部下に短い文章で報告させたいとき、飛び切り即効性のある唯一の解決メソッド
プレジデントオンライン / 2022年3月25日 10時15分
■長文は「命取り」。読まずに書き直し命令
GMOインターネットグループは2020年1月、コロナ禍に対応して、日本初の一斉在宅勤務体制に移行しました。社内外とのコミュニケーションは原則、メールやチャットといった電子媒体で行っています。
そして当社はインターネットサービスの先駆けとして、デジタル技術を通信手段としても積極的に取り入れ、活用のスキルやノウハウも蓄積してきました。そうしたなかで、僕自身が徹底して実践し、パートナー(社員)にも繰り返し伝えているメソッドが、「文章は短ければ、短いほどいい」というものです。
とくにメールやチャットを送信する場合、「結論ファースト」と「短い文章」という2つのポイントを厳守することが肝心です。結論ファーストとは、要点を冒頭の一文に集約することです。たとえば、新聞をはじめとするニュース記事は、基本的に「見出し→リード→本文」という構成になっています。その最初の見出しこそ「結論」であり、それだけを読んでも、ニュースの概略を摑むことができます。
メールやチャット、そしてSNSでも、そうした文章構成がベストだといえます。必要最小限の文字しか使わないという狙いで、私は絵文字や記号だけを使って、積極的に返信するように心がけています。何らかの社内決裁に対する承諾の意思表示を行うような場合なら、「OKサイン」のマークを送信すれば済むわけです。たった一文字でも、相手とのコミュニケーションが成り立ちます。
なかには「伝える内容によって、文章が長くなるのはやむをえないではないか」と、考える人がいるかもしれません。しかし、文章は工夫次第で、圧縮できます。たとえば、結論の文の下にリンクを張って、別の文章が読めるサイトのURLを示しておけば、詳しい内容を知りたい場合、そのサイトに飛べばいいわけです。一例として、21年1月5日の私のツイートをご紹介します。
「DXを一言で説明するとIT化×業務革新=DX これがDXの方程式」
というものです。「IT化だけではDXにあらず」というのが私の主張です。IT化とDXを混同している論調が多いので、持論を発信したわけです。そして、その文章の下により関心のある人のために、「ブルースターバーガー」という飲食店のDXの成功事例を載せたURLを張り付けておきました。
■「時=命」なり。大切な時間を奪うな
では、なぜ短い文章にこだわるのか? それは、長い文章を読ませると、相手の時間を余計に奪うことになるからです。「時は金なり」とよく言われますが、ビジネスパーソン、そしてすべての方において「時間=命」です。
私自身が夢の実現のために創業以来、1分1秒を惜しんで働き続けているので、時間の価値は誰よりも理解しています。お客さまや社外のステークホルダーはいうまでもありませんが、パートナーたちの大事な時間も奪うようなことがあってはいけません。
私たちのグループには約7000人のパートナーがいて、1人がメールを1分読めば延べ約7000分、つまり約117時間もの業務時間を費やす計算になります。そのメールが万が一にも不要なものであれば、グループ全体で約117時間という「命」を奪われたことになるわけです。当然のことながら、生産性にも大きく響きます。
長い文章を書いて、仕事をした気になっている人もいるようです。しかし、それは自己満足しているだけの勘違いです。自分が冗長な文章を読まされたら、「迷惑だな」と感じるはずです。であれば、読み手の立場で書けば、文章はおのずと短くなるでしょう。当社は27年前、「スピリットベンチャー宣言」という企業理念を掲げ、そのなかで「文字は少なく、言葉は簡潔に、相手の時間を奪わない」と明記しました。
相手の立場で文章を書くようにすれば、こんなアイデアも湧いてきます。新規事業の企画案を、相手に提示するケースを考えてみましょう。プランが4種類あれば、それぞれのポイントを箇条書きでまとめます。そして「①〜④」の選択肢のなかから相手に選んでもらいます。また「お勧めのプラン」とその理由も一言書き添えます。そうすれば相手は瞬時に判断でき、私なら「②でOK」などと数文字で返答します。相手の反応を想定し、返信文が短くなるように工夫して、返信に費やす時間を減らすことが大切なのです。
■部下は上司より短い文章を書けない
当社で使っているオンラインのコミュニケーションツールは、メールとチャットです。メールは主にお客さまなどの社外向けに単発で送信する場合、一方のチャットは主にグループ内や取引先などと継続的なやり取りをする場合に使っています。チャットは、具体的にいうと「スラック」と「チャットワーク」を採用しています。
私自身は、ネット上に「クマガイコム」というブログを開設し、先ほどのツイートのような情報発信もしています。SNSでは個人的な出来事も伝えますが、会社や仕事に関する投稿が多くなっています。私はGMOインターネットグループの創業者で、GMOとは一心同体です。それだけに我がことのように、会社のことを知ってほしいからなのです。
私は高校を中退して働き始め、それから起業しました。そして経営者になってみて、幅広い知識や物の見方が必要だと痛感し、小説や実用書などさまざまなジャンルの本を読んできました。いま振り返ると、そうしたなかで多方面の知識や情報だけでなく、豊かな表現力や文章を短く書く構成力なども、自然と私の血となり肉となってきたのだと思います。
ところで、私がいくら口酸っぱく言っても、ごくたまに長文を送ってくるパートナーがいます。そうした場合、読まずに「結論ファーストで短い文章に書き直し、再送信してください」と返信して、スピリットベンチャー宣言に掲げた理念が浸透するように心がけています。これは諦めず、何度も繰り返すことが大切なのだと思います。
■経営トップが短い文章を書く
一方で、メールやチャットで冒頭に「時候の挨拶文」をつける人が少なくありません。私に言わせれば、「無用な長文」の最たる例です。メールやチャットは、「ビジネスレター」ではなく、「ビジネス会話の延長」と考えれば、敬語も必要最小限の、シンプルな文章になるでしょう。
社員に短い文章を書かせたいのなら、飛び切り即効性のあるメソッドが1つあります。それは「社長をはじめ経営トップが短い文章を書くこと」です。
部下は、上司よりも短い文で返信してきません。なぜなら、失礼に当たるからなのです。上司の文章が短ければ、短文でも返信できるし、上司が短文を好むと思って、短文で返すようになるものなのです。そうすれば「社長→役員→管理職→一般社員」の順で、全員の文章が短くなっていきます。ぜひお試しください。
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GMOインターネット代表取締役会長兼社長 グループ代表
1963年生まれ。91年ボイスメディア(現・GMOインターネット)を設立、代表取締役に就任。99年独立系インターネットベンチャーとして国内初の株式上場を果たす。「すべての人にインターネット」を合言葉に、インターネットインフラ事業、暗号資産事業などを幅広く展開。
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(GMOインターネット代表取締役会長兼社長 グループ代表 熊谷 正寿 構成=野澤正毅 写真=PIXTA)
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