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「家賃10万にならない? 俺、メガバンに勤めてるけど」賃貸物件の審査に落ちる人の意外な"減点材料"

プレジデントオンライン / 2022年3月25日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jelena83

3月は入学、就職、転勤などにより転出・転入が増え、賃貸物件市場がにぎわう。だが、物件によっては貸し主が借り主を細かくチェックするケースもあり、希望の部屋を借りられない人もいる。貸す側はどんな基準を設けているのか。業界の事情に精通する老舗不動産会社の代表に聞いた――。

■「貸す側」が圧倒的有利…賃貸物件の審査の中身とは

「まず、都市部で賃貸物件を借りたい方にお伝えしたいのは、今は完全な貸し手市場だということです。分譲物件なら、キャッシュさえあれば契約に問題はなく、売る側と買う側の関係もその場限りのことが多いですが、賃貸の場合、貸す側と借りる側の付き合いは続く。だから、大家さんのお眼鏡にかなった人が優先的に貸してもらえるということですね」

そう語るのは、都内で約2万件の物件を扱っている老舗不動産会社の代表Aさんだ。

マンションやアパートなどの賃貸物件は、入居後も大家(オーナー)や不動産会社、管理会社、保証会社との関係が継続される。そのため、入居前のチェックや審査が何重に行われることがある。

大家の立場からすると、毎月、滞りなく家賃を支払ってくれて、近隣住民や管理会社ともトラブルがなく、常識的に部屋をきれいに使ってもらえる人に入ってもらいたい。それゆえ、「この人に貸しても大丈夫かどうか?」という「審査」が行われるのだ。

Aさんによると、審査は主に「不動産屋審査→保証会社審査→管理会社審査→貸主審査」の4段階がある。物件によっては、最初の不動産屋審査をクリアすれば即入居決定となるものもあるが、以降の審査があることも珍しくない。借りる側はどんなところを注意するといいのか。

■1:不動産屋審査

審査は不動産屋に連絡した時から開始されていると思うべし!

「賃貸仲介業である不動産屋は大家さんと借りたい人の双方をサポートし、つなぐのが仕事ですが、不動産屋にはクライアントである大家さんに入居希望者の人物像を報告する義務があるんです。やはり、問題があると思えるような希望者は紹介しにくいということになりますから、複数の方が借りたい物件の場合、やはり清潔な身なりで常識的な言動の方が有利ですね」(Aさん、以下同)

Aさんによれば、例えば、築古の1LDK家賃12万円の物件に対して「10万にならない? 俺、メガバンのMに勤めているんだけど」といった客も少なくないそうだ。仲介手数料や家賃を値切ろうとする人もいるということだが、これは明らかに印象が悪い。

不動産会社は「借りたい人の希望をかなえるべくできる限り借主側の立場に寄り添いたい」という思いも持っているとはいえ、第一印象が悪いと、物件の内覧自体を断られることもある。また、次の保証会社への審査依頼(必要なケースの場合)も、その結果報告も、すべて不動産会社経由。最初に不動産会社に連絡をした段階から、審査は始まっているといっても過言ではないのだ。

■2:保証会社審査

保証会社の審査はグレーゾーン

ここでいう保証会社とは家賃保証会社のことで、契約時に借りる人の連帯保証人を代行してくれる会社である。借りる人が家賃滞納をした際、大家への家賃立て替え払いなどを業務にしている。大家は「保証」として、親族などの連帯保証人を求めるケースと、保証会社加入と連帯保証人の双方を求めるケース、そして保証会社のみでよいとするケースがあるが、どれになるかは大家の意向次第。保証会社のみでよいとする物件も増えてきているそうだ。

賃貸保証会社の審査で最も重視されるのは、家賃の支払い能力と入居する人の人物像。

審査のチェックポイント(例)は、

① 安定した収入があるか(正社員で、かつ勤務歴1年以上あると有利)
② 家賃と年収のバランスが合っているか(一般的には手取り月収の30%以内が目安)
③ 過去の滞納歴(家賃やクレジットカード)

芸能人が賃貸物件の審査に通らず大変な思いをしたといったエピソードをテレビ番組内で披露することがあるが、これは入居審査で「無職」扱いされた可能性がある。逆に言えば、月給という「固定給」があることが証明できれば、仮に年収が低くても、家賃とのバランスが悪くなければ、通りやすいと言われている。

また、ケースによっては借りる本人だけでなく、連帯保証人の保証能力も問われるので、親が年金生活者の場合、断られるケースもなくはない。

「年金生活者でも資産があったらOKの場合もあれば、漏れなくNGの場合もあってケース・バイ・ケースです。先日も、連帯保証人が年金生活者でしたが、通帳残高の額でOKになったケースもありました」

団地の廊下
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

ただ、審査の中身はブラックボックスであることが多く、しかも……。

「もし、賃貸保証会社の審査に落ちたとしても、その理由が明かされることはありません。保証会社の審査基準は不動産屋にも公開されていません。審査内容には各社それぞれに基準がありますが、審査結果の内容に関する質問は受け付けられないのです。よって、審査落ちの理由は推測するしかありません」

Aさんは数年前、自分の担当案件で、都心の立派なビルに本社を構える大企業に内定が出た大学4年生の借り主が賃貸保証審査に通らなかったケースがあったという。理由は不明だが、「その人の内定通知が出たのが1年以上前なので、あまりに早すぎて逆にあやしい」と判断されたフシがあったようだ。Aさん自身もその判断の理不尽さに憤慨したそうだが、審査会社の担当者の主観によって決まることは決して珍しくない。

「対策として考えられるのは、最初に借主さん側の立場に寄り添って親身になってサポートしてくれる不動産屋を選ぶことです。例えば、審査に通る可能性がある保証会社を選定してくれるというように、保証会社が心配になるような部分を事前に解消しておけるような専門的アドバイスをしてくれる不動産屋が見つかると心強いですよね。その際、借り主側は自分の事情を正直に相談するのが一番です。もし、相性や面倒見が悪いなと思う不動産屋でしたら、他を当たってみるという選択もありだと思います」

■3:管理会社審査

管理会社審査は人柄審査の割合が高い

賃貸管理会社は不動産仲介会社と混同されがちだが、異なる業種だ。

仲介会社は、買い主↔売り主、借り主↔貸し主などから依頼を受け、契約や取引に関することを取り扱うことが仕事。一方、賃貸管理会社は、大家から賃貸物件を預かって管理するのが仕事。大家に代わって入居者募集、家賃集金、クレーム対応、修繕手配、退去後のリフォームなどを請け負っている。不動産屋が管理会社を兼ねているケースもある。

「(賃貸管理会社は)以前は保証会社と同じように、クレジットカードの事故歴の有無などを重点的に見ていたのですが、最近はとくに管理会社の主観が大きくなっているように感じます。大家さんに情報が行く以前に、管理会社の段階で審査落ちするケースもあります」

管理会社がチェックしているのは、借り主の支払い能力や勤続年数は当然のこと、年齢や人柄のウエートも大きい。そして、次のようなケースは減点材料となるという。

・案内した時、不愛想だった(管理会社が内見に立ち会う、または不動産屋が管理会社を兼ねている場合もある)
・契約前から過度の交渉をされる(過剰な賃下げ交渉などを含む)
・書類を提出するのが遅い
・書類に不備がある

「人気物件はほっといても入居希望が絶えないものです。それゆえ、同時期に『借りたい』と名乗りをあげるライバルは意外と多いのです。であれば、問題なしの人と問題ありの人を比べた場合はどうしても前者が有利になります。要は毎月、確実に家賃を払えることが証明できることと、トラブルを起こさなそうな人だとジャッジされればよいだけなのですが、世の中にはさまざまな人がおられますから……」

先ほど管理会社の心証を悪くする減点材料を紹介したが、次に示すのは管理会社判断で実際に審査落ちとなった事例だ。

・「ルームシェア可」物件だったが借り主が男性・女性・女性だった
・(コロナ禍で)借り主が飲食店勤務だった
・借り主の名前で検索したら犯罪歴が出てきた
・ペット禁止にもかかわらず、「ペットを解禁」を要求してきた
・運転免許証に紛失回数があった
・2年分、まとめて家賃を払いたいと言ってきた(かえって不審に思われた)
・保証人が年金受給する高齢者(資産はあった)だった
・同棲カップルだった(関係破綻で家賃不払いの可能性もあると判断)

すべての管理会社がこれらの案件をNGとするわけではないが、「面倒くさそうな人」を極力排除しようとする会社は少なくない。

「管理会社の担当者の主観、ムシの居所次第ということもしばしばですね。ただ、管理会社がうるさくなるのは、借り主とずっと付き合わないといけないからです。職務上、入居者への対応義務がありますから、借り主の審査には慎重にならざるをえないんです」

このように、賃貸物件を借りる場合、大家・不動産屋・保証会社・管理会社が設定した「お作法」が存在し、それをクリアしないといけないということだろう。お作法の内容はそれぞれであり、借り主側からすれば、あたり・はずれがあるということになる。

不動産業者から鍵の受け取り
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

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鳥居 りんこ(とりい・りんこ)
作家
執筆、講演活動を軸に悩める女性たちを応援している。「偏差値30からの中学受験シリーズ」(学研)の著者。近著に『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(ダイヤモンド社)、近刊に『神社で出逢う私だけの守り神』(企画・構成 祥伝社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(取材・文 いずれも双葉社)など。

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(作家 鳥居 りんこ)

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