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中止チケット代、PCR費用…コロナ禍の確定申告でお金が戻る3つのパターン

プレジデントオンライン / 2021年1月22日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/StockGood

今年の確定申告は、新型コロナウイルスの影響で例年と異なる点がある。元国税調査官で税理士・産業カウンセラーの飯田真弓氏は、「寄附金、医療費、特定支出の3つの控除で注意が必要だ。例えば、中止イベントのチケットを払い戻さなかった場合、税優遇を受けられる可能性がある」という――。

■コロナ禍の確定申告は寄附金控除と医療費控除に注目

毎年、清水寺でその年を表す漢字が発表されるが、2020年を表す漢字は“密”だった。外出する際、マスクは必携。どこへ行ってもソーシャルディスタンスを保つことが強いられたからだろう。

26年間、所轄の税務署で働いていた筆者が“密”と聞いてすぐに連想するのは、確定申告の相談会場だ。確定申告の期間中、年金を受給されている方を中心に多くの人が確定申告会場に足を運ぶ。

サラリーマンの方の確定申告と言えば還付申告だ。なじみがあるのは、医療費控除や住宅ローン控除。最近では、ふるさと納税で還付申告をされる方も増えてきているようだ。

今回は令和2年分の確定申告で、サラリーマンが還付申告をする際に再度確認しておきたい3つの項目について書いてみたいと思う。

令和2年分として目新しいのは寄附金控除と医療費控除だ。

まず、寄附金控除から解説していこう。昨年、新型コロナウイルスの影響で「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(以下、新型コロナ税特法)が制定された。一般の方にも関係ありそうなものでいうと、寄附金控除の特例だろう。コンサートや文化芸術イベント等が中止等されてしまった時に、そのチケットの払い戻しを受けないことを選択された人はその金額分を「寄附」と見なし,税優遇を受けられるという制度だ。文化庁・スポーツ庁は、リーフレットを作成して、その仕組みを解説している。

■アーティスト等に「寄附」しながら減税できる

寄附金控除は、納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、特定寄附金を支出した場合に所得から控除できる制度である(所得税法78条)。また、政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金及び公益社団法人等に対する寄附金のうち一定のものについては、所得控除に代えて、税額控除を選択することができることとされている(租税特別措置法41条の18、41条の18の2、41条の18の3)。

今回の新型コロナ税特法においては、観客等が指定行事の中止等により生じた入場料金等の払戻請求権の全部又は一部の放棄を、令和2年2月1日から令和3年12月31日までの期間(指定期間)内にした場合には、観客等がその年の指定期間内において放棄をした部分の入場料金等の払戻請求権の価額の合計額(最高20万円)について、寄附金控除の対象(所得控除・税額控除)とすることとされた(新型コロナ税特法5条)。

「指定行事」とは、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに開催予定であった文化芸術・スポーツに関する行事のうち、新型コロナウイルス感染症が発生したことによる政府からの要請を受けて中止等を行った行事であると認められるものとして文部科学大臣が指定するものとされている。具体的には、文化庁・スポーツ庁のホームページに随時公表されているので確認するとよいだろう。

■特例を受けるには2つの書類が必要

この特例の適用を受けるためには、放棄をした翌年の確定申告において、原則として、確定申告書に次の書類を添付する必要がある(新型コロナ税特令3条、新型コロナ税特規3条)。

・指定行事認定証明書(指定行事に該当することその他一定の事実を証する書類)の写し
・払戻請求権放棄証明書(放棄をした入場料金等の払戻請求権の価額その他一定の事実を証する書類)

「払戻請求権放棄証明書」のひな形と記載例は文化庁のウェブサイトで確認してほしい。

■新型コロナに関するボランティアや支援活動を行う団体への寄附も対象

また、以下の項目についても、寄附金控除の対象となることとなった。

1.新型コロナウイルス感染症に関連するボランティア団体等向け寄附金
新型コロナウイルス感染症に関連して中央共同募金会が募集するNPO法人や民間ボランティア団体等向けの寄附金(令和2年6月19日から令和3年1月31日までに受け入れたものに限る)

個人が寄附した場合
次のいずれかを選択
① 所得控除:寄附金額(総所得金額等の40%を限度)-2000円
② 税額控除:〔寄附金額(総所得金額等の40%を限度)-2000円〕×40%
※ 所得税額の25%を限度

2.新型コロナウイルス感染症対策等支援活動を行う公益社団法人又は公益財団法人が募集する寄附金
下記の(1)から(6)までの活動(以下「新型コロナウイルス感染症対策等支援活動」という)に特に必要となる費用に充てるため、その公益社団法人又は公益財団法人が募集する寄附金で一定の要件を満たすもの(以下「新型コロナウイルス感染症対策等支援寄附金」という)

(1)新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により日常生活に支障を生じていることその他これに類する事実がある者に対する支援を行う活動
(2)新型コロナウイルス感染症のまん延防止のための対策を周知する活動
(3)マスクその他の着用することによって新型コロナウイルスにばく露することを防止するための個人用の道具又は消毒液を配布する活動
(4)新型コロナウイルス感染症の患者が療養をするためのテントその他の仮設の施設を設置する活動
(5)新型コロナウイルス感染症の患者の診療に従事する医療従事者の通勤を支援する活動
(6)新型コロナウイルス感染症の患者の移送を支援する活動

個人が寄附した場合
次のいずれかを選択
①所得控除:寄附金額(総所得金額等の40%を限度)-2000
②税額控除:〔寄附金額(総所得金額等の40%を限度)-2000円〕×40%
※1 所得税額の25%を限度
※2 租税特別措置法第41条の18の3の規定により、PSTと同様の要件等を満たす公益社団法人又は公益財団法人への寄附金については、所得控除に代えて税額控除を選択することができる。

3.新型コロナウイルス感染症対策等支援活動を行う認定特定非営利活動法人等(認定NPO法人等)が募集する寄附金
認定特定非営利活動法人等(以下「認定NPO法人等」という)が自ら行う新型コロナウイルス感染症対策等支援活動に特に必要となる費用に充てるため、その認定NPO法人等が募集する寄附金で一定の要件を満たすもの(以下「新型コロナウイルス感染症対策等支援寄附金」という)

個人が寄附した場合
次のいずれかを選択
① 所得控除:寄附金額(総所得金額等の40%を限度)-2000円
② 税額控除:(寄附金額(総所得金額等の40%を限度)-2000円)×40%
※ 所得税額の25%を限度

一口にコロナ禍の寄附と言ってもいろいろなモノがある。

寄附した団体の活動が、今回の寄附金控除に該当するかどうかは、個々に確認する必要があるだろう。なお、寄附金控除を受けようとする際には、寄附受領書を確定申告書とともに提出しなければならない。

■マスクは医療費控除にならない

2つ目に、医療費控除でもコロナ禍ならではのチェックポイントがある。PCR検査やオンライン診療関連の費用が医療費控除に適用できる場合があるのだ。国税庁のHP「4 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係」で、コロナに関連した医療費控除の取り扱いについて書かれているので、ここで紹介しておきたい。

外出する際、携帯を忘れたことに気付き、「もう気が気でないし早く家に帰りたい!」という気持ちになったという方は少なくないだろう。

しかし、新型コロナウイルスが発生してからは、携帯よりもマスクが必携になった。

今や、マスクをせずに外出することは御法度というわけだ。

一時期、品薄で高額で取引されたりもしたが、近頃ではファッション性のあるものが出てきたり、おしゃれアイテムとしても定着しつつある。

また、誰にでも喜んでもらえるプレゼントとしても好評のようだ。

原則、医療費控除に該当するかどうかの判定は、それが治療行為なのか予防なのかが分かれ目になる。

このマスクの購入費用が医療費控除に該当するかどうかについては、国税庁のHPで下記のように回答されている。

問12マスク購入費用の医療費控除の適用について〔令和2年10月23日追加〕
私は、新型コロナウイルス感染症を予防するために、マスクを購入しましたが、この購入費用は、確定申告において医療費控除の対象となりますか。
○ 医療費控除の対象となる医療費は、
1 医師等による診療や治療のために支払った費用
2 治療や療養に必要な医薬品の購入費用
などとされています(所得税法73条2項、所得税法施行令207条1項)。
○ ご質問のマスクについては、病気の感染予防を目的に着用するものであり、その購入費用はこれら12のいずれの費用にも該当しないため、医療費控除の対象となりません。

■PCR検査は結果次第で医療費控除になる

さて、もう一点気になるのが、PCR検査の費用ではないだろうか。

国税庁のHPでは、マスクが医療費控除に該当しないという回答の枝の項目として、PCR検査の費用についても書かれている。

問12-2PCR検査費用の医療費控除の適用について〔令和2年10月23日追加〕
私は、先日、新型コロナウイルス感染症のPCR検査を受けましたが、この検査費用は確定申告において医療費控除の対象となりますか。
1:医師等の判断によりPCR検査を受けた場合
○ 新型コロナウイルス感染症にかかっている疑いのある方に対して行うPCR検査など、医師等の判断により受けたPCR検査の検査費用は、上記の費用に該当するため、医療費控除の対象となります。
○ ただし、医療費控除の対象となる金額は、自己負担部分に限りますので、公費負担により行われる部分の金額については、医療費控除の対象とはなりません。
2:上記1以外の場合(自己の判断によりPCR検査を受けた場合)
○ 単に感染していないことを明らかにする目的で受けるPCR検査など、自己の判断により受けたPCR検査の検査費用は、上記のいずれの費用にも該当しないため、医療費控除の対象となりません。
○ ただし、PCR検査の結果、「陽性」であることが判明し、引き続き治療を行った場合には、その検査は、治療に先立って行われる診察と同様に考えることができますので、その場合の検査費用については、医療費控除の対象となります(所得税基本通達73-4参照)。

単に感染していないことを明らかにする場合は、医療費控除に該当しないが、その結果、「陽性」であることが判明し、治療に移行した場合は、そのPCR検査の費用は医療費控除に該当すると述べられている。

PCR検査を受ける患者
写真=iStock.com/show999
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

これは、人間ドックの費用が医療費控除に該当するかどうかという場合と同じ考え方だ。

人間ドックは、病気の早期発見と予防のために行われるもので、治療行為ではない。

なので、人間ドックの費用そのものは医療費控除に該当しないのだが、その人間ドックで病気が見つかり、治療に移行した場合はその費用も医療費控除に含めてよいということになっているのだ。

■オンライン診療も「治療行為」なら医療費控除に含められる

オンライン診療についても回答がされている。オンライン診療であっても、治療行為とみなされる場合は医療費に該当するのだ。

問12-3オンライン診療に係る諸費用の医療費控除の適用について〔令和2年10月23日追加〕
私が通院している医療機関では、新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、オンライン診療を導入しています。
このオンライン診療においては、自宅から医師の治療が受けられるのはもちろん、診療により処方された医薬品については、医療機関から私が希望した薬局に処方箋情報が送付され、その薬局から自宅への配送もできる仕組みとなっています。
オンライン診療は大変便利ですが、この仕組みを利用するためには、以下のとおり、オンライン診療料に係る費用のほか、システムの利用料の支払が必要となりますが、これらの支出は医療費控除の対象となりますか。
1 オンライン診療料
2 オンラインシステム利用料
3 処方された医薬品の購入費用
4 処方された医薬品の配送料
○ ご質問のオンライン診療に係る費用については、それぞれ次のとおりとなります。
1 オンライン診療料
オンライン診療料のうち、医師等による診療や治療のために支払った費用については、医療費控除の対象となります(所得税法73条2項、所得税法施行令207条1項)。
2 オンラインシステム利用料
医師等による診療や治療を受けるために支払ったオンラインシステム利用料については、オンライン診療に直接必要な費用に該当しますので、医療費控除の対象となります(所得税基本通達73-3参照)。
3 処方された医薬品の購入費用
処方された医薬品の購入費用が、治療や療養に必要な医薬品の購入費用に該当する場合は、医療費控除の対象となります(所得税法73条2項、所得税法施行令207条1項2号)。
4 処方された医薬品の配送料
医薬品の配送料については、治療又は療養に必要な医薬品の購入費用に該当しませんので、医療費控除の対象となりません。

出典=国税庁HP

■「仕事に必要な自己研さんの費用」も忘れずに確定申告を

最後に3つ目として、給与所得者の特定支出金についても確認しておこう。

仕事に関係する資格を取得するための費用が、給与所得の経費として認められる場合があるというものだ。

在宅勤務で使える時間が増えた分、自己研さんをするようにと会社から言われたという方もいるのではないだろうか。

例えば、今後海外取引の担当をすることを想定し、英語の講座を受講してその費用を自分で負担したような場合だ。

具体的な計算方法については、2020年9月23日配信の「在宅勤務で浮いた時間に受けた『英会話講座』は確定申告で経費になる」を参照されるとよいだろう。

確定申告は自主申告だ。会社が「あなたは確定申告をすれば税金が戻ると思いますよ!」とは、なかなか言ってくれない。

緊急事態宣言が発出され家にいる時間が増えた今、ご自身の所得を見直し、税金の払い過ぎになっていないか、再度、確認をされることをおススメする。

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飯田 真弓(いいだ・まゆみ)
飯田真弓税理士事務所 代表税理士
元国税調査官。Credo税理士法人顧問。産業カウンセラー。健康経営アドバイザー。日本芸術療法学会正会員。初級国家公務員(税務職)女子1期生で、26年間国税調査官として税務調査に従事。2008年に退職し、12年日本マインドヘルス協会を設立し代表理事を務める。著書に『税務署は見ている。』『B勘あり!』『税務署は3年泳がせる。』(ともに日本経済新聞出版社)、『調査官目線でつかむ セーフ?アウト?税務調査』(清文社)、『「顧客目線」「嗅覚」がカギ!選ばれる税理士の”回答力”』(清文社)がある。ホームページ

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(飯田真弓税理士事務所 代表税理士 飯田 真弓)

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