「排尿の泡立ちがすごい」は早死のサイン…「沈黙の臓器」腎臓がこっそり出している"危険な兆候"
プレジデントオンライン / 2023年7月11日 17時15分
※本稿は、髙取優二『人は腎臓から老いていく』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■元気な腎臓がなければ長生きはできない
おしっこは、健康のバロメーターです。
あなたのおしっこはどんな状態でしょうか。
●おしっこの色が赤くにごっている、もしくは白っぽい
●おしっこの泡立ちがすごい
●夜中に何度もトイレに行く
どれか一つでも当てまはる人は、長生きできないかもしれません。なぜなら、腎臓に何らかの異常を抱えている可能性があるからです。
なぜ腎臓が長生きと関係するのでしょうか。
あなたは「おしっこが丸一日出ないと、命のキケンにさらされる」という話をご存じでしょうか。それは、腎臓が血液をきれいにするという役割と関わります。
腎臓で血液中の老廃物(体のゴミ)や毒素をろ過し、おしっこを通じて体外に排出するのです。血液に乗って運ばれてきたゴミは、腎臓の糸球体という組織でふるいにかけられて、不要なものはおしっことして排泄されます。つまり、おしっこは血液からできているわけです。
糸球体は毛細血管でできており、血管の状態が悪くなると、血液をろ過するフィルター機能が落ちてしまいます。糸球体の働きが低下してふるいがザルになると、血液中にゴミが残るだけでなく、必要なものはおしっこに混ざってどんどん出ていきます。
■おしっこが出ないと毒素が全身に回る
もし、腎臓が衰えておしっこがうまく作られなければ、「汚い血液」が体中を巡り続けてしまいます。こうして引き起こされるのが、「尿毒症」です。
尿毒症になると、次のような症状が現れる恐れがあります。
●体が疲れやすく、すぐにだるくなる
●食欲が低下する
●全身がむくむ
●皮膚が黒ずむ
●骨がもろくなる
●目が見えにくくなる
●思考力が低下する
毒素が体中を回るということは、これだけ全身の機能が落ちてしまうのです。
便通については2~3日ぐらいなくても不快な程度で、大きな問題もなく過ごせるでしょう。しかし、もしも、おしっこが1滴も出ない時間が1日以上続いたら、命の危機に陥る可能性があります。
おしっこが出ることがあまりにも当たり前の現象なので、軽く考えられがちですが、私たちの体にとって重要なことです。
「けど、おしっこが全く出ないなんてことはないから大丈夫」
確かにやや極端なたとえだったかもしれません。
しかし、おしっこが毎日出ている人でも、腎臓が衰えていれば、「血液」に異常をきたします。その結果、体中のあらゆる臓器が本来の役割を果たせなくなり、さまざまな病気や体調不良に見舞われるようになります。
■泡立ちの正体は、漏れ出たタンパク質
実は、それこそが「老化」の正体です。
老化とは単なる体の経年劣化ではなく、全身の臓器が恒常性(ホメオスタシス)を保てなくなることなのです。
その腎臓の衰えをチェックする、最もわかりやすくて身近な方法が、おしっこの観察に他なりません。冒頭でご紹介した3つのケースについてご説明しましょう。
まず、おしっこが濁っていた場合は、赤い色であれば血液が混じっていることが考えられます。白く濁っていれば、血に含まれている成分の一つ「白血球」が通常よりもたくさんおしっこに含まれているのかもしれません。腎臓の一部が傷つき出血していたり、細菌に感染したりしていることが原因です。
おしっこの泡立ちで最も気をつけなくてはいけないのが「タンパク尿」です。腎臓のフィルター機能が壊れて、本来体内に留まるはずの血液中のタンパク質が、おしっこを通じて体外に漏れ出てしまう現象です。泡立ちの正体は、タンパク質なのです。
また、通常朝起きた時のおしっこは、昼間に比べて濃いと思います。これは、寝ている間はおしっこを濃縮する働きが作用して、血液中の老廃物を朝のおしっこでまとめて出せるような仕組みになっています。腎臓が弱るとこの濃縮機能が上手く働かずに、体のゴミを体外に排出するために、夜中に何回もトイレに行かなければいけなくなってしまいます。
おしっこは、腎臓で作られます。おしっこは腎臓の状態を映し出す鏡のようなものなのです。
■練り製品、インスタント食品の食べすぎはNG
もし、あなたの腎臓が衰えているのだとすれば、何が原因なのでしょうか。腎臓を痛めつける要因は複数あります。
最近、注目されているのがハムやかまぼこなどの練り製品、インスタント食品などの「加工食品」に含まれる「リン」です。リンの過剰摂取によって血中のリン濃度が上昇すると、カルシウムとリンのバランスが崩れ、骨から血液中にカルシウムが放出されます。
リンとカルシウム、血液中のたんぱく質が結びつくと、血管の内側を傷つけて炎症を起こしたり、石灰化を誘導したりします。こうして、動脈硬化を引き起こすのです。動脈硬化は糸球体の血管にダメージを与えます。
腎臓に負担をかけるワースト3が、喫煙・内臓脂肪型肥満・塩分です。
喫煙は血管を収縮させて、腎臓の血流量を減らします。タバコの本数が増えるほど、腎機能障害は進みます。1日に20本以上吸っている人は、吸わない人に比べて末期腎不全に至る率が2.3倍というデータがあります。
そして、過食と運動不足によって内臓脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満は、「リンゴ型肥満」とも呼ばれています。これに、糖尿病・高血圧・脂質異常症の中で2つ以上を合併した状態が、「メタボリックシンドローム(メタボ)」です。
■喫煙、過食、運動不足、メタボはリスクが高い
米国腎臓学会の学会誌に発表された研究によると、内臓脂肪型肥満の人はそうでない人に比べ、腎臓の機能が低下して血圧が高めであり、年齢が進むと慢性腎臓病を発症するリスクが高い傾向があるとのことです。
理由としては、メタボによる高血糖が考えられます。血糖値が高いと血管の炎症の原因となり、進行すれば血管の詰まりを誘発します。当然、糸球体の毛細血管にも悪い影響しか与えません。
健康診断でメタボと診断されたり、おなか回りが気になったりする人は、食べ過ぎ・飲み過ぎはないか、普段の生活を見直してみましょう。「そんなにたくさん食べていない」のにメタボ気味の人は、炭水化物を過剰に摂取していないか、注意してチェックしてみてください。
また、腎臓は体内の余分な塩分を排泄する働きをしています。食事で塩分を取り過ぎると、排泄しなければならない量が増えるので腎臓に過度の負担がかかります。この状態が続いたら、腎臓が疲れ切って、慢性的に機能が低下します。
厚生労働省が実施している「国民健康・栄養調査」(令和1年度)によると、日本人の1日当たりの食塩摂取量は平均10.1gとなっています。加工食品やインスタント食品、ファストフードを避けるだけでも、塩分摂取量は大きく減らせます。8人に1人がかかっているとされる慢性腎臓病の予防には、こうしたことを心がけるといいでしょう。
■腎臓の機能を正常に保つ方法
元気な腎臓を保つには、生活習慣の見直しが必要です。しかし、生活習慣の見直しは、あまりにストイックに考え過ぎると、いわゆる「三日坊主」で終わってしまいます。
拙著『人は腎臓から老いていく』(アスコム)では、腎臓を元気にするために、「食」「運動」「呼吸」の3つの観点から、簡単にできて毎日続けやすい習慣について解説しています。
本記事では、もっとも日常的な「食」の観点から、みなさんにおススメの習慣をご紹介します。それが、「腎臓のおそうじスープ」です。
腎臓は、100万個を超える糸球体で構成されており「血管の塊」といっても過言ではありません。繰り返しになりますが、糸球体は血液中のゴミや毒素をろ過するフィルターの役割を果たしています。
生活習慣の悪化で血管がサビ(酸化)てしまい、糸球体の毛細血管が動脈硬化を起こすと、腎臓のフィルター機能が十分に働きません。
例えば、ご家庭の空気清浄器のフィルターが汚れていたら、空気はきれいにならないですよね。皆さんも、フィルターは定期的に洗っていると思います。それと同じく、腎臓のフィルターがボロボロだと血液のろ過がうまくいきません。
■酸化物質やリンの摂取をおさえればいい
このスープは、酸化物質やリンなどの、糸球体の血管を傷める物質を除去し腎臓のフィルター機能を正常に保つものです。スープを飲むことで腎臓のフィルターを定期的に「おそうじ」していると思ってください。主な材料(栄養成分)と効果は、次のとおりです。
●タマネギのケルセチン……抗酸化作用と、老化細胞を除去する「セノリティクス」という作用を持つ(老化細胞とは、遺伝子損傷などで細胞分裂を停止した細胞。近年の研究で、がんや動脈硬化の原因となることがわかっている)
●緑色野菜のマグネシウム……リンの害を除去する
●豆乳・豆腐などの大豆製品の亜鉛・鉄……エネルギーを生み出すミトコンドリアを活性化する
●だし、スパイス……うま味で塩分をセーブできる
●みそやキムチ、塩麹といった発酵食品の乳酸菌……腸内環境を改善する
●野菜の食物繊維……腸内環境を改善する
朝、昼、晩、いずれかの食事の前に、腎臓のおそうじスープを1日カップ1杯(約200cc)食べることをお勧めします。時間のないときは、このスープを食事代わりにしてもいいでしょう。
食物繊維と水分がたっぷりのスープを最初に食べると、その後で糖質が含まれる食品を食べても、血糖値の上昇がかなり抑えられます。
加えて、ケルセチン・マグネシウム・亜鉛・鉄には、血管を若返らせる効果が期待できます。乳酸菌と食物繊維については、便通をよくして腸内環境を改善します。すると、腎臓の負担が大きく軽減されます。
腎臓のおそうじスープに、材料以外の野菜を加えてアレンジしても楽しいでしょう。
タマネギ 1/2個(100g)
油揚げ 1/2枚(25g)
ニンジン 1/6本(30g)
コーン 大さじ3(30g)
冷凍むきアサリ 80g
インゲン 4本(30g)
水 400cc
みそ 大さじ1
※コーンとインゲンは冷凍食品でもよい
1.タマネギと油揚げは1cm角、ニンジンは1cmの色紙切り、インゲンは1cm長さに切る。アサリはサッと熱湯につけて解凍する。
2.鍋にインゲン以外の材料と水を入れ、強火にかけ、沸騰したら中火で5分煮る。
3.鍋にインゲンを加え、さらに3分煮る。
4.弱火にし、みそを溶き、味を調える。
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医学博士、腎臓専門医
1975年生まれ、鳥取大学医学部卒業後、岡山大学病院腎・免疫・内分泌代謝内科などを経て、現在は埼友クリニック外来部長。抗加齢医学(アンチエイジング)の観点から、腎臓病を捉えなおす新たな手法に取り組んでいる。日本腎臓学会専門医・指導医、日本透析医学会専門医・指導医。「世界一受けたい授業」「林修のレッスン!今でしょ」など、人気番組の医療監修を多数手がける。
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(医学博士、腎臓専門医 髙取 優二)
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