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「2カ月待たせてマスク2枚」世界中がずっこけたアベノマスク騒動【2020年BEST5】

プレジデントオンライン / 2021年12月10日 10時15分

布製マスクを着用して参院決算委員会で答弁する安倍晋三首相=2020年4月1日、国会内 - 写真=時事通信フォト

2020年(1~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。政治経済部門の第3位は——。(初公開日:2020年4月3日)

■ある意味でコロナ対応策で打ち出した最大のサプライズ

安倍晋三首相が打ち出した「全世帯に布マスクを2枚届ける」という方針が、大炎上している。

新型コロナウイルスの爆発的な拡大により、マスク不足は今なお続いているが、緊急事態宣言がいつ出るかという緊迫した局面での「マスク配布」の知らせに、国民はずっこけてしまった。しかも2枚。絵に描いたような「Too Little, Too Late(少なすぎ、遅すぎ)」の対策だ。降ってわいた「アベノマスク」騒動とは一体なんなのか。

■前日からつけていた「小ぶりのマスク」は記者団の話題だった

ある意味で安倍政権がコロナ対応策で打ち出した最大のサプライズだった。安倍氏は1日の政府対策本部で、再利用が可能な布製のマスクを全世帯に2枚ずつ配布する方針を表明した。

安倍氏は、政府が電機メーカーのシャープがマスク生産を始めるなどした結果、3月には月6億枚の供給が可能になり、さらに月7億枚を超える供給体制を確立できるという見通しを示した上で、「依然として店頭では品薄の状態が続いている。本日、私もつけている布マスクは、洗剤を使って洗うことで再利用が可能だ。全国で5000万枚あまりの世帯、1住所あたり2枚ずつ配布する」と宣言したのだ。

前日から安倍氏は布製で小ぶりのマスクをつけていた。最近流通している不織布のサージカルマスクではなく「昭和のころのマスク」というものだった。安倍氏の「特異な」マスクのことは記者団の間でも話題になっていた。それが、国民にプレゼントされることになったのだ。

マスクは、新型コロナが日本で広がり始めた1月下旬から日本の薬局やコンビニで入手困難になっていた。政府はそれ以来、マスク対策に力を入れる姿勢を見せてきた。それから2カ月以上たったが、今も足りない。国民の間でフラストレーションがたまっている時の「2枚」配布発言だ。

■とにかく突っ込みどころ満載の「アベノマスク」

マスクが配布されるのはいい。しかしこの期に及んでたったの2枚とはどういうことか。しかも1世帯で2枚だから、4人家族ならば2人で1枚。洗って再利用できるといっても少なすぎる。

しかも世界保健機関(WHO)は、布製マスクを「推奨しない」としている。布は織り目が粗いので、ウイルスを防ぐ効果が薄いとみられているからだ。

さらに、先ほど書いたように配布されるマスクは、見た目が古めかしい。若者は使いたがらないだろう。

路上生活者(ホームレス)やネットカフェで生活する人など、住所のない人にはマスクは届かない。突っ込みどころは尽きない。

誰が呼んだか、このマスクは「アベノマスク」と言われ嘲笑の対象となってしまっている。

■右からも、左からも、海外からも批判

鳩山由紀夫元首相はツイッターで「昨日はエイプリル・フール。でも直前に志村けんさんが亡くなるショックで今年はそれどころではないと思っていた矢先に、安倍首相が布マスクを全世帯に2枚配布しますと決めたとのこと。なかなかやるなぁと思っていたら、本当になさるようだ。今どきなぜ世帯に2枚? 早急にやって欲しいのは減税なのに」とツイート。

一方、安倍応援団の論客として知られてきた百田尚樹氏も「一つの家庭に2枚の布マスク? なんやねん、それ。大臣が勢揃いして決めたのがそれかい! アホの集まりか。全世帯に郵便で2枚のマスクを配るって…。そんなことより、緊急事態宣言とか、消費税ゼロとか、金を配るとか、パチンコ店禁止とか、エイヤッ! とやることあるやろ」とつぶやいた。右からも左からも、たたかれている。

ブルームバーグ通信も「計画は物笑いの種になっている」と配信。「アベノマスク」は世界を駆け巡っている。

今、新型コロナの感染は日々広がりを見せている。国民は生命の不安と、外出自粛などの影響による経済低迷による生活の不安を感じながら日々暮らしている。そして安倍氏がいつ緊急事態宣言を出すか、有効な経済対策を打ち出すか、固唾をのんで見守っている。

そこで、緊急事態宣言でも経済対策でもなく「マスク」が出てきた。まさに大山が鳴動して「マスク2枚」。怒るのも無理もない。

■もちろん「ないよりはいい」という声はあるが…

菅義偉官房長官はマスクが1枚200円になることを明らかにしたうえで「マスクがないという声が多いのでスピード感を持って行うべきだと判断した」と説明した。単純計算で200億円以上かかる。もちろん「ないよりはいい」という声はあるが、この予算をほかに使うべきだという声のほうが圧倒的に多い。国民が今、求めているのは布マスクではないし、そもそも、遅い。

3日付の朝日新聞によると、このアイデアは経済官庁出身の「官邸官僚」の提案で、1カ月以上前から温められていたのだという。

新型コロナ対応において安倍首相は、政府・与党や専門家の意見を十分に聞かず、経済産業省出身の今井尚哉首相補佐官らの意見を聞いて結論を出すことが少なくなかった。小中高校の一斉休校要請などはその典型で、国民の混乱を招くこともあった。

■官邸官僚のアイデアと国民のニーズとの深刻なずれ

今回の「アベノマスク」騒動でも同様の構造が浮かび上がる。そして官邸官僚のアイデアと国民のニーズとずれが生じていることも露呈した。

安倍氏は2日の衆院本会議で「急拡大するマスク需要の抑制を図り、国民の不安解消に資するように速やかに取り組みたい」と説明した。ただ、今回の対応が不評であることは、本人の耳にも入っている。

安倍政権は、国民から批判を受ける時、新しい方針を打ち出して目をそらしてきた。今回の場合、それは緊急事態宣言なのか、経済対策なのか、それとも……。いずれにしても「サプライズ効果」に期待せず、十分な議論の末、多くの国民が納得する方針が出されることを願うばかりだ。

ただし、布マスクは4月中旬ごろから各戸に配布が始まることは、指摘しておきたい。つまり、新しい方針を打ち出して国民の関心をそらすことに成功したとしても、自宅に布マスク2枚が届く時、国民はもう一度「アベノマスク」のことを思い出すのだ。

(永田町コンフィデンシャル)

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