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「野菜から食べる」は絶対ダメ…医師・和田秀樹「高齢者が食事の一番目に手を付けるべき食材の種類」

プレジデントオンライン / 2023年8月20日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

高齢者は健康維持のために、どんな食べ方をすればいいか。医師の和田秀樹さんは「高齢者に『ベジファースト』はお勧めできない。加齢とともに食事量が減り、消化機能が落ちてくると野菜でお腹いっぱいになってしまい、筋肉の材料であるタンパク質を十分にとれない」という――。

※本稿は、和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)の一部を再編集したものです。

■高齢者の正しい食べ順は「野菜から」は間違い

「ベジファースト」をみなさんは実践していますか?

食事を野菜から食べてお腹を満たしていたら、すぐにやめてくださいね。高齢者のみなさんにはお勧めできる食べ方ではありません。

「ベジファースト」は、野菜(ベジ)を最初(ファースト)に食べるダイエット法です。食物繊維豊富な野菜から食べ始め、次にタンパク質がとれる肉や魚、大豆製品と続き、最後にご飯の順番です。

最初に野菜から食べたほうが、糖質の吸収をコントロールできます。血糖値が緩やかに上昇するため太りにくいといわれています。いつもの食事の内容を変えなくても、手軽にダイエットできるとされるため、最近では多くの方が実践しています。

40〜50代の方であれば「ベジファースト」でも問題ありません。しかし、加齢とともに食事量が減り、消化機能が落ちてきているみなさんが食物繊維が豊富な野菜をもりもり食べていると、お腹がいっぱいになってしまいます。

「野菜だけでお腹がいっぱいなった!」「やせられる!」と喜んではいけません。たくさん食べられないのは老化です。

筋肉の材料であるタンパク質を十分にとれないため、体重が減り、筋肉が減ってしまいます。

食事量が減ってしまう理由は、年齢とともに胃の機能が低下するからです。胃の弾力性が徐々に低下して、食べ物が入ってきても十分に胃が広がりません。だから一度にたくさんの量をためておくことができないのです。

胃から小腸へ食べ物を送る蠕動(ぜんどう)運動も低下します。そうすると消化に時間がかかります。食べたものが胃の中にとどまっているので、すぐにはお腹も空きません。

■「ベジファースト」ではなく「ミートファースト」を

では、たくさん食べられない方は、どのような食事法がいいのでしょうか?

それが「ミートファースト」です。食事量は減っても、栄養はしっかりとることが大事です。

ステップ1 最初に肉を食べる。筋肉の材料をしっかりとる

ステップ2 次に野菜を食べる。腸内環境を整える

ステップ3 最後に炭水化物

野菜をたくさん食べることが健康にはよいことです。しかし、何よりもバランスが大事です。「かくれ栄養失調」に陥るリスクが高まります。

高齢者が「かくれ栄養失調」になると、どんどん食べる力が落ち、栄養状態が悪化してフレイルに陥ることにもなりかねません。

70歳以上の日本人の5人に1人がタンパク質不足といわれています。

「まず肉から食べる!」

今日から実践してみてください。

まな板の上にリブロース肉
写真=iStock.com/naturalbox
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/naturalbox

ミートファーストを始めたら、気がつくとセロトニンの材料となるトリプトファンというアミノ酸を肉からしっかり摂取し、幸せと意欲が向上しています。うつうつとした気分とはおさらばです。

肉はコレステロールが多いから、動脈硬化がこわいといって、あまり食べない人もいますが、日本は心筋梗塞の12倍の人ががんで亡くなる国です。心疾患で亡くなる人は、OECD諸国の中でも格段に少ないのが現状です。

コレステロールは、セロトニンを脳に運ぶ役割を果たしています。肉を食べると幸せになるのです。

80歳のときに3度目のエベレスト登頂に成功したプロスキーヤーの三浦雄一郎さんは、80歳を過ぎても500gのステーキを平らげているそうです。

■70代前半までは認知症よりうつ病の人が多い

次のような症状はありませんか?

「食欲がない」
「最近、やる気が起きない」
「夜、何度も目が覚める」
「疲れやすく、すぐに横になってしまう」
「朝早く目が覚めてしまう」
「喜怒哀楽の感情が乏しい」
「元気が出ずボーっとしてしまう」

若いころはこんなことはよくありました。しかし、みなさんがこのような症状があれば危険です。

こうなると、家族が認知症を心配して、一緒に私の病院にやってきます。来院された方にまず最初に私がお聞きする質問はふたつです。

「食欲はありますか?」

もしも、「何を食べてもおいしくない」とか、「食欲がわかない」「食が細くなった」という場合は、認知症よりもうつ病の可能性が高いと診断します。

「ちゃんと眠れていますか?」

もしも「夜中に何回も目を覚ます」という場合は、うつ病の可能性が高いと診断します。寝つきは悪くないが眠りが浅い熟睡障害は、うつ病による不眠の典型的な症状です。

実際に、認知症とうつ病は見分けがつきにくいのが特徴です。

うつ病は、70代以降の人が一気に老け込む要因です。そのまま放っておくと、徐々に運動機能と脳機能が衰え、あっという間によぼよぼになってしまいます。

高齢者は、脳内物質のセロトニンが減ってしまい、うつにかかるリスクが高まります。じつは70代の前半くらいまでは、認知症の人よりうつ病の人のほうが多いのです。

■夏場にタンパク質不足で発症するケースも

どうしてうつ病になってしまうのでしょうか。大きく心因と身体因のふたつあります。

心因は、定年退職や子どもの独立、引っ越しといった環境の変化やパートナーの死、ペットの死、コロナ禍で習い事に行けないなど、心の拠(よ)り所を失ったとき。

身体因は、食事が偏って「かくれ栄養失調」になっていたり、外出しないために幸せホルモンのセロトニンが不足した場合など、身体からきます。

夏場などあっさりした麺類ばかり食べていると、タンパク質不足でうつ病を発症するケースがあるのです。

高齢者の場合のうつ症状は、気分の落ち込みより、まずは身体化症状として現れるケースがよく見られます。

「身体がだるい」「食欲がない」「腰が痛い」「便が出ない」。

このような症状が身体化症状として見られるうつ病です。

「タンパク質ってそんなに大事なの?」「野菜を食べるほうが健康にいいんじゃないの?」「外出しないだけでセロトニンという幸せホルモンが減ってしまうの?」と驚かれたのではないでしょうか。

和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)
和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)

こんなときは陽の光をたくさん浴びましょう。朝、カーテンを開けて、太陽の光を浴びる。コンビニまでちょっと歩いて行く。こんなふうに意識して、陽の光を浴びるようにしてみてください。

食事をつくるのが面倒であれば、コンビニに行けばレンチンするだけですぐに食べられる栄養たっぷり、タンパク質豊富な食べ物がたくさん売られています。

「鶏肉と卵のサンドイッチ」「サラダチキン」「唐揚げ」「鮭の塩焼き」「鯖のみそ煮」などなど。この文字を読んだだけで、だんだん食欲がわいてきませんか?

視覚情報として目に入ってくると、それによって脳が刺激され、食欲がわいてくるものです。ぜひ外に出かけましょう。

■認知症とうつ病を見分ける“たった1つ”の方法

じつは高齢者のうつは、うつ病特有のうつ気分があまり目立ちにくいのが特徴です。不眠や食欲低下は、高齢者専門の精神科医の私からすれば、典型的なうつ症状だとわかるのですが、高齢者のことをあまり知らない医者だと、「年のせい」で片づけられてしまいがちです。

物忘れが多くなって、着替えもせずに、外にも出かけないと聞いたら、間違いなく認知症だろう、と多くの人は思います。しかし、うつでも同じような症状が起こるのです。せっかくですから、うつ病と認知症の簡単な見分け方をお伝えします。

認知症の場合は、年単位で病状がゆっくり進行する。

うつ病の場合は、1カ月単位で急変することがある。

お正月に会ったときは元気だったのに、夏ごろから物忘れが激しくなった。このような場合、私は認知症よりうつの可能性が高いと思います。

重症化する前に早めに受診すれば、元気にご飯が食べられるようになりますよ。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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