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Twitter、Facebook、LINE、Instagram…都民2万人調査で「ハマるほどメンタルに悪い」と判明したSNSはどれか

プレジデントオンライン / 2023年5月1日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stnazkul

SNSとメンタルヘルスには興味深い関係がある。早稲田大学の西多昌規教授は「SNSも使い方を誤ると、メンタルヘルスに良くない。特にTwitterの利用には、注意したほうがいい」という――。(第3回)

※本稿は、西多昌規『休む技術2』(だいわ文庫)の一部を再編集したものです。

■LINEはメンタルを安定させ、Twitterは不安にさせる

現代では、一つだけでなく複数のSNSに登録して、用途によって使い分けている人が多いと思います。日本人が使っている代表的なSNSは、Twitter、Facebook、LINE、Instagramあたりでしょうか。

ユーザーの年齢層や使用目的について、SNSごとに特徴があります。SNSとメンタルヘルスとの関係性も、急速に研究されるようになったテーマの一つです。SNSは国によって使われるツールが異なりますし、国民性もかなり反映されますから、外国ではなく、日本で行った研究を参考にする必要があります。参考にするのにうってつけの研究結果が、東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太先生らによって論文化されました。

結論は、メンタルヘルス状態はLINE利用者で良好であり、Twitter利用者はよくないというものでした。都民2万1300人を対象としたアンケート調査です。これによると、若年者のSNSを利用するための機器の所持率はほぼ100%ですが、高齢者も62.3%はSNSを使っていて、全世代を通じてLINEを使っている人が多かったとのことです。

主観的幸福度は、若者はInstagramの閲覧、中高年はFacebookへの発信、高齢者はLINEでのやり取りと、それぞれ相関がありました。年代に応じてこれらのSNSを活発に利用することは、メンタルへルスに好ましいという結果です。

■中年層・高齢者層はTwitterを使うほど孤独になる

また悩みや抑うつについても、同じ傾向がみられました。LINEのような家族、友達との連絡ツールとなっているSNSは、リアルでの関係がうまくいっている限りにおいては、現代に欠かせないコミュニケーションツールであることが、この研究でも示されています。反対に、はまるほどメンタルに悪いのは、Twitterでした。

幸福度、悩みや抑うつは、Twitterの頻繁な発信と関連がありました。中年層・高齢者層においてのみ、孤独感がTwitterの発信頻度と相関があったことは、Twitterで誹謗中傷ばかりの投稿で暴れている匿名アカウントを見ると、なるほどという気がします。たしかに、匿名での発信、やり取りが多いTwitterでは、攻撃性に富んだ誹謗中傷が問題となっています。

わたしが学生から受ける相談でも、メンタル不調の要因となっているのは、誹謗中傷を受けやすいTwitterである印象を持つので、現場の感覚とマッチしているように思えます。

実名で発信している著名人が、あまりに度を越した人格批判や誹謗中傷に耐えかねて、メンタル不調だけでなく自殺に追い込まれることさえあるということは、胸が痛む、忘れてはならないリスクです。

このようなTwitterの危険性を知っていても、わたしなどは貴重な情報源として、毎日何度も閲覧してしまいます。Twitterでの炎上騒ぎで、うつになったり眠れなくなったりする人からの相談を受けることもありますが、なかなかTwitterはやめられない、アカウントを削除できないといいます。依存性、習慣性の強いものであると、やめられない自分を振り返っても、改めて思い知らされます。

■インスタグラムには悪影響がないが…

Twitterは、あまりに攻撃的なアカウントは、ミュートにしてしまうのがいちばんです。ブロックすると、相手は拒絶されたと反応し、あの手この手でますます攻撃してくる可能性があります。

また投稿する際は、見ている人がどのような反応をするかを想像する必要があります。ムカついた情報に瞬時に反射的にツイートしたり、酒気帯びでのツイートは、危険です。動物の画像など適度に和むアカウントを織り交ぜながら、自分のタイムラインをメンタルにやさしいものにするのが賢明です。閲覧数を増やすために、炎上を故意に狙う人もいるかもしれませんが、これは自己責任でしょう。

Instagram、Facebookは、年齢層は異なるものの、日本人の場合は総じてメンタルによいという結果でした。リアルな友達とのコミュニケーションのよい補完になっていれば問題ありません。しかし高級ホテルやレストランの写真アップ、おしゃれな服を買った、子どもが難関校に合格したといった投稿は、本人にその意図はなくても、自身の優位を無意識のうちにアピールしている行動の可能性もあります。

写真カルーセル付きのソーシャルメディア投稿のモックアップ
写真=iStock.com/grinvalds
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/grinvalds

また、見ているほうも、「こいつ、いい思いしているな」「自分はそれどころじゃないのに」という嫉妬や羨望が生じてくれば、メンタルに好ましいとは言えません。

■他人との比較がメンタル不調を引き寄せる

他人との比較、つまり「社会比較」は人間社会につきものですが、あまりに偏った強い社会比較は、自分をつらくするだけです。オーストラリア、クイーンズランド大学の論文では、Facebookを5日間休むことで、ストレスホルモン(コルチゾール)の活動レベルが低下することが示されています。

FacebookやInstagramで、他人に対する嫉妬や羨望を感じているのなら、リア充承認欲求がある人ほど非表示にしてみましょう。SNSが普及する前は、他人との比較といえば、クラスメイトや同僚、ママ友など、せいぜい数十人でした。

しかしSNSでは、ネットの向こうに何万、何十万人の人がいます。そんな莫大な数の人を相手に、いいねをもらいたい、悪く思われたくない、などと思い続けていれば、メンタルがキツくなるのは当然のことに思えます。

もちろん、タイムラインを整えることで、自分にとって聞こえのいい情報ばかりが並ぶようになり、価値観、思い込みがより強化されてしまう懸念はあります。しかし、客観的な批判と人格否定や暴言は、質が異なります。心を傷つけるようなアカウントは、ミュートにしてしまいましょう。これからの時代、心を整えるには、自分のSNSのタイムラインをつねに整えるよう意識することが大切です。

・休むヒント
メンタル不調を引き寄せる「社会比較」でしんどさを感じたら、SNSを休んで距離を取りましょう。

■人とのコミュニケーションは薬にも毒にもなる

心と身体のリズムを整える要因は、光と運動、食事の3つだと言われています。しかし、わたしが思うに、もっとも重要な第4の要因があります。それは、人とのコミュニケーション、できればSNSやオンラインでの会話ではない、「リアルなコミュニケーション」です。

人とのコミュニケーションは、薬にも毒にもなりえます。ソリの合わない人とつきあうのは、ストレスのかかることです。人間関係に疲れたとき、苦手な人やトラブルと距離を取ることは心を休めることにつながりますが、とはいえ、まったく人と会わない、何日も何カ月も誰とも話さないというのは、孤独という、心身の健康にもっとも悪い状況をもたらします。

カフェで話したりリラックスしたりする中期の大人のカップル。
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

2020年の最初の緊急事態宣言のときを思いだしてみてください。家族以外の人との会話は明らかに減っていたはずです。単身の人のなかには、数日どころか数週間、誰とも話さないという人もいました。人と話すのが得意ではない、コミュニケーションが苦手という人にとっては、自粛生活はかえってストレスがなくラクだったという声も聞きましたが、数カ月ならばともかく、何年も誰とも話さずに社会生活を健康的に送れるとは、やはり思えません。

今の時代、心を休めることの大切さは言うまでもありませんが、コミュニケーションの長いお休みは、心身のリズムを狂わせてしまいます。孤独は、人間関係を休んでいるというより、心にぽっかり穴をあけてしまうのです。人づきあいのストレスがひどい場合は別ですが、可能な範囲で毎日誰かと話せる環境をつくるにこしたことはありません。

また、日中の会話とコミュニケーションには、夜のスマホ使用を減らす効果があるという研究もあります。コミュニケーションとスマホは、どう関係しているのでしょうか。

■日中のストレスが夜のスマホ使用を促している

人間には、寝る前に入眠儀式としてついついやってしまうことがあります。昔ならば、読書が代表的な儀式でした。この寝る前についやってしまうことには専門用語がついていて、Bedtime Procrastinationといいます。現代の代表的なBedtime Procrastinationがスマホであることは、いうまでもないでしょう。

西多昌規『休む技術2』(だいわ文庫)
西多昌規『休む技術2』(だいわ文庫)

問題は、どういう人が夜にスマホにはまって、寝つきが悪くなってしまうかです。オランダ、ユトレヒト大学の研究グループは、平均年齢35歳(18~75歳)の成人218人を対象に、日中の行動やストレスや夜のスマホ使用との関係を調べました。その結果、日中にやりたいことを我慢している回数が多いほど、夜のスマホ使用が増加するとの結果でした。

日中の欲求は、人によってさまざまでしょう。しかし、「人と接したい」というのは、人間の根源的な欲求です。この人との接触、コミュニケーションという欲求が満たせない環境は、不安レベルを高めて、夜の不眠、ひいてはスマホによる情報探索に人々を向かわせてしまうのではないかと考えられます。

個人で仕事をしていたり、リモートワークが多い職場で働いているなら、人とのコミュニケーションが維持できるようにしていくことは、メンタルヘルスのためにも非常に重要です。

■「日中に人と話す」を意識すべき

コロナ禍も一段落して、これからは人と会う機会が増えてくると思います。フルリモートワークができる環境だとしても、出勤日を設けたほうがいい場合もあります。リアルな出勤や対面での会話が難しい状況なら、SNSやチャットでやり取りするだけでも、一日中孤独な作業を続けているよりもよい効果があります。仕事のことばかりでなく、「最近どう?」的な雑談が、孤独という脅威からわたしたちを守ってくれるのです。

日中のコミュニケーション不足は、入眠儀式としての夜スマホを強化している可能性があります。日中に人と話す、特に用事がなくても誰かとやり取りする、などの小さな行動が、夜スマホを減らしたり、スマホを見たまま寝落ちできるなどのメンタルの安定をもたらし、ひいては睡眠や生活リズムも改善し、心身にとってよい循環をもたらしてくれるのです。

・休むヒント
「コミュニケーションのお休み」が続くと不安レベルの高まりや、心身のリズムの乱れにつながります。こんな時代だからこそ「日中に人と話す」ことを意識しましょう。

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西多 昌規(にしだ・まさき)
早稲田大学スポーツ科学学術院 教授、精神科医
1996年東京医科歯科大学医学部卒業。自治医科大学講師、ハーバード大学、スタンフォード大学の客員研究員などを経て、早稲田大学スポーツ科学学術院・教授、早稲田大学睡眠研究所・所長。日本精神神経学会・精神科専門医、日本睡眠学会・専門医。専門は睡眠、身体運動とメンタルヘルス。『休む技術』『休む技術2』(だいわ文庫)など著書多数。

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(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授、精神科医 西多 昌規)

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