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一人だけオンライン会議で"のけ者"にされる…「職場のいじわるな上司」からわが身を守る方法

プレジデントオンライン / 2022年2月2日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anyaberkut

多くの企業でメンタルヘルス研修の講師をする見波利幸さんは「コロナ禍でのコミュニケーションスタイルの変化が、新たな嫌がらせやいじめを生み出している」という。その実例と対応法を紹介する――。

■マニュアルを渡すだけでサポートなし

リモートワークの浸透は、これまでの働き方を大きく変化させました。「時間を効率よく活用できる」「ライフ・ワーク・バランスをとりやすい」など、リモートワークのメリットを感じている人も多いでしょう。

ただその一方で、インフォーマルな場が激減したことによるコミュニケーション不足が、職場の人間関係に影響を与えることも心配されています。

あちこちで聞かれるのは、リモートワークの前提となるセキュリティ対策でつまずくケースです。ITスキルが高い人にとっては難なくできる設定作業も、普段使い慣れていない人にとっては煩雑で、また不安も大きいものです。しかし、マニュアルをポンと渡すだけで、なんのサポートもないという職場も多いようです。当然、設定が完了するまでは本来の業務もできず、仕事も滞ります。

ただでさえ慣れない作業で不安感を抱えているところに、上司から「まだセキュリティ設定も終わらないのか」「マニュアルを渡しているのに、何をモタモタしているんだ」と叱責され、強いストレスを抱えてしまったという声も聞きます。

■悪意なきパワハラ

セキュリティ設定だけでなく、リモートワークに必要なさまざまなツールの導入においても、同様のことが起きています。スムーズに使いこなせる人ばかりではなく、慣れるまで操作に手間取る人もいるでしょう。そうした人に対して、叱責したり、「スキル不足」のレッテル貼りをするのは、もはや指導ではなくパワハラです。

ただ厄介なのは、パワハラ発言をしてしまう上司に悪気がないケースがほとんどであること。困っている社員に適切なフォローをしないのは、「在宅ワークの環境づくりは、個人が責任を持って行うのが当然」と考えているため。ただし、業務が滞るのは困るから、注意をする。これが当の部下にとっては非常なストレスとなるわけです。とくにIT系の企業では、できて当たり前と考えられることが多いため、そのストレスは一層強くなる傾向が見られます。

■立場逆転! 折り合いの悪かった上司からしっぺ返し

リモートワークの特性を利用した嫌がらせや、いじめの相談も増えてきています。

リモートワークによって、表面上は取り繕っていた人間関係のほころびがあらわになってしまった、という事例をご紹介しましょう。

課長のAさんは、課内のBのことを内心苦々しく思っていました。BはAさんよりも年上なこともあってか、会議ではAさんの発言を遮って反対意見を述べたり、課内のメンバーにAさんへの不満を吹聴したりと、自分の優位を印象付けるように振る舞うところがありました。課内のメンバーは、「Bさんの機嫌を損ねると面倒だ」と同調。結局、AさんもBの意見を無下にすることはできず、計画や納期の調整をするなど骨を折ってきたのです。

ところが、コロナ禍によるリモートワークへの移行で状況は一変しました。

Bは、不満をぽそっと小声でつぶやく、Aさんの発言中にため息をつく、ボールペンをカチカチ鳴らしていら立ちをアピールするなど、会議室の空気を支配することを得意としてきました。しかし、オンラインミーティングでは、そうした行為は画面に拾われません。誰かの発言に割り込むこともマナー違反。Bの得意な「場の雰囲気づくり」が通用しなくなり、一人ひとりがBの顔色を伺うことなく意見を述べるようになったのです。

ビデオ会議の概念
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■簡単に「のけ者」にされる危険性

さらに、Aさんはこれまでの鬱憤を晴らすかのように、B以外のメンバーにばかり発言を求め、まるでBがいないかのように扱います。これまでの「Bファースト」なやり方はすっかりAさん流に改められ、Bの求心力は急低下してしまいました。

上司にマウントをとるようなBの日頃の態度が招いたこと、と言えばそれまでですが、オンラインでのコミュニケーションが持つ危険を示唆する事例とも考えられます。ビデオ会議では、誰かをのけ者にしたり、意図的に発言させないようなことも簡単にできてしまう、ということです。さらに、オンライン会議は退室すれば、そこで終わり。フォローや弁解の機会もないため、どんどん関係が冷え込み、修復できないところまで悪化してしまう可能性もあるのです。「のけ者」の標的になるのを避けるためにも、こうしたオンラインコミュニケーションの性質を理解し、これまで以上に、普段から良好な関係を築いておく努力が必要になります。

■過干渉上司のこまかすぎる指示にモチベ急落

リモートワークで増加傾向にあるトラブルとしてもうひとつ、過干渉の問題をご紹介しましょう。部下の様子を直接確認できないリモートワーク下では、かえって上司の「管理したい欲」が暴走してしまうことがあります。

Cさんは営業部のエースとして活躍する35歳。取引先からの信頼も厚く、着実に成果を出している中堅の人材です。コロナ禍で出社日数が制限され、また取引先への訪問も控えざるを得ないなかでも、オンラインツールを駆使しながら商談を進め、コロナ前と変わらない営業成績を上げています。環境の変化にも柔軟に適応しているように見えるCさんですが、実は転職も考えているといって相談にみえました。

Cさんのストレスの原因は、上司のDさん。Dさんは、部下の業務をすべて把握、管理したいタイプ。「在宅勤務のときこそ、今、何をしているかを見える化しておくことが大切!」という信条の持ち主です。

■「なぜこの資料作成に2時間もかけているんだ?」

「始業から終業まで、ずっと監視されているような気分です。また、各社とのミーティング内容まで逐一報告を求められるのも苦痛。自分では成果を上げてきたつもりでしたが、まったく信用されていなかったのではないかと疑心暗鬼になってしまいます」と、Cさんはぐったりした様子で話します。

Dさんのチェックはこまかく執拗で、「どうして提案資料作成に2時間もかけているんだ? 以前にも同様の案件があったのだから、もっと短時間でできるはずだ」といった指摘がメールやチャット、ときには電話で飛んでくるといいます。

「上司への報告対応のたびに集中力が途切れて、コロナ前よりも実務時間は長くなっているかもしれません。最近は、仕事自体へのモチベーションも上がらなくて……」

■過干渉上司の上長への進言は慎重に

中堅社員にも新入社員と同じようなマネジメントを行う上司は、少なからず存在します。Cさんは「信用されていないのでは」と嘆いていましたが、過干渉上司は決してCさんの能力を評価していないわけではありません。ただ、「勤怠管理をしっかりしたい」「自分が納得できるやり方で進めてほしい」「規律やルールを大事にしたい」といった考えが強すぎるがゆえに、柔軟なやり方を許容できないのです。

上司の「管理したい欲」が強すぎる場合は、残念ながら状況を変えるのは相当に難しいと覚悟するしかありません。過干渉タイプの人は「ルール通りに」という考えに凝り固まっていて、他人の意見を受け入れようとしないことが多いのです。

では、さらに上の上長に進言するのはどうでしょう? 上長がうまく説得してくれればよいですが、反対に上長が丸め込まれてしまうリスクもあることを頭に入れておきましょう。「実際に在宅勤務になってサボり癖がついた部員がいて、そのせいで部全体の生産性が落ちてしまったから、こまかくマネジメントしているんです!」といった具合に論破されてしまったときには、上長も「じゃあ、やりすぎにならないように気をつけて」とお茶を濁すほかないでしょう。こうなったら厄介です。上司は上長のお墨付きをもらったも同然。また上長に進言した部員を特定して、より一層締め付けを厳しくする、といった報復に出てくる可能性も考えられます。

■過干渉上司のもとでメンタルを保つには

こうした過干渉上司のもとでメンタルヘルスを保つためには、第一に「現在の状況は上司の特性によるものである」と客観的に捉えることが重要です。

Cさんのように自律的に仕事を進め、成果を出せる中堅~ベテラン社員であれば、本来はこまかい報告は不要なはずです。どうしても報告させずにいられないのは、上司の気がすまないからであって、自分の仕事に問題があるわけではない。こう考えられれば、ある程度割り切って事務的に報告をこなすこともできるでしょう。

また、「大きな問題が起きたときにはすぐに相談、報告をするので、日々の進捗については信頼していただきたいです」といったように、当の上司ともしっかりコミュニケーションをとることも大事です。同じように悩んでいる同僚がいれば、「仕事の進め方について上司と話し合おうと思っている。あなたも近いうちに話をしてみて」というふうに連携するのもいいでしょう。何人も集まって問い詰めるような形になると、かえって「徒党を組んで反抗してきた!」と悪印象をもたれかねないので、各人が1対1のコミュニケーションのなかで穏やかに伝えることがポイントです。同じようなことを部員がそれぞれに感じているとわかれば、上司も自分のマネジメントスタイルを振り返るきっかけになるかもしれません。

■考え方のクセを知って「うっかりパワハラ」を防止

人には誰にでもその人なりの考え方のクセがあります。これを心理学の用語では「認知」と呼びます。楽観的な認知のクセがある人もいれば、どちらかといえば悲観的な認知の傾向がある人もいます。

たとえばCさんが悩まされている過干渉上司のDさんは、「部下は放っておくとサボるかもしれないから、しっかり管理しないといけない」「報告をしない部下は、言えないようなことをしている可能性がある」と物事を悪いほうに考える傾向がありました。

他人の考え方のクセを変えるのは容易ではありませんが、自分の考え方のクセは修正することが可能です。

自分の認知の傾向を知り、極端になりすぎないように心がけることで、人間関係のトラブルやストレスは大きく軽減することができます。とくにマネジメント職にある人は、認知を振り返り、いきすぎた管理をしていないか、自分の考え方のクセを部下に押し付けていないか、振り返る習慣を持つことは有用でしょう。とくにリモート下で限られたコミュニケーションしかできない状況では、考え方のクセは強調され、強化されて伝わってしまう傾向があります。放任主義の人はより放任に、こまかく管理したがる人は過干渉になりやすいのです。いじめるつもりがなくても、意図せずして「いじめる側」とならないように意識していきたいものです。

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見波 利幸(みなみ・としゆき)
日本メンタルヘルス講師認定協会 代表理事
1961年生まれ。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーなどを経て、98年に野村総合研究所に入社。主席研究員としてメンタルヘルスの研究調査、研修開発に携わり、日本のメンタルヘルス研修の草分けとして活躍。2015年より日本メンタルヘルス講師認定協会の代表理事に就任。20年かけて開発した2日間の「ヒューマンスキルを強化するマネジメント研修」は大企業を中心に絶大な支持を得ている。著書に『心が折れる職場』『上司が壊す職場』(以上、日経プレミアシリーズ)など多数。

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(日本メンタルヘルス講師認定協会 代表理事 見波 利幸 構成=浦上藍子)

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