「○○の画像をすべて選んでください」これから人間の仕事はどんどんこうなっていく
プレジデントオンライン / 2021年10月8日 9時15分
※本稿は、ひろゆき『ひろゆきのシン・未来予測』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。
■AIは「肉まんが売れた理由」までは分析できない
仕事の未来を語るうえで外せないのが、「AI」についてです。僕もいろいろな場で、「AIは人間の仕事を奪うのか」といった話をしてきました。
しかし、もっと前提の「AIとは何か」をわかっていない人が多すぎます。一番多いのは、統計とAIを混同しているパターン。そこでまずは、AIの基礎知識を確認していこうと思います。
AIの機械学習では、ビッグデータを読み込ませます。
たとえば、コンビニの販売データを大量にAIに学習させると、「X店では朝に肉まんが売れる」という答えを出してきたりします。
でも、「なぜX店で朝に肉まんが売れるのか」という理由までは分析できません。
一方で、統計は「客層が似ているY店では30代のビジネスパーソンが多く訪れて、彼らが肉まんを買っていく。だから、似たような顧客が多いX店では朝に肉まんが多く売れる」という因果についても考えていきます。
つまり、AIは正しい答えを出しては来るものの、その答えに頼りっぱなしでは因果を見極める機会を失う危険性もあるのです。
■結果は出ても、社会的には間違った方向に進む危険性
かつて、IBMが開発した「ワトソン」というAIに「優秀な人材を採用する」というミッションを行わせたことがありました。すると、ほぼ男性ばかりが合格してしまいました。
ワトソンは「優秀な人とは、若くして出世して高い給料を取っている人だろう」と考えたわけですが、実際に、そういう人は、アメリカ企業においても圧倒的に男性が多いのです。
では、ワトソンが導き出した指示に従っていればいいのか。
それをやっていれば、ますます性差が広がっていくだけですし、そもそも「これまで女性に出世の機会が与えられなかったために男性より女性のほうが給料が安い傾向にあるのかもしれない」という因果を見落としてしまいます。
AIは統計と違って、結論に至る過程がブラックボックスなのです。この違いを理解していない人があまりにも多すぎます。
今後はある意味「AIの下請け」として、AIが提示した答えにそのまま従ってしまい、先ほどの男性優遇の例のように、結果は出るけれども、社会的には間違った方向に進んでいくというトラブルが起きる危険性があります。
■「ホワイトカラー」の仕事はほとんどなくなる
では実際に、AIが仕事をどう変えるのかを見ていきましょう。
野村総合研究所がオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士と共同で行った研究結果は、大きな衝撃をもって受け止められました。
電車や路線バスなどの運転士、経理など一般事務員、梱包や積み下ろしなどの単純作業を担う人たちの仕事は、99%以上の高い確率で今後AIに取って代わられるというのです。
精神科医や作業療法士、言語聴覚士など自動化の可能性が0.1%と非常に低い職業も指摘されましたが、全体を通しても、日本の被雇用者の49%が高いリスクにさらされていることが報告されました。
それほど、AIにできる仕事が増えているわけです。
かつては、給料の高い安定した職業のトップであった銀行員も例外ではありません。メガバンクはどこも、AIを導入して大規模な業務量削減を行うと発表しているし、実際に人員削減が進んでいます。保険会社もしかりです。
要は、「自分はホワイトカラーだ」と思っている人の仕事はほとんどなくなるのではないでしょうか。給料が高い人の仕事ほど、AIにやらせたほうが企業にとって効率がいいのは明らかです。
逆に、給料が安い仕事をAIに置き換えるためにコストをかけるのはばからしいので、そうした仕事は残るでしょう。
とはいえ、その仕事を担う人数が多ければ話は別です。たとえば、給料の安いドライバーを数多く抱えているなら、初期投資をしてもAIによる無人運転のシステムをつくってしまうほうがいいからです。
■「業界」よりは「仕事内容」で考える
驚くことに、ゲーム動画をAIに見せると、そのゲームに近いものをつくってしまうそうです。ということは、AIにスーパーのレジ打ちの様子を見せれば、それができる未来もいずれやってくるでしょう。
パイロットの操縦を見せて学ばせれば、飛行機の離着陸もできるようになる可能性だってあります。「まさか、あの人気職業が……」と思われるような仕事が、10年後にはすっかりなくなっているということが間違いなく起きます。
スーパー業界は残るけれど、レジという仕事はなくなる。航空業界は残るけれど、パイロットという仕事はなくなる。つまり、どのような業界であっても、AIに代替させられる作業とそうではない作業があるということです。
たとえば、出版社なら文字校正とか写真の修正などは人間でなくAIができるようになるでしょう。ただ、偏屈な作家とお酒を飲みながら、執筆依頼をすることはAIではできません。
このように、人間同士のコミュニケーションを必要とする仕事はAIに駆逐されにくいのです。
ただし、コミュニケーションといっても、商品の注文などマニュアル化できるような簡単なやりとりは別です。
すでに、ピザ屋の注文をするくらいのコミュニケーション能力を持つ「ヒトシステム」をグーグルが公開しています。定型化したやりとりが中心の仕事はAIが担うようになるでしょう。
■機械のために働く、SFのような未来
よく、機械が人間の仕事を代替してくれるから、僕らは遊んで暮らせるようになると語る人がいます。
これは間違いではありませんが、機械に仕事をさせることができるのはごく一部の人だけです。それ以外の人は逆に「機械に仕事をさせられる」未来がやってきます。
「reCAPTCHA(リキャプチャ)」という機能を知っているでしょうか。reCAPTCHAはグーグルが提供するセキュリティサービスで、ボットによる不正アクセスからウェブサイトを守ってくれます。
「○○の画像をすべて選択してください」という画像認証など、ネットを使う人なら一度は目にしたことがあると思います。
これを自動で通り抜ける「2Captcha」というサービスをロシア人が開発したことが話題になりました。このサービスを使うと、reCAPTCHAのセキュリティを突破できるので、たとえばツイッターのアカウントをいくつでもつくることができます。
これだけ聞くと、すべてプログラムで自動化されているのかと思いますが、実は、人が1件1件、入力作業を行っているのです。まさにプログラムのために人間が働かされている状態です。
今後はこうした仕事がどんどん増えていくでしょう。機械に任せて遊んで暮らすどころか、機械のために働く、SFのような未来がやってくるのです。
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2ちゃんねる創設者
本名は西村博之。1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、近著『僕が親ならこう育てるね』(扶桑社)ほか『無敵の思考』『働き方 完全無双』(大和書房)、『論破力』(朝日新書)などがある。
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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき)
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