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「休日にアラームなしで何時に起きられるか」ずるずると寝てしまう人が本来取るべき睡眠時間

プレジデントオンライン / 2022年2月4日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn

自分にぴったりな睡眠時間を知るにはどうすればいいか。京都府立医科大学大学院の八木田和弘教授は「休日に自然と目を覚ます時刻が目安になる。何時に寝て何時に起きたかを記録し、平日と比較すると、最適な睡眠時間が見えてくる」という――。

※本稿は、八木田和弘『「2つの体内時計」の秘密』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

■新生児は16時間眠るが、高齢者はその半分以下で十分

体内時計と深いかかわりがあるのは、やはり何といっても睡眠です。概日リズム障害の典型的な症状は睡眠障害です。では、どれだけ睡眠をとればよいのでしょうか。

最適な睡眠時間は人によってかなり違いがありますし、年齢を重ねるに従って適正な睡眠時間は変わっていきます。

一般的に、子どもは必要とする睡眠時間が長く、新生児は約16時間、幼児期は10時間以上、学童期は9時間程度、中高校生で8時間以上とされています。成人の適正な睡眠時間は7時間半程度といわれていますが、個人差がかなりあります。

また、65歳以上の高齢者になると、6~7時間程度の睡眠時間で十分な人が増えてきます。そのため、高齢者で「眠れない」という人の多くは、実は十分に睡眠をとっていると専門医は言います。

例えば、高齢者で夜9時に寝る人は、未明の3時過ぎに目が覚めて当然ということになります。外は真っ暗で夜中なのに目が冴えてもう眠れない。でも、当然ですよね。十分な睡眠時間をとっているのでもう寝る必要がないために眠れないのです。

■眠れなくても無理に睡眠薬を飲む必要はない

こういう人に睡眠薬を投与するケースは、今でもあると思います。しかし、睡眠薬の処方をお願いする前に、眠れないと感じる理由がわかれば対応は違ってくるでしょう。安易に睡眠薬に頼ってしまうことで、むしろ、睡眠薬服用によって転倒による骨折やせん妄などが起きやすくなり、危険な事故などのリスクのほうが、眠れるという利益を上回ることが多くなります。

高齢者の睡眠時間が少なくなるのは、代謝が下がっているからだといわれています。基礎代謝は大きなエネルギーを使うので、それが落ちてくると、肉体的な疲れが減ってきます。だから、そんなに寝る必要はないということになるわけです。

ただ、生理的に必要とする睡眠時間が短くなっているとか、年齢のせいで皆さん睡眠が浅くなりますと言われても納得がいかない方も多いかもしれません。

高齢者は睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が低下しがちです。メラトニンは松果体(しょうかたい)という脳のなかの小さな器官でつくられ分泌されるホルモンですが、夜間にしか分泌されないという特徴があります。しかも、夜に明るい光が当たると分泌が低下します。

しかし、一方で、昼間に明るい光を浴びておくと、夜間のメラトニンの分泌が高まることもわかっています。昼間はできるだけ活動し、外にも出て、夜にはほどよい体の疲れとメラトニンの分泌で、いい眠りを誘うことを心がけてみてください。

■訓練しても「ショートスリーパー」にはなれない

睡眠時間について語るときによく耳にするのが、「ショートスリーパー」という言葉です。ショートスリーパーの定義は1日5時間以下の睡眠時間で十分な人のことをいいます。

「私はショートスリーパーだから、1日3、4時間の睡眠で十分だ」という人がいますが、本当にショートスリーパーはいるのでしょうか?

答えはイエス。確かに存在します。でも、多くても数百人に1人以下という非常にまれなケースで、遺伝的に決まっているといわれています。なので、訓練でショートスリーパーになれるわけではありません。

しかし、「私はショートスリーパーだから、睡眠時間が短くても問題ない」と言っている人の大半は、本来のショートスリーパーではなく、どこかで無理をしていると思われます。

ショートスリーパーで有名なのはナポレオンですが、実は昼間にウトウトしていたとも伝えられているので、本当は違っていたのかもしれません。

一方で、1日10時間以上の睡眠が必要な「ロングスリーパー」も存在します。アインシュタインがロングスリーパーだったことは有名で、10時間は寝ないとだめだったといわれています。また、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんは11時間寝ていたそうです。

■休日、目覚ましなしで何時に起きられるか

このように、個人の体質として、適正な睡眠時間は非常に大きな幅があります。となると、自分の適正な睡眠時間を知ることは、ある意味で人生を有意義に過ごすために重要なことかもしれません。

では、どうすれば適正な睡眠時間がわかるのでしょうか?

例えば、ショートスリーパーだと自認している人が本当にそうかを確かめるには、休みの日に目覚まし時計をかけずに自然と目を覚ます時刻が、いつもよりどのくらい遅くなるかが1つの目安となります。十分な睡眠がとれている人だと、目覚まし時計をかけずにいつも通りの時刻に目が覚めます。睡眠時間が2~3時間も長くなってしまう場合は睡眠不足と言えます。

平日8時間くらい寝ているのに、休日に目覚ましなしだと昼近くまで寝てしまうという人もいるかもしれません。そういう人は8時間では睡眠不足であり、10時間程度の睡眠時間が必要なロングスリーパーの体質だということがわかります。

■「睡眠日誌」でわかる3つの睡眠タイプ

睡眠時間には、大きな個人差があります。ですから、一概にどのような睡眠のとり方がいいということは言えません。それよりも、自分がどのような睡眠のタイプなのかを知って、仕事や生活習慣の範囲内で最善の睡眠のとり方を探ることが大切だと思います。

そこで役に立つのが「睡眠日誌」です。何時に寝て、何時に起きたかを記録するだけのシンプルなものなので、どなたでも今すぐにはじめられます。一定期間記録することで自分自身の睡眠タイプがはっきりとわかりますので、ぜひ試してみてください。

①休日補塡型

平日にくらべて休日の睡眠がかなり長いタイプです。平日に規則正しく起きていて、睡眠不足になっていないと自分で思っていても、睡眠時間が足りていない可能性はあります。

とくに通勤時間が長い人は、休日補填(ほてん)型になりやすいと言えます。

試しに、休日に目覚ましをかけずに起きてみてください。平日より2時間以上長く眠る場合、睡眠不足の可能性があります。3時間以上になると、明らかな睡眠不足と言ってよいでしょう。対策としては、平日の睡眠時間を増やすことを考えてください。「寝だめ」はできませんので。

また、休日前の夜更かしと休日の朝寝坊は、ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)と呼ばれる体内時計のズレを生じることがあります。その点でも注意が必要です。

ベッドの中で時計に手を伸ばす女性
写真=iStock.com/chinaface
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/chinaface

■帰宅後に数時間寝てしまう人は要注意

②帰宅後睡眠型

これも睡眠不足の典型です。学校や仕事から帰ってきて、夕方にちょっと寝てしまうタイプです。30分くらいならいいのですが、1時間半、2時間と寝てしまうと体内時計がズレる原因になります。

夕方に長時間寝てしまうと、夜遅くまで眠れなくなってしまいます。それでも朝は早く起きなくてはならないので、結果的に睡眠時間が不足してしまいます。

重要なのは帰宅後の睡眠のとり方です。本当に睡眠不足を解消するには、2時間ぐらいしっかり寝たほうがいいのですが、それによって入眠時刻がずっと遅れてしまうようであれば具合がよくありません。寝過ぎなのか適正なのかを判断する基準は、この入眠時刻です。寝ようと思う時刻に眠くなるかどうか。いつも12時ぐらいに寝ているのに、1時、2時になっても眠くならないというのは、帰宅後の睡眠のとりすぎです。

■睡眠時間が不規則な人は起床時間を決める

③不規則型

シフトワーカーやフリーランスにありがちなタイプです。睡眠相が不安定なまま、ずっとズレていくことから、体内時計が乱れて不安定なことを示しています。また、コロナ禍によってテレワークに移行した人にも、不規則型が増えています。

これを修正するには、起きる時間を一定にする必要があります。がんばって眠ることはできませんが、がんばって起きることは可能です。目覚まし時計で、6時なら6時、7時なら7時に起きると決めましょう。寝るときは、自然に眠くなったときに寝るようにします。

ただし、休日にそれをやめてしまうと、元の木阿弥(もくあみ)になってしまいます。休日も含めて、決まった時間に起きることが体内時計を整えることにつながります。

【図表1】睡眠日誌
「睡眠日誌」の一例。自分がどのような睡眠タイプなのかを知ることができる[出所=八木田和弘『「2つの体内時計」の秘密』(青春出版社)]

■その人なりの体内時計を維持できれば問題なし

「人間は朝日が昇るとともに活動を開始して、暗くなったら寝るべきだ」という人がいます。

必ずしもそうとは限りません。私たち人間にはさまざまなタイプがいます。朝早く起きるのが向いている人もいれば、起きるのは遅くて夜になると本領を発揮する人がいます。

また、それぞれの仕事によって起きるべき時間というのも違っています。長年、そうした時間に慣れていれば、それはそれでいいと思います。

例えば、パン屋さんや豆腐屋さんなど、真夜中に起きて2時くらいから働き出し、夕方に寝るという生活を続けている人が多くいます。また、夜勤で警備の仕事をしている人は、夕方に起きて午前中に寝るという生活パターンになります。

八木田和弘『「2つの体内時計」の秘密』(青春出版社)
八木田和弘『「2つの体内時計」の秘密』(青春出版社)

朝日とともに活動を開始すべきという考えに基づくと、こうした人たちは、皆体に悪い生活をしていることになってしまいます。しかし、実際にはそれぞれの人なりに、約24時間周期の体内時計に合った規則正しい生活ができているはずです。それで体調に影響がなく、睡眠の質もよければ問題はありません。

朝型か夜型かについては、「クロノタイプ」という体内時計の体質があります。自分のクロノタイプは、国立精神・神経医療研究センターがインターネットで公開している「ミュンヘンクロノタイプ質問紙」でチェックできます。

クロノタイプで朝型に分類される人は、朝早く起きて、朝仕事をするのが体に合っている人です。逆に、夜型の人にとって、朝早く起きて仕事をするのはつらいことだと思います。

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八木田 和弘(やぎた・かずひろ)
京都府立医科大学大学院教授
1995年京都府立医科大学卒業後、同大学附属病院第3内科にて研修。京都府立医科大学大学院修了。神戸大学医学部第2解剖学助手および講師、名古屋大学理学部COE助教授、大阪大学大学院医学系研究科神経細胞生物学准教授を経て2010年より京都府立医科大学大学院医学研究科統合生理学教授。2017年から地域生涯健康医学講座の教授を併任。時間生物学、環境生理学の研究に取り組む傍ら、体内時計の視点から生活改善の大切さを伝える活動にも取り組んでいる。

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(京都府立医科大学大学院教授 八木田 和弘)

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