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杉山愛が英語インタビューを克服した『プリティウーマン』学習法

プレジデントオンライン / 2020年12月11日 15時15分

元プロテニスプレイヤーの杉山愛さん - 撮影=原貴彦

元プロテニスプレイヤーの杉山愛さんは現役時代、英語で海外メディアのインタビューをこなしていた。もともとは英語が苦手で負担を感じていたというが、どのようにして克服したのか。イーオンの三宅義和社長が聞いた——。(第3回/全3回)

■勉強ではなく、テニスのためだった英語学習

【三宅義和(イーオン社長)】杉山さんが海外メディアのインタビューに英語で答えられている場面を拝見したことがあるのですが、とてもお上手ですね。

【杉山愛(元プロテニス選手)】いやいや、とんでもないです。

【三宅】杉山さんの英語との出会いはいつですか?

【杉山】幼稚園のときに週に1回だけ英会話スクールに通っていましたけど、本格的に英語と向き合うきっかけとなったのは、小学校2年生から通いだしたテニスクラブです。アメリカに本校のあるクラブだったので、アメリカ人のコーチも3、4人いて、英語でテニスレッスンを受けていました。

【三宅】それは貴重な体験ですね。

【杉山】はい。ですから私にとっての英語は一貫して「勉強のため」ではなく、「テニスのため」。普通の子供と比べたら英語への憧れはかなり強かったと思います。

【三宅】動機がまったく違うわけですからね。では中学校で英語の授業がはじまったときはかなり真面目に取り組まれたんですか?

【杉山】それはもう一生懸命やりました。というのも、小学校6年生のときに遠征兼合宿みたいな形で1カ月アメリカに行かせてもらったんです。日本人30人くらいで行って、現地の大会に出たり、現地の子供たちと一緒に練習したりして、本当に楽しい時間を過ごしたんですけど、そのときに「やっぱり英語って必要だな」と痛感したんですね。

【三宅】あまりしゃべれなかった?

【杉山】全然でしたね。でも、伝えたいことを伝えられないもどかしさをこのとき体験できたことは良かったと思います。

■大会で仲良くなった海外選手と文通

【三宅】こんな学習法がオススメというものはありますか?

【杉山】とにかく使うのが一番ですよね。私は14歳からアジアを中心にジュニアの大会に出はじめたんですけれど、最初は本当にしゃべれませんでした。一方で、アジアの国々、特にインドンネシアやフィリピンの選手はみんな上手なんですね。フィリピンは英語が公用語なので上手なのは当たり前かもしれないですけど、やはり小さなころからテニスの英才教育を受けてきたような選手は裕福な家の子が多く、英語教育もきっちり受けているんです。

【三宅】なるほど。

【杉山】その子たちが英語で楽しそうに交流しているので、私もその輪に飛び込んで、ご飯を食べたり、トランプをしたり、一緒に日常を過ごすようにしていたのですが、本当にわからないんですね。冗談を言っているときに私だけ笑えなかったり、逆に真面目な話をしているときに私が勘違いして笑っちゃったり。結構恥ずかしい思いをしました。

【三宅】そこで日本人選手同士で固まらなかったところがすごいと思います。

【杉山】せっかく海外に来て、海外の選手と仲良くなれるチャンスなのにもったいないと思ったんです。

【三宅】素晴らしい心がけですね。それで徐々にわかるようになっていったわけですね。

【杉山】そうですね。海外で恥ずかしい体験をすることで、日本での勉強も一層身が入りましたし、大会で仲良くなった選手と文通をしたり、たどたどしい英語でしたけれど電話をしたりしていたので、そういうことも英語を学ぶモチベーションとしては大きかったですね。

■『プリティウーマン』が大好きだった

イーオン社長の三宅義和氏
撮影=原貴彦
イーオン社長の三宅義和氏 - 撮影=原貴彦

【三宅】なにか自主的な勉強もされていたんですか?

【杉山】やはり英語に触れておくことが重要だと思って、好きな英語の歌の歌詞を聴いて覚えたり、歌詞の意味を調べて書いたり、映画のDVDなら字幕を消して観たりと、いろいろやっていました。

【三宅】好きな映画を観るというのはいいですよね。

【杉山】『プリティウーマン』が大好きだったので何回も観ましたね。すると段々、そこで使われているフレーズが頭に残るようになるので、それを実際の会話で使ってみるとか。そういう意味では理屈よりも場数で鍛えていった感じです。海外に行くときも表現集などを持っていくわけでもなく、すべてがぶっつけ本番。もちろん身振り手振りを交えながらですけれども、ときに痛い思いをしながら徐々に「こんな感じかな」「あ、こうじゃないんだ」ということを繰り返しながら英語力を身につけました。

【三宅】日本人はどうしても「間違えたらいけない」という意識が強すぎますよね。

【杉山】それはありますよね。でもネイティブではないわけですから、間違って当然くらいの感覚でいいはずです。私はむしろ間違ってもいいから、使いつづけることが大事だという意識でいました。

【三宅】本当にそうですね。しかも自分の英語に自信がないとなおさら伝わりづらい。小さな声でボソボソ話しても、伝わるものも伝わりません。

【杉山】それは意識していました。ボソボソしゃべっても聞いてくれないので、できるだけ堂々と話すようにしていました。

■プロスポーツの世界で英語力は成果に直結する

【三宅】プロになられてみて、実際に英語は重要だと感じましたか?

【杉山】感じましたね。たとえば、ダブルスの相手とのコミュニケーションは英語です。前回、私はダブルスの相手には相性や信頼関係を求めていたという話をしましたけど、それはお互い英語ができるからこそ、築くことができることです。

あとプロになって痛感したことなんですけれど、試合の前後に受ける記者会見やインタビューって選手にとってはかなり負担なんですね。とくに試合前は試合のことに集中したいのに、英語で取材を受けるとなると「ちゃんと答えられるかな」とか「どんなことを聞かれるかな」とかいろいろ考えてしまうんです。でも英語力を磨いて普通の感覚で受け答えができるようになれば、その負担が軽減できるわけですから、そのメリットは相当大きいだろうと感じていました。

【三宅】通訳を介する人もいますよね。

【杉山】先輩選手でもそういう方はいらっしゃいましたけど、私としては「自分の言葉で発信していきたい」という気持ちがすごくあったんです。最初の頃は海外プレスの方の質問が聞き取れなくて、“Say again please.”とか言っていると、「もういいよ」みたいな感じに露骨に冷たい態度を取られて落ち込んだこともありました。

【三宅】それは確かに凹みますね。あと、情報戦にも英語が欠かせないという話を聞きました。

【杉山】そうなんです。ルールチェンジのような本当に大事なことは主催者側から逐一情報が共有されて、細かくかみ砕いて説明してくれたりしますけど、たとえば雨が降って何時からどのコートで練習できるのかみたいな現場で発生する情報って、選手間やコーチ間で伝言ゲームみたいに内々で回るんです。選手としてはそういう生の情報が意外と重要なので、日頃から英語でいろんな選手、関係者と英語でコミュニケーションをとっておくことは大切だなと思いました。

■ルーチンの中に、ちょっとだけ違う刺激を入れる

【三宅】外国語を習得する秘訣は「実践」と「継続」ということに尽きるとは思うのですが、英語学習者にモチベーションを維持するコツをアドバイスするとしたら、どんなことをアドバイスされますか?

【杉山】たしかにどれだけモチベーションが高くても、人間ですから気持ちが乗らないときがありますよね。そんなときでもやっぱり冷静に自分の状態を捉えて、「どうやったら気分が上がるだろうか」と考えることが重要かなと思います。

たとえば、私の場合、ちょっと毎日の練習がマンネリ化しているなと感じたら、同じルーチンワークをこなすんですけど、ちょっとだけ違う刺激を入れてみるということはよくやっていました。ちょっとだけ違うメニューを入れてみるとか、普段練習しないメンバーとトレーニングしてみるとか、練習場所を変えてみるといった感じです。

■世界の舞台を目指す若いアスリートたちへ

【三宅】世界の舞台を目指して頑張っている若いアスリートに何かメッセージがあれば。

【杉山】全米オープンのときの大坂なおみ選手が非常にわかりやすいですけれども、スポーツのトップ選手になるということは多くの人、とくに子供たちのロールモデルになるような本当に大きな影響力を与える存在になるということでもあります。

同時に、テニスにしても野球にしてもゴルフにしても、日本人選手が海外で活躍することは当たり前になってくると思うんですけど、そのときに英語を使えるかどうかで自分が与えられる影響力がまったく違ってくるんですね。

もちろん日本語で日本の子供たちに語りかけることも大切ではあるんですけれど、せっかく世界のトップを目指すのであれば、ぜひ日頃から英語力を磨いて、世界中の子供たちに夢や希望を与えられる存在になってほしいと思います。

■なぜ英語を学ぶのかという「why」を明確にする

元プロテニスプレイヤーの杉山愛氏
撮影=原貴彦
元プロテニスプレイヤーの杉山愛氏。衣装提供:Doubleface Tokyo,ABISTE
 
- 撮影=原貴彦

【三宅】英語学習者へのメッセージも頂戴できますか?

【杉山】私もまだまだ英語を学ぶ立場ではあるので、偉そうなことは言えないのですが、やはり勉強を継続するうえで欠かせないのは、「なぜそれをしたいのか」という「why」のところを明確にしておくことだと思います。そこが明確だと、迷いが生じても戻りやすいというのはあると思います。

三宅 義和『対談(4)! プロフェッショナルの英語術』(プレジデント社)
三宅 義和『対談(4)! プロフェッショナルの英語術』(プレジデント社)

現役時代の私は「海外で活躍するプロテニスプレーヤーになる」という明確な「why」があったので、英語学習に対するモチベーションが落ちることはまずなかったですし、今の私も「海外の人とコミュニケーションをとりたい」という「why」は揺るぎません。仕事をする上で英語は必要不可欠ですし、英語が使えればSNSで世界中の人とつながることができます。

それこそ最近はいろんなイベントがリモート化・オンライン化されたことによって、「住んでいる場所」という制約が急になくなって、いろんなコミュニティ、いろんな集まりに参加できるようになったわけですよね。

【三宅】たしかにそうですね。

【杉山】英語を学ぶことで自分の取りうる選択肢や可能性が広がることは間違いないので、完璧を求めたい気持ちは大切にしつつもあまり気負いしすぎずに、どんどんアウトプットをしながら勉強を続けてほしいと思います。

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三宅 義和(みやけ・よしかず)
イーオン社長
1951年、岡山県生まれ。大阪大学法学部卒業。1985年イーオン入社。人事、社員研修、企業研修などに携わる。その後、教育企画部長、総務部長、イーオン・イースト・ジャパン社長を経て、2014年イーオン社長就任。一般社団法人全国外国語教育振興協会元理事、NPO法人小学校英語指導者認定協議会理事。趣味は、読書、英語音読、ピアノ、合氣道。

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杉山 愛(すぎやま・あい)
元プロテニスプレーヤー
4歳でテニスをはじめる。17歳でプロに転向。シングルス492勝(優勝6回)、ダブルス566勝(優勝38回)、グランドスラムのダブルス優勝4回。ダブルスでは世界ランク1位に輝き、オリンピックにも4回出場。グランドスラムのシングルス連続出場62回の世界記録を樹立するなど、日本を代表するプロテニスプレーヤーのひとり。2009年に現役を引退し、現在は様々な後世育成事業を手がけるほか、スポーツコメンテーターとして活動するなど、多方面で活躍中。

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(イーオン社長 三宅 義和、元プロテニスプレーヤー 杉山 愛 構成=郷 和貴)

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