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「お疲れさまです」より効果的…気遣いのできる人は使っているメールの書き出しフレーズ

プレジデントオンライン / 2022年2月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BrianAJackson

メールの書き出しには、どんな言葉を選べばいいのか。スピーチライターのひきたよしあきさんは「『お疲れさまです』と書き出す人が多いが、『疲れてないよ!』と反発されるかもしれない。同じ言葉を機械的に使うのではなく、いろいろなフレーズを使い分けたほうがいい」という――。

※本稿は、ひきたよしあき『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■「疲れているって決めつけられるのは嫌」

「会社に入って、メールの頭に『お疲れさまです』と書いてくる人が多いのにびっくりしました。『疲』って字を見ると、逆に疲れが出ちゃうんですよねえ。こういうの、私だけですかね」

昨年就職した教え子に久しぶりに会ったときに、こんなことを言われました。慢性的に疲れている私には、全くこういう感覚がありませんでした。気になったのでいろいろな人に聞いてみると、「ただの挨拶。気にもしなかった」「実際疲れているから、いたわってくれているように感じた。不快じゃない」「なんで私が『疲れている』って分かるの? 決めつけられているようで嫌」と、世代や職歴によってかなりの差があることが分かりました。

リモートワークが増え、モニターに向かう時間が長くなった。そのなかで、「お疲れさま」をいたわりの言葉と取るか、疲労を倍増させる言葉と取るかは、人によって感じ方が違うようです。気を付けたほうがいい言葉のひとつですね。

■上から目線の「ご苦労さま」の代わりに勢力を拡大

「お疲れさま」がよく使われるようになったのは、目上の人が目下の人に使う「大名言葉」の筆頭に、「ご苦労さま」が挙げられるようになってから。上司や得意先に対して、「ご苦労さまです」を使うな! と言われている人も多いでしょう。

その代わりに、使ってよいとされるのが「お疲れさま」。ここには相手へのねぎらいの思いが込められている。上から目線にもならない。この考え方が広まって、「『お疲れさま』なら失礼にならない」と思う人が増えたのかもしれません。

私も親しい仕事仲間とのLINEやメールのやり取りの際、「お疲れさまです」と書いていることが多かった。学生たちには、「疲れてないよ!」「なんで決めつけるんだよ!」と思われていたのかもしれません。

■別れ際に使えば気持ちのいい言葉だが…

しかし、「お疲れさま」自体は悪い言葉ではありません。職場で先に帰るとき、リモート会議を終わるとき、「お疲れさまでした!」と言うのは、気持ちのいいねぎらいの言葉です。

問題なのは、「挨拶」のひとつとして、「メールの頭は、『お疲れさまです』で始めればいいや」「職場に行ったら、とりあえず『お疲れさまです!』と言えばいい」と決めてしまうこと。相手が疲れているかどうか分からないシチュエーションで、「お疲れ」と言うことに違和感を覚える人がいることを覚えておきたいものです。

それでは、「お疲れさまです」に代わる挨拶には、どんなものがあるでしょう。

これを知るには、「ビジネスマナー」関連の書籍で文章の書き方に関するページを参考にするといいでしょう。

■「お疲れ」な社会に配慮して語彙を増やそう

この手の本には、

・平素は、大変お世話になっております。
・いつもお心遣いを頂き、誠にありがとうございます。
・突然のご連絡、失礼いたします。
・何度も申し訳ございません。
・長らくご無沙汰しております。

など、少し硬めの言葉がたくさん出てきます。これをもっとカジュアルにして、「お世話になっています」「いつもありがとう」「突然、失礼します」「何度もすみません」「ご無沙汰しています」などと崩していく。普段は「お疲れさまです」で済ませていた挨拶の語彙が増えれば、その時々の相手との関係に即した言葉が出てくるようになります。

「お疲れさま」は、決して悪い言葉ではありません。しかし、パンデミックなどにより社会全体が疲れていること、なんでも「お疲れさま」と言う人が増えて食傷気味であることを踏まえて、「挨拶」の言葉を増やしておきたいもの。私も、学生たちに疎んじられないようにボキャブラリーを増やします。ほんと、お疲れさまな世の中です。

■日本語で一番使い方の難しい言葉「がんばれ」

「がんばれ」の語源は諸説あります。一般的なものが、「我に張る」。自我を押し通すという意味です。もうひとつ、「眼張る」と、「自分を見張る」という説もあります。いずれにせよ、状況が苦しくても自分に負けるな! というのが本来の意味です。

私たちは、「あなたのことを応援しているよ」といったニュアンスで、「がんばれ!」と挨拶のように使っている。でも、これにプレッシャーや不快感を覚える人は、たくさんいます。

私もそのひとりです。6年前に腎臓がんに侵されました。手術前の不安な時期に、「がんばって」とずいぶん声を掛けられたものです。悪気がないのは分かっています。しかし、病に対して、どうすれば自分を押し通すことができるのでしょうか。いや、それ以上に、自分はもう精いっぱいの苦しい状況にいる。不安と恐怖と闘いながら、自分なりには負けずにやっているつもりです。そこに浴びせられる「がんばれ」は、「まだまだ努力が足りないよ」と言われるような残酷さを感じたものです。

声を掛けてくれた人にそんな思いはひとつもないでしょう。そこが、「がんばれ」という言葉の恐ろしさなのです。言った側と受け取る側とに、大きなギャップを生んでしまう。だから「がんばれ」は、日本語で一番、使い方の難しい言葉だと私は考えます。

■さらに残酷なのが「もっと、がんばれるでしょ」

その「がんばれ」の残酷さに、さらに拍車をかけるのが、

「もっと、がんばれるでしょ」

自分なりに精いっぱい努力してつくった企画書を上司に見せたところ、あれこれ不備を指摘され、修正を命じられた。その揚げ句、「もっと、がんばれるでしょ」と言われたところを想像してみてください。

拳を持つ怒っているビジネスマン
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

上司には、「おまえなら、もっとできるはずだ」というエールを送る気持ちがあったのかもしれません。しかし、言われたほうにとっては、「おまえは怠けている」と非難されたようにしか感じられない。相手に相当なプレッシャーをかけていることになります。使わないのが賢明ですね。

■相手が好調な時に使うとキラーワードになる

しかし、こんな「がんばれ!」も、使い方次第では、相手を励ますキラーワードにもなります。

ひきたよしあき『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)
ひきたよしあき『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)

それは、相手がノリにノっているときです。

競合プレゼンに連勝中で、次回のプレゼンにも自信満々。「いつもあなたの会議の進行には感心している」と褒められて、ちょっといい気分のとき。「ああ、この人、今、絶好調だな」と思える人に「がんばれ!」と言えば、「はい、がんばります!」とガッツポーツが返ってくるはず。つまり、「がんばれ!」は相手が好調で、心理的に余裕があるときに掛けると効果的な言葉なのです。

ひとつの言葉でも、相手の置かれた環境、心理状況、忙しさ、疲労度などによって言葉は毒にも薬にもなります。「がんばれ」は、日常よく口にする割には、効果と副作用が大きい言葉なのです。

■「がんばれ」を精神論の言葉にしない使い方

では、「がんばる」を使いながら、相手を励ますにはどうすればいいでしょう。そのひとつは、

「がんばり過ぎるなよ」

今、君はがんばっている。それは、よく分かっている。だから、肩の力を少し抜けよ、と言ってあげましょう。また、「がんばれ」と言った後に、「応援している」「何かあったら相談してね」と自分の思いを具体的に語れば、「がんばれ」がただの精神論の言葉ではなくなります。

日本語一難しい言葉、「がんばれ」。がんばり過ぎないように使いたいですね。

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ひきた よしあき 博報堂フェロー、スピーチライター
1984年早稲田大学法学部卒。学生時代より「早稲田文学」学生編集委員を務め、NHK「クイズ面白ゼミナール」のクイズ制作にも携わる。博報堂に入社後、CMプランナー、クリエイティブディレクターとして数々のCM制作を手がける。政治、行政、大手企業のスピーチライターとしても活動し、全国各地のカルチャースクール、企業、自治体、学校で講演活動を行う。著書に『人が動きたくなる言葉を使っていますか』(大和書房)、『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)など多数。

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(博報堂フェロー、スピーチライター ひきた よしあき)

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