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「批判は私がすべて負う」で支持率上昇…岸田政権のコロナ対応はどこまで本気なのか

プレジデントオンライン / 2021年12月10日 15時15分

行政改革推進会議で発言する岸田文雄首相(右端)。右から2人目は牧島かれん行政改革担当相=2021年12月9日午後、首相官邸 - 写真=時事通信フォト

■「対策で大事なのは、最悪の事態を想定すること」

11月6日、臨時国会が召集され、岸田文雄首相が衆参両院本会議で所信表明演説を行った。演説の中で目を引いたのは新型コロナ対策に向けた強い決意だ。

岸田首相は世界各国で感染を広げている、新たな変異ウイルスのオミクロン株の対応で水際対策を強化したことについて「対策で大事なのは、最悪の事態を想定することだ。状況が十分に分からないのに慎重すぎるのではないかとの批判は私がすべて負う覚悟だ」と語った。

岸田政権は安倍・菅政権が「新型コロナ対策で後手に回った」と批判されたことを反省し、オミクロン株に対して先手先手の水際対策を取っている。「屋根を修理するなら、日が照っているうちに限る」というアメリカのジョン・F・ケネディ元大統領の名言も引用し、新型コロナの感染状況が落ち着いているうちに防疫を徹底していくことへの理解を求めた。

国土交通省による国際航空便の新規予約の停止要請は、航空各社への通知を出してわずか3日で取り消す事態となったものの、岸田政権に対する支持は上昇傾向にある。岸田首相の「批判は私がすべて負う覚悟」という決意の言葉に国民が期待しているからだろう。

■読売調査では支持率は56%→62%へと上昇

たとえば、読売新聞社が12月3~5日に実施した世論調査では、岸田内閣の支持率は62%で前回調査(11月1~2日)から6ポイント上昇し、不支持率は22%(前回29%)となった。スピード感のある水際対策が評価され、全世界からの外国人の新規入国を停止したことについても「評価する」が89%だった。

読売新聞は自民党政権を支持してきた保守を代表する新聞で、保守層が読者である。しかし、そうした点を差し引いて考えても岸田内閣の支持率の上昇は確かな事実だ。

NHKの世論調査(11月5日~3日間実施)でも、岸田内閣を「支持する」と答えた人は、衆院選前の10月の調査より5ポイント上がって53%だった。一方「支持しない」と答えた人は、2ポイント下がって25%だった。

所信表明演説では、原則は2回目から8カ月以上の人が対象だったワクチンの3回目接種に関し、オミクロン株への効果をある程度見極めたうえで前倒しする考えを明らかにした。さらに岸田首相は「息の長い、感染症危機への対応体制」の整備も掲げた。具体的には、①国産のワクチンや治療薬の開発製造に5000億円規模の投資を行う、②ワクチンと治療薬を早急に薬事承認できるよう法整備を実施する、③来年6月までには司令塔機能の強化策をまとめる――と表明した。

■岸田首相のコロナ対策は息の長い長期的対応なのか

岸田首相は「息の長い、感染症危機への対応体制」と所信表明演説で説明したが、本当に息の長い、長期的な対策なのだろうか。新型コロナウイルスそのものの研究を忘れていないか。ウイルスの研究は長く続けなければ成果は得られない。

新型コロナがいつ、どうやって動物から人に感染するようになったのか。その間どんな変異がどのくらい起きたのか。時間をかけて探ることで、今後発生する変異ウイルス(変異株)を予測できる。新型コロナウイルスに限らず、ほかのウイルスのパンデミック(世界的流行)も予測して防ぐことが可能だ。

新型コロナウイルスの起源はどの国も未だ解明できていない大きな謎である。世界は力を合わせてこの謎に挑むべきで、日本は欧米など世界各国の研究機関と協力しながら研究を進めたい。

■武漢ウイルス研究所が2013年に発見した「新型コロナ」

少々専門的な話になる。中国湖北省の武漢ウイルス研究所のチームは、SARS(サーズ、重症急性呼吸器症候群)のコロナウイルスの起源を解明する調査研究を行ってきた。ちなみにこの研究所は一時、新型コロナウイルスの漏洩が疑われ、その名が世界中に知れ渡った。

武漢ウイルス研究所は2013年に雲南省昆明市の通関(トングアン)という町の銅山に生息するコウモリから新型コロナと遺伝情報が96%一致する、コロナウイルス「RaTG13」(Raはコウモリの一種を、TGは地域を、13は2013年を指す)を発見している。この銅山の坑道では、コウモリのフンを清掃していた作業員が重い肺炎を相次いで引き起こし、死者も出ていた。武漢ウイルス研究所は昨年2月、イギリスの科学誌ネイチャーにこのRaTG13を発表して世界の注目を浴びた。

3匹のコウモリ
写真=iStock.com/CraigRJD
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CraigRJD

しかしながら、96%の一致と言っても遺伝子的には4%の差は大きく、しかもRaTG13と新型コロナの祖先は40年~70年前に分かれた可能性が高く、RaTG13は新型コロナの起源に直接は結び付かない。この40年~70年の期間に起きた変異を探る必要がある。

■朝日社説は批判ばかりで、岸田首相を評価する余裕がない

12月7日付の朝日新聞の社説は「衆院選で国民の信任を得た岸田首相が、初めて本格的な論戦に臨む臨時国会が召集された。安倍・菅両政権下で傷つけられた『言論の府』を立て直す出発点にしなければならない。首相が掲げる『丁寧で寛容な政治』の内実が問われる」と書き出した後、こう批判する。

「(所信表明演説で)国際線の新規予約停止をめぐる朝令暮改には触れなかった。国土交通省の事務方の判断とはいえ、混乱を招いた経緯は、首相自身の口から詳しく説明する責任がある」

自民党政権を嫌う朝日社説だけに批判は手厳しい。岸田首相が「批判は、私がすべて負う」とまで述べたのだから、まずは塩を送ってもいいのではないか、と沙鴎一歩は思う。いまの朝日社説は対峙(たいじ)する相手を評価する余裕がない。

この後も朝日社説は次々と批判する。

「看板政策の『新しい資本主義』の実像もまだ見えてこない」
「核兵器禁止条約については、今回も触れなかった」
「首相のきのうの演説は、安倍・菅両氏の過去の所信を上回る長さだった。しかし、単に言葉数が多ければ丁寧というわけではない」

朝日社説のこうした批判を目にすると、どうしても気分が落ち込む。日本を代表する新聞社の社説として度量の大きさと深さを見せてほしい。

2019年3月21日、朝日新聞のロゴが見えるビル
写真=iStock.com/JHVEPhoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JHVEPhoto

最後も朝日社説は「野党の厳しい質問もはぐらかさず、正面から答える。首相の言う『丁寧な説明』は、明日以降の質疑で試される」と主張するが、岸田首相には朝日社説の批判を跳ね返すような見事な国会答弁と政策の実行を期待したい。

■防疫と社会・経済活動の両立こそ、いまの日本に欠かせない

12月7日付の読売新聞の社説は「所信表明演説 政策実現へ具体的な手順示せ」との見出しを掲げ、「変異株の国内流入を防ぎ、経済の再生を進めることが重要である。その具体的な手順を示し、着実に成果を上げていかねばならない」と書き出す。

防疫と社会・経済活動の両立こそ、いまの日本にとって欠かせない政策である。読売社説が主張するように今後は国民に分かりやすく、具体的手順を公表していくことだ。

読売社説はワクチンについて「肝心のワクチン供給が間に合うのか、はっきりしない。市町村への配分が進まずに混乱した今年前半の反省を踏まえ、十分な量を確保することが大切だ。余剰ワクチンの活用や、優先接種の基準づくりも急務である」と訴える。

「適量の確保」「余剰分の活用」「優先接種」はワクチン行政の基本である。世界各国に急速に広がり、感染力が強いとみられる新変異ウイルスのオミクロン株の出現に行政が動揺すると、こうしたワクチン行政の基本がないがしろになる危険性がある。ここは岸田政権にしっかりとしたリーダーシップを取ってもらいたい。

読売社説は最後に日米同盟に言及する。

「首相は、早期に訪米し、バイデン大統領と会談する意向を示した。北朝鮮のミサイル発射などを念頭に、『敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する』と語った」
「強固で安定した日米同盟は、アジアの平和と繁栄に不可欠だ。日米が一体となって抑止力を高めるため、効果的な方法に関する議論を急ぐべきである」

岸田政権は新型コロナ対策に力を注ぐだけでは駄目だ。日本という国家の利益を守るには、内政から外交までしっかりとしたビジョンを持ってそれを目標に邁進していくことが重要である。なかでもアメリカとの関係をさらに確固たるものにしてそれを足場に中国や北朝鮮、ロシアなどと向き合っていかねばならない。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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