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「いい文章の書き方について」…仕事ができる人なら、このタイトルが「ダメな文章の典型例」だとわかる

プレジデントオンライン / 2022年4月8日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/juststock

わかりやすい文章を書くにはどうすればいいのか。ワンキャリア取締役の北野唯我さんは「文章とは、動詞を核にして周辺が成り立っているもの。そう考えれば『○○について』という書き方が、ダメな文章の典型例だとわかる」という――。(第2回)

※本稿は、北野唯我『仕事の教科書』(日本図書センター)の一部を再編集したものです。

■文章のわかりやすさが仕事の速さに直結する

「あなたの文章はわかりづらい」と言われないために、まず必要なのは、「わかりやすさ」をつくる技術だ。というのも、職場で一生懸命がんばっているが、仕事が遅いと言われる人のほとんどの場合は、「わかりづらさ」が原因だからだ。

では、どうすれば、「わかりやすく」できるのか? わかりやすさをつくる技術を、爆速で獲得できるか?

覚えておきたい3つの法則がある。この3つの法則を使いこなすだけで、わかりづらさが一気に解消される。すでに十分わかりやすい文章が書ける人は、もっとわかりやすくなるはずだ。

1つめは、【目的ファーストの法則】だ。文章の冒頭で、①目的、②所要時間の2つを伝えることだ。この法則はとてもシンプルだが、これだけでかなりの問題が解決できる。

まず、①目的について、具体的には、

(A)相談(=整理してほしいこと)
(B)共有(=知っておいてほしいこと)
(C)意思決定(=なにかを決めてもらうこと)

のどれなのかを、まず伝えてから、文章をスタートすることだ。行き着くところ、すべてのビジネス文章の目的は、(A)相談か、(B)共有か、(C)意思決定のどれかだ。

■文章の目的が相談か共有か意思決定かを冒頭に明確にする

たとえば、なにか悩んでいることがあって壁打ち相手になってほしいなら(A)相談だし、参考になるかもしれないネタを知ってもらいたいときは(B)共有だ。営業数字の報告も(B)共有に当てはまる。あるいは、予算を決めてもらう必要や、なにかサポートをもらう必要があるときなど、上司や経営者に求めるのは(C)意思決定になる。

したがって、まず、私たちが意識すべきことは、文章の冒頭に、これら3つ(相談・共有・意思決定)のどれが目的なのかを伝えられるようになることだ。

より具体的には、文章の冒頭に、

(A)「相談があります」
(B)「これは情報共有です」
(C)「意思決定がほしいです」

と、添えて書きはじめればいいだけだ。これだけで、受け手からすると、「なるほど、これから相談されるんだな」といった予測ができ、ストレスがぐっと減る。

ちなみに、小学校などで習った起承転結は、残念ながら、ビジネスの世界では絶対に使ってはいけない文章術である。なぜなら、ビジネスの世界では、「タイミング」や「スピード」が命で、最後まで文章を読まないと結論がわからない起承転結は、これらを致命的に阻害するからだ。

■所要時間を伝えて相手のストレスを減らす

①目的は伝えた。さらに、わかりやすくするために、できることはなにか? それは、②所要時間も伝える、である。意外と、多くの人が見落としがちなことなのだが、とても重要なポイントなので、覚えておいてほしい。たとえば、こうだ。

「相談があります。10分で終わります」
「意思決定してほしいことがあります。重要な話ですので、60分はかかるかもしれません」

なぜ、所要時間を伝えるべきなのか? それは、「時間」がもっとも貴重な経営資源だからだ。上司や経営者にとって、重要事項に時間を使うことはけっして嫌なことではない。むしろ、それが1番大切だ。

一方で、大して重要ではない事項に、たくさんの時間を取られるのは絶対に避けたいことだ。そのため、事前に所要時間を伝えることで、時間を取ることに対して納得してもらう必要があるのだ。

■目的がわからない文章は校長先生の話を聞かされているようなもの

目的も所要時間もわからない状態とは、どんなものか? それは、「この先、どうなるかわからない状態」だ。これは、間違いなく相手をイライラさせてしまう。

会話であれば、学生時代に聞いた、校長先生のつまらない話をイメージすればわかりやすいだろう。校長先生の話を延々と聞くことほど、ストレスなことはない。なぜか?

授業で全員寝ている教室
写真=iStock.com/pidjoe
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pidjoe

その理由は、「行き先がわからないから」なのだ。人は、行き先がわからない状態にきわめて強いストレスを感じる。だとしたら、そのストレスを低減させるには、どうすればいいか?

答えは、受け手に対して、ある程度の「話の予測」ができる状態をつくり出すことだ。校長先生の話がストレスフルなのは、受け手である私たちが、「この先どうなるのか?」「何分続くのか?」が、わからないからなのだ。話を聞く側のストレスは、話の予測ができるだけで、かなり下がる。では、なにを伝えるべきか? この答えを示すのが、【目的ファーストの法則】なのだ。

■文章が上手な人は動詞を使いこなしている

2つめは、【動詞の法則】だ。この法則も、「わかりづらさ」から爆速で脱却するために、絶対に覚えておいたほうがいいものだ。結論から言うと、すべての文章に、必ず「動詞」を入れることだ。

いい話し手であり、いい書き手であり、いい営業マンであり、いいマーケターである人は、動詞の使い方が抜群にうまいのだ。

ちなみに、前提を合わせるために、「動詞」を定義しておくと、物事の動作や状態を表す言葉だ。たとえば、着る・食う・住む・書く・話すといった動作や、存在する・存在しないといった状態を表す言葉だ。

具体例を使って見ていこう。まず、ダメな文章の典型例でありがちなのが、「○○○について」という一文だと私は思っている。

○Before:ダメな文章例
いい文章の書き方について
組織改編ミーティングについて

一見すると、問題なさそうな気がする。なにが問題なのだろうか? それは、結論がないことだ。じつは、これらの文章には結論がない。では、結論とはなにか? それはずばり、「動詞」なのだ。

■あらゆる文章は動詞を核にして成り立っている

どんなビジネス文章も、最終的には結論に動詞が伴う。行き着くところ、「Do=やる」か「Don’t=やらない」の2つしかない。営業のミーティングを「やる」。広告施策を「やらない」。商品開発を「やる」。M&A(=買収)を「やらない」。これが結論だ。ということは、「動詞のない文章=結論のない文章」なのだ。

ただ、当然、「Do」と「Don’t」だけだと、重要な要素が欠けてしまうこともある。そのときにはじめて、5W1Hの出番になる。Why?(なぜ?)、When?(いつ?)、Who?(だれが?)、Where?(どこで?)、What?(なにを?)、そしてHow?(どのように?)を、付属的に追加するのだ。

じつは、こうやって文章は成り立っている。言い換えれば、文章とは、「動詞を核にして周辺が成り立っている」のだ。

その意味において、先の「○○について」という文章には、結論がないのだ。では、どうすればいいか? 【動詞の法則】を使うことだ。つまり、自分が書いた文章に、きちんと動詞が入っているかを確認して、入っていなければ必ず追加するのだ。たとえば、このような修正ができる。

○Before:ダメな文章例
いい文章の書き方について
組織改編ミーティングについて
○After:【動詞の法則】を使った文章例
いい文章の書き方をご紹介します
組織改編の進捗共有&ご相談

1つめの例では、「紹介」という動詞を加えた。これで、結論が加わったため、文章の意図がわかりやすくなった。読み手からすると、「紹介してくれるんだな」という結論がすぐに理解できる。2つめの例では、「共有」と「相談」という動詞を入れている。

ただ、これだけだと、まだわかりづらさが残る。そこで、あわせて使うべきなのが【目的ファーストの法則】だ。

■ビジネスでは重要度の高い順で情報を並べる

思い出してほしい。【目的ファーストの法則】は、文章の目的が「相談」か「共有」か「意思決定」かを、まず伝えてから文章をスタートさせることだった。この「相談」「共有」「意思決定」という「目的」は、「結論」と言い換えることができるだろう。つまり、「結論を先にもっていく」のだ。

では、結論とはなにか? 前述したように、結論とは、動詞にほかならない。したがって、先ほどの例であれば、結論=動詞=「紹介」「共有&相談」を、文章の冒頭にもっていくべきなのだ。

修正すると、つぎのようになる。最初の「ダメな文章例」から、修正の流れを見ていこう。

○Before:ダメな文章例
いい文章の書き方について
組織改編ミーティングについて
○After:【動詞の法則】を使った文章例
いい文章の書き方をご紹介します
組織改編の進捗共有&ご相談
○After:【動詞の法則】&【目的ファーストの法則】を使った文章例
【ご紹介】いい文章の書き方について
【共有&相談】組織改編について

どうだろう? この工夫を施すだけで、文章はかなり相手に伝わりやすくなる。文章とは、「動詞=結論→そのほかのオマケの文章」という順番が、人間にとって理解しやすいのだ。

もちろん、ここで挙げた修正案は一例だ。絶対的な答えではない。しかし、このシンプルな変換から、私たちが学ぶことはとても多い。それは、文章の並べ方の問題だ。つまり、原則として、ビジネス文章とは、重要度の高い順から情報を並べるべきなのだ。そうすることによって、受け手は、「紹介してくれるんだな→なにを?→いい文章の書き方についてか」というふうに、重要な順番に、情報を理解できるようになるのだ。

■短文は「なんだかんだ伝わる」

3つめは、【短文の法則】だ。とにかく文章を短く切るのだ。

もしかしたら、あなたは「長い文章を書ける=文章がうまい」と思っているかもしれない。しかし、これはまったくの逆だ。「短文を書けること」こそが、文章作成のコツであり、「わかりやすさ」のためには、まずはこちらをめざしたほうが100%いい。とにかく短く切ることだ。困ったら、とにかく一文を短く切る。これに尽きる。

具体的には、まず、

・形容詞:大きい・新しい・楽しい・かっこいいなど、物事の状態や性質を表す言葉
・副詞:ゆっくり・ときどき・かなり・ずっとなど、物事の程度や状態を表す言葉
・接続詞:そして・しかし・またなど、文章をつなぐ言葉

を、最小限に抑える。そのうえで、短く切ることだ。これが、【短文の法則】だ。なぜ、この法則が有効なのか?

まず、「短文」のすばらしいところは、「なんだかんだで、伝わること」にある。たとえば、下の文章を読んでみてほしい。

私は書きます。日記を。手帳に。今日。はじめます。

文章としては美しくないし、文法的に正しくはない。それでも、ほとんどの人には、なにが言いたいかはわかるだろう。

これは不思議な話ではないだろうか? 私たちは小さい頃から、正しい文法・正しい表現を使うことをきびしく教わってきた。しかし、このハチャメチャな文法でも、意味は伝わるのだ。

では、なぜ伝わるのか? その理由は、ムダな贅肉が削ぎ落とされている分、骨格をはっきりと認識できるからなのだ。 文章とは骨格が1番大事だ。形容詞などは、あくまで飾りでしかなく、骨格さえあれば、相手に意味は伝わるのだ。したがって、とにかく文章が苦手な人は、「迷ったら、形容詞などは無視してでも、短文をめざせ」なのだ。

■短くて情報量の多い文章こそが究極的に美しい文章

「究極的に美しい文章とはなにか?」と、私は考えることがある。「価値がしっかりと読者に伝わる文章とはなにか?」と表現することもできるかもしれない。

結論を言うと、「究極的に美しい文章」とは、「文字数に対する、情報量の割合が高い文章」だと思う。言い換えると、「大量の情報が入っているのに、短くて、わかりやすい」ことだ。

唐突に聞こえるかもしれないが、数学や物理の公式が、これに当てはまると思う。数学や物理の公式のすばらしさは、たった4~5文字の文字列に、宇宙がつまっていることだ。ありとあらゆる情報が入っていることだ。だから、言語としてもっとも美しいのは数学や物理であると、私自身は思っている。

では、ビジネスのコミュニケーションにおいてはどうだろうか? 数学や物理は極端な例であっても、ビジネス文章も同じ原則に基づいている。つまり、「短ければ短いほど、文章としては善」ということだ。正確に言うと、情報量が同じであれば、短いほどいい。これは大切な話だ。具体的には、

・文字数はどれだけ多くても一文が40文字
・できれば、その半分の、一文20文字以内に抑えるべき

ということだ。ちなみに、一文とは、書き出しから句点「。」までを指す。

■一文を20~40文字に抑える努力をせよ

あなたは、なにか文章を書くとき、「自分の書いた一文は何文字か」を意識したことがあるだろうか。おそらく、意識したことがある人は稀だろう。もし、一度も数えたことがなければ、自分が書いた文章を数えてみて、音読してみるといいだろう。

一文が40文字以上になると、明らかに読みづらいし、長い。聞いている側が一度では理解できない可能性が高くなる。40文字以内、できれば20文字以内にしたほうがいい。意地でもやったほうがいい。例を挙げて考えていこう。

○Before:長い文の例
あなたは、なにか文章を書くとき、「自分の書いた一文は何文字か」を意識したことがあるだろうか。(46文字)
○After:短い文の例
あなたは意識したことがあるだろうか。「自分が書いた一文が何文字ぐらいか」を。(18文字+20文字)

両方を音読してみるとわかるが、前者は意味がわかりづらくなっている。一方で、後者はわかりやすい。「一文は40文字以内、できれば20文字以内に、意地でも抑えよ」が反映されているからだ。

■若いうちから短く書く努力を繰り返すべき

ただ、あなたはこう思うかもしれない。「短くまとめられません。だって、文章が下手だから」と。気もちはわかる。でも、本当は順番が逆なのだ。文章がうまいから短く書けるわけではなく、短く書こうとするから文章がうまくなっていくのだ。

言い換えれば、あなたが「文字数制限なく、自由に書いていいですよ」と言われ続けたとしたら、永久に短い文章を書けるようにはならない。短く書こうとしなければ、いつまでも文章がうまくならないからだ。自由に書いていいと言われたら、人は長く書いてしまう。一方で、短く書けと言われれば、短く書けるようになるものなのだ。

フォームに記入する介護者の手
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

Twitterをイメージするとわかりやすい。Twitterは140文字の制限がある。そして、人は「140文字以内で書きなさい」と強制されれば、140文字で書けるようになる。しかし、「自由に書いていいですよ」と言われると、ダラダラ書いてしまって、140文字に収められないのだ。

これは、CHAPTER1の【目標の法則】で伝えたことと同じだ。技術があるから、目標を達成できるようになるのではなく、まず目標があって、それを達成するために行動するから、技術を身につけられるようになる、ということだ。

北野唯我『仕事の教科書』(日本図書センター)
北野唯我『仕事の教科書』(日本図書センター)

つまり、「先に目標、成果は後」。こういう順番なのだ。とても重要なことなので、何度も声に出して、頭に叩き込んでほしい。「先に目標、成果は後」だ。

当然、【短文の法則】は「型」になる。型を覚えた後は、自由に書けるようになるべきだし、自由に表現したほうがいいフェーズ(=局面)が必ずくる。あなたの感性を思う存分、表現すべきタイミングが必ずくる。

ただ、どんな世界でも、まずは型を覚えたほうが、明らかにその後の成長スピードは上がる。だからこそ、若いうちに短く書く練習をくり返すべきなのだ。面倒そうに見えても、絶対やったほうがいい。なぜなら、ほかのビジネスパーソンは絶対やらないからだ。それゆえ、今後のあなたを助ける武器になる。がんばろう。

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北野 唯我(きたの・ゆいが)
ワンキャリア取締役
兵庫県出身、神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。現在取締役として人事領域・戦略領域・広報クリエイティブ領域を統括。またテレビ番組や新聞、ビジネス誌などで「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『転職の思考法』『オープネス』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)、『分断を生むエジソン』(講談社)がある。

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(ワンキャリア取締役 北野 唯我)

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