「パンツにペタンコシューズでは相手に失礼」女性限定ファッションマナーは時代錯誤か性差別か
プレジデントオンライン / 2022年3月12日 11時15分
■女性特有ファッションマナーの実態と現場の声とのギャップ
日本でもジェンダーレスが加速する一方、女性に限ったマナーは少なくない。たとえば「ビジネスやフォーマルな場での正装はジャケット+スカート」が正解というもの。
これまでビジネス上の礼儀として習ってきたこのマナー、当たり前のこととして実行してきた人も少なくないだろう。では、本音ではどう思っているのだろうか。『プレジデントウーマン』では、働く男女約3000人を対象にアンケートを実施。そこに寄せられた「女性の仕事上でのファッションマナー」への意見を公開する。
最も多かったのは「相手がパンツでもスカートでも特に何も感じない」という意見で、全体の66%に上った。さらに24.3%の人が回答した「意識したことがない」も同等の意見といえるだろう。
具体的な見解としては「その場にふさわしい装いができていれば、ボトムスの形が問題にはならない」(フリーランス・44歳)と考える人が多いようだ。「スカートかパンツかは相手に合わせるのではなく、業務内容に合わせるべき」(IT・30歳)、「清潔感があって似合っていればどちらでもいい」(メーカー・57歳)という声も聞かれた。
■時代錯誤? マナーに潜むジェンダー問題
女性の仕事上の正装は「スカートが正解」というボトムスマナー、次いで多かった意見が「時代錯誤だと思う」32.4%。やはり日々どの分野においてもジェンダーレスが加速化しているなかで、この意見が出るのはもはや自然な流れと言えるだろう。
「男性だから、女性だから、ということで指定されるのにも違和感」(広告・41歳)、「性別ではなく“TPOに合ったその人らしさ”が出ればいい」(商社・33歳)という考えが大半で、ジェンダーで服装のマナーを変えることに違和感を持つ人が増えてきているようにも感じた。
なかには「子どもたちの制服も性別に関係なくボトムスを選べる学校が少しずつ増えてきたので、大人自身も日常から意識を変えてもいいと思う」(技術サービス・47歳)という人も。さらには「女性=スカートという納得できる理由が見当たらない。マナーでなく性差別にも取れる」(医療・37歳)という声も上がった。
さらにはこの女性特有のマナーには、嫌悪を覚える人も少なくない。「誰にとって何のためなのか、このマナーの存在自体、謎に感じる」(保険・35歳)、「そんなマナーがあることすら不快。誰が得するのだろうと考えてしまう」(デザイナー・40歳)、「令和の時代にスカートを押し付けるマナーのほうがどうかと思う」(メーカー・29歳)という強い意見もあった。
実際、ジェンダーレスを推進し性差別撤廃の声が高まっている欧米では、要人女性の多くが、フォーマルなビジネスの場であってもパンツスーツをさっそうと着こなしていることが多い。こうしたことからも「ジャケット+スカートが正解」は、前時代的なビジネスマナーと化しているともいえる。
一方で、スカート賛成派は「女性ならスカート着用が美しく見える」が7.8%、「かしこまった場でのパンツスタイルに違和感をおぼえる」が2.9%。こう答えた人の意見としては「統一感を持たせるには、必要な場合もあると思う」(通信・30歳)、「個人的にはボトムスの種類はそこまで重要だと思わないが、マナーを守ることで表現できる礼節もあると思う」(ブライダル・50歳)、「伝統的であるぶん、品格が出るような気がする」(営業・42歳)などが挙げられた。
■女性にはスカートとハイヒールが絶対不可欠なのか
また、正装問題に関してもうひとつ、多くの人が気になっているのは「女性はヒール靴がマスト。フラットシューズはNG」というマナーについて。ビジネスマナーでは、5〜7cmのヒール靴が正装とされ、通常でも3cm程度のヒールを推奨している。
この女性限定のビジネスマナーに関する問題は「#Kutoo運動」としてニュースなどにも取り上げられ、一時期議論されたことは記憶に新しい。
今回のアンケートでも「女性はヒール靴着用というマナーをどう思いますか?」と問いかけたところ「大いに反対」「場合によって反対」「あまり賛成できない」を合わせると、実に全体の70%近くがこのマナーに難色を示しており、賛成はたったの1.6%という結果になった。
好きで履くぶんにはいいけれど、歩きにくく、時には痛みを伴うヒール靴をあえて履かなければならない苦痛は、経験者にしかわからないこと。女性の声を詳しくみてみると、「もはやマナーとして存在していない」「聞いたことはあるが自分もまわりも実施していない」という意見も意外に多い。#Kutoo運動をひとつのきっかけに、ビジネスに適したシューズへの意識の変化は徐々に広まっているのだろうか。
反対の人の意見としては「TPOに合っていればいい」(運輸・46歳)、「カジュアルすぎなければヒールがあってもなくてもいい」(出版・33歳)という意見がほとんどで、決められた形を守るというよりはその場にふさわしいチョイスができているかという、個々人の感覚を多くの人が重視していることがわかる。
男性か女性か、という性別をふたつに分けること自体がナンセンスとされるこの時代。意識やあり方の大きな変化にともなって、“昔から決められてきたもの”に疑問を感じたり、それを改めたいと思ったりするのも当然かもしれない。その証拠に、昔ながらのマナーに振り回される人よりも、自発的に考え、臨機応変に行動できることのほうが重視されていることが回答の端々から感じられた。
大切なのはもちろん仕事への姿勢や相手への配慮だが、一方で「いい仕事さえしていれば、いつ、どんな時に、何を着ていても、気持ちは伝わる」というほど、ビジネスの場は甘くないのも事実。女性限定のファッションマナーに関して、あなたはどう感じただろうか。
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フリーエディター/執筆家
新ファッションウェブマガジン「LIV,」女性ファッション誌のフリーエディターをしながら執筆家としても活動、いくつかの連載を掛け持ちする。アメブロやnoteなどのブログでは、大人の女性に役立つファッション・仕事・サステナブル・ライフスタイル・独自の人生哲学を発信。
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(フリーエディター/執筆家 乙部 アン)
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