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常識にとらわれてはいけない…稲盛和夫氏が断言した「ビジネスで失敗する人」に共通するたった1つのこと

プレジデントオンライン / 2023年6月19日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ekkasit Jokthong

成功するには何が必要か。ライフコーチの宮崎直子さんは「常識にとらわれない勇気を持つことだ。稲盛さんは自身がまったく無名だった時から、このことを徹底していた」という――。

■小さな工場時代から「面倒くさい」人だった

私が知る限り、稲盛さんは「面倒くさい」人だった。

まだ京都の名の知れない小さなセラミック工場の社長であった時代から、納得がいかないことがあると相手構わず腹落ちするまで議論した。雨が降ったら傘を取り上げるような銀行とは付き合えないと、当時の経済界で有名だった都市銀行の頭取に会いに本店まで乗り込んで行くような人だった。

今でこそ稲盛さんの京セラ会計学は有名だが、工学部出身の稲盛さんは、もともと会計には明るくなかった。けれども、自分は素人だからと納得がいかないことを鵜呑みにすることはなく、納得がいくまで議論し続けたので、経理担当者には「これだから素人は」とあきれられていたという。

■税金を余計に払ってでも「正しい会計」を貫き続けた

稲盛さんが、政府が定める会計のルールに納得できず、社の監査を請け負う会計士や税務署の職員と激論を交わした逸話は枚挙にいとまがない。

固定資産の耐用年数もその一つだ。

セラミックスを製造する機械は硬いものを扱う。このため、法定耐用年数が10年のものでも、実際には3年ぐらいしか持たない。実際の3倍もの年数をかけて償却すると、実際よりも経費が少ない分、もうかっているように見えてしまう。

会計の本質は会社の飾らないありのままの姿を映し出すことと考えた稲盛さんは、法定耐用年数に従わなかった。税務署と激論を交わした末に、税金を余計に払って有税償却という方法をとってでも実際に機械が動く期間内で償却することを選んだ。

また在庫評価は、製造コストを積み上げて出した原価を基にするのが一般的だが、実際稲盛さんが製造していた電子部品の売値は刻々と変化する。製造原価が1000円でも商品の値段が下がってしまい、今は500円でしか売れないものの在庫を1000円と評価するのは不健全だと稲盛さんは考え、売値をベースに製造コストを出す売価還元法を採用した。

京セラが上場するに当たり、「小売業が使うようなこのシンプルな売価還元法を使っては困る」と監査法人や税務署から飛んできた指摘にも、「いや、こちらの方が会社の素の姿を表すから、よっぽど正しい」と一歩も譲ることがなかった。

稲盛さんは「保守的会計」という自ら定めた経営の原理原則に基づき、徹底的に面倒くさい人であり続けたのだ。

■「売り上げが上がったから経費も」ではいけない

稲盛さんは、「常識を鵜呑みにするのではなく、ものごとの本質に照らし合わせて、自分の頭で何が正しいか考えろ」と日頃私たち塾生に口をすっぱくして説いた。

例えばこの業界の利益率は○○%だからうちも○○%を目指すというような考え方は稲盛さんには一切なかった。業界の標準に合わせるのではなく独自に目指すべき利益率を定めろと説いた。

また、一般の常識では、売り上げが上がれば経費も上がると考える。しかし、稲盛さんは違った。経営の本質は、売り上げから経費を引いた「利益」を上げること。だから、経費を維持したまま売り上げを上げるべきだと考えた。

不況が来た途端売り上げは激減する。経費を同じ勢いで減らすことが難しい。「売り上げが上がっているから」と経費もどんどん増やしていけば、会社は一夜にして窮地に陥ってしまう。そのことを稲盛さんは知っていた。

■「常識を鵜呑みにするな」

稲盛さんの経営哲学は、われわれ個人の人生にも応用できる。「常識を鵜呑みにするな」も然りだ。

先に挙げた売り上げと共に経費も上げるなというのが良い例だろう。

飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍し、人生100回分ぐらいの資産があった有名人が、あっという間に没落し一文なしになることは珍しくない。あんなにたくさんあったお金は一体どこに消えたのか?

「収入が増えれば支出も同じように増やすもの」という常識を鵜呑みにし、収入が上がるのと同時にライフスタイルを派手にしていく。その結果、自分の時代が終わり収入が途切れてもライフスタイルを急に変えることはできず、億万長者から無一文にあっという間に転落してしまうのだ。

なぜ、そんな人が後を絶たないのか? それは、常識にあらがって波風を立てたくない、面倒くさい人になることを避けたいからだ。

けれども常識というのは、その時代にその場所に住む多くの人が信じていることではあっても、実は決して最善とは限らないのだ。

■一流企業に入って出世することが「成功」ではない

私はコーチとして自己肯定感を高める方法を日々お伝えしている。自己肯定感とは「ありのままの自分を無条件に受け入れ愛すること」だが、条件にはこのようなものがある。

・見た目(顔、身長、体重など)
・成績、学歴
・仕事、役職、キャリア
・貯金額、収入
・友達の数、人気(SNSのいいねやフォロワー数など)
・パートナーの有無
・家族、親戚
・才能、能力
・性格
・習慣、行動
・過去に、自分がしたこと、しなかったこと、自分に起こったこと
・今、自分がしていること、していないこと、自分に起こっていること

このリストを見れば、これら条件のほとんどがいわゆる「常識」から来ていることが分かる。

できるだけ一流の大学に入り、できるだけ一流の会社に勤め、できるだけ出世し、できるだけ多く稼ぎ、できるだけ器量の良い人と結婚するのが人生の成功という「常識」に縛られているから、その成功像に合致していない自分が嫌になる。

生きることの本質は、人と比べることではなく、人から褒められることでもなく、自分が持っている能力を自分のペースで最大限に発揮して人生を楽しむことにある。それと同時に世界平和に貢献することと考えれば、このような「一流信仰」をごそっと手放すことができる。そして自己肯定感も爆上がりする。

2010年2月1日、東京で記者会見を行う稲盛和夫氏
写真=AFP/時事通信フォト
2010年2月1日、東京で記者会見を行う稲盛和夫氏 - 写真=AFP/時事通信フォト

■「その他大勢」では成功者になれない

能力はさほど変わらないのにビジネスで成功する人と失敗する人がいる。その違いはどこにあるのか。

それは、「常識」で自分を縛ってしまうか否か、常識破りな「面倒くさい人」になる勇気があるか否かで決まる。「これが常識だから」、「波風は立てたくないから」と思った途端、自分の頭で考えることをやめ、その他大勢に従うことになる。ビジネスで成功するにはその他大勢ではだめだ。ナンバーワンあるいはオンリーワンにならなければならない。

常識に従うことで自分は確実で安全な道を歩いていると錯覚しているかもしれない。けれども世界は常に変わり続けている。そんな不確実な世の中の「常識」にあぐらをかいていることこそ一番危険なことなのである。常に自分がなんのためにそのビジネスをしているのかという本質に照らし合わせて、いわゆる常識を精査していく。このプロセスを踏むか否かで成功と失敗が決まる。

■「稲盛さんだからできた」のではない

そしてそれは人生の成功とも直結する。なんのために自分は生きているのか、その本質に照らし合わせて今までうのみにしてきた常識を一つひとつ見直し、不要な常識は手放していく。これをするかしないかで人生の成功と失敗も決まる。

「あの稲盛さんだから常識を破ることができたのだ。凡人の自分にはそんなことできない」と思うかもしれない。けれども順番は逆であることを肝に銘じてほしい。あの稲盛さんだから常識を破っても誰も文句を言わなかったのではなく、まだ無名だった頃から人に文句を言われようと常識にとらわれなかったからあの稲盛さんになれたのだ。

常に何事も本質に照らし合わせて常識にとらわれない「面倒くさい」人だけがビジネスの、そして人生の真の成功者になれる。

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宮崎 直子(みやざき・なおこ)
ライフコーチ
三重県生まれ。シリコンバレー郊外在住。津田塾大学英文学科卒業後、イリノイ大学で社会言語学や心理言語学を学んで修士号を取得。シリコンバレーでソフトウエア会社を起業、経営し大手コンピュータ会社に売却。稲盛和夫氏の盛和塾シリコンバレーに8年間塾生として所属し、広報を務める。アラン・コーエン氏のもとでコーチングを学び、ライフコーチに。自己肯定感を高める方法を講座、執筆、SNSを通して提供している。著書に『鋼の自己肯定感』(かんき出版)がある。宮崎直子公式サイト

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(ライフコーチ 宮崎 直子)

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