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「チョコモナカより伸びている」新参の"バニラモナカジャンボ"が急成長中のワケ

プレジデントオンライン / 2021年6月25日 11時15分

バニラモナカジャンボ - 写真提供=森永製菓

5000億円超の巨大市場となったアイスクリーム業界で、急成長しているブランドがある。森永製菓の「バニラモナカジャンボ」だ。売れ筋のチョコモナカジャンボの“チョコ抜き”とも言える商品だが、これが大人気なのだ。なぜ支持されているのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんが取材した――。

■「チョコモナカ」より高い120%の伸び

さまざまな業界や業種で売り上げ不振が目立つ中、この20年で1.5倍に拡大した市場がある。全国のスーパーやコンビニで気軽に買えるアイスクリームだ。

2001年度には全体の市場規模が3432億円だったが、最新の2019年度は5151億円。2017年度に5000億円の壁を突破して以来、この3年間は5100億円台となっている(※)

※「アイスクリーム類及び氷菓の販売実績」。一般社団法人・日本アイスクリーム協会調べ

好調が続く同市場の中で、“単品で売り上げ首位”を快走するのが森永製菓の「チョコモナカジャンボ」だ。「チョコレートメーカーならではのアイス」というコンセプトのもと、前身商品の「チョコモナカ」は板チョコをイメージしたモナカにチョコをスプレーして1972年に売り出した。パキッとしたチョコが入っている現在の形は1996年から。来年で半世紀を迎える長寿ブランドだが、20年連続で販売金額も拡大している。

だが、今回は姉妹ブランドである「バニラモナカジャンボ」に焦点を当てたい。2011年に地域限定で発売し、全国発売は2013年以降。市場の中では“新参”だが、近年は確実に売り上げを伸ばしている。コロナ禍の2020年度(4月~2021年3月計)は前年比120%を記録し、伸長率では「チョコモナカジャンボ」を上回った。

バニラモナカ移動年計
出所=森永製菓

なぜ、ここまで好調なのか。関係者のこだわりを紹介しつつ、消費者意識も考察したい。

■「チョコなし」モナカアイスを作ったワケ

好調の理由に触れる前に、売れ筋商品である「チョコモナカジャンボ」から、なぜチョコを抜いたようなアイスを発売するようになったのだろう。

「現在、バニラモナカジャンボは、チョコモナカジャンボとの圧倒的な相乗効果が生まれています。以前は『チョコが入っていないモナカ』という地味な印象を持たれがちでしたが、一方でバニラアイスを好むユーザーは無視できないほど多い。モナカアイスとしての地位を盤石とするためにも、チョコのないバニラモナカの開発に着手しました」

ブランド全体(同社社内ではジャンボグループと呼ぶ)を担当する、村田あづささん(森永製菓 マーケティング本部 冷菓マーケティング部)はこう説明する。

事業活動で気をつけたいのが、同一ブランド内でのカニバリゼーション(共食い・奪い合い)だ。意図的な戦略でない限り、これが起きるとブランド全体が疲弊する。

■発酵乳を少し入れた「さっぱりバニラ」が人気

なぜ、バニラモナカとチョコモナカはカニバリしないのか。

「『消費者がバニラモナカアイスに求める価値は何か』を追求し、差別化していきました。当初は濃厚でリッチな味わいを訴求しましたが、“濃厚=重たい”という方向一点張りでもダメ。消費者調査をしても『さっぱりしているから毎日でも飽きない』という声もいただきます。実は、ほんの少し発酵乳を使うなど工夫を凝らしているのです」(村田さん)

マーケティング本部 冷菓マーケティング部の村田あづささん
撮影=プレジデントオンライン編集部
マーケティング本部 冷菓マーケティング部の村田あづささん - 撮影=プレジデントオンライン編集部

アイスクリーム全体のフレーバーでは、どんなに時代が変わってもバニラ味が人気ナンバー1だ。グローバルで展開する競合メーカーを取材すると、「ここまでバニラフレーバーが支持されるのは日本市場だけ」とも聞く。バニラ好きの人は、その分こだわりも強い。

■パリパリ感を保つため「チョコの壁」を発明

最近の好調を支えるのが、絶えざる改良だ。今年3月には「チョコの壁」と呼ぶ新技術を導入したリニューアル商品を販売した。

「チョコモナカジャンボが掲げる『パリパリ食感』をバニラモナカジャンボでも追求しようと考え続け、モナカの吸湿を防ぐ『チョコの壁』の技術にたどり着きました。構想したのは3年前の2018年で、それから試行錯誤を続けました」

研究開発を担当した森田健一さん(森永製菓 研究所 未来価値創造センター)はこう説明する。森田さんは「低糖質焼成スナック食品」の共同開発にも携わり、特許を取得した研究者だ。

姉妹ブランドとはいえ、バニラモナカとチョコモナカは商品設計が異なる。

簡単に説明すると「モナカの内側にチョコをコーティング」という技術は共通で、バニラモナカには「アイスの両サイドにホワイトチョコの壁」をつけた。「チョコの壁」を充填すると、モナカの皮がすき間部分から吸湿を抑え、パリパリ感を保てるという。

吸湿を防ぐために開発された「チョコの壁」
提供=森永製菓
吸湿を防ぐために開発された「チョコの壁」 - 提供=森永製菓

そもそもアイスの種類別では、前者は「アイスクリーム」(乳固形分15%以上・うち乳脂肪8%以上)で、後者は「アイスミルク」(乳固形分10%以上・うち乳脂肪3%以上)だ。種類別には「ラクトアイス」(乳固形分3%以上)と「氷菓」(それ以外)を加えた4種類があるが、「最近の消費者は種類別もくわしく、味わいにこだわる」と聞く。

■「チョコの壁がズレる…」夢に出てくるほど

今回の「チョコの壁」開発では、どんな苦労があったのだろう。

「まず、実験室レベルではうまくいっても、工場の生産ラインの試運転では安定しませんでした。毎週のように試作品をつくってはトライの繰り返しでした。

またアイスクリーム規格である、バニラモナカジャンボの品質を維持する設計にも苦労しました。モナカの皮にはアーモンドのような隠し味を入れたり、クリームも一部変更したりして、全体の味が損なわれないようにしています」(森田さん)

チョコの壁
撮影=プレジデントオンライン編集部
チョコの壁 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

最初の課題では、研究所内に工場と同じ設備(ラボ)を造り、試作を続けたという。

もともとチョコモナカジャンボは、パッケージにも「パリパリッ!」と掲げるほど、パリパリ感を追求する。アイスでは珍しい「鮮度管理」を掲げ、商品生産の翌日に出荷。自社在庫は5日分しか持たないよう心掛けている。一方、バニラモナカはその域に達しておらず、パッケージも「コクうまアイス&洋菓子風もなか」で訴求する。

チョコの壁が中央につかないとパリパリ感が損なわれる。開発段階の森田さんは、就寝中でも「チョコの壁がズレて、うまくいかない夢を見ました」というほど悩んだという。

■菓子メーカーならではの「皮」の工夫も

ところで、モナカアイスはそこまで吸湿を避ける必要があるのか。別の食品、例えばお店で食べる「天丼」に乗る天ぷらの衣はサクサクだが、「天丼弁当」の衣は食べる時にタレが浸みこみしんなりとなる。だが、その味も消費者は支持していると聞くからだ。

「モナカの皮のパリパリを研究していますが、うまくいかない時は『本当にパリパリを求めているのか』と愚痴も出ます(笑)。でも、皮のパリパリとシナシナを比較すると、パリパリのほうがおいしいという人が圧倒的です。パリパリ食感が心地よいと感じる脳の状態を測定する研究も始めています」(森田さん)

「天ぷらの衣とは違い、モナカはしけても味が浸みこまない」と話す森田さんに、村田さんもこう続ける。

「森永製菓のモナカアイスの皮は、パリパリを前提としており、小麦の配合も違います。菓子メーカーとして、長年ビスケットやクッキーなどで培った技術も応用されているのです。実際に、チョコモナカジャンボでは2001年からパリパリ感を打ち出し、商品改良と鮮度管理を続けた結果、お客さまの支持を受けて売り上げも拡大していきました」

■「全体の4割」なぜシニア層に人気なのか

実は、「バニラモナカジャンボはシニア層の支持が高い」と聞くが本当だろうか。

「本当です。全体の4割以上はシニアのお客さまのご支持を受けています。調査データを見ても、ノベルティアイス(1個売りのアイス)全体平均と比較して、ほぼ倍の支持を受けています」(村田さん)

なぜ、シニアに人気なのか。

「まず、モナカアイスは手で触らず食べられるのがいいと言われます。60代以上の消費生活を聞くと、現役の方も以前のように残業をしなくなり、飲み会も減って自宅で過ごす時間が増えた。在宅生活で口さびしくなり、アイスを食べたらおいしかった。それ以来、アイスを買うというケースが多いですね。強く主張しないアイスが総じて好まれます」(村田さん)

マーケティング本部 冷菓マーケティング部の村田あづささん
撮影=プレジデントオンライン編集部
マーケティング本部 冷菓マーケティング部の村田あづささん - 撮影=プレジデントオンライン編集部

コロナ禍で飲み会が減って在宅時間が増えたのは、働き盛り世代も同様だろう。1個100円~200円程度の商品が多いアイスは財布にもやさしく、年金生活やコロナ収入減生活での息抜きでも選ばれやすい。

日本は高齢化社会になったのに、これまでの消費者調査では60代以降のデータが少なかった。だが徐々に増えてきた。アイスでいえば、年配者=柔らかい商品を好むのではなく、「あずきバー」(井村屋)のような固いアイスも大好きだ。「昔と現在の60代70代は、行動特性がまるで違う」はマーケティングの鉄則だが、今後の調査結果にも注目したい。

■進化する「ながら食べ」にどうコミットするか

昨年と今回、村田さんに聞いた「コロナ禍のアイス意識」の話も紹介しよう。

最初の緊急事態宣言下では、現在よりもっと日本中の外出自粛ムードが強く、2020年4月から“マルチパック特需”が起きた。4月~7月の市場全体は対前年比約102.9%(インテージ調べ)を記録し、巣ごもり用に紙箱や袋に入った複数個数のマルチパックが売れた。

購入時間帯にも変化が出ていた。これまで目立たなかった「9時~11時」「13時~14時」に買う人が増え、逆に19時以降は減ったという。この流れは現在も続く。

喫食シーンで目立つのは、コロナ以前からの「ながら食べ」だ。仕事で一段落した際のながら食べは、在宅勤務では特に進んだ行為。筆者の取材結果でも、息抜きアイスが増えたと答えた人が目立つ。そして最も多いのが「スマホをいじりながら」だ。

「仕事のメールが届いたり、ニュースを見たり、仕事後の動画や映画視聴もあります。そうなるとワンハンド(片手)で食べられるアイスが優位になる傾向にあります」(村田さん)

そうした際でも「五感で楽しむ」のが食品だ。モナカのパリパリ感を追求し、モナカの皮とアイス本体のバランスにこだわる。消費者を飽きさせない細かい改良はこれからも続く。

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高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト/経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

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(経済ジャーナリスト/経営コンサルタント 高井 尚之)

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