは、追い風になると同時にチェーン間の淘汰にもつながります。コンビニは震災後にM&Aが加速し、大手3社にほぼ集約されました。その中で、私が注目しているのが九州から全国に進出しているコスモス薬品です。他のドラッグが300坪程度の店舗規模であるのに対して、同社は500~600坪で食品の品揃えを充実させた店舗を展開しています。今後、市場が飽和状態になったときに、他社が真似しにくい展開をする同社の戦略は、競争優位につながるはずです。
(クレディ・スイス証券 シニアアナリスト 風早 隆弘 構成=増田忠英)
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