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史上初のマイナスになった原油価格は元に戻るといえる理由

プレジデントオンライン / 2020年8月22日 9時15分

■料金が下がるのは夏から秋にかけて

新型コロナウイルスと聞けばマイナスのイメージを持つ人が多いかと思いますが、日本のエネルギー業界では、短期的にはプラスになる側面もあります。それは「原油安」です。

原油価格は2019年12月は1バレル60~65ドルほどでしたが、20年4月20日にはニューヨーク原油先物相場(WTI)が史上初めてマイナスを記録する異例の事態となりました。その後持ち直し、20年6月には40ドル台をいったん回復しましたが、引き続き低い水準に留まっています。

原油価格が下がると、そのぶん火力発電などの燃料費が下がることになります。ただしそれが電気・ガス料金などに反映されるのは2~3カ月遅れとなります。原油価格は20年2~3月あたりからガクッと下がり始めたので、LNG(液化天然ガス)価格にまで反映されて、料金にメリットが出てくるのは夏~秋にかけての時期になります。また、電力・ガス業界にとっては、その頃までは安く原燃料を仕入れることができることがプラスになるのです。

しかし、当然のことながらこれは一時的なもので、原油価格が元に戻ると効果はなくなります。原油価格はすでに底を打ち、じわじわと上がり始めていますので、その影響は2020年度下半期以降にネガティブなものとして顕在化するでしょう。

■原油価格は元の水準にまで戻るのでしょうか

では、今後原油価格は元の水準にまで戻るのでしょうか? もちろんコロナの今後の状況次第ではあるのですが、ざっくり「イエス」と言えると思います。21年の秋頃には50~60ドル程度には戻ると見ています。

エネルギーのなかでも航空機に使われるジェット燃料の動向には注視しています。海外への移動が解禁になるにはもう少し時間がかかるでしょうし、解禁になっても元の旅客数にはなかなか戻らないことが予想されます。全体で見ればそこまで大きな影響はないかもしれませんが、原油需要の戻りに対するインパクトには注目しています。

結論としては、エネルギー業界にとってコロナの影響は短期的な価格変動が中心となっており、他の業界と比べれば軽微といえるかもしれません。むしろ世界的な環境意識の高まりなどによってエネルギー供給構造は転換を迫られており、長期的にはそちらのほうが影響としては大きくなると認識しています。

国内のエネルギー各社に目を転じると、注目しているのは石油元売り最大手のENEOSホールディングスです。CO2の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロとなる「カーボンニュートラルを目指す」と40年に向けた長期ビジョンへ新たに盛り込むなど、ESGへの取り組みの観点からも株主の評価が高まる可能性があるでしょう。

電力・ガスで見ると、日本瓦斯に注目しています。LPガスは事業者が全国で1.8万社程度存在し、日本瓦斯の営業エリアにおけるシェアは10%程度です。LPガス以外の電力や都市ガスも含めて、着実に顧客基盤は拡大しており、今後の成長の余地は十分にあると見ています。さらには社内のデジタル化を推し進め、ペーパーレス化やブロックチェーンを活用した新サービスの導入などを行い、4年連続で経済産業省の「攻めのIT経営銘柄」にも選出されています。

(大和証券 シニアアナリスト 西川 周作 構成=衣谷 康)

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