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鼻の横を撫でる、耳たぶを引っ張る…「交渉の達人」が知っている無意識の動きの意味

プレジデントオンライン / 2022年1月15日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simpson33

交渉上手な人は、どうやって自分の要求を通しているのだろうか。交渉術アドバイザーのロジャー・ドーソンさんは「言葉以外でも交渉を有利に運ぶ方法はある。座る場所を変えたり、相手の手元やしぐさを観察してみたりするといい」という――。

※本稿は、ロジャー・ドーソン、島藤真澄訳『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■味方とは席を離して座ると効果的なワケ

交渉上手なパワーネゴシエーターは、交渉の席での席順が結果を左右することを理解しています。

工事担当の副社長と開発会社の社長のように、1人で2人を相手に交渉する場合は、2人の間に座らないように気をつけてください。なぜなら、相手2人の間で視線や合図を交わしても、それをキャッチすることはできないからです。また、当然のことながら、テーブルを挟んだ席の2人では、ボディランゲージを簡単に見ることはできません。しかも、テニスの試合のように頭を前後に動かさなければならないという、居心地の悪い状態になってしまいます。

相手の座る位置をどうやってコントロールすればよいでしょう。まず相手に座ってもらい、自分はテーブルを挟んで反対側に位置するように座りましょう。

大人数で交渉する場合、双方の人数が同じであれば、テーブルの反対側に座るのが一般的です。もし双方の数が不均等であれば、テーブルの片側にいる大人数のグループがもう片側を支配できるように、テーブルの片側に並ぼうとします。しかし、もしあなたが小人数グループであれば、自分のチームの席を離してみるといいでしょう。圧迫感がなくなりますからね。

同じ交渉チームの2人がそばに座っていると、1つの声で話しているように思われがちです。席を離すと、2つの意見を述べているように見え、より強い印象を与えます。自分の味方が1人なのに、相手が3人連れてきて、円卓を囲んでいたら、一緒に座りたくないはずです。

■「いつ本題に入るか」相手のOKサインを見抜くには

全員が揃ってテーブルに着いたら、次に考えるべきことはこうです。いつ世間話をやめて、真剣なネゴシエーションを始めるべきか。パワーネゴシエーターたちは、みんなの気持ちを落ち着かせるために、取るに足りない雑談で緊張をほぐすのはいつでもよいことだとわかっています。しかし、いつ本題に入るのでしょうか。

パワーネゴシエーターは、ジャケットのボタンに気をつけます。男性は通常、あなたと一緒にいて心地よさを感じるまで、ジャケットのボタンを留めています。もし、ボタンを留めたままのメンバーがいたら、彼らが手を伸ばしてジャケットの前を開けてリラックスするまで、世間話を続けましょう。

以前、ある結婚披露宴でアンケートをとったことがあります。アンケートをとった人は、その場にいた人が親族なのか、招待客なのかわからなかったそうです。その時、ジャケットのボタンを外していたので、家族の一員として来ていた人を80%の精度で見分けることができました。親族以外は、ずっとボタンを留めていました。

以下に、あなたがビジネスの話を始めるのに十分なほど、相手がリラックスしていることを示す他の兆候を紹介します。

●肩の力が抜けている。
●手はリラックスした状態で、ポイントを強調するためだけに使われる。
●声の調子、音色、スピードが安定していて気楽なものになっている。
●せわしくまばたきしていない。
●両手は握らず、離れている。
●微笑みを浮かべている。

■相手の不快感は「まばたきの回数」に出る

交渉の席を見渡しながら、人々のまばたきの頻度に注目してみてください。観察したことがない人は、人間がどれほど頻繁にまばたきをしているかに驚くことでしょう。1分間に60回のまばたきをすることも珍しくありません(ただし、人によってはもっと遅く、1分間に15~20回程度のまばたきの人もいます)。まばたきの回数が劇的に変化した場合、その人はあなたの話に非常に注意を払っているか、極度の緊張状態にあるかのどちらかで、真実を語っていない可能性があるため、この情報は後で必要となります。

ボディランゲージを学ぶには、テレビを見るのも効果的です。ニュースの音を消して、コメンテーターのまばたきに注目して見てください。彼らがどんな話をしているのかがわかるので、きっと驚くでしょう。イギリスでは、「見逃された嘘つき」という表現があります。相手が非常に速い速度でまばたきをしていることに気づきましょう。

これは、相手が大げさに言っているか、嘘をついているか、あるいは自分が言わなければならないことに非常に不快感を感じていることを示す、非常に確実な兆候です。ニュースのコメンテーターを音を消して見ていると、ニュースによってまばたきの回数が違うことに驚かされます。彼らが読まなければならないニュース記事に不快感を覚えているとき、まばたきの回数が4~5回増えるのがわかります。

オフィスで話すビジネスマン
写真=iStock.com/itakayuki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

■笑顔なのに…相手が退屈しているサイン

頭の傾きは、人があなたに注目しているかどうかを教えてくれます。あなたを見ているときに頭が完全に直立している人は、おそらく注意を払っていないでしょう。少しでも頭が傾いていれば、特に手があごまで上がっていれば、注意を払っていることを示す非常に良い兆候です。

私たち講演家はこれを研究します。頭の傾きを見れば、注意を払っている聴衆を見分けることができます。観客の多くが頭を真っ直ぐにして座っていれば、たとえ笑顔で注意を払っているように見えても、退屈しているのでしょう。そんな時は、その人たちに質問を投げかけて、答えてもらうようにします。あるいは、ペースを変えるなどして、注意を引くようにします。

もちろん、聴衆がドアの方に向けて体を傾けていることに気づいたら、それは聴衆が興味を失っていることを示すボディランゲージの強いサインです。

■鼻、耳、頭…触る部位で感情を読み解ける

手が顔に行くときは、必ず注意してください。親指と人差し指であごをなでると、相手があなたの話にとても興味を持っていることがわかります。拳を丸めてあごの下に入れたりすると、同じタイプの興味があることがわかります。しかし、あごが手のひらに乗り、頭の重心が手に寄りかかっているときは、明らかに退屈していることを示します。

人が鼻の横を撫でているときは、大げさに言っているか、嘘をついているかのはっきりした兆候ですが、それが彼の通常の神経質な動作である場合は別です。

人が耳たぶを引っ張るのは、「あなたの話をもっと聞きたい」の意味です。人が頭のてっぺんを掻くのは、恥ずかしかったり、今の状況に不快感を感じていたりします。あなたは後ろに下がって、方向を変えたほうがいいかもしれません。

■緊張しているときにはできない「スティープリング」

手の動きからも様々なことが得られます。テーブルの上で指がドラムを叩いているのは、焦っていることを示しています。激しい緊張の時、人は手を握ることがあります。また、「スティープリング」にも注目してください。スティープリングとは、両手の指先だけが触れていて、両手のひらが合っていない状態のことです。これは最高の自信の表れです。緊張しているときには、なかなかできません。もし誰かがそれをしているのを見たら、その人は自分が優位な立場にあると感じていることがわかります。

男性が片手または複数の手を胸に当てるのは、心を開いている証拠です。一方、女性が胸に手を当てる場合は、ショックや保護の意味合いが強くなります。

特に、目を閉じているときに鼻筋を絞るのは、その人が本当に集中していることを意味します。首の後ろに手が置かれると、それが襟の中に指を入れるものでも、手のひらで首の後ろをこするものでも、ほぼ確実に迷惑のサインです。人は本当に襟元が熱くなるもので、あなたのことを「面倒くさい(pain in the neck)」と感じる場合もあるのです。

■眼鏡をかけている人の心を見抜くには

眼鏡をかけている人からは、何がわかるのでしょう。眼鏡の上から見ることが何を意味するかはご存じの通りで、「あなたを信じられない」とか「承認できない」などですね。交渉中の1時間に3~4回も眼鏡をかけ直すことがありますが、これはパイプを吸う人が常にパイプに火をつけ直しているのと同じことで、彼には考える時間が必要なのです。このような場合、パワーネゴシエーターは、相手がより重要な点を検討している間、話をやめるか、取るに足りない話をすることになります。

誰かが何かを口元に持っていくとき、それが眼鏡のつるであれ、ペンや鉛筆であれ、「もっと栄養を必要としている」と考えてみてください。彼は自分が聞いたものを気に入っているが、もっと聞きたいと思っています。

もちろん、誰かが突然眼鏡を外してテーブルの上に放り投げたら、彼があなたに腹を立てていて、あなたを拒絶したことがわかります。しかし、もっと微妙な合図である場合にも気をつけてください。もし誰かが眼鏡を外してテーブルの上にそっと置いていたら、それはもうあなたの話を聞いていないことを意味します。

メガネを外す人の手元
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

■一般的なパーソナルゾーンは45~120cm

ボディランゲージのもう1つの魅力は、コミュニケーションをとるときに、相手にどのくらいの距離を与えるべきかを教えてくれることです。交渉の過程で相手にどれだけ近づくべきかという研究には、「近接学(プロクセミックス)」という名称がついています。

ロジャー・ドーソン、島藤真澄訳『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』(KADOKAWA)
ロジャー・ドーソン、島藤真澄訳『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』(KADOKAWA)

研究者によると、45cm以下が親密ゾーンとのことです。許可なく侵入してはいけません。45~120cmはパーソナルゾーン。120cmを越えると、見知らぬ人とでも安心して過ごせるパブリックゾーンとなります。

ここにはたくさんの変数があります。1つは、相手の国の背景です。私が育ったイギリスや日本のように、人口密度の高い国の出身者は、アメリカ人に比べて人混みの中でも落ち着いています。同時に、私たちは自分自身をより簡単に遮断することができます。広い空間に慣れているアメリカ人よりも、人混みの中でも1人になるのが容易なのです。イギリス人や日本人との距離を縮めても、相手がプレッシャーを感じることはありません。

当然ながら、ロサンゼルスやシカゴ、ニューヨークなどの都市部で育った人と、広々とした田舎で育った人とでは、同様の違いがあります。

■主導権を握るのに有効な7つの法則

もう1つの変数は、相手との関係における自分のサイズです。自分よりかなり背の低い人と話す場合、自分と同じ身長の人と話すときよりも、かなり後ろに下がらなければなりません。そうしないと、その人を圧倒してしまうからです。もう1つの方法は、相手と話すときに少し斜めを向いて、大きな壁を作らないようにすることです。

ボディランゲージを知ることは、交渉を有利に進めるための重要なポイントです。それは、相手がボディランゲージの研究者である場合も使えます。相手がボディランゲージを研究しているとわかっていれば、あなたは自分のボディランゲージを使って相手の考えに影響を与えるための、絶好の機会を得ることができます。

私はしばしの間、人のボディランゲージを反映して様子を見ます。相手が足や腕を組むと、私も組みます。相手がそれに気づいたら、相手は私のボディランゲージを研究しているのだと推測します。

《覚えておくべきキーポイント》
① 相手側2名の間には座らない。相手の身振りが読めず、頭を前後や左右に回さなければならない不利な状況になってしまう。
② もし、相手の人数が多く、こちらが少人数なら、そばに並んで座らない。バラバラに座った方が、より主張が強くなる。
③ 相手がジャケットのボタンを外し、身振り手振りがリラックスした状態になるまで取引交渉を始めてはいけない。
④ まばたきの回数が多いということは、相手が自分の話に納得していないということ。
⑤ 人は、注意を傾けているときは、頭が少し傾いているものである。
⑥ 相手の手が頭に移動したときに注目する。その人が次に何をするかで、多くのことがわかる。
⑦ パーソナルスペースを意識する。相手に不快感を与えない近さを知っておく。

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ロジャー・ドーソン 交渉術・企業研修アドバイザー
交渉術に関する米国内トップ講師。カリフォルニア州最大の不動産会社経営を経て、1982年以来プロ講演者としてアメリカ、カナダ、アジア、オーストラリアで経営陣や営業担当者向け研修を行う。全米スピーカー協会の最高賞であるCSPとCPAEの両方を受賞した世界でも数少ない講演家。『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』のオーディオ版の売り上げは3800万ドルに上りビジネス・オーディオ・プログラムで最大のベストセラーを記録している。

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(交渉術・企業研修アドバイザー ロジャー・ドーソン)

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