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大谷翔平を超一流にした「目標設定・自己分析・実現シナリオ」全手法

プレジデントオンライン / 2022年1月14日 10時15分

大谷翔平●1994年生まれ、プロ野球選手。MLBロサンゼルス・エンゼルス所属。打者・投手を両立させる「二刀流」の選手として活躍中。2021年に日本人史上2人目となるメジャーリーグのシーズンMVPを獲得した。 - 写真=Getty Images

2021年、ア・リーグのMVPに選ばれたメジャーリーガーの大谷翔平。世界を揺るがすトップアスリートへと変貌させた裏には、とあるノートが存在していた。「プレジデント」(2022年2月4日号)の特集「運をつかむ習慣」より、記事の一部をお届けします──。

■オープンウインドウ64

私が考案した教育手法「原田メソッド」は、大谷選手が育った花巻東高等学校でも野球部の佐々木洋監督が指導の中に一部取り入れており、大谷選手はその後日ハム時代に教育ディレクターから本格的に指導を受けました。そのため、大谷選手も原田メソッドを活用して目標設定を行っていました。原田メソッドには5つのツールがあり、その中のひとつが曼荼羅のような図、オープンウインドウ64(OW64)です。

大谷選手が高校1年次に作成したOW64
大谷選手は高1にして「運」「人間性」といった、無形のものの大切さを理解していたと原田氏は語る。

これだけを見ると、「OW64が大谷選手の成功のもとなのか」と思ってしまいますが、OW64だけを作成しても十分な効果があるとはいえません。原田メソッドでは、結果を出すためのシナリオ作りとして長期目的・目標設定用紙を作成し、その達成に必要な行動をOW64に記しているので、長期目的・目標設定用紙とOW64はセットで行う必要があります。

それだけではなく、振り返りのための日誌や習慣形成のためのルーティンチェック表を毎日つけて、目標達成のための行動ができたかを確認しています。また、シナリオは1年や四半期など短期間で設定するものなので、何のためにその目標を立てるのかをロジックツリーとして構築することも大切です。つまり原田メソッドは、ロジックツリー、長期目的・目標設定用紙、OW64、日誌、ルーティンチェック表の5つのツールによって実践されるということを念頭に置いてください。

■無形のものが大切になる

大谷選手は高校1年次、OW64の中心に「ドラフト1位、8球団指名」という目標を掲げました。そのために必要なこととして、コントロールや体づくりといった8要素を設定しているのですが、この8つの柱を「基礎思考」と言います。その中のひとつに「運」がありますが、今回はなぜ彼がここに運を入れたのかに注目してみたいと思います。

基礎思考の要素は「心(メンタル)・技(テクニカル)・体(フィジカル)・生活(ライフスキル)」からなります。この4つのうち、どれが欠けても長期的な目標を達成することはできないのですが、メソッドを理解していない人がOW64を作成すると、「技」に偏ったものができます。

原田メソッドにおける「運」とは、「長期的にプラスの結果を生み出す力」だと考えています。スキルや結果だけを追求した結果、一時的にうまくいっても体を壊したり、周囲から人が離れて失敗した例は枚挙にいとまがありません。長期的にプラスの結果を生み出すには、周囲の助力やメンタルといった、無形のものが大切になるということを大谷選手は理解していたといえます。

そんな大谷選手が、運を高めるために実践しているのが日誌です。ここでは「心・技・体・生活」について、成功・失敗したときの心の状態や、やり方などを毎日自己分析していました。これを行うことで、彼は成功したときの自分の思考や行動を把握し、意図的にうまくいった状態に自らを持っていき、成功の確率を上げていました。この「なぜ成功したのか?」「なぜ失敗したのか?」という視点がなければ、あらゆる行動が単なる出たとこ勝負になってしまい、まさしく運任せになってしまいます。行動を分析し、成功の確率を高めているからこそ、運が強いと思われているのです。

また、結果を出そうと思ったら「自分はできる」という自己効力感がないとパフォーマンスは上がりません。自己効力感が高い人を分析すると、結果予期と効力予期という2つの感覚を持っていることが多いのです。結果予期は目標を達成したときのイメージを明確に持つことで、効力予期は目標達成のために自分で行動を起こしていくことなのですが、この2つが働いていることを自己効力感、つまり自信と呼んでいます。

■適切な目標設定と自己分析

普通の人はOW64を見るとこの用紙自体に驚くのですが、私たちのような教育者は「ドラフト1位、8球団指名」という目標設定に驚きました。これを書いた高校1年生のときの大谷はまだ甲子園にすら出場していないので、普通なら「甲子園出場」と書くところですよね。しかし、自己分析によって自信を持てていた大谷選手は「ドラフト1位、8球団指名」という未来を描くことができたのです。

また、大谷選手は、人を観察する力に優れていました。国内外の選手を観察して、その人が結果を出すための思考や行動をモデリングして参考にしています。人の成功を妬むのではなく、そこからヒントを得て自分の成功に落とし込む力に長けていたことが、さまざまな場面で勝負強さや、勝率の高さとして表れているのです。

結果はその人の一部分にすぎない
よい結果は技術だけが生み出すものではなく、無形のものによって支えられている。

そして、運を高めパフォーマンスを上げるために必要な要素として、支援者の存在があります。長期的な成功のためには「有形」のものだけではなく「無形」のものを大切にする必要があると述べましたが、「自分」のほかに「社会・他者」という視点を持てるかも大切です。自分のことばかりではなく、大谷選手はホームラン競争で得た賞金を球団スタッフに分配したり、通訳の水原一平さんを「もっとも支えてくれる人」と評しています。こうした姿勢が他者からの信頼を勝ち取り、パフォーマンスを上げるための味方をつくっていることは、言うまでもありません。

大谷選手の輝かしい成績と運の強さは、綿密な計算の上に成り立っており、決して「運任せ」が良い方向に転がり続けたわけではないのです。成功を勝ち取るためには、適切な目標設定と自己分析が不可欠です。

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原田 隆史(はらだ・たかし)
原田教育研究所社長
1960年、大阪市生まれ。目標を達成するための力をツールを活用して高める教育手法「原田メソッド」の考案者。同メソッドは多くの企業やスポーツチームが導入している。

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(原田教育研究所社長 原田 隆史 構成=作田菜保子 写真=Getty Images)

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