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「その瞬間、人間の値打ちが決まる」人生の8割を占める"偶然"に乗れる人拒む人

プレジデントオンライン / 2021年5月3日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/claudenakagawa

コロナ禍、気候変動、国内外の政情・経済不安など、先行き不透明な「不安の時代」に必要なものは何か。日本総合研究所の小島明子さんは「特に女性は金融リテラシーを身に付けて自分を守ること。さらに、予期せぬ出来事にポジティブに好奇心や持続性などを持って対処して、より良いキャリアを形成できるか」と指摘する――。

■不確実な時代を生き抜くために欠くべからざるスキルとは何か

2021年3月に世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)」によれば、日本の順位は、世界153カ国のうち120位という結果になりました。

ジェンダー・ギャップ指数は、経済、教育、健康、政治の4分野における男女格差を国ごとに調査し、それぞれ指数(スコア)を算出していますが、日本の順位の低さは、経済と政治の分野のスコアが低いことが原因として挙げられます。

これまで女性活躍推進法の施行など、国や企業も努力してきましたが、本当に女性が活躍しやすい社会を実現するためには、まだ多くの課題が横たわっていると言わざるをえません。

コロナ禍ということもあり、とりわけ女性は不確実な時代をどのように生き抜くべきか、今まで以上に仕事やお金の問題、将来のキャリアについて悩むことも多いのではないでしょうか。

本稿では、筆者が上梓した『「わたし」のための金融リテラシー』(一般社団法人金融財政事情研究会、共著)のエッセンスに加え、不確実な時代を生き抜くための術について述べます。

■「人生の3大費用」を言えない人は金融リテラシーが低い

女性が生き抜くための術
その1「金融リテラシーの向上」

金融広報中央委員会によれば、調査対象者2万5000人に対して、金融リテラシー・クイズを実施しています。

例えば、こんな出題です。

Q:一般に「人生の3大費用」といえば、何を指すでしょうか。(次の中から1つ選ぶ、正答2)
1.一生涯の生活費、子の教育費、医療費
2.子の教育費、住宅購入費、老後の生活費
3.住宅購入費、医療費、親の介護費
4.わからない
Q:10万円の借入れがあり、借入金利は複利で年率20%です。返済をしないと、この金利では、何年で残高は倍になるでしょうか。(次の中から1つ選ぶ、正答2)
1.2年未満
2.2年以上5年未満
3.5年以上10年未満
4.10年以上
5.わからない

このような正誤問題5問が出題されていますが、男女別正解率は全年代で男性が54.3%、女性が50.8%とやや男性の点数のほうが高くなっています。

18~29歳で男性42.1%、女性39.5%、30代で男性50.2%、女性45.9%と年代が変わっても、男女の結果が逆転することはありません。わずか5問の正答率ですが、女性正答率のほうが男性に比べて低いという傾向は、3年前の調査結果と変わりません。

■なぜ、お金に弱い女性が多いのか

金融リテラシーに男女差が生じてしまう理由のひとつが、金融について学ぶ機会が少ないことが挙げられます。金融庁「証券投資に関する全国調査 平成30年度調査報告書(個人調査)」によれば、証券投資についての教育を受けたことがない若者は約7割に上り、女性は男性に比べて教育を受けたことがない人の割合がやや高くなっています。

さらに、証券投資が必要だと感じていない若者(20~24歳)は、男性よりも女性のほうが多く、その理由として、約4割の女性が金融や証券に関する知識を持っていないことを挙げています。女性のほうが金融について学ぶ機会が少ないことは、男女の知識差につながっている可能性は否定できません。

貯金箱にコインを入れる女性
写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat

来年(2022年)度からは、学習指導要領の改訂により、高校の家庭科の授業で金融教育が拡充されますので、次世代の子どもたちは、金融や経済について学ぶ機会は増えることが期待されます。

しかし、すでに社会に出ている女性のなかで、金融リテラシーに自信のない方については、自らが学ぶ機会を持つことが第一歩につながると考えます。

■モヤモヤした「人生の不安」を軽減するための方法

女性が生き抜くための術
その2「漠然とした人生やお金に関する不安を軽減する」

フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグ氏の著書『LEAN IN』(日経BP社)のなかでは、仕事とプライベートの両立に関する相談にきた社内の若い女性社員が、出産の予定がなく、またボーイフレンドもいなかった、といった事例に基づき、現代の女性は若いうちから、「バリバリ働く」か「いいお母さんになる」かのどちらかを選ばなければならない状況にある、と分析しています。

仕事のキャリアとプライベート充実を両立させるのは険しい、と最初から諦めているのかもしれません。加えて、現在はコロナ禍による不安もあります。よって、女性がライフイベントに対する漠然とした不安は大きくなるばかりです。これを軽減する方策のひとつが金融リテラシーを身に付けることです。

ライフイベント(結婚・離婚/妊娠・出産・子育て/不動産購入/転職・失業/病気・けが/老後、ほか)で知っておくべきお金のことについては、インターネットなどを活用して、主体的に情報を取得することは誰でもできます。私たちの生活とお金への不安は切っても切れない問題ですが、ライフイベントごとにかかるお金や国の制度のことをきちんと知るだけでも、将来の漠然とした不安を減らすことに役立ちます。

小島 明子、橋爪 麻紀子、黒田 一賢『「わたし」のための金融リテラシー』(一般社団法人金融財政事情研究会)
小島 明子、橋爪 麻紀子、黒田 一賢『「わたし」のための金融リテラシー』(一般社団法人金融財政事情研究会)

ただし、残念ながらお金や国の制度を知るだけでは、生活を守ることはできても、お金を増やすことまではできません。日本では低金利が続いており、自分の資産を増やすためには、投資を行うことが基本となります。投資がうまくいかなければ、投資した資金が減ることもありますので注意が必要ですが、(投資をするかしないかは別として)金融や経済に関する知識を学ぶことは、厳しい社会を生き抜く上では重要です。

最近話題になっているESG投資やSDGsを中心とした新たなお金の流れや社会の変化について学び、知ることは、今後の私たちが将来のキャリアの方向性を決める上でも参考になります。

日々の生活を送るためにお金は必要不可欠なものであり、経済的な余裕がなければ、キャリアを考える余裕がない方もいるでしょう。しかし、不確実な時代だからこそ、自分が望むキャリアをしっかり考え、その目標に向かうなかで身に付けた金融リテラシーを活かして行動していくことが、自分らしいキャリアを実現していく上では、大切なのではないでしょうか。

■人生の8割を占める“偶然”に乗れる人拒む人

女性が生き抜くための術
その3「不遇なときも前向きな姿勢がキャリアを拓く」

女性に限らず、誰でも人生を生きていれば、思い通りにいかないことはたくさん経験します。今の時期においては、入社した会社がコロナで業績不振になってしまい転職せざるを得なくなってしまった、希望していない転勤や部署、チームに異動させられてしまった、という方もいるでしょう。

米スタンフォード大学のクランボルツ教授(※)は『その幸運は偶然ではないんです!』(ダイヤモンド社)の中で「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」というキャリア理論を提唱しています。

これは「個人のキャリアの8割は予測しない偶発的なことによって決定される」とし、その予期しない偶然の出来事にベストを尽くして対応する経験を積み重ねていくことで、より良いキャリアを形成していく、という考え方です。

たとえ、自分にとって思い通りにならない予期せぬ出来事が起こったとしても、それを無理に避けるのではなく、当人の主体性や努力によって最大限に活用することがより良いキャリアを拓くことにつながることを示しています。

■よりよくキャリア形成できる人が備える5つの行動特性

クランボルツ教授は、そのために必要な行動特性として、

① 好奇心(たえず新しい学習の機会を模索し続ける)
② 持続性(失敗に屈せず、努力し続ける)
③ 楽観性(新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考える)
④ 柔軟性(こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること)
⑤ 冒険心(結果が不確実でも、リスクをとって行動を起こすこと)

の5つを挙げています。

私たちは、理解をしていても、いざ行動に移すことが容易ではありません。しかし、クランボルツ教授が指摘する5つの行動特性を軸に、今起こっていることに前向きに取り組むことができれば、まさに長期的な将来の「何か」をつかむことにつながるのではないでしょうか。

■不確実な時代はこれからも続く

2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、想定外の出来事が突然起こり、変化を余儀なくされる現実を目の当たりにしました。こうした想定外の出来事は、気候変動、国内外の政情不安などをはじめとし、今後もより頻度を上げて発生することが想定されます。

残念ながら、いまだに国内では、男性に比べ女性のほうが経済的な問題で弱者になりやすいという問題が残されています。

主な原因のひとつである働く男女の賃金格差は、引き続き社会的課題として解消を進めるべきですが、金融リテラシーであれば今すぐ、女性個人の努力と裁量で身に付けることができます。今日、明日から取り組める女性活躍の施策こそ、まさに金融リテラシーの向上だと考えます。

多くの女性が金融リテラシーの向上を通じて、自分らしいキャリアを切り拓くために必要な知識を深められれば、従来にも増して不確実な時代を生き抜くことができるはずです。

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小島 明子(こじま・あきこ)
日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト
女性の活躍推進に関する調査研究及び環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からの企業評価業務に従事。主な著書に「女性発の働き方改革で男性も変わる、企業も変わる」(経営書院)

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(日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島 明子)

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