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「遺産はわずかな預貯金だけ」そんな家に限って相続で骨肉の争いになる理由

プレジデントオンライン / 2021年9月10日 11時15分

出典=『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』より

在宅介護、施設入居……親の介護にはだいたいいくらかかるのか。『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』(主婦の友社)に登場する介護経験者たちがコスト明細を公開してくれた。また、介護の後にやってくる相続に関する知識もお届けしよう――。

※本稿は、上大岡トメ『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』(黒田尚子監修・主婦の友社)の一部を再編集したものです。

■【わが家のお金事情①】在宅介護の場合

■★ケース1:大腿骨骨折のあと、ひとり暮らし

介護される人:要介護1
介護する人:わらびもちさん(58歳)

義母は7年前に大腿骨を骨折して入院。段差のある自宅での生活がむずかしくなり、サービスつき高齢者向け住宅に入居。ところが2年後に運営会社がまさかの倒産! やむなくワンルームマンションに引っ越し、訪問介護サービスを入れながらひとり暮らししている。このほかに、お風呂用のいすや手すりを介護保険で購入した。

■★ケース2:遠方在住の母。介護サービスが支え

介護される人:要介護2
介護する人:ゆずさん(53歳)

私は東京、母は福岡でひとり暮らし。歩くことが困難で買い物に行けず、お風呂も不安な状態。私もこまめに帰省し、やわらかく調理した食事を宅配便で送っているが、日々の暮らしは小規模多機能型居宅介護が頼り。病院の送迎や買い物の付き添いもお願いでき、ありがたくて涙が!

介護にかかった費用・ゆずさん
出典=『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』より

■★ケース3:一時退院でショートステイを利用

介護される人:要介護2
介護する人:ピースさん(55歳)

末期がんで緩和ケア病棟に入院中の父は、30日を経過した段階で一時的な退院を迫られた。とても自宅に戻れる状態ではなかったので、看護つきの小規模多機能型居宅介護で11日間ショートステイ。アットホームな施設で丁寧なリハビリを受けたおかげで、父は車いすで移動できるようになり、生き返ったようになった。現在は同じ病院に戻って入院中。

介護にかかった費用・ピースさん
出典=『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』より

■★ケース4:毎日ヘルパーさんが夕食を

介護される人:要介護5
介護する人:かっちゃんさん(61歳)

私の隣家に住む両親は二人とも病気があり、徐々に要介護度を上げていった。両親は「デイサービスには行きたくない」と言うので、介護保険は訪問サービスを利用。ケアマネに「歯が痛い」と相談するとすぐに訪問歯科を手配してくれた。ただ、サービスが増えた分、膨大な書類書きや訪問の対応も増え苦労した。

介護にかかった費用(1カ月)・かっちゃんさん
出典=『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』より

■【わが家のお金事情②】施設介護の場合

■★ケース1:母の年金で払える施設を探した

入った施設:介護つき有料老人ホーム
介護した人:まぐのりあさん(57歳)

10年前に認知症と診断された母は2年前まではひとり暮らし。週4回デイサービスを利用し、近所にある私の家で夕食をとる生活だった。いよいよひとり暮らしできなくなったので、当時はデイサービスで通っていた施設への入居を考えたが、その施設は思った以上に高額で、母の月々の年金額をオーバー。貯金をくずすという考えもあったけれど、いつかは破綻すると思い、ケアマネさんに相談して別の施設をいくつか見学。年金の範囲内の施設に入居することができたのでひと安心。

かかった費用・まぐのりあさん
出典=『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』より

■★ケース2:収入が少なくても

入った施設:ケアハウス(軽費老人ホーム)
介護した人:美智子さん(67歳)

70代後半から父がたびたび転倒するようになり、神経性の難病であることが発覚した。うつ病もある母との二人暮らしがむずかしくなり、住み慣れた地域で暮らせる施設を探したところ、2カ月後に隣町のケアハウスに2人部屋のあきが出て入居することができた。ケアハウスは収入によって家賃が変わり、両親は無収入非課税世帯だったので月々1人7万円。ところが、わずか1カ月で母が脳梗塞で入院。結局父はケアハウスを出て老健(介護老人保健施設)に移ることになってしまった。

かかった費用(ケアハウス)・美智子さん
出典=『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』より

■★ケース3:介護に温泉地のホスピタリティーが

入った施設:グループホーム
介護した人:キタさん(60歳)

老老介護状態だった父が亡くなり、レビー小体型認知症の母をひとり暮らしさせることができなくなって施設を探し始めた。特別養護老人ホームは100人待ちと言われ、いろいろ探して最終的に温泉治療つきのグループホームに決めた。いきなり入居させるのではなく、遊びに行ったり、数日ショートステイさせてもらったりして1カ月後に入居。温泉地という土地がら、スタッフが元仲居さんや元芸者さん。ホスピタリティーあふれる介護なので安心している。

かかった費用・キタさん
出典=『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』より

■★ケース4:高額だけど24時間看護で安心

入った施設:24時間看護サービスつき高齢者住宅
介護した人:ポメロさん(55歳)

91歳の伯母は、足腰の痛みと不自由さが増し、体調も悪化して、ひとり暮らしがむずかしくなった。子どもがいないので、姪である姉と私が施設探しに奔走、明るい雰囲気の24

時間看護サービスつき高齢者住宅に入居を決めた。介護サービス費や生活費を加えると年金額をオーバーするので、伯母の自宅を売却して補塡することに。いまでは伯母も施設を気に入ってすっかり健康をとり戻し、「100歳までは生きられそう」と言っている。

かかった費用・ポメロさん
出典=『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』より

■【介護のお金に関する疑問①】

Q(上大岡トメ)お金さえあれば安心ですか?
A(FP黒田尚子)「お金」「情報」「ネットワーク」の3つが必要です

私の知り合いに「介護はお金で解決する!」と豪語している人がいました。「遠方に住む親に介護が必要になったら、老人ホームに入居させる。自宅にいたいと言うなら、介護保険の限度額を超えてプロに介護してもらう」と言うのです。それはある意味、ひとつの正解ではあります。

でも実際には、多少弱ったくらいでは「まだ施設には入りたくない」「他人を家に入れたくない」という高齢者は少なくありません。その場合、お金で解決できないことは案外多いと気づくかもしれません。

たとえば毎日のゴミ出し。ゴミ置き場が少し遠くて、足の悪い親にはゴミ出しがつらいという場合、お金より必要なのはご近所さんとのおつきあいです。お隣さんについでにゴミ出しをお願いしたり、地域のゴミ出しボランティアに依頼したりするほうが手っとり早いのです。買い物や調理を家政婦さんに依頼するより、近所のスーパーの宅配や、お弁当の配達兼見守りサービスのほうが受け入れやすいかもしれませんよね。そう考えたとき、必要になるのはお金だけでなく、情報とネットワークです。

もちろん、お金も重要です。特に要介護度が上がってくるとプロの出番は増えてきます。貴重なお金を効果的に使うためにも、情報が必要です。情報を得るためにも人的ネットワークは欠かせません。お金・情報・ネットワーク、この3つすべてが大事だということを、どうぞお忘れなく。

■【介護のお金に関する疑問②】

Q(上大岡トメ)大した財産はないから介護後の相続もモメないよね?
A(FP黒田尚子)そう言い切れるのは「相続人1人、相続税がかからない」のみ

「相続問題や相続税なんて、わが家とは無関係」と思っている人も多いかもしれませんが、家庭裁判所の相続問題の相談件数のうち、約3割は相続額1000万円以下のケースです。

上大岡トメ『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』(黒田尚子監修・主婦の友社)
上大岡トメ『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』(黒田尚子監修・主婦の友社)

なかでも典型的なのは、「遺産が実家とわずかな預貯金だけ」という場合。不動産は簡単に分割することができないので、きょうだいのうちの1人がその家を相続し、ほかのきょうだいに相当額を渡すことになるのですが、「渡す現金が用意できない」ということでトラブルになるのです。また、親と同居して介護も担っていた子どもが家を相続する場合、本人は「親の世話は全部自分がやったのだし、ここに住んでもいるのだから相続するのは当然」と思ったとしても、ほかのきょうだいがそう思わず相当額を要求される可能性もあります。

このようなトラブルを回避するには、介護の段階から問題点をうやむやにしないことが必要です。介護の役割分担がスムーズな家族は、相続問題もスムーズです。そうでない場合には、法的に有効な遺言を残してもらいましょう。

なお、遺産には「遺留分」というものがあります。もし、親が「遺産のすべてを長男に相続させる」と遺言状に記載されていたとしても、法定相続人(配偶者、子ども、孫)には最低限の額を受けとる権利があります。遺産の額が2000万円で、相続人が子どもだけの場合、遺留分は2分の1です。1000万円を長男が相続し、残りをほかの子どもが分けることになります。

遺言を残しておいたほうがよいケース

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上大岡 トメ(かみおおおか・とめ)
イラストレーター/エッセイスト
東京生まれ横浜育ち。東京理科大学工学部建築学科卒。建設会社を経てイラストレーターに。一級建築士、講道館柔道初段、日本ヨーガ瞑想協会登録教師。著書にミリオンセラー『キッパリ! たった5分で自分を変える方法』、『のうだま1』(池谷裕二氏と共著)、『日本のふくもの図鑑』、『老いる自分をゆるしてあげる』など多数。

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黒田 尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書に『親の介護は9割逃げよ「親の老後」の悩みを解決する50代からのお金のはなし』など多数。

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(イラストレーター/エッセイスト 上大岡 トメ、ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子)

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