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ネット会議では1分間のうち32秒は「カメラ目線」を意識すべき

プレジデントオンライン / 2020年9月15日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LeoPatrizi

オンライン会議では「思い」を伝えるのが難しい。どうすればいいのか。パフォーマンス学者でハリウッド大学院大学の佐藤綾子教授は「対面より0.8倍速で話す。1分間のうち32秒以上相手を見つめる。そうした4つのポイントを心がけてほしい」という——。

※本稿は、佐藤綾子『オンラインでズバリ伝える力』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■オンラインは一人芝居と心得よ

オンラインは「一人芝居」という表現がしっくりくるかもしれません。

いざ、会議や講演会が始まってしまえば、舞台に一人で立っているのと変わりません。頼りになるのは自分自身だけ。誰かを呼んできたりすることもできません。

あなた自身が発信できるのは、言葉、声、と全身からかもしだす雰囲気。この3つをフルに活用し、技術を徹底的に磨くことで、自分の意図したメッセージを相手に伝えられるようになります。

例えば、誰かに何かを勧めるときは「自信」というメッセージを全身から出さなければいけません。また相手を褒めるときは「感動した!」というメッセージを全身から出さなければいけません。それが下手で損している人がたくさんいます。

オンラインはごまかしのきかない舞台で、発信者は役者、と考えてください。稽古をしない役者はいませんよね。しっかり学んで練習しましょう。そこで、4つの練習のポイントをご紹介します。

■対面より0.8倍速で話すと聞き取りやすい

対面での会話で快適な文字数は、1分間あたり266文字、ひらがなと漢字が適当に交じっている平均的なケースです。ところが、オンラインになったとき、この同じスピードで話そうとすると、なかなか聞き手がついてきません。五感のうち視覚、聴覚しか使えないことで、理解度とインパクトが落ちがちだからです。そこで同じ文字数で喋られると、言葉の判断ができない場合があります。簡単に言えば、わかりにくいのです。

私たちは、相手の顔がよく見えれば、耳で聞き取れなくても、唇の形を読んで単語を判断したり、相手の全体の服装で信憑性を判断したりもできます。

ところが、オンラインでは画面の中だけなので、言葉の周辺にあって意味を補助するスキルが十分に使えないのです。したがって1分間あたりの文字数をやや減らしてゆっくり話す必要があります。これについては最近の私の実験データがあります。普段1分間あたり266文字で話している私の1分間のスピーチを240文字にする。つまり10%文字数を減らしてオンライン研修の参加者(被験者)に聞いてもらいました。これでも十分わかると好評でした。私は人様にスピーチや演説を教えている立場ですから、相当に普段の発音がクリアです。他の発表者と同じ内容のスピーチをしても、議事録を作るスクリプターの方々から「アヤコ先生の声はテープ起こしが楽です」と、よく言われます。

対面でも普段、発声・発音の訓練をしていない人は、さらに10%落として20%減らした文字数、つまり0.8倍速で話すことをお勧めします。

■バストアップの「キネシクス」にすべて集約する

アメリカ大統領であるトランプさんはキネシクス(kinesics)の名人です。キネシクスは、パフォーマンス心理学の用語で「動作学」という意味です。「kinesics」の「kine」はラテン語の「動く」という意味から派生しました。具体的には止まっているときの姿勢「ポスチャー」と、動いているときの身体動作「ジェスチャー」から成り立っています。

姿勢がよいこと、動作にメリハリがあってわかりやすいことがキネシクスの名人の条件です。言葉や顔の表情がよくても猫背で手や腕がカチッと固まっていたら、その人の話から迫力(インパクト)が消えてしまいます。

反対に、内心の不安や自信のなさをキネシクスで逆転することもできます。私の仕事仲間が行った教育実習生の実験です。教育実習生数名について、生徒に印象を聞いたところ、一番良い印象だったのはA先生でした。理由は「A先生が堂々と胸を張って、ニコニコしていたから」ということでした。しかし、A先生は実は「不安でたまらず、ニコニコすることを心がけた」とのこと。笑顔と姿勢が内心の不安を逆転したのです。堂々と胸を張って、笑顔でいるという「キネシクス」は、その人を自信満々に見せます。

■トランプ大統領は1分間に約10回も「OKサイン」を出す

さて、某テレビ局の依頼でトランプさんの演説を計測していた私は驚きました。彼は大統領就任演説の16分30秒の中で、指を丸くしたOKサインを112回もしていたのです。1分間に約10回です。

親指と人差し指で輪を作るのですが、最初こそ「crime」「drug」などの強調したい言葉のところでしていたものの、だんだん調子が乗ってくると、ほぼ自動操縦(オートマトン)のようにこの動作を出しました。彼の絶好調のときの手の動作の特徴です。

このOKサインのような手の動作は、オンライン会議の中でも画面の中でその手を顔のすぐ横や顔の前に持ってくることで十分伝えることができます。バストアップでも手の動きは十分入れられます。

手を広げて、こちらへどうぞと手招きしたり、話を聞いてもらって上手く終わったとき、画面の中でパチパチと手のひらを合わせて拍手の動作を送ることもできます。バストアップの身体動作でも、キネシクスはきちんと計算して使いましょう。

対面のときは全身が使えますから、そのときはまたキネシクスの計算を、面積を大きくしてすることが必要です。

■会話中の1分間のうち32秒以上相手を見つめる

「しっかり相手の目を見て話しなさい」と対面で言うと、ガッと目を開いた受講生が、「それで1分間のうち何秒ですか」と聞き返してきます。私が行った100人の社会人を対象とした実験では、「1分間のうち32秒以上のアイコンタクト」が、二者間の対話で相手が十分見てくれていると回答者たちが報告した数字です。

対話中の1分間あたり32秒の目線はオンラインでも必要です。キョロキョロして、「どこの資料だったっけ」とやらないで、ペーパーから目を上げてフレームの中の相手の顔を見ること。オンラインの場合は実際には「カメラに向かって喋る」ことになります。メモを取るのもOKですが、ずっと手元を見ていると知らない間に顔がレンズから外れてしまうので、相手は聞いてくれているのか不安になってしまいます。カメラ目線で話しましょう。

■大きい声よりも、強弱のある声が心に響く

どんなに大きい声を出しても、その大きな声のトーンを変えずに話し続けると、聞き手は居眠りしてしまいます。大騒音の中で育った子が、慣れてしまえば昼寝もできるのと同じです。

佐藤綾子『オンラインでズバリ伝える力』(幻冬舎)
佐藤綾子『オンラインでズバリ伝える力』(幻冬舎)

相手が関心を持つための声には、強弱が必要です。小さな声で囁くように話していたと思ったら、ガンと声のボリュームが上がって、そこが突出する。逆に強い調子で話しているところで、急に声のトーンを落とす。これを「プロミネンス」と言います。プロミネンスは「突出」という意味です。とがったところという意味です。音声の専門家たちはこれを「言葉を立てる」というふうに言います。

オンラインの中では淡々と言わずに、どこにプロミネンスを置くか、原稿でマーカーをつけておいてもいいし、そこだけ文字をでんと大きくしてもいいです。そのマーカーの言葉の直前で、ほんの一瞬のポーズを置きましょう。そして「タメ」を作って「バン」とプロミネンスをぶつける。そうするとメリハリが効いた印象になります。それが話を高い集中力を保って聞いてもらうコツです。

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佐藤 綾子(さとう・あやこ)
ハリウッド大学院大学教授
パフォーマンス心理学者。長野県生まれ。1969年、信州大学教育学部卒業。日本大学藝術学部教授などを経て、2017年より現職。国際パフォーマンス研究所代表、日本カウンセリング学会認定スーパーバイザーカウンセラーも務める。非言語研究の第一人者として、累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブ、そして首相経験者を含む54名の国会議員と地方議員にスピーチ指導を行う。「自分を伝える自己表現」をテーマにした著作は全191冊、累計320万部を超える。

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(ハリウッド大学院大学教授 佐藤 綾子)

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