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「結婚後も皇室にとどまりたい」皇室研究家が初の記者会見から読み取った愛子さまの裏メッセージ

プレジデントオンライン / 2022年3月24日 13時15分

成年に当たり記者会見される天皇、皇后両陛下の長女愛子さま。2022年3月17日、皇居・御所「大広間」 - 写真=時事通信フォト

昨年12月に20歳を迎え成年となった愛子さまが、今年3月17日に初めての記者会見を行った。現行のルールでは、愛子さまはご結婚とともに皇族の身分を離れなくてはならないが、神道学者で皇室研究者の高森明勅さんは、記者会見での言葉の中に、こうしたルールとは異なる愛子さまの希望を示唆するメッセージを読み取ったという――。

■高い品格を感じさせた記者会見

3月17日、皇居の御所・大広間で敬宮(としのみや)(愛子内親王)殿下が初めての記者会見をなさった。昨年12月1日にご成年を迎えられたことにともなうものだ。ご会見を映像で見た人は、それぞれ深い印象を受けたのではないか。

殿下は春らしい若草色のスーツをお召しになって、終始、穏やかな笑顔で、記者からの質問に一つ一つ丁寧にお答えになった。映像を拝見する限り、ご自身であらかじめ用意されたメモに目を落とされる場面は、最後までほとんどなかった。

ご誠実で優美。まだお若いのに風格さえ漂わせておられた。しかも輝くばかりのチャーミングさ。ご会見を拝見しているうちに、「なぜか自然と涙が流れてしまった」とか、「心が洗われたような気持ちになった」という声を、しばしば耳にした。

ご会見の途中、ところどころ言葉がつかえたり、わずかに言い直しをされたりする場面もあった。しかし、そのような時でも、その場を支配していた平安で温かな空気が、いささかもかき乱されることがなかった。お人柄と言うほかない。

ご会見でのお姿から、皇室の方々の中でも直系の血筋につながる方だけがまとうことができる、独特な“オーラ”を感じ取った人もいただろう。

上皇・上皇后両陛下は、内廷(いわゆる天皇家)でありながらお子様をご自分のお手元でお育てになる「親子同居」という、皇室としては新しい暮らし方を取り入れられた。それを天皇・皇后両陛下も受け継がれ、敬宮殿下は20年間、ずっと両陛下から感化を受けられることによって、自ずと高い品格を身に付けられた。その事実を強く感じさせるご会見だった。

■「唯一の直系皇族」の自覚

ご会見では、ご自身が現在の皇室でたった“お1人だけ”の直系皇族(天皇・皇后両陛下のお子様)でいらっしゃるのを、明確に自覚されていることをうかがわせるご発言があった。

たとえば「皇室の一員としての在り方をどのように学んでいるか」という問いに対して、以下のようにお答えになっている。

「私は幼い頃から、天皇皇后両陛下や上皇上皇后両陛下を始め、皇室の皆様が、国民に寄り添われる姿や、真摯に御公務に取り組まれるお姿を拝見しながら育ちました。そのような中で、上皇陛下が折に触れておっしゃっていて、天皇陛下にも受け継がれている、皇室は、国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にしながら務めを果たす、ということが基本であり、最も大切にすべき精神であると、私は認識しております。……」と。

■受け継がれた「帝王学」

歴代の天皇から上皇陛下が受け継がれた大切な「精神」が、天皇陛下からさらに敬宮殿下へと、しっかりと受け継がれていることが拝察できるご発言だ。「象徴天皇」として日々、全身全霊で務めておられるご本人のお側近くで、直接にそのご薫陶をお受けになることこそ、まさに最高の“帝王学”(上皇陛下は「象徴学」と表現されたことがある)だろう。

他にも次のようなご発言が目に止まる。

「新年には、成年皇族として初めて『新年祝賀の儀』に出席しまして、また年末から年始にかけていくつか宮中祭祀にも参列いたしまして、初めてのことばかりで緊張もございましたし、これまで両親から話を聞くだけであった行事に自分が参加しているということには少し不思議な心持ちがいたしました」

「両親と話をしておりますと、豊富な知識と経験に驚かされることが多々ございまして、また、両親の物事に対する考え方や、人との接し方などから学ぶことが多くございます」

敬宮殿下はかねて、皇室の儀式や祭祀について、両陛下から「話を聞く」機会がしばしばあったことが分かる。また、両陛下から「物事に対する考え方」「人との接し方」を学ばれているというのは、それこそ“帝王学”そのものだろう。

■「研鑽(けんさん)」という言葉が表すもの

ご成年を迎えられた敬宮殿下は、両陛下のお気持ちを真正面から受け止めておられるようだ。

そのことが拝察できる材料の一つは、天皇陛下が大切にされている「研鑽(けんさん)」という言葉を、今回のご会見において自然な形で織り込んでおられる事実だ。

「研鑽」という言葉は普通、学問などを深く究めることを意味する。しかし、天皇陛下の場合は、学問・知識の方面ばかりでなく、人格的・道徳的な意味合いも含まれているようだ。たとえば、皇太子として最後に迎えられたお誕生日に際しての記者会見(平成31年〔2019年〕2月21日)で、次のように述べておられた。

「(上皇・上皇后両陛下の)お姿をしっかりと心に刻み、自己の研鑽に励みつつ、今後とも務めに取り組んでまいりたいと思います」と。

その後も、この語は陛下のご会見の際に繰り返し使われている。今年のお誕生日に際してのご会見(2月21日)でも、「歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、研鑽を積みつつ……」というように使われていた。

そこで私はひそかに、敬宮殿下のご会見にあたり、ひょっとしたらこの語を使われるのではないかと予想していた。その予想は的中した。

「皇室の皆様は……このような(皇室の一員としての)立場で研鑽を積むということの意義をお示しくださっているように思います」と。こうした言葉の選び方は、敬宮殿下が天皇陛下のお考えを“自覚的に”受け継ごうとされていることを示す。

■「思いやりと感謝の気持ち」

また、昨年12月1日のご自身のお誕生日に際して、成年を迎えられた「ご感想」を発表された。その中に、このような一節があった。

「日頃から思いやりと感謝の気持ちを忘れず、小さな喜びを大切にしながら自分を磨き、人の役に立つことができるよう、一歩一歩進んでまいりたいと思います」と。

ここに「自分を磨き」とあるのは、天皇陛下がおっしゃる「研鑽」をご自分なりに言い換えられた表現だろう。

さらに、「思いやりと感謝の気持ち」とあるのも見逃せない。と言うのは、令和元年(2019年)の皇后陛下のお誕生日の際の「ご感想」の中に、次の一節があったからだ。

「愛子は……これからも感謝と思いやりの気持ちを大切にしながら、いろいろな方から沢山のことを学び、心豊かに過ごしていってほしいと願っています」と。

天皇陛下も令和2年・同3年(2020年・2021年)のお誕生日にあたってのご会見で、繰り返し敬宮殿下が「感謝と思いやりの気持ち」を大切にするよう、言及しておられた。

先の殿下の「ご感想」中の表現は、明らかにそれらの両陛下のお言葉を受け止め、真摯に応答された結果にほかならないだろう。唯一の“直系皇族”として、天皇・皇后両陛下のお気持ちを全力で受け継ごうとされている姿勢が伝わってくる。

実はこのことに関連して、殿下は意味深長なご発言もされていた。

■「これからも長く一緒に…」に込められた真意

それは、関連質問へのお答えの中で、ご両親(両陛下)に伝えたいお言葉として、(皇后陛下の「生まれてきてくれてありがとう」という言葉に掛けて)「生んでくれてありがとう」と共に、「これからもどうかお体を大切に。これからも長く一緒に時間を過ごせますように」というお言葉を添えられたことだ。

「これからも長く一緒に……」というのは、もちろん、ご両親を慕われる素直なお気持ちのご表明と受け取ることができる。

しかし一方、そこに重大な意味を読み取ることも可能ではあるまいか。何故なら、今の皇室典範のルールでは、未婚の女性皇族(内親王・女王)は、ご結婚相手が天皇か皇族でない場合、ご結婚とともに皇族の身分を離れなければならないからだ(第12条)。

二重橋
写真=iStock.com/mizoula
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mizoula

■「結婚後も皇室にとどまりたい」という意思

政府は先頃、内親王・女王がご結婚後も皇族の身分をそのまま保持されるプランを、国会に提案した(1月12日)。これは有識者会議の報告書に盛り込まれたプランで、それ自体は大きな欠陥ははらむ。これについては、本連載の2月25日公開拙稿ですでに指摘したので、ここでは繰り返さない。しかし国会が真っ当な対応をすれば、女性皇族も男性皇族と同じような形で皇室にとどまられる制度を設けることは、十分に可能だ。

注意すべきなのは、有識者会議の報告書では、これまで現行典範のもとで成長してこられた内親王・女王について、新しい制度を導入しても、過渡的な措置として“例外扱い”をし、これまで通りご結婚とともに皇族の身分を離れられる余地を残している点だ(報告書10~11ページ)。真偽不明ながら、ご結婚によって国民の仲間入りを望んでおられる女性皇族がおられるとの情報も、一部にある。

しかし、このたびの敬宮殿下のご発言は、もしご本人がご結婚によって皇族の身分を離れるご希望を持っておられたら、もう少し違った言い回しになっていたのではないだろうか。婉曲的な表現ながら、ご結婚後も皇室にとどまられるご意思をにじませたご発言と受け取ることができる。

■「時代遅れの制度」見直すべき

皇族としての身分にとどまられるということは、憲法(第3章)が国民に保障している権利や自由のほとんどを断念されるに等しい。とても大きなご決断だろう。

多くの国民にとって、天皇・皇后両陛下のお側近くでお育ちになり、両陛下から直接、最も多くのことを学んでおられる敬宮殿下が、もしご結婚後も皇室にとどまって下さるなら、この上なく嬉しいことではあるまいか。

ただし、敬宮殿下が“女性だから”というだけの理由で、皇位の継承資格を認めない明治以来の制度が、現在も維持されている。“一夫多妻”を維持しているいくつかの国以外には、今や世界中でほとんど類例を見ない旧時代的なルールだ(例外は人口4万人ほどのミニ国家・リヒテンシュタインくらい)。しかもそれは、皇位継承の将来を不安定なものにしている最大の原因でもある。

敬宮殿下が、皇族の身分にとどまって下さるのであれば、唯一の直系皇族にふさわしい形で皇室の未来を担っていただくために、時代遅れな制度は見直す必要があるだろう。

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高森 明勅(たかもり・あきのり)
神道学者、皇室研究者
1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録」

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(神道学者、皇室研究者 高森 明勅)

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