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「かれこれ10万円以上を捧げた」46歳のおじさんが同じドラクエを10年間も遊び続けるワケ

プレジデントオンライン / 2022年1月26日 20時15分

装備をドレスアップすることで、色などを自由に変えることができる。 - 画像提供=筆者 ©SQUARE ENIX

オンラインゲーム「ドラゴンクエストX」が開始から10年を迎えた。当初から遊び続けているフリーライターの赤木智弘さんは「最初はオンラインは嫌だと思ったが、ひとりでドラクエらしく遊ぶこともできるし、他のプレーヤーとの距離も心地いい。まさかここまで遊び続けることになるとは思わなかった」という――。

■ひとりでのんびり冒険してもOK

僕はオンラインRPG「ドラゴンクエストX」を遊び続けて10年になる。ドラクエXの正式サービスインは2012年8月で、その1カ月後の9月から始めて、数カ月の休止期間をいくどか挟みながらも、今でもプレイを続けている。始めた当時37歳だった僕も、気付けば今年で47歳になる。

私のプレイ料金は月額1000円(3キャラコース、Nintendo Switch版)なので、これまで10万円以上をドラクエXに支払っていることになる。自分でもここまで遊び続けることになるとは思わなかった。なぜそこまで楽しみ続けているのか。少し考えてみたいと思う。

ドラクエXはナンバリングタイトル初のオンラインRPGである。

フレンドを作って多くの人たちと一緒に強敵に挑んだり、会話などのコミュニケーションをとることもできるが、これまでのドラクエと同じように、ひとりでのんびり冒険というスタイルでも楽しめるように設計されている。

もちろんエンドコンテンツはさすがに人と行かないと攻略は難しいが、ドラクエらしいしっかりと作り込まれたメインストーリーをはじめとするコンテンツの大半は、自分とサポートキャラクターだけでクリアできるように作られていて、昔からのドラクエが好きな人も、オンラインであることをそれほど気にせず遊ぶこともできる。

■第一印象は「オンラインRPGは嫌だなぁ」

僕自身は初代ドラクエから、ほぼすべてのナンバリングタイトルをプレイしている。

僕がドラクエXの情報を知ったときの第一印象は「オンラインRPGは嫌だなぁ」だった。僕以外にも「ドラクエシリーズは好きだけど、オンラインはちょっと……」という声を上げている人は少なくなかったと思う。

オンラインRPGというと、どうも毎日何時間もプレイし続けないとゲームについて行けず、初心者プレーヤーへのあおりや詐欺行為、暴言やアカウントハックなどが飛び交う無法地帯という印象が強かった。

また、僕にとってドラクエは、初代ドラクエをプレイし始めてからずっと「ひとりでゆっくり遊ぶゲーム」であり、オンラインで面白くなるという可能性を理解できなかった。

だからこそ、発売されたときは「当面スルーかな」と考えていた。とはいえ、バージョン1サービスイン時の対応ハードであるWiiも持っていたし、「ドラクエだし、イメージどおりのひどいことにはならないだろう」と考え、サービスインから1カ月後くらいから思い切ってプレイを始めてみたのである。

■ドラクエらしい壮大なストーリーは健在

プレイを始めてみると、オンラインといえどやはりドラクエはドラクエだった。楽しくてドキドキするメインストーリーと広大なフィールドで、存分に冒険して楽しむことができた。

個人的に一番好きなのはバージョン4のストーリーである。ドラクエXの冒険の舞台となるアストルティアの過去と未来を巡りながら、必然的に訪れる滅びの運命を回避する方法を探すという壮大なストーリーとなる。もちろん詳細は避けるが、故郷や家族や仲間といった存在に対するさまざまな想いの在り方がつづられていく。

特にバージョン4の主要登場人物のひとりである「クオード」の物語は心に強く残っている。クオードはやや強引で独りよがりなところはあるが、姉を慕い他人に偏見を持たず、評価の低い人間であってもその良いところを見極められる、正義感の強い少年だった。世界が平和なままであったならば、彼は父でありエテーネ国王であるドミネウスの跡を継いで、立派な王として治世を行ったであろう。

しかし約束された滅びの運命は彼の人生をも翻弄(ほんろう)した。主人公と共に父親の悪行に鉄槌を下したはずのクオードは、別の時代で再会したときにはすっかり変わり果ててしまっていたのである。どのように変わり果てたかは実際にゲームをプレイしてほしいのだが、僕は彼の境遇に大変に同情するとともに、一方でそのこだわりが多くの人たちを巻き込み、運命を変えてしまったことに怒りも覚えた。

そんな彼の変貌は、主人公が持つ「時渡りの力」や、主人公の兄弟姉妹が持つある秘密とも強く関係しており、主人公とパラレルの関係を成す1つの可能性であったとも感じられた。この「時渡りの力」は主人公が持つ特別な力としてバージョン1から存在は知っていたが、バージョン2、3ではほとんどストーリーに関わってこなかったので、エテーネ村に育った主人公とエテーネ王国との関係性が強く示唆された時は興味を引かれた。

そしてバージョン4のラスボスを撃破し、滅びの運命から逃れると、世界に大きな変化が発生する。この変化にもとても驚かされた。

■他のプレーヤーとゆるく関われる仕組み

もちろんストーリーだけがドラクエXの魅力ではない。せっかくのオンラインRPGなのだから、他人とも関わりを持ちたい。ただし他人と一緒にプレイするのは不安がある。そんな人に向けても、ドラクエXではひとりプレイでも他の人と関われる仕掛けがある。

その最たるものが「サポート仲間」である。ドラクエといえば、初代、2、5を除けば基本的には4人で敵と戦うシステムである。ドラクエXでパーティを組む際には、基本的には「酒場」を利用して「サポート仲間」を雇うことになる。

サポート仲間とは、他の人が育てたキャラクターを、自分と一緒に戦うNPCとして雇ったり、自分が育てたキャラクターを雇ってもらうシステムである。雇う方はしっかりと成長した強いキャラクターを仲間にすることができるし、雇ってもらう方もゲームをプレイしていない時間に、多少の経験値とゴールドが手に入る。

ドラクエファンなら「酒場で仲間を雇うシステム」と聞いて、すぐ思い出すドラクエ用語があるはずだ。そう「ルイーダの酒場」である。自分のキャラを預けて他の人に使ってもらうという、いかにもオンラインらしいシステムが、ドラクエ3から続くルイーダの酒場のイメージを利用することで、ドラクエの世界観を崩さない自然なシステムとして組み入れられているのである。

サポート仲間との戦闘風景。
画像提供=筆者 ©SQUARE ENIX
サポート仲間との戦闘風景。従来のドラクエ式コマンドバトルと違い、戦闘フィールドを敵味方が自由に動くことができる。回復呪文や補助呪文が得意な旅芸人(左端)が敵から離れた位置から援護するという戦い方も可能なのだ。 - 画像提供=筆者 ©SQUARE ENIX

■生身のプレーヤーと遊ぶコンテンツは必須ではない

「でも、サポート仲間って弱いんじゃないの?」と思うかもしれない。だが心配は不要だ。回復や蘇生は早いし、範囲攻撃もそれなりに避けてくれる。少なくとも僧侶がザキばかりを連発するようなAIではない。ドラクエXは、ちゃんとしたサポート仲間さえ雇えば、メインストーリーはもちろん、ほとんどのコンテンツをひとりで遊び尽くすことができるような難易度に調整されている。

それでもせっかくオンラインなのだから、少しだけ生身の人とも遊んでみたいと思うこともあるだろう。そういう人に向けたコンテンツもしっかりと用意されている。

「同盟バトル」「邪神の宮殿」「アストルティア防衛軍」、そして去年の12月12日に実装されたばかりの最新コンテンツ「源世庫パニガルム」といったコンテンツでは、オートマッチングで気軽に他のプレーヤーと遊ぶことができる。これらのコンテンツでは、さまざまな景品が当たる「ふくびき券」や、さまざまな効果を持つアクセサリーや最新の武器といった、キャラクターを強くするアイテムなどを手に入れることができる。

源世庫パニガルムでは、最大12人のプレイヤーとオートマッチングで遊ぶことができる。
画像提供=筆者 ©SQUARE ENIX
源世庫パニガルムでは、最大12人のプレイヤーとオートマッチングで遊ぶことができる。 - 画像提供=筆者 ©SQUARE ENIX

ただし、手に入れる手段が他にもあるアイテムも多いので、必ずしもプレイしなければならないわけではないが、それほどプレーヤースキルを要求されないコンテンツも多いので、ゲームに慣れたら遊んでみるといい。

■ドラクエXは他人と遊ばなくても十分に楽しめる

もちろん、もっとガッツリと他人と遊びたい人のためには、強大な敵と戦うエンドコンテンツも存在している。そう書くと、「やっぱりオンラインゲームだから、いつかは他人と遊ばなければならないか」と思うかもしれないが、心配はいらない。現在のエンドコンテンツは「聖守護者の闘戦記」となるが、僕はこのコンテンツをほとんどプレイしていない。しかしドラクエXを楽しめている。

確かに何度も倒すことで強いアクセサリーやドレスアップアイテムをもらえるが、決して冒険に必須というわけではない。ストーリーやさまざまなサブクエストを遊ぶ分には、エンドコンテンツで手に入れるアイテムがなくても大丈夫。痺れる戦闘をしたい人だけがプレイすればいいのである。

エンドコンテンツにノリで参加して、敵の技の把握や、最低限の動きなどが予習できなければ文句を言われるのかもしれない。しかし、エンドコンテンツなどの一部のイベントや、オートマッチングで操作せずに放置するなどの非常識なプレイさえしなければ、たたかれることはない。怖がらずにオンラインであることを楽しんでみよう。

ドラクエXは他人と遊ばなくても十分に楽しめる。冒険のために必須なコンテンツはサポート仲間の利用で存分に楽しめる。一方で他人と遊ぶ必要があるコンテンツは、見た目装備などの冒険に必須ではないアイテムが報酬になっている。

なお、報酬を抜きにしても一度は挑戦してみる価値はあると思う。エンドコンテンツのボスをフレンドたちと一緒に制限時間ギリギリで倒した時、他人とのつながりのあるオンラインならではの充足感を感じられるからだ。これは他人と遊ばなければ得られない爽快感だ。

■「他人とのちょうどいい距離感」がある

ひとりで遊べば、これまでのドラクエとさほど違和感なくプレイできるし、友達やゲーム内のフレンドと遊べば、これまでのドラクエとは違った楽しみ方が発見できる。そのどちらにも対応できるのがドラクエXの魅力である。

他人と一緒に遊ぶことに、最初のうちこそ懸念を抱いてはいたものの、ドラクエというタイトルのおかげかピリピリしたガチゲーマーはほとんど見かけることはなく、ほんわかとした雰囲気が漂っている。

他のプレーヤーと遊べばそれはそれで楽しいし、かといってひとりで遊んでも他人の雰囲気を感じられて寂しくはない。そんな他人とのちょうどいい距離感をドラクエXというゲームは実現していた。

そんな距離感が心地よく、ドラクエXをプレイし続ける中で、なんとなく気づいたことがある。それはドラクエXというゲームは、今のゲームでありながら、遊び方としては昔の遊び方を踏襲しているのではないかということである。

■ドラクエXが「子供の頃の遊び方」に重なる

僕は子供の頃からゲームがとても好きだった。

母親が駄菓子屋を営んでおり、アーケードゲームも置いていたことから、ゲームに近しい環境にあった。

その一方で、外でもよく遊んでいた。

僕が子供の頃は、今のように友達と遊ぶために事前にアポを取ることも少なく、放課後の空き地や近くの学校の校庭に行けばなんだかんだで誰かしらと暗くなるまで遊ぶことができた。

考えてみれば、別の小学校の、名前もそれほどよく知らない友達とも平気で遊んでいた。

今だと「小さい子供が親の目の届かない場所で遊ぶなんて!」と思ってしまうかもしれないが、昭和の地方ではそれが当たり前だった。

僕にとってのドラクエXというゲームは、なんとなくそうした子供の頃の遊び方を思い起こさせるのだ。

もちろん、親しいフレンドを作って、気の合う者同士でエンドコンテンツに出掛けたりするのは当然楽しい。

しかし、僕にとっては基本的にはひとりでのんびりとサポート仲間を雇って冒険をしながら、時折オートマッチングで見知らぬ誰かと一緒に一時的にパーティを組んで、適当に遊んで解散するのがちょうどいいのである。

■のんびり楽しめるから長年にわたって遊び続けられる

昔のように暗くなるまで遊ぶことはないが、ほんの数分程度誰かと一緒に遊んでサクッと解散。物足りなければさらに別の見知らぬ人たちと遊ぶ。

次のバージョンアップを待つのは、子供の頃に月刊の学習誌の次号を待っているときのようだ。数日で一気にプレイして遊びきるゲームも悪くないが、次のストーリーがどうなるかを考えながら、日々待ち続けるゲームの遊び方もなかなかいいものである。

そうしたことが楽しくて、なんとなく10年ちかく遊び続けているのである。

「オンライン」というのは子供の頃になかったゲーム環境である。まさか友人知人を含め、まったく見ず知らずの人とも、離れた場所で気軽に一緒にゲームができることなんて、子供の頃には思いも寄らなかった。

しかし、そうした技術で実現されるのは、子供の頃とほとんど同じ、「そのゲームをプレイすれば、必ず誰かが一緒に遊んでくれる環境」なのである。

僕にとってのドラクエXというゲームは、まさにそういう「誰か遊んでくれる人がいる遊び場」なのである。

世の中には、プレイを始めると、とても楽しくなって1カ月くらい熱中して遊び続けてしまうゲームはよくある。しかし、ドラクエXはそうした熱中型のゲームと違って、しっかりとした楽しさのまま、のんびりゆったりと遊び続けられるコンテンツに仕上がっている。

だからこそ、心地よい関係性のまま、長く楽しみ続けられるのである。

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赤木 智弘(あかぎ・ともひろ)
フリーライター
1975年栃木県生まれ。2007年にフリーターとして働きながら『論座』に「『丸山眞男』をひっぱたきたい――31歳、フリーター。希望は、戦争。」を執筆し、話題を呼ぶ。以後、貧困問題などをテーマに執筆。主な著書に『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』などがある。

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(フリーライター 赤木 智弘)

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