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退職金を東京電力株に全額投資したばかりに…絶対失敗できない「50歳からの投資」で守るべき3つの心得

プレジデントオンライン / 2023年7月24日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

お金の心配なく老後を迎えるためにはどうすればいいのだろうか。セゾン投信創業者の中野晴啓さんは「老後のための資産形成は50歳からスタートしても十分に間に合う。一方で、最初に失敗してしまうとリカバリーが大変なので、『長期・積立・分散』をベースに着実な投資を心がけるべきだ」という――。

※本稿は、中野晴啓『50歳からの新NISA活用法』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■いまだに投資による資産形成を否定する人は多い

【心得その1】投資に対するアレルギーをなくす

50歳になるまで、お金は「働いて稼ぐ」のが王道であり、投資で増やすのは邪道だ、などと思っている人は、意外と少なくありません。

「投資なんてただの博打」「親から、株式投資なんてもっての外(ほか)だといわれてきた」などとおっしゃる方もいます。

それは、個人金融資産に占める株式や投資信託の比率の低さからも、よく分かります。「貯蓄から投資(資産形成)へ」などと、国は必死に声を上げてきましたが、それも空(むな)しく、この20年超にわたって、株式や投資信託が個人の金融資産に占める比率はほとんど上昇しませんでした。

今、50歳の方のご両親の年齢は75~80歳前後というところでしょうか。生まれたのは1940年代の前半から半ばくらいです。多少、先の大戦と重なりますが、まだ幼少だったので、戦争の記憶はほとんどないかもしれません。そして戦後、日本の高度経済成長期のなかで育ち、社会人となり、働き盛りは1980年代のバブル経済。2000年代前半に定年を迎えたというのが、今、50歳の人たちのご両親が生きてきた日本です。

■今、50歳の人たちは親の価値観を否定すべき

この歴史的背景を考えると分かるのですが、50歳の人たちのご両親は、投資というものをほとんど経験せずに、生活を成り立たせることができました。定年前は、日本経済がバブル崩壊の影響でデフレに悩まされていた時期に重なるため、多少、待遇面などで厳しいところもあったかもしれませんが、基本的には逃げ切ることができた世代です。

退職金もある程度の額が得られたでしょうし、年金もしっかり受給できていることでしょう。そのような経済事情から察すると、「投資なんて博打」という気持ちになるのは、至極当然のことなのかもしれません。

ですから、今、50歳の人たちにまず申し上げたいのは、「親の価値観を否定しましょう」ということです。親がどれだけ投資による資産形成を否定したとしても、聞かないようにしてください。なぜなら、皆さんの世代は、投資による資産形成なしに、これからの人生は成り立たないからです。

昔は年功序列賃金が徹底されていましたし、何よりも経済がどんどん伸びていましたから、50歳以降も定年を迎えるまで、給料は比較的堅調に増えていきました。

でも今は、そんな会社はほとんどないでしょう。大抵は、55歳くらいになると役職定年になって給料が下がりますし、そもそも日本の経済力が落ちているので、基本給を一律に引き上げる「ベースアップ」も、物価上昇を上回ることは期待できません。

■親世代ほど十分な年金を受け取れない可能性が高い

よく「年金財政が破綻することはない」という人もいるのですが、本当でしょうか?

「賦課方式」と呼ばれる日本の年金制度は、現役世代が納めた保険料を、同時期の年金受給世代に割り当てる仕組みをとっています。大勢の現役世代が少ない高齢者を支える時代は十分な原資を確保できましたが、少子化と長寿化の同時進行によって、今や少数の現役世代が大勢の高齢者を支える時代になってきました。

そうなると、確かに年金財政が破綻して1円たりとも年金を払えなくなるような状況にはならないと思いますが、破綻しないように、できるだけ総体的な年金の支払いを抑制する方向に政府は動かざるを得ないでしょう。つまり、これから年金を受給することになる世代は、親世代ほど十分な年金を受け取れなくなる可能性が高いわけです。

年金手帳をチェックする女性
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

こうした状況のなかで、50歳の人たちが経済面で心配のない老後を迎えるためには、投資による資産形成が必須になります。年0.002%の利息しか得られない銀行預金は、もはや貸金庫程度の意味合いしか持ち得ません。

だからこそ、投資に対するアレルギーをなくしてほしいのです。

■50歳から始める投資は最初が肝心

【心得その2】最初が肝心。やり直しのチャンスは少ない

50歳から、老後を意識して、初めて投資による資産形成を始める場合、最初が肝心であることを申し上げたいと思います。スタートで失敗してしまうと、そのリカバリーが大変だということです。

しかも、50歳から資産形成を始める場合、残された時間は、少なくとも30代、40代でスタートする人に比べると、確実に短いわけです。30歳から投資を始めたのであれば、一度や二度、大きな失敗をしたとしても、十分にリカバリーが利くでしょう。

でも、これから先、それほど給料も増えず、年金受給額も減る恐れがある50歳の皆さんは、変な投資に手を出して、資産の多くを失うような事態に陥るわけにはいきません。一攫千金なんてことを夢見ず、着実に増やす方法を考える必要があります。

■退職金を全額、東京電力株の購入に充てたが…

これは人伝に聞いた話ですが、某大企業を定年退職された方が、老後、安定した配当を得たいと考えて、退職金を全額、東京電力株の購入に充てたそうです。当時、電力株は「資産株」などといわれ、株価が大きく下がることなく、同時に安定した配当が得られたからです。

東京電力本社
東京電力本社[写真=↑PON(ウエポン)/CC-BY-SA-3.0-migrated/Wikimedia Commons]

当時としては、その判断は決して間違っていなかったと思います。ただ、一番の問題は東京電力株のみに資金を集中させたことでした。それから間もなく、2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故があり、東京電力の株価は大暴落してしまいました。

同社の株価を見ると、2011年3月10日時点の高値が2163円で、東日本大震災後の安値は、2012年7月18日の120円です。何と18分の1にまで値下がりしたのです。仮に2000万円で同社の株式を買っていたとしたら、110万円程度まで資産価値が目減りしたことになります。

■「長期・積立・分散」をベースにしたほうがいい

最近でこそ、若干、株価が戻りつつありますが、それでも2023年4月7日時点の株価は486円です。12年が経過してこれしか戻っていないのですから、買値(かいね)に戻るには、あと何年、あるいは何十年かかるか分かったものではありません。残念な話ですが、これは老後の資産運用で大失敗した事例といっていいでしょう。

こうなってはいけないのです。だからこそ、最初の段階でこのような大失敗をしないように、「長期・積立・分散」をベースにした投資を心がける必要があるのです。「急がば回れ」という言葉の通りで、短期間で大きく増やそうなどと考えると、失敗する可能性が高いでしょう。

50歳からの資産形成は、やり直しのチャンスが少ないことをしっかり理解して、大きく値崩れしないような投資先を選ぶようにしてください。

■対面形式の金融機関は「成長投資枠」を売りたい

【心得その3】新NISAを始めるなら金融機関をしっかり選ぶ

インターネット証券会社で新NISAを始める人にとっては、あまり関係ないかもしれませんが、対面方式の金融機関で新NISAの口座を開設しようと考えている人は、金融機関選びをしっかり行う必要があります。

なぜなら、対面形式の金融機関の多くに、新NISAでは成長投資枠を積極的に扱おうという動きがあるからです。

新NISAにはつみたて投資枠と成長投資枠があります。

このうち、つみたて投資枠では、現行のつみたてNISAに適用されているものと同様の基準に合った投資信託しか購入できません。購入時手数料が無料のものしか認められず、さらにインデックスファンドの場合は信託報酬率が限界まで低くなっているため、これを真剣に販売したとしても、大半の販売金融機関にとっては商売になりません。

一方、成長投資枠では、運用期間が20年未満とか高レバレッジ型、毎月分配型の投資信託は除くという制限はあるものの、購入時手数料や信託報酬率についてはルールが設けられていません。つまり、販売金融機関からすれば、成長投資枠のほうが「商売になる」と思われます。

■勧められるままに投資信託を買わないほうがいい

したがって、新NISAがスタートする2024年1月以降、多くの販売金融機関が、成長投資枠を中心にして積極的に営業を展開してくる可能性があります。

しかし、新NISAはつみたて投資枠を中心に使い、成長投資枠を使う時も積立投資を行いましょう。

また、販売金融機関から営業活動を受けても、勧められるままに投資信託を買わないようにしましょう。販売金融機関は少しでも多くの購入時手数料や信託報酬を得ようとしていますから、コストの割高な投資信託を勧めてくる恐れがあります。『50歳からの新NISA活用法』で挙げている「新NISAでの購入に適さない投資信託の10カ条」に該当するような投資信託を勧めてくる販売金融機関とは付き合わないほうが無難です。

■投資はあくまでも「自分の判断」で行うべき

では、インターネット証券会社なら安全なのかという点についても、少し懐疑的に考えたほうがいいかもしれません。

確かに、インターネット証券会社であれば、販売窓口の担当者に乗せられて、販売金融機関にとって有利な(つまり投資家にとって不利な)投資商品の購入に誘導される恐れはありません。

中野晴啓『50歳からの新NISA活用法』(PHPビジネス新書)
中野晴啓『50歳からの新NISA活用法』(PHPビジネス新書)

でも、ホームページに掲載されているコラムやレポートの類に誘導されて、案外リスクの高い投資商品を、あたかも自分の意思で判断したかのようにして買わされてしまう恐れがあることには、注意しておいたほうがいいかもしれません。

あるいはFXへの誘導にも注意が必要です。特に最近はオンラインセミナーなども活発に行われているようなので、そこでの内容を聞いてその気になってしまうことも、十分に考えられます。

投資は人の判断に乗って行うものではありません。第三者からもたらされる情報に乗せられることなく、あくまでも自分の判断で行うべきです。

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中野 晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信 創業者
1963年生まれ。東京都出身。明治大学卒業。1987年、現在のクレディセゾンへ入社。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用のほか、外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾン インベストメント事業部長を経て、2006年にセゾン投信を設立。2023年6月に代表取締役を退任。セゾン文化財団理事。著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)などがある。

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(セゾン投信 創業者 中野 晴啓)

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