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「その映画のどこが面白かったのか」仕事のできる人ほどイキイキと説明できる理由

プレジデントオンライン / 2022年4月7日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MixMedia

仕事のできる人と、そうでない人は何が違うのか。精神科医の樺沢紫苑さんは「仕事のできる人は、思考を自分の言葉で表現する言語化能力に長けている。そうした言語化能力は毎日のトレーニングで伸ばすことができる」という――。(2回目)

※本稿は、樺沢紫苑『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版)の一部を再編集したものです。

■映画は「見終わった後」がなによりも楽しいと私が話すワケ

私は映画が大好きです。そして、本書の中でも「映画鑑賞」は、もっともお勧めの娯楽の1つとして、何度も登場しています。

しかしながら、映画館で映画を見て、「あー、おもしろかった」で終わってしまっては、それは「受動型娯楽」であり「インプット型娯楽」でしかないのです。

「あー、おもしろかった」だけだと、2時間の間はハッピーかもしれませんが、1カ月後にその内容を、すっかり忘れているかもしれない。そうすると、自己成長につながるはずもなく、もったいないのです。

私はいつも、「映画を見たらアウトプットしよう!」と言います。

映画を見たら、一緒に映画を見た、友人、恋人、家族と、その内容について話す。自分の感想を文章にまとめて、SNSやブログに投稿してみる。その映画から得た気づきをメモやノートに書いてみる。

【図表1】映画は「見終わった後」が楽しい!
出所=『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』

■アウトプットでも大きな喜びを感じられる

多くの人は、「映画を見ている最中が楽しい」と思うでしょうが、私は「映画は終わった後が楽しい」が持論です。その映画について、ほかの人と話す。

その映画のわからない部分をネットで調べて「謎」が解明され、「ああ、そうか」と腑に落ちる。その作品の製作秘話を読んで、「そんなに大変な作業で撮影されているのか」と知る。

あるいは、その映画の感想を文章にまとめて、ブログやメルマガに公開する。自分の頭の中が、客観的な文字列に置き換わっていく。

アウトプットの1つ、「言語化」は、最大の快感です。自分が思っている通りの文章が書けたときの喜びは、非常に大きいです。

■感情を「言葉」に置き換える「言語化」能力

「話す」「書く」「行動する」。アウトプットによって、さまざまな能力が鍛えられます。アウトプットは最強の脳トレと言えますが、数ある能力の中でも、私がもっとも注目するのは、アウトプットによって「言語化」能力が鍛えられることです。

言語化とは、言葉で表現すること。感情や直感的なものを、「言葉」に置き換えることによって、説明、伝達可能にすることです。

「言語化」というのは一般的な会話でも使われますが、実は心理学の用語でもあります。

心理学では、患者(クライアント)さんが心の中に抱えていた漠然とした感情、思いを言葉にすることを「言語化」といいます。カウンセリングや治癒のプロセスにおいて極めて重要です。

カウンセリング
写真=iStock.com/Yue_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yue_

■「言葉で説明できる」=「不安の正体、原因が見える」

「言葉で説明できる」ということは、「客観的に認識できた」ということ。つまり、一気に対応、対処、解決可能となるのです。

たとえば、原因不明でとらえどころのない「漠然とした不安」について、合理的に対応、対処することは困難です。いつ、どういうシチュエーションで不安は起きるのか。不安は、何分続くのか。どういう状況で不安は軽減するのか。

それらを、1つ1つ言葉にしていくと、不安の正体、すなわち原因が見えてきます。その先にあるのは、「安心」です。

■体調不良、メンタル不調の早期発見も可能に

ちなみに、精神科の患者さんは、言語化能力が乏(とぼ)しい人がほとんどです。つまり、「言語化能力が乏しい」→「理論、理性的に考えるのが苦手」→「感情に流されやすい」→「対応できない」ということになります。

言語化能力は、「観察能力」「自己分析能力」であり、「説明能力」「論理的思考力」そのものと言ってもいい。言語化能力が高い人は、「現実認識能力」が高い。つまり、今何が起こっているのかを、冷静に客観的に中立に捉えられるということ。

毎日、日記を書いて、言語化能力を磨いていく。そうすれば自分の「悩み」や「ストレス」の正体を自分で分析できるし、体調不良、メンタル不調も、ごく軽微な状態で発見できる。メンタル疾患の最大の予防です。

また、言語化能力が高いということは、「失敗した原因を言葉で説明できる」ということ。つまり、フィードバック力が高い。つまり、修正力が高いということ。きちんとフィードバックできていれば、同じ失敗を二度と繰り返すことはありません。失敗を経験に変えていけば、失敗するごとに飛躍的に成長していくのです。

■同じ失敗を2度、3度する人の特徴

言語化能力が低い人は、「なぜ失敗したか」「なぜうまくいかないか」を言葉で説明することができません。つまり、「何となく失敗した」としか言えない。

当然、失敗の理由、原因も説明できない。とするのなら、次もまた同じ失敗をするしかないのです。同じ失敗を二度、三度繰り返す人。その理由が説明できない人は、間違いなく言語化能力が低いのです。

もしあなたが、言語化能力が低かったとしても、落ち込む必要はありません。自分の意見を聞かれて、スパッと答えられる人は、せいぜい10人に1人くらいでしょう。

逆を言えば、言語化能力が高い人は、職場やビジネスにおいて極めて有利です。上位10%に入ることができます。

特にこれからのAI時代、「インプット仕事」よりも「アウトプット仕事」が必要とされる時代では、言語化能力が勝者と敗者をわける鍵となるはずです。

電球とメモパッド
写真=iStock.com/Twomeows_IS
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Twomeows_IS

■1日15分で言語化能力は向上する

「言語化」能力を磨くのは、簡単です。アウトプットを日常にすれば良いのです。

・本を読んだら感想を書く。
・映画を見たら感想を書く。
・おいしいものを食べたら、感想を書く。
・今日あった、楽しかった出来事を文章にする。

つまり、「遊び×アウトプット」を、1日15分でも続ければ、たったの3カ月でも言語化能力は飛躍的に向上します。

実際、私のコミュニティ、樺沢塾や樺沢紫苑オフィシャルファンクラブ「しおんず」で、アウトプットのイベントをよく行いますが、たった2、3カ月、たった数回のプレゼンテーションをしただけで、飛躍的にアウトプット力が向上する事例が多発しています。

短期間で言語化能力をアップさせるには、「話す」よりも「書く」アウトプットは効果が大きいです。特にSNSやブログなど、不特定多数の人が読むメディアに書くと緊張感も生まれ、成長スピードは何倍にもアップするでしょう。

■すべての「遊び」をアウトプットするべき

ということで、「遊び×アウトプット」で言語化能力が飛躍的にアップする。あなたの人生は、簡単に変えられるのです。

映画を見たらアウトプット。

本を読んだらアウトプット。

おもしろいテレビ番組を見たらアウトプット。

旅行に行ったら、写真とともに、その楽しい体験をアウトプット。

おいしいものを食べたら、写真とともに、その感想をSNSにアウトプット。

今日1日の「楽しかった出来事」を、日記にアウトプット。

映画や読書に限らず、すべての「遊び」「娯楽」「楽しい体験」をアウトプットするべきです。

アウトプットの掛け算で、あなたの脳は活性化し、頭が良くなる! アウトプットすることで、圧倒的に記憶に残りやすくなる。

「楽しい体験」を毎日、アウトプットしていれば、あなたの頭の中は「楽しい」「楽しい」「楽しい」で埋め尽くされます。「今日、楽しい」が、365日、それが10年、50年続くのが、「楽しい人生」「幸せな人生」です。

■苦しい時に出るノルアドレナリンは強力

「つらい体験」「苦しい体験」は、勝手に記憶に残ります。苦しいときに分泌される脳内物質、ノルアドレナリンは、記憶増強作用がものすごく高いからです。

あなたが上司に叱られた体験。それが数カ月前のものでも、いまだに「失敗体験」を引っ張っているのは、不安と恐怖とともに分泌されるノルアドレナリンの影響です。

アウトプットの記憶増強効果は、非常に絶大です。

たとえば昼間、「上司に叱られた」という「ものすごく嫌な体験」(ネガティブ体験)をしましたが、会社の帰りに、映画を見て「すごくおもしろかった!」(ポジティブ体験)という体験をしたとします。

■「ネガティブな体験」を消し去る、とっておきのワザ

この時点ではまだ、脳に対するインパクトは、ネガティブ体験のほうが強烈なのです。だから、そのまま布団に入ると、布団の中で「上司に怒られた嫌な記憶」が蘇り、「寝る直前に考えたことは強烈に記憶される」という脳の法則によって、何カ月も忘れられなくなるのです。

樺沢紫苑『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版)
樺沢紫苑『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版)

だから、「おもしろい映画」を見たら、アウトプットとします。

「今日見た映画、最高におもしろかった!」と家族に話す。友達、恋人に電話で話す、メッセージで伝える。できれば、その映画の感想を短文でもいいので文章に書いて、SNSに投稿する。

そうすると、「何度も使われた記憶を脳は保存する法則」……アウトプットの記憶増強効果によって、脳の中ではネガティブ体験よりも、ポジティブ体験のインパクトが強まります。

寝る直前に、「ああ、今日はおもしろい映画を見た、とても良い1日だった」と思いながら寝ると幸せな気持ちで、深い睡眠に入れます。

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樺沢 紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医
作家。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。YouTubeやメルマガで精神医学の情報を発信。著書に『学びを結果に変えるアウトプット大全』『精神科医が教える ストレスフリー超大全』ほか。

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(精神科医 樺沢 紫苑)

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